令和元年

子どもたちの死、繰り返したくない 動き出した遺族たち

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伶那さんの写真が飾られた祭壇。本を読むことが好きで、中学に進学するのを楽しみにしていた=横浜市

最愛の子を学校事故で突然失い、悲しみに直面する遺族。残された自分たちに何ができるのか。絶望の淵で死を受けとめ、前に向かって歩み出す原動力となったのは、同じ悲劇を繰り返したくないという願いだった。

横浜市の松田容子さん(50)は、小学校の卒業旅行中の2013年2月に亡くなった娘の伶那(れいな)さん(当時12)の死因を調べなかったことを今も悔やんでいる。

長野県のスキー場。宿の前で友人とそり遊びをしていると、突然、「疲れた」と座りこんだ。その後、友人が気づいたときには倒れていた。救急隊が駆けつけたが、心肺停止だった。

学校から連絡を受け、現地に向かった容子さんは、電車の中で医師から「蘇生措置をやめてもいいでしょうか」と電話で告げられた。何とか助けてほしいとすがったが、「これ以上続けても、伶那さんが苦しむだけ」と言われ、夫と相談して承諾した。「まだ現地に着いてもいないのに……」。電車の中で声を出して泣いた。

死亡診断書は「心不全」。伶那さんは大きな病気やけがをしたことはなかった。医師には「死因を調べるには解剖するしかない」と言われたが、別の病院に運ぶ必要があり、すぐにできるか分からないという。夫は「かわいそうだ」と反対した。着の身着のまま家を出ており、下の子を祖父母に預けていたことも気がかりで決断できなかった。

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卒業旅行中に亡くなった伶那さんの遺影。これまで大きなけがや病気をしたことはなかった=横浜市

容子さんが知りたいと思っていた倒れた時の対応について、学校から詳しい説明があったのは半年後。学校は滞在中の自動体外式除細動器(AED)の場所を事前に把握せず、約1キロ離れた別の宿から借りていた。駆けつけた教諭が胸骨圧迫(心臓マッサージ)をしたというが、同行した看護師は「確認できなかった」と述べていた。非常時のマニュアルもなかった。

本当のことが知りたくて、訴訟について弁護士に相談すると、「死因が分からなければ難しい」と断られた。医療記録を複数の医師に見てもらったが特定できない。「死因が分からないままでは、遺族は前に進めない。しかし、死の直後に解剖するか遺族に判断させるのは酷だ」

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長女の伶那さんを突然死で亡くした松田容子さん=横浜市

容子さんは、子どもの死を全数登録し、複数の専門家の検証によって予防につなげる制度が必要だと感じ、法制化を目指す活動に参加している。「Child(チャイルド) Death(デス) Review(レビュー)」と呼ばれ、海外では成果を上げている。国内でも昨年12月に成立した成育基本法で体制の整備が盛り込まれたが、実現への歩みは始まったばかりだ。

事故後、容子さんは心肺蘇生などの救命措置や子どもの安全管理などの資格を取り、学校や保育園などに講師として赴く。その傍ら、遺族としての経験を講演などで語っている。その際、必ずこう伝える。「私がどんなに頑張っても娘を助けることはできない。変えられるのはこれから先のことだけ。未来は変えていける」(北林晃治)

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子どもの安全管理に関するシンポジウムで自身の経験について講演する松田容子さん=東京都千代田区

転倒したゴールの下敷きに

福岡県大川市を流れる筑後川の近くに昨夏、一面のヒマワリ畑ができた。小学校のゴール転倒事故で梅崎晴翔(はると)君(当時10)を亡くした祖父清人さん(69)が、孫の残した種で花を咲かせたいと植えた。この種を事故防止のシンボルに育てようという取り組みがある。

17年1月13日、市立川口小4年だった晴翔君は、体育の授業でサッカーのゴールキーパーをしていた。味方の得点に喜んでハンドボール用ゴールのネットにぶら下がり、転倒したゴールの下敷きになった。文部科学省は13年、転倒防止のために杭などでゴールを地面に固定するよう通知していたが、学校はゴールを固定しておらず、市教育委員会は過失を認めて謝罪した。

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ヒマワリ畑と梅崎清人さん=2018年7月、福岡県大川市

清人さんは、近くに住む晴翔君がよく自転車で遊びに来たこと、風呂で背中を流してくれたことを思い出す。「愛敬があり、走るのも泳ぐのも速かった。サッカーが大好きだった」

事故の1カ月ほど前、晴翔君がヒマワリの種をまいてほしいと持ってきた。最初の夏はつらくて植えられなかった。1年が経ち、「大切な孫が託した種。頑張って増やそう」と思うようになった。昨夏、100平方メートルの畑にまき、できた種を訪れた人に「晴翔と事故を忘れないで」と渡した。

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ヒマワリの種と梅崎清人さん=福岡県大川市

事故は、04年に静岡市の中学校でサッカーゴールが倒れて3年の男子生徒が犠牲になったのと同じ日に起きた。子どもの事故予防に取り組むNPO法人「Safe Kids Japan」は、ゴールの固定を呼びかける日にした。杭や砂袋でゴールを地面に固定した写真を学校に送ってもらいネット上で公開。清人さんからヒマワリの種をもらい、事故防止のシンポジウムの参加者らに贈っている。山中龍宏理事長は「転倒事故がなくなるまで続けたい」と話す。

清人さんは今年も種をまいて、咲いた花を仏壇に供えた。ヒマワリ畑は今月下旬に満開を迎える。「ヒマワリを育てることで、学校の安全に社会が目を向けるきっかけになれば」と願う。(木村健一)

 

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令和元年

10年前、弟が教師の指導中に自殺 司法修習生の兄 学校の事件・事故で「被害者に寄り添える弁護士に」

中尾さん

山口地裁前で思いを語る司法修習生の中尾基哉さん=山口市で2019年5月12日午後3時24分、樋口岳大撮影

埼玉県内の私立高校で教師から指導を受けている途中に飛び降りて命を絶った男子生徒の兄が今、弁護士を目指して山口県で司法修習している。弟を失って29日で10年。「学校が弟を1人にしなければ、命を絶つことはなかった」と苦しみを抱えてきた兄は「学校に関係する事故や事件の被害者に寄り添える弁護士になりたい」と決意を語る。

 司法修習生の兄は、埼玉県加須(かぞ)市出身の中尾基哉さん(30)。1月から9月までの予定で山口県の裁判所や検察庁、弁護士事務所などで実務を学び、早ければ今年末に埼玉で弁護士登録する。

 中尾さんによると、学校側の説明では、2009年5月29日、高校3年だった弟(当時17歳)は、英語の試験中にメモを見ているのを試験監督の教師に見つかった。教師はメモと答案用紙を取り上げて「こんなことをしてはいけない」と言い、弟は試験が終わるまでの約20分間、自席でうつむいていた。

 試験終了後、教師は弟を3階の教室から2階の職員室に連れて行こうとし、2階に下りたところにいた生活指導主任を呼び止めて事情を説明した。主任は弟がかばんを持っていないのを見て取りに行くよう指示。しかし弟は教室へは行かず、最上階の4階の廊下の窓から飛び降りた。

 「強いショックを受けていたはずの弟を、なぜ1人にしたのか」。中尾さんは強い疑問を感じた。高校ではカンニングが見つかると全科目が0点になる。自責の念を抱えた弟が卒業や進学への不安にも襲われて激しく動揺したことは容易に想像できた。ホームルーム中の教室に1人でかばんを取りに行かせず、教師が代わりに取りに行ったり、付き添ったりする配慮をしていれば「生きていたはずだ」と感じた。

 しかし、中尾さんら遺族に学校側から謝罪はなかった。母はふさぎ込み、仕事も近所付き合いもやめた。苦しんでいた時、提訴のために相談した弁護士に救われる思いがした。

 「学校相手の裁判は勝てない」と何人かに断られ、やっと引き受けてくれたのは東京の弁護士だった。中尾さんたちの話を丁寧に聞き、弟が命を絶つまでに感じていたであろう苦しみにも思いを巡らせ、裁判の書面を作ってくれた。「こんなに人を助けられる仕事があるのか」。中尾さんは弁護士を志した。裁判は学校側と和解した。

 幼い時はけんかもしたが、よく家族でキャンプやスキーなどに出かけ、仲のいい兄弟だった。「兄ちゃん、しっかり頑張れよ」。弟が背中を押してくれている気がする。【樋口岳大】

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令和元年5月10日付東京新聞社説

いじめ防止法 悲劇防ぐ改正進めよ

超党派の国会議員によるいじめ防止対策推進法の改正作業が難航している。学校の負担増に配慮し、当初の対策強化案が後退。遺族らは反発している。悲劇をなくすため一歩でも前進できないか。

十連休の後にも、埼玉県では電車にはねられ亡くなった高校生がいる。目撃情報から自殺とみられている。原因は分からないが、学校に行くのがつらかったのかもしれないと思うと胸が痛む。

子どもたちをどうやったら救えるか。そこを原点に考えたい。

法は、二〇一一年に大津市の中学二年男子がいじめ自殺した事件をきっかけに制定された。国や地方自治体、学校はいじめ防止の方針を定める。自殺や長期の不登校は「重大事態」と位置付け、第三者委員会をつくって原因究明にあたり、再発防止につなげる。

しかしその後も全国で子どもが命を絶つ事態は続いている。第三者委員会の調査結果に遺族が納得せず、再調査になるなど、法は必ずしもうまく機能していない。

昨年公表された改正案のたたき台には、いじめ対策委員会の設置や学校で作るいじめ防止基本計画に盛り込むべき項目などがきめ細かく盛り込まれていた。しかし四月の案ではそれらが削られた。

いじめの定義が広すぎるなど、現行法でも学校は疲弊しているとの指摘もある。一方でいじめ自殺の遺族らには、学校でいじめ問題の深刻さが共有されていないという、もどかしい思いがある。

両者の溝を埋めていくためには、余裕をもっていじめに向き合える体制づくりが必要なのではないか。スクールカウンセラーなどの配置は進んでいるが、それに加え大津市はいじめ対策主任を学校に置けるよう、国が財政支援することを提案している。

市は事件後の一三年度から、いじめ対策に専念する教員をほぼ全校に配置した。増員分の人件費は市が負担している。担当教員は子どもたちの様子を見守るとともに、靴箱や教室の細部まで日々、目をこらすのだという。靴に画びょうや虫が入れられていたり、窓枠や机に「死ね」などの落書きがされていたりの危険な兆候が見つかることもあるからだ。いじめの早期発見につながっているという。

子どもの死があって国や地方自治体が重い腰を上げる。これまでのいじめ対策はその繰り返しだった。その情けないありようを克服するため、法改正にも知恵を絞りたい。

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平成30年10月13日朝日新聞埼玉版

埼玉の飛び降り強要、中学同級生の責任認める 最高裁

埼玉県草加市立中学校で2012年、校舎2階からの飛び降りを強いられて骨折したとして、当時2年生だった少年(19)が同級生4人とその保護者に損害賠償を求めた訴訟で、同級生に対して計約1200万円の賠償を命じた二審判決が確定した。最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)が10日付の決定で、同級生側の上告を退けた。

一審・さいたま地裁は、「飛ばなかったら3千円」などと強く迫った同級生2人に限定して責任を認め、計約610万円の賠償を命じた。これに対し、二審・東京高裁は、残る同級生2人の言動も「圧力となった」として4人全員に計約1200万円の支払いを命じた。保護者の責任はいずれも否定され、二審で新たに責任を認定された同級生2人だけが上告していた。

(岡本玄)

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平成30年9月26日付朝日新聞

ブラック校則、立ち向かうには 荻上チキさん・内田良さんがトークショー

下着の色を指定したり、髪を黒く染めるよう強く求めたり。人権侵害にもなりかねない「ブラック校則」にどう立ち向かえばいいのか。校則の問題に詳しい評論家の荻上チキさんと名大大学院准教授(教育社会学)の内田良さんが、東京都内で意見を交わした。

荻上さんと内田さんは、共に編著者となっている「ブラック校則 理不尽な苦しみの現実」(東洋館出版社)の刊行を受け、8月中旬にトークショーを開いた。

荻上さんは賛同者らと今年2月、校則に関するアンケートを実施。15歳~50代の人に中学・高校の校則について尋ねたところ、髪の毛を染めたり、パーマをかけたりしていないことを確認するための「地毛証明書」の提出や下着の色の指定など、さまざまな「ブラック校則」の実態が浮かんだ。

 

■より細かく規定

荻上さんと内田さんが驚いたのは、昔はなかった校則が新たに生まれたり、規定がより細かくなったりしていることだったという。二人はその要因として、教員の多忙化や学校選択制による学校間競争などで、「効果が分かりやすい生徒指導」である校則が選ばれている、と推測した。

内田さんは「いったんルールを決めると、『あれ、あんただけちょっとおかしいよ』『みんなに合わせろ』となる。すべて自由にしてしまえば何も気にならないし、管理する手間も省ける」と語り、校則の見直しが教員の負担軽減にもつながると指摘した。荻上さんは「学校は子どもが社会に出るために、『何が合理的か』を問い続けていく場所にしなければならない。

不条理に慣れさせる場所ではない」と指摘した。

 

■「原因は社会に」

会場からは、教員や「元生徒」の立場からさまざまな意見が出た。

神奈川県内の高校教諭の男性(57)は、「学校関係者以外からクレームがくると、管理職や教頭・校長が(学校を)よく見せようと思い、さらに校則が細かくなるスパイラルがある。

校則がきつくなる一つの原因は社会にあるのではないか」と指摘した。

千葉県の女性(33)は自分が通っていた高校で、授業中にトイレなどで教室から出ると、戻ってくる時に職員室で「再入室許可証」をとらなければならなかったことを紹介。

「生徒の学ぶ権利を奪っているのではないか」と感じているという。

参加者からは「生徒たちが立ち上がるにはどんなアクションがいいか」という質問もあがり、荻上さんと内田さんは「生徒総会で議題に挙げてはどうか」「先生は『自主性』という

言葉が大好きなので、それを逆手に校則を作っていけばいい」などと提案した。

 

■都立高の6割「地毛証明」

校則をめぐっては2017年9月、大阪府立高校の女子生徒が、生まれつき茶色い髪を黒く染めるよう指導されて不登校になったとして、府を提訴。朝日新聞の昨年の調査では、都立高校の約6割が一部の生徒に「地毛証明」を提出させていることもわかった。

昨年12月、NPO法人の理事長や荻上さんらが中心となってインターネットで設立した「『ブラック校則をなくそう!』プロジェクト」を発表。署名活動も始め、校則の見直しを求める林芳正・文科相宛ての署名は、現在4万を超えるという。

林文科相は今年3月の参院文教科学委員会で校則について問われ、「学校を取り巻く社会環境や児童・生徒の状況の変化に応じて、絶えず積極的に見直す必要がある」としたうえで、「見直しの際には、児童・生徒が話し合う機会を設けたり、保護者からの意見を聴取したりするなど、児童・生徒や保護者が何らかの形で参加した上で決定する

ということが望ましい」と答弁している。(田中聡子)

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平成30年7月19日毎日新聞

救急要請遅れか マニュアル具体的指示なし

梅坪小1熱中症1

梅坪小1年男児の死亡について会見する豊田市教委の鈴木直樹・学校教育課長(左)と藪下隆・梅坪坪小校長=豊田市役所で2018年7月18日午後5時25分、中島幸男撮影

梅坪小1熱中症2

ほとんど日陰のない和合公園=愛知県豊田市京町で2018年7月18日午後1時29分、中島幸男撮影

梅坪小1熱中症3

愛知県豊田市立梅坪小1年生の男児(6)が17日に校外学習後、熱射病で死亡した。同市では18日も最高気温39.7度と連日の猛暑が続く。授業中の痛ましい事故はなぜ防げなかったのか、再び悲劇を繰り返さないための対策は。【中島幸男、岡村恵子、三浦研吾】

「大事な命を守れず本当に申し訳ありません」。一夜明けた18日朝、体育館で全校児童約730人を前に籔下隆校長が謝罪した。

男児は学校へ戻ると風通しの良い教室の一角で休んだが、体調が急速に悪化、20分後に意識を失った。119番し病院へ向かったのはその20分後だった。市教委は「養護教諭を教室に呼んで対処したり、AED(自動体外式除細動器)で救命措置をしたりしており、搬送までにロスした時間はない」と説明する。

しかし、日本救急医学会の対処法では、軽症の「1度」でも改善しなければすぐ病院へ搬送を求める。一方、市教委が5月に各校に配布したマニュアルには「適切な処理を行う」とあるだけで、どんな症状なら急いで119番すべきかなど具体的な指示はない。県教委によると、初任者研修のほか熱中症を扱う教員研修はないという。

熱中症に詳しい三宅康史・帝京大病院高度救命救急センター長は「そもそも帰り道で男児が『疲れた』と言った段階で歩かせるのをやめるべきだった」と指摘。「子どもは暑い場所に長くいるのはよくない。単に日陰でなく冷房のきいた場所で『質のいい休憩』が必要で、車を同伴し体調が悪くなったら乗せるなど安全への工夫が不可欠だ」と求めた。

県内の小中学校のエアコン設置率(昨年4月)は27.8%と、香川県92.3%や東京都84.5%より少ない。太田稔彦市長は2021年までにエアコンを全校に新設する計画の前倒しを表明した。

 

市長「対策不十分だった」

校外学習をした和合公園は約1万1000平方メートルと広く、あずまや2棟のほか強い日差しを遮る樹木はほとんどない。18日昼も耐えがたい暑さで人影はなかった。

太田市長は18日の定例会見で「対策が不十分だった。中止の判断もあり得た」と陳謝した。県教委も同日、県内の公立校に対し「熱中症が危惧される場合は行事の縮小・中止も検討を」と再発防止策の徹底を通知したが、中止の判断基準は示していない。

熱中症の研究に取り組む国立環境研究所の小野雅司・客員研究員(環境疫学)は事故の当時、5日連続で愛知県内に高温注意情報が出ていたことに注目。「暑い日が続くことで体に疲れが蓄積しており、明らかに危険な状況だ」と指摘する。さらに、今の生活様式が続く限り、地球温暖化で熱中症の患者は今後増えると強調。学校や公共機関などは天気予報だけでなく、熱中症の危険度を知るため、環境省が明後日までの各地の予測値を公表している「暑さ指数」を見て、指針に従うことが必要だと訴えた。

 

暑い中なぜ…保護者説明会

豊田市立梅坪小では18日夜、保護者への説明会が開かれた。約400人が参加して2時間続き、十数人から発言があったという。6年生の父親は「校長は判断ミスだと謝罪した。

泣いている保護者も多く、私はただ悔しい気持ち」と話した。

後半は保護者から今後の対策や対応についての質問が集中したといい、別の児童の父親は「なぜこんな暑いのに外に出したのかという厳しい意見も出て、私も同じ気持ちだ。しかし、学校が今後、親から集めた意見を取り入れて対策を取ると示したので期待したい」と苦渋の胸の内を明かした。

終了後、籔下校長は報道陣を前に今後の対策を説明した。学校としての熱中症マニュアル作成▽「暑さ指数」に基づく「熱中症メーター」を校内6カ所に設置▽授業中に水分補給の時間を設ける▽塩分補給タブレットや保冷剤入りのクーラーボックスを用意する--などの内容。学校行事の中止や延期などの見直しも進めるとし、まずは来週開かれる予定だった市内6小学校の合同スポーツ大会が中止になったと話した。籔下校長は事故当日の対応について「別のやり方があったはずだ」と述べ、学校の責任に言及した。【黒尾透】

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平成30年7月19日東京新聞

愛知小1男児熱射病死 校長「判断甘かった」

愛知小1男子熱

校外学習から帰った児童が熱射病で死亡し、謝罪する梅坪小の籔下隆校長(手前)ら=愛知県豊田市役所で

市立小の一年男児(6つ)が校外学習後に熱射病で死亡した愛知県豊田市の太田稔彦市長は十八日の記者会見で「異常気象を踏まえた対策としては不十分だった」と校外学習を中止しなかった学校の判断の誤りを認め陳謝した。市教育委員会は市立学校百四校に、高温下での活動の中止や延期を検討するよう通知。男児が通っていた梅坪小は再発防止に取り組むが、専門家は「猛暑が続く中、全国どこの学校でも起こり得る」と警鐘を鳴らす。

市は、来年度から三年間で市立学校の全教室にエアコンを設置する計画を前倒しする検討を始めた。梅坪小は同日、全校集会を開き、籔下隆校長が児童に「大事な命を守れず、本当に申し訳ない。校外学習を中止できず、判断が甘かった」と謝罪した。

校外学習は、学校から約一キロ離れた公園で遊ぶことを目的としていた。徒歩で移動中、男児は列から遅れ担任に「疲れた」と訴えたが、そのまま公園に向かった。

名古屋大の内田良准教授(教育社会学)は「炎天下であえて行く必要があったのか。途中で連れ帰る判断もできたはず」と指摘する。内田氏は約百十人を各担任四人で引率したことも問題視。校外では養護教諭も同伴するなど、教員を増やす必要があったという。

同小は再発防止のため、児童にスポーツドリンクの持参や保冷剤を包んだタオルなどで首を冷やすよう呼び掛けた。内田氏は「部活動は当然、エアコンのない屋内でも注意が必要」と訴えた。

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平成30年7月18日中日新聞

熱射病、豊田の小1死亡 校外活動後、教室で悪化

17日正午ごろ、愛知県豊田市の市立梅坪小学校の教室で、小学1年生の男子児童(6つ)が意識不明で倒れ、病院に運ばれたが約1時間後に死亡した。死因は熱中症の中でも重症な「熱射病」とみられる。男児は、学校近くの公園で午前中にあった校外活動で疲れを訴え、教室に戻った後に容体が悪化した。

市教委学校教育課の鈴木直樹課長は「学校の教育活動の中で、児童の命がなくなるという重大な事態が発生した。亡くなられた男児と保護者に深くおわびする」と陳謝した。県警も、学校関係者から事情を聴くなどして、死亡に至った経緯を調べる。

市教委や学校によると、1年生4クラスの計112人は担任教員4人と午前10時ごろ、学校から約1キロ離れた和合公園に向けて歩いて出発した。約20分かけて到着したが、男児は途中で「疲れた」と話し、他の児童から遅れることもあり担任の女性教員が励ましたという。公園で児童たちは虫捕りやすべり台などの遊具で30分ほど遊び、徒歩で学校に戻った。

帰り道でも男児は「疲れた」と訴えた。午前11時半ごろに学校に戻ってからは、教室で担任教員が付き添って様子を見ていたが、唇が紫色に変色し、次第に意識が遠のいたため119番した。

亡くなった男児を含め、児童たちは熱中症対策のため帽子をかぶり、水筒を持参していた。担任らも小まめに水分補給するよう指示していたという。

男児のほかに女児3人が学校に戻ってから「頭が痛い」などと体調不良を訴え、うち1人は嘔吐し保護者が学校に迎えに来た。

この日早朝、気象庁は県内全域に「高温注意情報」を発表していた。名古屋地方気象台によると、豊田市の気温は午前9時には30・4度を記録。午後2時すぎには37・3度まで上がった。

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平成30年7月11日 河北新報

<仙台市いじめ防止条例>教職員の暴言、威圧的指導禁止 骨子案に盛り込む

仙台市は10日の市議会いじめ問題等対策調査特別委員会で、制定を目指す独自の「いじめの防止等に関する条例」の骨子案を明らかにした。子どもに対する大人の暴言がいじめを誘発する恐れがあるとして、体罰に加え、教職員による暴言や威圧的指導といった不適切な指導の禁止などを明記した。来年の市議会2月定例会での提出を目指す。  昨年4月までの2年7カ月間に市立中生のいじめ自殺が3件相次いで発生。市民全体で認識を共有して再発防止に取り組むため、市は条例を制定し、いじめ防止対策推進法で定めた基本事項を補完する。罰則規定は設けず、学校や教委のほか、家庭や地域に期待される役割や行動を記した。  学校や教職員に対しては、学校教育法に禁止規定がない暴言や威圧的指導など不適切な指導を禁じることを明記。いじめた子どもにも寄り添って背景を探ることや、発達に特性がある児童生徒らへの対応を組織的に行うことも盛り込んだ。  昨年夏の市長選で条例制定を公約に掲げた郡和子市長は特別委で「いま一歩踏み込み、条例が必要だ。教職員への意識の浸透、保護者や地域との連携などについて、独自の取り組み

を盛り込み、明確化することで、いじめ防止対策を効果的に進めたい」と説明した。  市は11日から来月末まで骨子案のパブリックコメント(意見公募)を実施する。児童生徒を含めPTAや町内会関係者の意見も聴く予定。

仙台いじめ防止骨子

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平成30年7月7日 朝日新聞

(私の視点)「指導死」の定義 虐待と使い分け明確化を 喜多明人

最近、子どもの「指導死」という言葉が注目されている。昨春起きた、福井県池田町の中学2年生男子生徒の「自死」事件も、過度の叱責による「指導死」問題として、マスコミで大きく取り上げられてきた。

この言葉は、過剰叱責、暴言や体罰などで自死に追い込まれた生徒の保護者、被害者家族の間で使われ始めた。「生徒指導をきっかけ、あるいは原因とした子どもの自殺」という定義のもと、教師個人の生徒指導上の過失責任を追及してきた言葉である。

「指導」という名における教師との抗しがたい権力関係の中で、自死へと追い詰められる生徒の悲劇をなんとか社会問題化したいとの被害者の切実な思いを受け、法曹界やマスコミ、学会や市民団体などが使ってきた。

被害者家族が使うのは当然としても、十分な吟味もせずに今後も使い続けてよいのか、疑問が残る。

まず、対象範囲が広すぎる。そのため、問題行為を逆に見えにくくしている。問われるべきは、教師が「あらゆる形態の身体的または精神的な暴力、侵害または虐待」(子どもの権利条約19条)に相当する行為をした場合だ。

体罰やセクハラはもちろん、子どもが傷つく言葉の暴力などはすべて、虐待である。大勢の前で見せしめのように叱ることや、反論する権利を奪うこともあってはならない。社会問題として強く打ち出すためにも、言葉の使い方を分けたほうがいい。福井のケースも「学校内虐待死」と言うべきではないか。

もう一つ考えるべきことは、指導全体が教師の個人責任追及の対象とみなされてしまえば、萎縮をまねく恐れがあることだ。

個人の過失責任ばかりが問われると、教師は子どもを叱れなくなる。ただでさえ学生が教師をめざさなくなるなか、優秀な人材の確保はますます困難になりかねない。

あくまでも「子どもの最善の利益」(子どもの権利条約3条)を考えなければならない。

今日、被害者救済が進展してきたことは喜ばしいことだ。しかし、子どもの主体性を尊重し、子ども自身がどこに問題があるかに気づき、自省し、成長していく過程を支える指導も戒めるかのような言葉の使い方は、するべきではない。

いじめという問題が起きれば、まず、子どもたち自身で抑制のしくみを考えていく。こうしたケースは、子どもの成長を支える指導のひとつだろう。問題行動への対応方法を確立しているNPOもあるので、そのような団体に学んでもいい。子どもの尊厳を大切にした指導を共有し、いい教師を育てていくことこそ、遺族、被害者の思い、訴えを受けとめ直していくことだと考える。

(きたあきと 早稲田大学教授)

◆投稿はsiten@asahi.comか、〒104・8011(住所不要)朝日新聞オピニオン面「私の視点」係へ。電子メディアにも掲載します。

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