同級生8人と熊本県を提訴 いじめ苦に自殺の高3女子遺族

2021年05月17日付熊本日日新聞

熊本地裁に提訴後、記者会見に臨む自殺した女子生徒の母親(左)と代理人弁護士=17日、県庁

 2013年4月に同級生のいじめなどを苦に自殺した熊本県央の県立高3年の女子生徒=当時(17)=の遺族が17日、当時の同級生8人と県に対し、計約8340万円の損害賠償を求める訴えを熊本地裁に起こした。

訴状によると、同級生たちは、体育大会のダンス練習でうまく踊れない女子生徒に対し「なんで踊れんと」「マジでいらいらする」などと強い口調で非難、みんなの前で何度も踊らせた。また「顔がキモい、動きが鈍い」と、ダンスと関係のない発言で中傷した。

女子生徒は携帯電話に「辛[つら]い学校生活」「皆の言葉が痛い…視線が痛い…消えたい…」などとする遺書を残して自殺。遺族は「いじめ行為で生徒が生きる希望を失い、死を選択したことは明らか」と主張し、学校に対しては「実態を把握しようとせず、安全配慮義務を怠った」とした。

8人は同窓会名簿などを基に特定。8人と県が連帯して、女子生徒が被った精神的苦痛の慰謝料や逸失利益などとして計約8340万円を、女子生徒の母親と兄に支払うよう求めた。

女子生徒の自殺を巡っては、高校が設けた調査委員会が13年9月、「いじめはあったが、自殺の要因とは確定できない」と結論付けた。これを不服とした母親らの意向を受けて再調査した県調査委員会は15年1月、「いじめが自死の要因の一つ」とする報告書をまとめ、蒲島郁夫知事に答申した。

母親は17日、県庁で会見を開き「宝物の娘を亡くし、何年たっても心の傷は消えない。真実を知りたい。同級生は謝罪して償ってほしい」と話した。県教育委員会は「訴状が届いておらず詳しい内容は承知していないが、改めて哀悼の意を表する」としている。(臼杵大介)

■母親、8年経ても「なぜ」拭えず

2013年4月に熊本県央の県立高3年の女子生徒が自殺した真相の究明を、遺族は司法に託した。8年たっての提訴。県の調査委員会は「いじめが自死の要因の一つ」と結論付けたが、母親の「なぜ娘は死ななければならなかったのか」との疑問は拭えていない。

報告書は、体育大会のダンス練習で女子生徒が同級生から厳しい言葉を浴びたことなど9件をいじめとして認めた。ただ大半がダンス練習絡みで、学校生活への言及は限定的。いじめに関わったとみられる生徒の名前も黒塗りだった。当時の学校幹部と交わした「いじめた生徒を仏前に連れていく」との約束も果たされず、両親は不信を募らせた。

父親は提訴に慎重だったが、19年5月に他界した。学校の同窓生らへの聞き取りなどで同級生の名前は判明していたが、住所が分からないことも提訴を阻んでいた。ところが今年に入り、同窓会名簿を入手。同級生の住所の特定につながった。

県教育委員会によると、県立高の生徒が自殺した後、県や学校などの調査に至ったのは今回を含め3例ある。このうち13年8月の熊本市内の県立高1年生の自殺でも、真相究明を求める遺族が同級生と県を相手に訴訟を起こした。

県教委は「ご遺族が全てを知りたいと思うのは当然」としつつ、「法令や規則にのっとり、個人情報に配慮するなど中立公正な立場で判断する必要がある」とする。これに対し、母親は「名前も重要な部分も黒塗りの報告書だけでは、何が何だか分からない。何のための調査委だったのか」と涙ながらに訴えた。(臼杵大介)

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