平成28年12月25日 朝日新聞西部本社版

 熊本県長洲町教育委員会は24日、町立中学校で男子生徒が女子生徒に暴力を振るった事案を調べるため同級生に書かせたメモを、学校が廃棄していたと発表した。町教委は「不適切とは言えない」としているが、女子生徒側は「事実を知る機会を失い精神的苦痛を負った」として、町を相手取り損害賠償を求める訴訟を起こす考えだ。

 町教委によると、女子生徒は2012年2月28日、授業中に男子生徒に左耳付近をたたかれ転倒。さらに左足も踏まれた。女子生徒は耳が聞こえにくくなるなどした。

 担任は、男子生徒から暴力を受けたことがあるかや、暴力を知っていたかなどを約30人に調査。白紙に記名させ、質問の答えをメモさせた。担任はその内容を校長に報告し、1カ月以内にメモを廃棄したという。

町教委は「公文書ではなく、保管する取り決めもないので、不適切とは言えない」としている。

 学校は同年9月、約25人が男子生徒にたたかれるなどしたと答えたことを、口頭で女子生徒の両親に伝えた。メモの開示も求められたが、個人情報にあたるなどの理由で拒んだ。

 女子生徒は心的外傷後ストレス障害(PTSD)などと診断され、危険を予見し、回避しなかったとして町と男子生徒の両親に損害賠償を求めて提訴した。女子生徒の母親は弁護士を通じ、「廃棄され、事実を確認しようがなく、学校から十分な説明もないため納得できない」とコメントした。(板倉大地)

 

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