平成2829日山形新聞

明倫中事件、遺族が時効中断へ提訴 元生徒、賠償金支払わず

  新庄市明倫中で19931月、1年児玉有平さん=当時(13)=が体育館の用具室で死亡した事件に絡み、関わった元生徒3人が確定した損害賠償命令に応じず、強制執行の手続きも取れないとして、遺族が3人に対し、時効(10年)により請求権の消滅を防ぐ訴訟を起こしたことが8日、関係者への取材で分かった。児玉さんの父昭平さん(67)は「何年もかかって続けた裁判の結果が水泡に帰すことは、有平のためにも避けたかった」と話している。
 遺族が元生徒7人に損害賠償を求めた民事訴訟は、200596日に仙台高裁の判決が確定。全員が死亡に関与したと判断し、7人に約5760万円の支払いを命じた。
 原告側の代理人弁護士によると、これまで任意の支払いに応じた元生徒はいないという。

このため4人には債権の差し押さえなどの措置を取ったが、提訴された3人については勤務先の会社が分からないなどの理由で手続きを進められなかった。
 時効は昨年9月だった。差し押さえの手続きを取った4人の時効は中断されたが、3人に対しては何らかの法的手段を取らなければ時効が成立する見通しだった。そのため原告側は、当初の時効期限を延長させる手続きを取った後、今回の訴訟を起こした。提訴により、原告が持つ3人への損害賠償請求権の時効は中断される。訴訟では仙台高裁で確定した約5760万円の損害賠償を求めている。
 元生徒側の代理人を務める予定の弁護士は、山形新聞の取材に対し、3人のうち1人については差し押さえの手続きがされているとした上で、「事件は冤罪であり、3人とも損害賠償に応じる意思はない」と話している。

事件から23年―責任を自覚してほしい
 児玉有平さんの父昭平さんは8日、山形新聞の取材に応じ、提訴に対する心境を語った。

以下は要旨。

 元男子生徒7人は全員が30代後半になり、結婚して子どもを持った人もいるだろう。

その年代になれば子を持つ親の気持ちが分かると思い、アプローチを待っていたが、

謝罪を含め、何の音沙汰もなかった。
 長い裁判の末に出た結果が水泡に帰すことは有平のためにも避けたかった。取り返しのつかないことをしたという責任を自覚してほしい。事件から23年たつ。子どもを失った悲しみは癒えない。仏壇に線香を供える度に無念さが募る。有平が生きていれば仕事を手伝ってもらえたのに。有平を思い出し、夜に涙することもある。喪失感は時間がたっても変わらない。
 元男子生徒らは矯正を終え、社会復帰しているが、本当に更生したのか疑問だ。矯正教育がもっと徹底していたら、このように(賠償金未払い)はならなかったと思う。

明倫中事件 1993113日に新庄市の明倫中で発生。体育館用具室内で同日夜、

1年生の児玉有平さんが巻かれたマットの中に頭から入った状態で死亡しているのが見つかった。

日常的にいじめがあったとされ、県警は12年生の少年7人を傷害と監禁致死の容疑で逮捕、補導。少年審判で逮捕の3人は「無罪」に当たる不処分決定、補導の4人のうち3人は「有罪」に相当する保護処分となった。保護処分の3人は仙台高裁に抗告し、同高裁は棄却した上で7人全員の関与を指摘。3人の再抗告は最高裁で棄却された。
 その後、児玉さんの遺族が少年らに損害賠償を求めた民事裁判で山形地裁は7人全員のアリバイを認定、事実上「無罪」とされた。だが、仙台高裁は一転して全員が関与したと判断。

最高裁は元少年らの上告を棄却し、「全員有罪」との結論で終局している。

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平成2829日朝日新聞デジタル

賠償金支払われず遺族が再提訴 山形マット死事件

  山形県新庄市立明倫中学校で1993年、1年生の児玉有平君(当時13)が体操用マットの中から遺体で見つかった事件をめぐり、遺族が最高裁判決で確定した損害賠償の支払いを求め、改めて山形地裁に提訴した。損害賠償の請求権が時効(10年)によって消滅するのを防ぐため。

提訴は1月12日付。

 最高裁は2005年、民事訴訟で7人の元生徒側の関与を認め、総額5759万円の支払いを命じた。遺族の話や訴状によると、7人からは支払いがなく、15年に強制執行の手続きを進めたが、このうち3人については差し押さえる財産が把握できなかったという。児玉君の父昭平さん(67)は「彼らも大人になって子どもを持つ身になれば、私たちの思いが分かると期待して支払いを待っていた。このままでは裁判が水泡に帰してしまう」と話した。

 年少の1人を除く6人を対象にした山形家裁の少年審判では、元少年の3人が不処分(無罪)、3人が少年院送致などの保護処分(有罪)となっている。(井上潜)

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