平成30年3月10日付朝日新聞青森版

学校の対応厳しく批判 中1いじめ自殺で再調査委

 青森再調査1

報告書について記者会見する再調査委の久保委員長(左から2人目)ら=東北町

青森再調査2

報告書を蛯名鉱治町長(右)に手渡す再調査委の久保富男委員長(右から2人目)=東北町

「中学校の対応には致命的なミスがあった」。東北町立中1年の男子生徒(当時12)が2016年8月に自殺した問題で、町いじめ問題再調査委員会(委員長=久保富男・青森中央短期大教授)は9日、報告書を蛯名鉱治町長に提出した。自殺の原因があいまいだった町教委の1回目の調査結果から一転、学校のいじめへの対応を厳しく批判。男子生徒の両親は「真実が分かった」と一定の理解を示した。(山本知佳、土井良典)

「学校には責任の重さを感じて頂きたい」。久保委員長は、報告書提出後の記者会見でこう述べ、中学校に対し反省と、男子生徒の両親への謝罪を求めた。

町教委が一昨年設置したいじめ防止対策審議会は、自殺の背景にはいじめ以外に「様々な背景が複合的に関与していた」と結論づけた。遺族はこれに反発し、昨年3月に再調査が始まった。再調査委は計20回の委員会を開き、中学校や小学校、同級生ら約20人から聞き取りを行ってきた。

報告書によると、中学校は特定の同級生を男子生徒の後ろの席にし、授業に集中していなければ注意するよう「支援」を頼んでいた。これを受けて同級生は男子生徒のいすを何度も蹴っていた。再調査委はこの行為を「いじめ」と新たに認定し、自殺との因果関係を認めた。支援を男子生徒や両親に伝えなかったことで、男子生徒が混乱したとして「本件発生の端緒になった」と判断した。

また、男子生徒はいすを蹴られるのが「嫌だ」と伝え、中学校側はいじめと判断していたにもかかわらず、支援を中止せず、いじめ対策の会議の開催や町教委への報告も怠った。これを「致命的なミス」と指摘し、「支援さえなければ自死しなかったのではないか」と結論づけた。

いじめ防止対策審議会が16年12月に答申した報告書は、自殺の一因に「本人の特性」や「思春期の心性」などを挙げていた。再調査委はこれを「主観的」だとし、「推測の域を出ず、妥当でない」と批判。亡くなる3カ月前に行われたいじめに関するアンケートが破棄されていた問題も「猛省すべきだ」とした。

会見で委員の木下晴耕弁護士は、中学校の教頭が前回の報告書の内容を把握していなかったことを挙げ、「反省しなければまた同じことが起きてしまう。

中学校は今回の報告書をきちんと読んで受け止めてほしい」と求めた。

 

両親、「納得」の一方「悔しさ増す」

男子生徒の両親は9日昼前、自宅で報道陣の取材に応じ、「大変な時間はかかったが納得のいく報告」と再調査委の報告書に一定の理解を示した。

今後の対応については未定という。

報告書の内容について、両親は「ひどかった前回と全く違う。学校を信用していたが、ちゃんと対応してくれていなかった。(今回は)真実が分かって、むしろ悔しさは増している」と涙をこらえながら語った。この直前に謝罪のため自宅を訪れた蛯名町長には、再発防止や開かれた学校運営を求めたという。

亡くなった息子とは「今でも一緒に暮らしていると思っている」。月がきれいな夜に「月が出てるね」と声をかけることもあるという。報告書を受け、「お前の気持ちを大人は分かってくれたんだよと伝えたい」と語った。

 

校長と教育長が謝罪

いじめと自殺の因果関係を認め、中学校の責任を強く指摘した報告書を受け、会見した同校校長は「大変申し訳ない。真摯に受け止め、二度と悲しい思いを子供たちにさせないよう対策を講じる」と頭を下げた。

不適切だった点を問われると、男子生徒への支援を教員ではなく同級生に頼んだことや、いじめの認知がいち早くなされなかったことを挙げ、不適切な対応が「自殺につながった可能性は認める」とした。いじめのアンケートを破棄したことについては、取り扱いを特に決めていなかったと明かし、原則5年間保管することを確認したという。

再発防止に向け、子どもを教員がきちんと見ることを徹底するとし、「子どものSOSにもっと敏感にならないと」とも語った。

また報告書は、町教委の審議会が16年12月に答申した最初の報告書を学校幹部が読んでいなかった点も指摘した。校長は「聞き取り調査は教員に過酷で十分答えられず、誤解が出たのでは。報告書はかなりの教員で共有していた」とした。

一方、乙山博道教育長は「痛恨の極みで、深くおわびする」と謝罪。関係者の処分は「今のところ考えていない」と説明した。

 

再調査委が指摘した主な学校の不適切対応

・特定の同級生に男子生徒の支援を頼んだ。

・支援について、男子生徒や両親に説明しなかった。

・男子生徒が「いすを蹴られて嫌だ」と訴えたのに、事実を十分確認せず、支援をやめなかった。

・いすを蹴った行為をいじめと判断したのに、町教委に報告せず、校内のいじめ防止対策委員会も開かなかった。

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平成30年3月10日付朝日新聞

青森中1自殺、学校対応に「致命的ミス」 再調査報告書

青森県東北町の町立中学1年の男子生徒(当時12)が一昨年8月に自殺した問題で、町いじめ問題再調査委員会は9日、報告書を蛯名鉱治町長に提出した。新たないじめを認定して自殺との因果関係を認めた上で、「学校の対応の不備が原因となった可能性を否定できない」とした。

男子生徒は2016年8月19日、「いじめがなければもっと生きていたのにね」などと書いた遺書を残して自宅で自殺した。町いじめ防止対策審議会が同年12月、いじめや本人の特性など「様々な背景が複合的に関与していた」とする報告書をまとめたが、「原因はいじめだけだ」とする遺族の要望で再調査をした。

今回の報告書は、男子生徒が後ろの席の同級生に何度もいすを蹴られていたことを新たにいじめと認定。これは学校側が同級生に、男子生徒が授業に集中していない時に「支援」をしてほしいと依頼した結果だったとした。男子生徒が学校側に「嫌だ」と訴えたのに、やめなかったことを「致命的なミス」と指摘。

「『支援』がなければ自死しなかっただろう」と結論付けた。

男子生徒の両親は再調査の報告書について「大変な時間はかかったが、納得のいく報告になった」と話した。(山本知佳)

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平成29年12月1日朝日新聞

中1自殺、いじめアンケを破棄 中学「問題ないと判断」

青森県東北町で昨年8月、町立中学1年の男子生徒(当時12)がいじめを訴える遺書を残して自殺した問題で、通っていた中学校が全校生徒を対象に、自殺の3カ月前に実施したいじめに関するアンケートの結果を破棄していたことが分かった。破棄した時期は不明という。

文部科学省が2013年に定めた「いじめ防止基本方針」は、いじめ問題の指導記録の保存を学校に求めている。

自殺について調べている同町の調査委員会は11月30日、学校側の対応に不備があったとする調査結果を、自殺した生徒の母親らに説明した。母親は「学校の不備がきちんと認められて納得した」と話した。

調査委などによると、破棄されたのは、昨年5月に行われたアンケート。母親によると、生徒は「からかいを受けている」

などと回答し、6月には担任教諭との面談で、特定の同級生にいすを蹴られることを「嫌がらせ」と訴えていた。生徒は昨年8月、「いじめがなければもっと生きていたのにね」と書いたメモを残して自殺した。

今年9月、調査委が中学校にアンケートの提出を求めたところ、中学校は「時期はわからないが、破棄した」と回答。

「アンケートでいじめを訴えた生徒がいなかったため、問題がないと判断した」と説明しているという。

文科省は指導記録の保存期間は明示しておらず、町教委もアンケートの管理は学校に任せていた。文科省は今年3月の「いじめ重大事態の調査に関するガイドライン」では、新たに「少なくとも5年間保存することが望ましい」としている。

(山本知佳)

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平成29年1月26日河北新報

<青森中1自殺>遺族の意向 町が再調査へ

  青森県東北町の上北中1年の男子生徒=当時(12)=が昨年8月にいじめ被害を示唆するメモを残して自殺した問題で、町は25日、遺族の要望に応え、いじめ防止対策推進法に基づく再調査を実施すると決めた。
 着手時期は未定。再調査は町が新たに設ける付属機関が担当する。町総務課によると、有識者ら5人程度で
構成する。
 斗賀寿一町長は「慎重を期して検討した結果、遺族の意向を踏まえて再調査の実施を決定した」との談話を
出した。
 町の決定に対し、男子生徒の母親(50)は「時間はかかってもいいので、息子の最後のメッセージであるメモの
内容をきちんと読み解いてほしい」と訴えた。
 町いじめ防止対策審議会は昨年12月、男子生徒へのいじめを認めた上で、複数の要因で自殺したと結論
付ける調査報告をまとめた。これに対し、遺族は今月11日、「納得のいく内容でない」として再調査を求める文書を町に提出していた。

 

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平成28年12月27日 河北新報

  青森県東北町の上北中1年の男子生徒=当時(12)=が8月にいじめ被害を示唆する遺書のような書き置きを残して自殺した問題で、町いじめ防止対策審議会は26日、男子生徒へのいじめを認めた上で、複数の要因で自殺したと結論付ける答申書を町教委に提出した。
 答申などによると、男子生徒は別の生徒から「菌」扱いされたり、一部の女子生徒から「汚い」と言われるなどの
いじめを受けていた。
 男子生徒は5月以降、保護者や同級生らに「(自分は)死んじゃえばいい」などと自殺を示唆する発言をした。

保護者は教員に伝えていたが、情報は学校全体で共有されず、男子生徒の死に関する発言が減ったことから、危険性はないと判断した。
 学校は男子生徒の学習を支援するため、授業に集中していない場合、後ろの席の生徒に合図を送るよう依頼した。

後ろの席の生徒は男子生徒のいすを蹴るなどして合図を送ったが、本人と保護者に説明をしていなかったため、6月の教育相談で男子生徒が「後ろの席の生徒がいすを蹴ってくる」と訴えた。
 他にも小学4年の頃から「生きにくさ」を感じ、自殺を考えていたことや小規模の小学校から人数の多い中学校へ
進学したストレス、思春期の影響、2学期を迎える直前の緊張などを自殺の要因に挙げた。
 記者会見した審議会の荒谷国人会長(元小学校長)は「各委員の専門的な知見から慎重に調査を進めてきた。

デリケートで難しい事案だった」と話した。
 町教委から答申の説明を受けた男子生徒の母親は「調査に足りない部分があり、納得のいく内容ではなかった。

内容をよく読み、再調査を要請するつもりだ」と涙ながらに語った。

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平成28年11月1日 河北新報

<青森中1自殺>「複数によるからかいあった」

  青森県東北町の上北中1年の男子生徒=当時(12)=が8月にいじめ被害を示唆する遺書のような書き置きを残して自殺した問題で、町いじめ防止対策審議会は31日、「複数の生徒による、からかいや心ない言葉があった」とする中間報告を町教委に提出した。町教委は同日、遺族に中間報告を説明した。
 町教委は中間報告を非公表とした。町教委によると、中間報告の内容は遺族や男子生徒が通っていた
小中学校の関係者に対する聞き取り調査の結果を反映した。遺族と学校関係者の話で食い違う部分があるため、事実関係をさらに調査する必要があるという。
 漆戸隆治教育長は「いじめと思われる行為があったと捉えている。現段階では聞き取りがまだ不完全
なため、中間報告の公表は難しいと判断した」と話した。
 中間報告について説明を受けた男子生徒の父(49)は「『複数の生徒』という部分は知らなかった。

学校で何が起きていたのかをより深く追及してほしい」と語った。
 審議会は、いじめの事実関係、死に至った背景や再発防止策などをまとめた最終報告を年内に町教委
へ提出する方針。

 

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平成9月13日 朝日新聞

生徒「死にたい」、学校側訴え把握 青森中1自殺

  8月に青森県東北町の町立中学校1年の男子生徒(当時12)が自殺した問題で、生徒が生前、家族に同級生からの嫌がらせを訴えた上で「死にたい」と話していたのを、学校側が把握していたことが、関係者への取材でわかった。学校は嫌がらせは確認できないとして、同級生への指導はしていなかった。

 遺族らによると、男子生徒は席替えで席が近くなった同級生から嫌がらせを受けていると話し、悩んでいたという。母親は6月13日に学校を訪れ、生徒が「(自分が)死んじゃえばいい」と漏らしていることを担任に伝えた。席替えを求めたが、担任は「定期テストが終わるまではできない」とし、同30日まで席替えをしなかった。学校は6月中に生徒と同級生の双方から事情を聴いたが、具体的なトラブルは把握できないとして同級生への注意などはしなかった。町教育委員会には、席替えをしたことなどを理由に、解決済みとして報告していたという。

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