平成29年11月25日朝日新聞熊本版
高1自殺、第三者委答申

宮尾千加子教育長(左)に報告書を答申する岩永靖会長=24日、熊本県庁

 県のいじめ防止対策審議会(会長=岩永靖・九州ルーテル学院大准教授)は24日、県立学校で自殺や自殺未遂などの重大事案が発生した場合に、学校だけでなく、県教育委員会が設置する第三者委員会が調査を行うべきだとする意見をまとめ、県教委に答申した。
 県教委付属の審議会は、熊本市内で寮生活をしていた県立高校1年の女子生徒(当時15)が2013年、夏休み中の8月17日に上天草市内の自宅で首をつって自殺した事件を受け、重大事案発生時の調査主体や寮の管理のあり方を審議していた。
 この自殺を巡っては、学校の調査委員会が16年2月に調査結果を報告したが、遺族が不服とし県のいじめ調査委員会が再調査して今年7月に報告書をまとめた。女子生徒が自殺に至った直接原因を「特定できなかった」とした一方、いじめや、不平等な役割分担を強いる事実上の寮則などが原因で寮生活を続けられないと思い至ったと指摘。夏休み明けに寮に
戻らなければいけないと感じ「うつ状態」となったことが自殺につながったとした。
 答申では、公平・中立な調査をするために、第三者委員会などが調査を行うべきだとし、自殺には至らない重大事案についても、必要と判断すれば調査をするとした。寮の適正管理については、慣例化した寮規則を明文化して入学前の生徒や保護者に情報共有することなどを提言。授業や部活を受け持つ教諭が寮まで管理するのは難しいとして、新たに寄宿管理業務職員を配置することも提案した。県教委は、寮を設置している県内13校の校長会議を9月に開き寮規則について調査を始めるなど、一部で対応を進めている。
 答申を受け、県教委の宮尾千加子教育長は「学校が全ての子供たちにとって安全安心な居場所となるように、成長が達成
できる場所になるように、関係機関と協力して今後さらに全力を挙げていく」と話した。(杉山歩)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

平成8月2日朝日新聞西部本社版

LINEいじめ、熊本県と同級生を提訴 自殺生徒遺族ら

  LINE(ライン)の書き込みなどでいじめを受けていた熊本県立高校1年の女子生徒(当時15)が自殺した問題で、生徒の母親らが、書き込みをした同級生1人と県に慰謝料など数千万円の損害賠償を求めて熊本地裁に提訴した。代理人弁護士が1日、熊本市内で記者会見して明らかにした。

 提訴は7月17日付。訴状によると、女子生徒は2013年5月ごろから、学校の寮の同級生からLINEで「レスキュー隊呼んどけよ」などと脅迫的な内容を書き込まれたり、身体的特徴をからかわれたりして、精神的苦痛を受けた。教職員らはいじめ行為を認識しながら適切な対応をとらなかった、と主張している。女子生徒はその年の8月、帰省中の実家で自殺した。

 この問題を巡っては、学校側が調査委を設置。2月にまとめた報告書は、LINEへの書き込みなど五つの行為をいじめと認定した一方で「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」と結論づけた。

 母親(48)は代理人弁護士を通し「加害生徒と学校に正しい事実関係に向き合ってもらいたい。

二度と同じようなことが起きないように今回の提訴に至った」とのコメントを出した。県教委教育政策課は「訴状を受け取っていないため、確認してから対応は検討したい」としている。(小原智恵)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

3月12日付朝日新聞西部本社版

熊本の高1自殺、遺族提訴へ「調査委の結論に傷ついた」

 2013年に「LINE(ライン)」の書き込みなどでいじめを受けていた熊本県立高校1年の女子生徒(当時15)が自殺した問題で、遺族は11日、学校や加害生徒に損害賠償を求め、近く提訴する意向を明らかにした。学校の調査委員会がいじめと自殺の因果関係を認めない判断をしたことに反発。再調査を求める知事宛ての意見書を同日送った。

 学校の調査委は2月、女子生徒へのいじめを認定したうえで「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」との報告書をまとめ、公表した。意見書では、学校の調査委に校長ら調査の対象者が含まれていたことなどから公平性などを問題視し、第三者委員会による再調査を求めた。

 学校の調査委は、女子生徒がいじめを含む寮生活を通じ、「『うつの状態』に陥り、何らかの理由で自殺した可能性が高い」と判断。両親が寮生活をやめさせなかったことも「うつの状態」の一因とした。

 調査委の判断について意見書は「明らかになったいじめ行為や学校の不適切な対応などの事実を総合評価すれば、複数の要因が相まって自死するに至ったと評価すべきだ」と指摘。意見書で、学校や設置者の県、加害生徒に損害賠償を求めて提訴する意向を示した。

 女子生徒の母親は「学校の調査委の結論は遺族を傷つけるような内容だった。第三者委には公正な調査をしてほしい」と話した。(籏智広太)

 

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

平成28年3月11日付朝日新聞西部本社版夕刊

LINEでいじめ、遺族が第三者委要望 熊本・高1自殺

  「LINE」の書き込みなどでいじめを受けていた熊本県立高校1年の女子生徒(当時15)が2013年に自殺した問題で、遺族は11日、学校が設置した調査委員会の委員構成や結論を不服として、「いじめ防止対策推進法」に基づく第三者委員会の設置を求める意見書を知事宛てに送った。

 遺族は意見書で、加害生徒と学校を相手取り、損害賠償を求めて近く提訴する意向も明らかにした。

 学校の調査委(委員長=園部博範崇城大准教授)は今年2月、女子生徒へのいじめがあったことを認定したうえで、「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」との報告書をまとめ、公表した。

 意見書では、学校調査委のメンバーに校長ら調査対象者が含まれていたことから「公平中立な調査が行われたと捉えることはできない」と批判。遺族が希望した友人への聞き取りが行われないなど関係者への調査も不十分で「何があったか知りたいという遺族の思いに応えていない」とした。

 さらに「調査で明らかになった各いじめ行為や学校の対応の不適切さ、寮でのいじめを誘発する環境を作っていた事実を総合評価すれば、これら複数の要因が相まって自死するに至ったと評価すべきだ」と指摘。「いじめと自死との因果関係を否定する根拠は見いだせない」とした。

 調査委は、女子生徒がいじめを含む寮生活を通じて「『うつの状態』に陥り、何らかの理由で自殺した可能性が高い」と判断。両親が寮生活をやめさせなかったことも「うつの状態」の一因とした。これに対し、女子生徒の母親(48)は「遺族からすれば傷つけられるような内容だった。第三者委には公正な調査をしてもらいたい」と話した。

 県は今後、第三者委設置について判断する見通しだ。必要と判断された場合は、いじめ防止対策推進法に基づく県条例に沿って、大学教授や弁護士ら5人で構成される調査委員会が設けられる。

(籏智広太)

 

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

平成28年3月3日朝日新聞熊本版

高1自殺、県教委「学校調査委の結論尊重」

「LINE」の書き込みや学校寮などでいじめを受けていた県立高校1年の女子生徒(当時15)が2013年に自殺した問題で、県教育委員会は2日、記者会見し、学校調査委が出した結論について「尊重する」とした。同様の事案があった場合の「重大事態対応マニュアル」については、速やかに見直す方針という。

この問題を巡って2月末、学校の調査委員会(委員長=園部博範崇城大准教授)が「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」との報告をまとめたが、遺族は「納得できない」として県条例に基づく第三者委員会の設置を求めることを検討している。

田崎龍一教育長は会見で「認定された五つのいじめを重く受け止めている」と謝罪。学校や県教委の対応の不備を認めつつも自殺との関係については「分からない」と述べた。この日、一部非公開で開かれた定例教育委員会では結論への異論はなかったという。

報告書は、自殺の公表が1年2カ月後と遅れたことが真相究明の障害になったと指摘。これを受け、今後改善する「マニュアル」には、同様の事案が起きた際、公表を原則とする指針を盛り込む方針という。

また、遺族は学校調査委に学校長と保護者代表がいることに反発していたが、田崎教育長は「学校の関係者が入らなければ調査がスムーズに進まないことも考えられる」。蒲島郁夫知事も同日の定例記者会見で「客観性、公平性に影響はしない」とした。

報告書は知事へ渡り、遺族が第三者委の立ち上げを求めた場合、知事に判断が委ねられる。(籏智広太)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

平成28年3月3日熊本日日新聞

いじめ疑いの重大事態、原則公開へ 県教委

2013年に熊本市内の県立高1年(当時)の女子生徒が自殺した問題で、学校調査委員会(委員長・園部博範崇城大准教授)の調査結果を受け、田崎龍一県教育長は2日、いじめが背景にあると疑われる児童生徒にかかる重大事態を「原則公開」とする新方針を明らかにした。

県教育委員会の重大事態対応マニュアルを改定する。  女子生徒の自殺をめぐっては、当初示された遺族の意向を理由に学校が事実関係の非公表を続けたことが、調査を遅らせる原因になったとして、調査委が「早期に公表すべきだった」と指摘していた。  田崎教育長は県庁で開いた会見で、いじめ5件が認定されたことを「重く受け止めている」と述べ、対応マニュアル改定を表明。遺族が公表をためらう場合も「速やかな調査につながる」などと伝え、公表の必要性を説明するとした。マニュアル改定や運用開始の時期は未定。

生徒理解に関する教職員研修の充実にも取り組む。  「いじめが自死に直接的な影響を与えたとは認めがたい」とした調査委の判断について田崎教育長は、「県教委としては調査結果を尊重する立場だ」と語った。  一方、同日の県教委定例会では、調査結果を非公開で報告。委員から「学校が組織的に機能していない」「生徒の心の叫びを感じられる教職員の感性を高める必要がある」などの意見が出たという。(上田良志)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

平成28年2月28日付朝日新聞西部本社版

母親「うやむやにできない」 熊本高1自殺の報告書受け

マット

 報告書を受け取った後、記者会見した女子生徒の母親=26日午後、熊本市中央区、仲大道撮影

2013年8月に、「LINE(ライン)」の書き込みなどでいじめを受けていた熊本県立高校1年生の女子生徒(当時15)が自殺した問題で、学校の調査委員会(委員長=園部博範崇城大准教授)は26日、「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」とする報告書をまとめた。

「すべてをうやむやにされたような報告書。納得できません」。自殺した女子生徒(当時15)の母親(48)は学校調査委からの報告を受けた26日、熊本市内で弁護士とともに会見し、時折涙を流しながら、とつとつと語った。

「娘の死とずっと向き合ってきて、いじめが100%原因だと思ってきた」という。だが、2年半待ち続けた報告は、到底受け入れられるものではなかった。

調査委は、女子生徒が夏休みを境に寮生活をやめられると見込んでいたと指摘。学校から「トラブルは解決した」と伝えられていた両親が寮生活をやめさせる判断をしなかったことも、「うつの状態」に陥った一因であるとした。

母親は「寮をやめさせなかったのが原因と言われ、ものすごくつらい。子どもを不幸にしたい親なんていません」と憤った。同席した弁護士も「(学校側が)情報をきちんと保護者に伝えていればこうはならなかったはず」と指摘した。

今後の対応は報告書を読み込んで決める。しかし、来月には女子生徒の同級生が高校を卒業するため、「再調査は難しくなるのでは」との不安もよぎる。

夫も14年7月に自殺。「すべてを壊されてしまいました。ともに悲しみ泣ける主人も失(な)くしてしまいました。この先、一生、心が癒やされることはありません」。母親はそんな思いを便箋8枚につづり、蒲島郁夫知事に渡してほしいと、県教委の担当者に渡した。

母親は言う。「学校側を守るための報告書なのかなと感じました。娘と夫には『とても残念だったね』と報告します」(籏智広太)

 

■踏み込めていない印象

〈林幹男・福岡大教授(臨床心理学)の話〉 いじめと自殺の間に一定の時間があり、直接的な因果関係を特定することは確かに難しい。ただ、調査は全体的に踏み込めていない印象がある。トラブルを複数の教職員で共有しなかったこと、「寮に戻っても大丈夫」という安全保証が十分なされなかったことなど、学校の対応のまずさと自殺の因果関係について、もっと調査する必要があったのではないか。

 

■公正な調査と思えない

〈いじめ問題に取り組むNPO法人ジェントルハートプロジェクトの小森美登里理事の話〉 学校の調査委員会で校長など利害関係者も入っていて、公正な調査とは思えない。調査委が認定したいじめは、どれも精神的な負担が大きく、一つでも継続すれば生きる気力を失う。それを5件も認定しながら、自殺との因果関係を認めないということは、意図的としか思えない。

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

平成28年2月26日朝日新聞西部本社版夕刊

熊本高1自殺 「いじめが影響とは認めがたい」調査委

2013年8月に、「LINE(ライン)」の書き込みなどで同級生からいじめを受けていた熊本市内の熊本県立高校1年生の女子生徒(当時15)が自殺した問題で、学校が設置した調査委員会(委員長=園部博範崇城大准教授)は26日、「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」とする報告書をまとめ、遺族に手渡した。

学校は14年、女子生徒への複数のいじめを認定。十分な対応をしていなかったとして遺族に謝罪したが、自殺との因果関係は「不明」として、調査を続けていた。

女子生徒は13年4月に入学し、熊本市内の学生寮で生活。同年8月17日に、夏休みで帰省中の同県上天草市内の実家で首をつって自殺した。

県教委などによると、女子生徒は同年5~6月から、「LINE」上に同級生から「レスキュー隊を呼んでおけ」と脅迫する内容や身体的特徴をからかう言葉を書き込まれたり、中学の卒業アルバムに落書きをされたりした。物を隠されたり、スマートフォンを無断で使われたりしたこともあった。

保護者は担任に相談。対応を任された寮担当の教師は、生徒同士の話し合いで「和解した」と思い込んでいた。生徒の自殺後、学校は教師らによる校内調査委を設け、14年10月にいじめがあったと認定していた。

昨年2月にメンバーを園部准教授と社会福祉士、弁護士、校長と保護者代表の5人に改めた調査委を設け、校内調査委のアンケートをもとにした聞き取りなどを経て、「寮で起きたいじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」とする報告書をまとめた。(籏智広太)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

平成28年2月26日共同通信

自殺の直接原因と認めず、熊本 高1女子LINEいじめ

熊本県で2013年8月、無料通信アプリ「LINE(ライン)」の書き込みでいじめを受けた熊本市の県立高校1年の女子生徒=当時(15)=が自殺した問題で、高校の調査委員会は26日、ライン上の脅迫的な書き込みなど五つの行為をいじめと認定したが、自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい

との報告書を公表した。

調査結果を受け、熊本市で記者会見した生徒の母親(48)は「娘の死は100パーセントいじめが原因と思っていたのに、納得できない」と批判。報告書作成に時間がかかったとして、学校側に不信感を示した。

マット

高校の調査委員会から報告書を受け取る遺族(手前)=26日午前、熊本市

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

平成28年2月26日 NHK熊本放送局

“いじめ自殺に直接影響せず”

 3年前、熊本市の県立高校に通う女子生徒が自殺した問題で、原因を調査してきた調査委員会は、26日、「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」とする報告書を遺族に手渡しました。 3年前の平成25年8月、熊本市にある県立高校の1年生で学校の寮で生活していた当時15歳の女子生徒が、帰省していた自宅で自殺しました。 県教育委員会はおととし10月、ほかの生徒からいじめにあたる行為があったことを認め、臨床心理士や高校の校長など5人でつくる調査委員会が去年2月から自殺との因果関係を調査してきました。 委員会は教諭や同級生などへの聞き取りをもとに報告書をまとめ、26日、遺族に手渡しました。 調査委員会によりますと、報告書では、スマートフォンの無料通話アプリ「LINE」で学校の寮の仲間から、呼び出しを強要したり、危害を加えると脅したりする書き込みがされたことなどいじめにあたる行為が5件あったとしています。 一方で、夏休みが終われば寮に戻らなくてはならないという強い心的ストレスにさらされ、絶望感から「うつの状態」に陥り、その後、なんらかの理由で自殺に至った可能性が高いとして「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」と結論づけました。

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn