平成31年3月28日付朝日新聞

久留米の高2自殺、いじめが原因 県教委の三者委が認定

福岡県久留米市の県立高校2年の男子生徒が昨年6月に自殺し、県教委の第三者委員会は27日、ほかの生徒からのいじめがあったと認定し、自殺との因果関係を認める報告書を県教委に提出した。

報告書によると、男子生徒は野球部に所属。昨年4月から6月ごろまで、他の部員からズボンを下ろされたり、ベルトを取られたりしたほか、携帯電話を何度も隠されるなどした。亡くなった当日、ほかの部員とのトラブルで非難されたうえ、通学用の靴とスパイクのひもを結びつけられ、LINEのグループから外された。

第三者委は、これらの行為を男子生徒へのいじめと認定。「自死に至ったという因果関係を認める」と結論づけた。

県教委は昨年7月、大学教授や弁護士らでつくる第三者委に調査を諮問していた。

県教育長は「生徒の自死に関し、複数のいじめが認定され、因果関係が認められたことを重く受け止める。内容を精査し、県教委として報告書をまとめたい」とのコメントを出した。

 

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平成31年3月27日付東京新聞

取手中3自殺 いじめ隠蔽認める 市教育長、否定一転「意図的」

茨城県取手市で二〇一五年十一月に市立中学三年の女子生徒=当時(15)=がいじめを苦に自殺した問題で、いじめの意図的な隠蔽を否定していた市の伊藤哲教育長は二十六日、一転して「客観的には意図的と判断せざるを得ない」と認めた。当初いじめの事実さえ認めなかった市教育委員会の隠蔽体質が改めて問われそうだ。市教育委員会が同日開いた臨時会合後の記者会見で明らかにした。

市教育委員会は一六年三月、自殺について「いじめによる重大事態ではない」と議決。不信感を抱いた生徒の両親からの訴えで県が調査委員会を設置。二十日に公表された調査報告書は、いじめと自殺の因果関係を認めた上で、市教委事務局の職員が「議決を導くため、教育委員に都合の悪い情報を提供せず、ミスリードするような姿勢だった」と意図的な隠蔽を示唆していた。

報告書の発表直後、伊藤教育長は「意図的、恣意的ではなく、いじめ防止対策推進法の無理解による」と述べていた。この点について伊藤教育長は会見で「隠蔽する意図を確認できていないという意味で発言していた」と釈明した。

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平成31年3月26日付毎日新聞

いじめを半年以上放置 広島・呉の中3下着脱がされ精神疾患

呉いじめ

広島県呉市の市立中学3年の男子生徒(15)が下着を脱がされるなどのいじめで不登校になり、精神疾患を発症したと訴えたのに、学校が半年以上「重大事態」として扱わず第三者委員会の設置などの対応をしなかったことが分かった。国の指針では被害者が申し立てた場合、学校は重大事態を前提に報告・調査するよう規定。下着を脱がされる行為も重大事態として例示している。

専門家は「対応が遅すぎる」と指摘している。

男子生徒、保護者の祖父らや県教委によると、男子生徒は1年生の時から同級生にシャツやズボンを破られるなどのいじめを受けていた。2年生だった2017年11月下旬、3回にわたり、昼休みに教室で同級生4~6人に床に倒され、手足を押さえられてズボンと下着を脱がされた。昨年4月下旬から一時不登校になり、同6月には不安障害と睡眠障害の診断を受け、現在も

治療を受けている。

祖父らは「重大ないじめ被害」として17年11月のいじめの直後から、学校に調査を求めた。学校は同級生への聞き取り結果を男子生徒側に報告せず、「グループ内の罰ゲーム」などの説明を続けた。しかし、昨年11月に市教委から重大事態として再検討すると連絡があり、今年2月には「重大事態に認定し、第三者委を設置したい」と伝達。これまで認定しなかった理由について校長らは「調査が被害生徒の負担になることなどを考慮した」と釈明したという。

重大事態は、いじめ防止対策推進法に基づいて規定。国の指針では「いじめで子供の生命・心身・財産に重大な被害が生じ、または欠席を余儀なくされた疑いがある場合」と定義し、市教委への報告や調査を求めている。過去の事例として「多くの生徒の前でズボンと下着を脱がされ裸にされた」というケースも紹介。子供や保護者から申し立てがあれば、学校側の判断にかかわらず重大事態として対応するよう明記している。

市教委は毎日新聞の取材に対し、「個人情報保護と教育的配慮の観点から答えられない」としている。【小山美砂】

「遊び」と学校説明

「学校から(下着を脱がすのは)遊びと説明された。いじめを軽く見ていると思った」。男子生徒は涙を見せ、学校への不信感と今も続く苦しみを語った。

服を破られるなど1年生の時から始まったいじめは、次第にエスカレート。2年生になって教室で無理やり下着を脱がされた。「眠れなくなり、同級生や先生の顔を見るのはつらかった」

下着を脱がす行為は国の指針でも挙げられた深刻ないじめ。しかし、学校は男子生徒の訴えを否定した。祖父らに「シャツを破ったのはじゃれていただけ。下着を脱がしたのは当時のブームで、

グループ内の罰ゲーム」などと説明したという。

学校が子供のSOSを放置し、最悪の事態を招くケースが全国で相次ぐ。家族は情報を十分知らされず深く傷つく。2011年に大津市立中学校で起きたいじめ自殺の調査にも関わった渡部吉泰

弁護士(兵庫県弁護士会)は「学校は真摯に調査し、当事者に説明を果たす義務がある」と指摘する。

男子生徒は今月の卒業式まで学校を休みがちだったが、今は高校で部活動に打ち込む目標が心の支えだ。「きちんと調査し、いじめがあったという事実を分かってほしい」と声を振り絞った。

【小山美砂】

 

「いじめに軽重ない」

教育評論家の尾木直樹・法政大特任教授の話 不登校と精神疾患が出た時点で重大事態と認定し、早急に対応すべき事案だ。自殺など命に関わるいじめだけが「重い」のではない。服を脱がせるなど性的な嫌がらせは本人の尊厳を深く傷つける。学校や教育委員会はいじめに軽重はないという認識をもち、被害者のために動くべきだ。

 

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平成31年3月26日付朝日新聞西部本社版夕刊

熊本の高3自殺 いじめと因果関係認める 教育長に報告

熊本高3自殺

亡くなった知華さん(遺族提供)

熊本県北部の県立高校に通っていた3年生の女子生徒(当時17)が昨年5月、いじめをうかがわせる遺書を残して自殺した問題で、いじめの有無などを調べていた県教育委員会の第三者機関が26日、最終報告書を宮尾千加子・県教育長に答申した。5件のいじめがあったことを認定し、「自死に影響を与えた」と因果関係も認めた。

遺族は最終報告がまとまったのを機に、「娘が生きていたこと、いじめで追い詰められて亡くなったことを知ってほしい」として、「知華(ともか)」という名前と写真を公開した。

県教委によると、知華さんは昨年5月17日、午前中の授業後に体調不良を訴えて早退。数時間後、自宅で意識を失っているところを祖母が見つけ、病院に運ばれたが18日に亡くなった。

遺族によると、居間に残された遺書には「よう学校に来られるね」などの言葉を浴びせられたことや、「もう死にたい」などの言葉があったという。

報告書は、知華さんが映っている動画がインスタグラムに投稿されたことをきっかけに、授業中に複数の生徒から「死ね」「死ねばいい」「よく学校来れたね。まじウザ」「視界から消えればいいのに」などの発言を受けたとした。

これらの発言で「心理的苦痛が増幅したことは想像に難くない」として、いじめと認定。また、インスタグラムの動画を他の生徒に見せ「どう思う」と聞いた行為や、動画を上げた生徒のところに連れて行き、偶然映り込んだだけなのかどうかを確認する行為など4件もいじめと認定した。

そのうえで自殺との因果関係について、一連の発言が遺書に記載されていることや、その他の行為も「(知華さんの)心理的視野狭窄を起こす要因となったと推察できる」と指摘。認定した5件のいじめは、自殺に影響を与えたと判断した。学校以外の出来事については「調査を行ったが、影響や要因について確認できなかった」とした。

再発防止のための提言として「SNSの安易な利用や投稿が、誰も予想していない深刻な事態を引き起こす可能性があることについて、再度指導の徹底を図る必要がある」と指摘した。

県教委は昨年6月、法律、医療、福祉などの有識者6人でつくる「県いじめ防止対策審議会」で調査を開始。全校生徒を対象としたアンケートや、生徒や教員への聞き取りを通して知華さんを取り巻く人間関係や、自殺を図った前日や当日の出来事を調べていた。

問題をめぐっては、学校側が知華さんの写真を一枚も載せずに卒業アルバムをつくっていたことが判明。完成後に知らされた遺族は掲載を求め、学校はすべての卒業アルバムに知華さんの写真を貼り、配布した。(池上桃子、竹野内崇宏)

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平成31年3月22日付朝日新聞社説

いじめ自殺 危機感持ち防止へ動け

生徒が発するSOSを、先生が見逃してしまう。それどころか、先生の言動が生徒を死へと追い詰める。

こんな悲劇を繰り返してはならない。学校の関係者は、いじめ防止と異変の早期察知へ、強い決意で態勢を整えてほしい。

いじめが原因で生徒が自殺した二つの事件を巡り、自治体の調査委員会が相次いで報告書を公表した。

兵庫県尼崎市では2017年末、市立中学2年の女子生徒が自殺した。

この生徒へのいじめはクラスから部活動、SNSへとひどくなっていった。苦しみ、孤立感を深めた生徒はアンケートなどでいじめのサインを何度も発していたが、クラスの担任、学年主任、部活の顧問ら関わりがあった6人の先生は、誰もそれを受け止められなかった。

生徒が属していた部活では部員間のもめ事が続いていて、それをこの生徒が言いふらしていると誤解した2人の先生のうち、1人が強く叱責。その直後、生徒は自ら命を絶った。

茨城県取手市では15年秋、市立中3年の女子生徒が自殺した。同級生によるいじめを教師側が認識できず、生徒と加害側2人のグループが授業に遅刻した際は、この生徒だけが担任教師に叱責された。校舎内のガラスが割れたトラブル時には、現場にいなかったこの生徒も連帯責任を問われ、自殺に至った。

それから3年余り。市教委がいじめと自殺の関係を否定するような議決をし、不信を強めた生徒の両親からの訴えで茨城県が調査する異例の展開を経た報告書には、生徒が絶望へと追い込まれる過程が記されている。

先生の感覚の鈍さと、事実関係を把握せずに思い込みで行われた理不尽な指導。二つの事件には共通する問題点が浮かび上がる。先生が自らを省みるのはもちろん、学校に配置されるカウンセラーや保健師、事務職員らも含め、しっかりとアンテナを張り、話を聞き、情報を共有する組織作りが欠かせない。

学校の外にも多様な窓口を設けることが大切だろう。

兵庫県川西市の「子どもの人権オンブズパーソン」は、条例に基づく相談・救済機関だ。いじめや不登校など幅広い問題に関して、学校の対応に限界を感じた子や保護者と向き合う。

同様の仕組みは約30自治体にあるが、NPOや弁護士会の窓口とともにもっと増やしたい。

亡くなった2人を思い、教訓を共有し、必要な対策をとる。再発を防ぐための取り組みを急がねばならない。

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平成31年3月21日付東京新聞

取手中3自殺、いじめ認定 茨城県調査委「担任の言動が助長」

茨城県取手市で二〇一五年十一月、市立中学三年の中島菜保子さん=当時(15)=が自殺した問題で、県の調査委員会は二十日、同級生によるいじめと自殺との因果関係を認める報告書を公表した。報告書では「担任の言動がいじめを誘発し助長した」とも指摘した。

報告書によると同級生の女子生徒三人が菜保子さんを連日のように「くさや」と呼び、他の生徒に「臭くない?」と告げるなど、複数の行為をいじめと認定した。

自殺当日には、いじめていた生徒が教室のガラスを割ったのに、担任が事実関係を調べないまま、無関係な菜保子さんも連帯責任として指導。「いじめで心理的に追い詰められていた菜保子さんをさらに深い苦しみに陥れ、自殺の引き金になったといえる」とした。

いじめた生徒と菜保子さんが遅刻した際には菜保子さんだけをしかるなど、それまでの担任の言動がいじめを助長したと指摘。いじめた生徒と一体的に「菜保子さんの心理に影響を与えていった」と認定した。

当初調査した取手市教育委員会はいじめを確認できず、一六年三月、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」に該当しないと議決していた。県調査委委員長の栗山博史弁護士は「両親は最初からいじめによる自殺を訴えており、法律などから重大事態は明らか。ここまで違法な市教委の対応は珍しい」と批判した。 (鈴木学)

<取手市立中3女子生徒いじめ自殺> 2015年11月、市立中学3年の中島菜保子さん=当時(15)=が日記に「いじめられたくない」などと書き残して自殺した。市教委は、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に当たらないと議決したうえで、第三者委員会を設置した。疑念を抱いた両親は17年5月、文部科学省に、市教委の調査の中止と第三者委の解散を申し入れた。市教委は直後に議決を撤回。同年12月、両親の求めに応じ、県が新たな第三者委を設置し、いじめと自殺の因果関係を調べていた。

取手市調査報告書ポイント

取手中3自殺 娘の訴え、やっと届いた 遺族「3年超…長すぎた」

報告書の公表を受け、記者会見する中島菜保子さんの父考宜さんと母淳子さん=20日午後、茨城県庁で
 取手市遺族

茨城県取手市の市立中学三年だった中島菜保子さん=当時(15)=が「いじめられたくない」と書き残して自ら命を絶ち、間もなく三年半。県の調査委員会が二十日に公表した報告書では、「くさや」と呼ばれ、アルバムに中傷を書き込まれるなど、壮絶ないじめの実態が示された。両親は「娘の訴えが受け入れられた。やっとたどり着いた」と語った。 (越田普之、宮本隆康)

「ほんとうんこだよ」「クソってるね」。報告書によると、卒業時の思い出となるはずの菜保子さんのアルバムに、複数の加害生徒から心無い言葉が書かれていた。ほかにも、加害生徒は菜保子さんに視線を送った上で、こそこそ話をしたり、体育の授業で仲間外れにしたりした。

報告書では担任教諭の責任も重いとした。加害生徒と菜保子さんが授業に遅刻した際などに、菜保子さんだけを叱責し、新たないじめを誘発する土壌をつくったと指摘。加害生徒と担任が「補完し合いながら」菜保子さんを追い詰めていったと認定した。

「認定に三年以上かかったのは、あまりにも長すぎた」。県庁で記者会見した父親の考宜(たかのぶ)さん(47)は、取手市教育委員会が当初「いじめによる重大事案に該当しない」と判断したことへの不信感を、あらためてにじませた。

報告書は両親が訴えてきたことに沿う内容だが、菜保子さんに報告するつもりはないという。「一つの区切りのようにとらえられるかもしれないが、私たちは娘のことを背負って生きていかなければならない」と声を絞り出した。

取手市の藤井信吾市長は会見し「当初の対応が不適切だったために、遺族に大変長い間、心痛をかけたことに深くおわびする。本来、市の職責で調査しなければいけなかった」と謝罪。

伊藤哲教育長は「事実関係は市教委がつかんでいる内容と、それほど異なっていない。事実をどう受け止めるかが大切。反省をしなくてはいけない」と話した。

取手市いじめ認定

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平成31年3月21日 神戸新聞NEXT

いじめ調査、学校が拒否していた 小6男児へ同級生が暴行を保護者報告 神戸

神戸市小6いじめ

神戸市内の小学6年の男児が、同級生の男児から暴行されるいじめを受けながら、2人が通う同市中央区の市立小学校が「警察が捜査中」として直後に十分な調査をしていなかったことが20日、分かった。同日あった市議会本会議で、長田淳教育長は「関係機関と連携すべきで、適切な対応ができておらず、保護者への報告が遅れた」と述べた。

市教育委員会や被害男児の保護者によると、被害男児は昨年9月末、同区内の商業施設で、同じクラスの男児から暴行を受けたという。保護者が翌月に気付き、学校に報告。保護者は灘署に被害届を提出した。

保護者は学校側にも調査を依頼したが、学校は「警察の捜査が終わるまで動けない」と拒否。今年1月、灘署が暴行の非行内容で加害児童を児童相談所に通告したのを受け、学校が関係児童らに聞き取りなどの調査をしたところ、いじめは約2年前から続いていたとしている。また、被害児童の保護者によると、殴る蹴るの暴行を受けたり、約6万円の金銭などを渡したりした疑いがあるという。学校は今月18日、いじめ防止対策推進法が規定する「重大事態」の疑いがあると市教委に報告し、現在、詳細調査を進めている。

被害児童の保護者は「学校からどのようないじめを認定したのか、十分な説明がなく、あまりにも不誠実な対応だ」と話している。(井上 駿)

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平成31年3月21日付河北新報

盛岡一高バレー部 部員に体罰の教諭を減給 岩手県教委

岩手県教委は20日、2008年11月に県立盛岡一高(盛岡市)の男子バレーボール部員に体罰を加えたとして、元部顧問の40代の男性教諭を減給10分の1(1カ月)の懲戒処分にした。  県教委によると、男性教諭は当時、2年の男子部員を体育教官室に呼び出して「お前のような人間が大人になると社会を駄目にする」などと怒鳴りつけた。08年7月~09年2月には、同じ男子部員を含む部員4人を平手打ちにした。  男子部員は体罰で心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったとして、損害賠償を求めて男性教諭と県を提訴。県に40万円の賠償を命じた仙台高裁の控訴審判決が2月に確定した。  男性教諭は県立不来方高(矢巾町)のバレー部に所属していた3年新谷翼さん=当時(17)=が昨年7月に自殺した問題でも、暴行の疑いで遺族から刑事告訴されている。

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異性31年3月19日 神戸新聞NEXT

尼崎中2自殺 教員6人、兆候に接するも対応せず

尼崎中2自殺

2017年12月、兵庫県尼崎市立中学2年の女子生徒=当時(13)=が自殺した問題で、クラスの担任教諭ら少なくとも6人の教員が、いじめなどをほのめかす女子生徒の言動に接しながら、対応していなかったことが分かった。6人はこうした女子生徒に関する情報を、他の教員や校長、教頭ら管理職にも伝えていなかった。(大盛周平)

生徒は17年12月20日、「学校がしんどいです」などと書いたメモを残して自殺した。調査した同市教育委員会の第三者委員会が18日、クラスや所属していたソフトテニス部でのいじめと、教員の不適切な対応が自殺の原因と指摘した。

調査報告によると、生徒は自殺する1カ月以上前の11月上旬、アンケートで2回にわたり、同級生からの嫌がらせや心の悩みなど、いじめを示唆する回答を記した。だが担任教諭は本人から聞き取りをせず、他の教員にも伝えなかった。

さらに担任教諭は、自殺の5日前にあった生徒、母親との期末面談で、母親に娘の人間関係を尋ねられ「問題ない」と答えていた。

他にも部活顧問や別のクラスの担任、学年主任ら少なくとも5人の教員が、女子生徒や友人から部員間のトラブルなどについて聞かされながら、放置したり、女子生徒が「トラブルを言いふらしている」と誤解して叱責したりしていた。

校内には、いじめなどに対応するため、管理職らでつくる委員会があったが、女子生徒に関する情報は伝わらず、校長や教頭は把握していなかったという。

学年主任も委員会のメンバーで、いじめの情報を知った場合は報告する役割を担っていた。だが女子生徒から、亡くなる当日に部活のトラブルを訴えられた際、別のクラスの担任と同様に「言いふらしている」と誤解して口止めしていた。

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平成31年3月19日付朝日新聞西部本社版

自殺生徒の写真、卒アルから外す 熊本、遺族に確認なし

熊本県北部の県立高校に通っていた3年生の女子生徒(当時17)が昨年5月、いじめをうかがわせる遺書を残して自殺した問題で、学校側が女子生徒の写真を一枚も載せずに卒業アルバムを作っていたことがわかった。遺族の意向を事前に確認できていなかったという。

完成後に知らされた遺族は掲載を求め、学校はすべての卒業アルバムに女子生徒の写真を貼り、配布した。

学校によると、アルバムには例年、卒業生の顔写真や、修学旅行など学校行事の様子を撮った写真を掲載している。だが、今年のアルバムには、女子生徒の個人写真を載せず、学校行事などの写真も女子生徒が写っていないものを選んだという。

遺族によると、教頭と担任が2月18日、自宅を訪れ、できあがったアルバムに女子生徒の写真が載っていないことを伝えられた。学校からはそれ以前にも面会の申し込みがあったが実現せず、掲載を望むかどうかの確認はされていなかったという。

遺族は「写真を載せてほしい」と学校側に要望。学校は、女子生徒の顔写真や学校行事、部活動に参加している写真を用意し、卒業アルバムの空いているページに両面テープで貼り付けた。

3月1日の卒業式では、女子生徒の写真があるアルバムを卒業生に配ったという。

女子生徒の母親は「娘が生きて高校に通っていた証しや、自殺につながった事実もなかったことにされてしまったようでショックだった」と振り返る。事前に協議ができなかったことについては、「面会だけでなくメールなどの手段もあったのでは。後から写真を貼り付けただけのアルバムになってしまい、残念です」と話した。

高校の教頭は「女子生徒の写真が外部に流出してしまうことを心配した。事前にご遺族に会おうとしたが、タイミングが合わなかった。事前に意向を確認するべきだった」と話した。遺族には謝罪したという。

女子生徒は昨年5月、同級生から「よう学校に来られるね」「死ねばいいのに」などの暴言を浴びせられ、「誤解なのに」「もう死にたい」などと書かれた遺書を残して自宅で命を絶った。県教育委員会は6月から、付属機関の「県いじめ防止対策審議会」でいじめの有無などを調べており、今月26日に最終報告書を県教育長に答申する予定。(池上桃子)

いじめ問題に取り組むNPO法人・ジェントルハートプロジェクト(川崎市)理事の小森美登里さんは、「時間がないことを言い訳にせず、『一緒に過ごした仲間としてアルバムに載せてもよいか』と一言、確認すればよかった」と指摘する。

教育評論家の武田さち子さんは「卒業式や成人式などの節目は、遺族にとってもつらい時期」と言う。「亡くなった子を最初からいなかったように扱うのは、遺族の悲しみに追い打ちをかけることになると思う」

 

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