平成30年3月15日 NHK大分放送局

学校事故の遺族が勉強会で訴え

9年前、県内の高校に通っていた長男を部活動中の事故で亡くした遺族が、15日に東京で開かれた学校での事故防止に関する勉強会で講演し、教諭個人にも賠償責任を負わせる必要性を訴えました。 この勉強会は、学校の授業中や部活動中の事故で子どもを亡くした遺族らで作るグループが、東京・千代田区で開いたもので、全国の遺族や国会議員などおよそ60人が参加しました。 この中で、9年前に竹田市の県立竹田高校で、剣道の部活動中に熱中症で倒れたあと亡くなった工藤剣太さんの母親の奈美さんが講演しました。 剣太さんの両親は、県だけでなく元顧問の教諭ら個人にも賠償金の一部を負担させるよう求めて裁判を起こし、去年10月、「元顧問の対応には重大な過失があった」として、教諭個人に100万円を負担させるよう命じる判決が確定しました。 公務員の職務によって生じた損害の賠償責任は、国家賠償法で国や県などが全額を負担することが原則とされていますが、奈美さんは講演の中で「教諭の個人責任を問えるようになれば、命を落とす子どもや傷つく子どもも減っていくと思う」と訴えました。 勉強会のあと、奈美さんは「剣太の事例が抑止力になり、これからの子どもたちを守っていけるよう、これからも声をあげ続けていきたい」と話していました。 また、剣太さんの両親は15日、最高検察庁を訪れ、業務上過失致死の疑いで書類送検された当時の顧問らが不起訴になったことを不服として、再捜査を求める申し立てを行いました。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/oita/20180315/5070000101.html

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平成30年2月20日NHK大分放送局

部活中に死亡 不服申立て認めず

9年前、県立竹田高校の男子生徒が剣道の部活動中に亡くなった事故で、大分地方検察庁が業務上過失致死の疑いで書類送検された当時の顧問らを不起訴にしたことに対し、生徒の両親が福岡高等検察庁に不服を申し立てていましたが、申し立ては認められませんでした。 この事故は平成21年8月、県立竹田高校2年の工藤剣太さんが剣道の部活動中に熱中症で倒れて亡くなったもので、当時の顧問と副顧問の2人の教諭が業務上過失致死の疑いで書類送検されました。 これに対し大分地方検察庁は、平成24年に2人を不起訴にし、その後、両親の申し立てで、大分検察審査会が「不起訴は不当」とする議決をし、改めて捜査を行いましたが、平成26年に再度、不起訴と判断しました。 こうした大分地検の処分に対し、両親は去年5月、福岡高等検察庁に不服申し立てを行っていましたが、福岡高検によりますと、今月16日付けで「申し立ては認められない」と判断したということです。 20日、福岡高検を訪れ今回の判断が伝えられた工藤剣太さんの両親は、来月にも最高検察庁に不服を申し立てるということです。 母親の工藤奈美さんは「これから先、学校で傷つく子どもたちが減るように大切な命を守っていくために、来年の時効まで、あきらめずに声をあげ続けていきたい」と話していました。

http://www3.nhk.or.jp/lnews/oita/5075343931.html

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平成29年10月3日大分合同新聞
高裁も重過失認定 竹田の剣道部員死亡
大分竹田1
大分竹田2
2009年に竹田高校(竹田市)で剣道部の練習中に工藤剣太さん=当時(17)=が熱中症で倒れて死亡した事故を巡り、元男性顧問(54)=大分県教委職員=らの賠償責任が問われた訴訟の控訴審判決が2日、福岡高裁であった。佐藤明裁判長は、元顧問に「重過失があった」と認定。100万円を請求するよう県に命じた一審大分地裁判決を支持し、県側の控訴を棄却した。
原告の両親側の代理人弁護士によると、学校現場の事故に関し、住民訴訟により公務員個人の賠償責任を認めた判決は高裁レベルで初めて。「部活動の指導において暴力行為には厳しい措置が取られると明確化した。
今後の教育界に大きな影響を与える」と評価した。
判決理由で佐藤裁判長は、当時の状況を「剣太さんの熱射病(重い熱中症)を疑うべき事態だったにもかかわらず、元顧問は演技だと決め付けて指導を続けた」と判断。「生徒の安全確保を図る教諭の立場にありながら、わずかな注意をすれば有害な結果を予見できたのにそれもしなかった」と非難し、「重過失があると言わざるを得ない」と結論付けた。
両親側が付帯控訴していた元副顧問の男性教職員(50)の賠償責任は「元顧問の意向に反することは困難だった。
重過失があるとまでは言えない」と退けた。
訴訟は剣太さんの両親が、部活動を指導していた元顧問と元副顧問の責任を追及するため15年12月に提訴。
県に対し、2人に賠償金の支払いを請求(求償)するよう求めた。
16年12月の一審判決は、剣太さんが熱中症で異常を来し、竹刀を落とされたのに気付かず構えを取るなどした行動を元顧問が「演技」と決め付け、蹴ったり頬をたたくなどの暴行を加えて状態を悪化させたと認定。県による賠償額約2750万円のうち、保険で賄う分を差し引いた200万円の半額を元顧問に請求するよう県に命じた。
県側は「部活動に携わる教員に大きな影響がある」などとして控訴していた。

「学校事故の壁」に風穴
◆解説◆
学校現場で事故を起こした教諭に、個人としての賠償責任を問えるか。福岡高裁は一審大分地裁に続き、剣道部元顧問に重過失があったとして責任を認めた。熱中症の生徒に暴行を加えた事実や、死亡という重大な結果を踏まえれば、常識的な感覚に沿った判断と言える。
公務員が職務上の行為で損害を与えた場合、国家賠償法の規定で、賠償責任は国や自治体が負う。「故意」や「重過失」があったと認められれば、国や自治体が公務員個人に賠償額を請求できるが、実際に責任が問われるのはまれだ。
死亡した生徒の両親は「学校の外で大人が子どもをたたけば犯罪だが、学校内なら個人は責任を負わない。
そんなことが許されるのか」と訴えてきた。今回の判決は、そうした“壁”に風穴を開けたと言える。
「熱血指導」が悪質な不法行為になっていないか。教育関係者はいま一度省みる必要があるだろう。

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平成29年5月16日NHK大分放送局

剣道部生徒死亡事故の2審始まる 

8年前、大分県立竹田高校の生徒が、剣道の練習中に熱中症で倒れて死亡した事故の賠償をめぐる裁判の2審が始まり、生徒の母親は県に対し、賠償の一部を当時の顧問にも負担させるよう命じた1審判決を受け入れるよう求めました。
一方、県はあらためて争う方針を示しました。
8年前、大分県立竹田高校2年の工藤剣太さんが、部活動の剣道の練習中に熱中症で倒れて死亡し、両親は、当時、顧問だった教諭らにも賠償の一部を負担させるよう求め大分県を訴えています。
1審の大分地方裁判所は去年、「顧問の対応には重大な過失があった」として、賠償のうち100万円を顧問に負担させるよう県に命じ、県が控訴しました。
この裁判の2審が福岡高等裁判所で始まり、母親の奈美さんは「県は判決を真摯に受け止め再発防止に努めて改善することを考えてほしい」と述べ、1審判決を受け入れるよう求めました。
これに対し県側は「顧問に重大な過失はなかった。個人の賠償が認められれば、献身的に指導に取り組む教員が減り、部活動が成り立たなくなる」と主張し、あらためて争う方針を示しました。
次の裁判は7月13日に開かれる予定です。
裁判のあと、両親は記者会見し、父親の英士さんは「剣太の無念を晴らすとともに、これからの子どもたちを守るためにも1審判決を守っていきたい」と話しました。
また、両親はきょう福岡高等検察庁を訪れ、事故をめぐり当時の顧問らが不起訴になったことを不服として、再捜査を求める申し立てを行いました。

http://www3.nhk.or.jp/lnews/oita/5073045191.html

 

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平成29年2月7日付東京新聞

部活で熱中症死…遺族「顧問の責任は」 闘い7年「命と安全守って」

 

工藤くん
高校の剣道部の練習中に、熱中症で亡くなった工藤剣太さん

高校の剣道部の練習中に、熱中症で亡くなった工藤剣太さん

高校の部活中に熱中症になった子どもを放置し、前蹴りや平手打ちを加え死亡させたのに、当時の顧問教諭が何の責任も負わないのはおかしい-。七年前に、息子を亡くした遺族がそう訴え、学校の安全を願いながら裁判を闘い続けている。憲法学が専門の首都大学東京の木村草太教授は、安全配慮義務への意識が低い学校事故の典型例だと指摘する。 (細川暁子)

二〇〇九年八月、大分の県立高校二年生で剣道部員だった工藤剣太さん=当時(17)は、部活の練習中に熱中症になり意識を失った。

大分地裁判決(昨年十二月)によると当日は午前九時から練習し、気温は三〇度。キャプテンの剣太さんだけが当時の男性顧問に打ち込みで合格をもらえず、約一時間半も練習を続けさせられた。剣太さんは「もう無理です」と訴えたが、水分補給はできなかった。

剣太さんが熱中症でフラフラし始めたのは正午前。竹刀を落としたことに気付かず、構えるしぐさを続けるなど、異常な行動も取り始めた。

元顧問は助けるどころか「演技じゃろうが」と言って、剣太さんの体を前蹴り。剣太さんは自分で防具をはぎ取るように外し、壁に頭をぶつけて倒れた。元顧問は剣太さんの上に馬乗りになり、「これが熱中症の症状じゃないことは俺は知っている」などと言いながらほおに約十発、平手打ちを加えた。剣太さんは嘔吐して反応しなくなり、その夜に亡くなった。

年子の弟の風音(かざと)さん(23)は同じ剣道部員。剣太さんが倒れる一部始終を見ていた。風音さんは「顧問は日常的に暴力をふるい、怖くて止められなかった」と声を震わせる。

両親は一〇年に業務上過失致死容疑で元顧問を刑事告訴したが、不起訴処分に。元顧問が個人で賠償金を支払うよう求める民事訴訟も起こし最高裁まで争った。裁判所は元顧問の過失を認めたが、計四千六百五十六万円の支払いを命じた先は県など行政だった。「国家賠償法(国賠法)」では公務員が公務中に起こした損害責任は国や自治体が負うとしているからだ。

両親は新たに、県は元顧問に対し賠償負担を求める「求償権」を行使すべきだとして住民訴訟を提起。大分地裁は昨年十二月、熱中症に対して適切な処置をとらず、前蹴りや平手打ちで症状を悪化させたとして元顧問の重過失を認定。両親への賠償金のうち百万円を元顧問に請求するよう県に命じた。一方県は先月、地裁判決を不服として福岡高裁に控訴。県教委の工藤利明教育長は「教職員の部活動への携わり方にも大きな影響があるため、上級審の判断を仰ぎたい」とした。裁判の終わりはまだ見えない。

母親の奈美さん(48)は七年にわたり裁判を闘う理由を「県が住民の税金で元顧問の賠償金を肩代わりするのはおかしい。暴力を伴う指導は許されないと学校側が認め、子どもの命と安全が守られる環境を整えるため、あきらめるわけにいかない」と話す。

◆「学校が治外法権化」 首都大学東京・木村草太教授

木村教授によると、大分地裁が県に対して求償権を行使するよう命じた判決は非常に珍しく、画期的だという。

国賠法は故意または重大な過失があった場合、自治体が求償権を使って公務員個人に損害責任を負わせることができるとしている。だが、実際には「公務が萎縮する」などの理由で裁判では求償権の行使はほとんど認められていない。

木村教授は「元顧問の重過失行為は現場で厳禁すべき内容。地裁判決は妥当」と指摘する。木村教授は学校側は安全配慮義務への意識が低い上、責任も問われにくいため、特権的に法律を守らなくていい「治外法権」のようになりがちだと指摘。剣太さんの事例はその典型で「検察が元顧問を起訴して、刑事責任を負わせるべきだった」と主張する。

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平成29年2月5日付大分合同新聞

剣道部員死亡事故 両親ら署名活動

署名

工藤剣太さんが死亡した事故の訴訟を巡り、県側の控訴取り下げを求めて署名活動をする母親の奈美さん(右)=4日、大分市

  2009年に竹田市の竹田高校剣道部員だった工藤剣太さん=当時(17)=が練習中に熱中症で倒れて死亡した事故を巡る訴訟で、剣太さんの両親や支援者は4日、大分市府内町のトキハ本店前で、県に控訴の取り下げを求める署名活動をした。
 昨年12月の一審地裁判決は、当時の顧問が剣太さんに暴行を加えたことなどを認め、重過失があったと判断。県に、
求償権を行使して元顧問に100万円の支払いを請求するよう命じた。
 県は「部活動に携わる教員に大きな影響がある」などとして福岡高裁に控訴している。
 この日は父親の英士さん(51)、母親の奈美さん(48)ら約10人が街頭に立ち、多くの買い物客や通行人が足を止めて
県への要請書に名前を記入していた。英士さんは「同じ思いを共有してくれる人がいるのは励みになる。今後も、県に控訴の取り下げを求めていく」と話した。
 両親と支援者は5日も午前10時から夕方まで同じ場所で署名活動をする。集まった署名は県や福岡高裁に提出する。

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平成29年1月5日NHK大分放送局

公務員賠償訴訟で県側が控訴

 8年前、県立竹田高校で剣道部の生徒が部活動中に熱中症で倒れて亡くなった事故で大分県は、先月、大分地方裁判所が賠償金の一部を当時の顧問の教諭にも負担させるよう命じた判決を不服として、5日に控訴しました。8年前、県立竹田高校2年生だった工藤剣太さんが剣道の部活動中に熱中症で倒れて亡くなった事故をめぐっては、両親に賠償金として4600万円あまりを支払うよう県などに命じる判決が確定しています。しかし両親は、おととし、「当時の顧問は、適切な救護措置を取らなかったうえ、ほほを平手打ちにするなど重大な過失があり、賠償金を負担させるべきだ」などとしてあらためて県を訴え、大分地方裁判所は先月、賠償金のうち100万円を顧問に負担させるよう、県に命じる判決を出しました。

これについて、大分県教育委員会は、当時の顧問の対応に、個人として賠償を負担させるほど「重大な過失」があったとはいえないとして、福岡高等裁判所に控訴しました。公務員の職務によって生じた損害は、国や県などが全額を負担するのが原則で公務員個人にも負担を求める今回のような判決は珍しく、大分県の対応が注目されていました。
県教育委員会は「どの程度の過失があれば公務員が個人として賠償を負担すべきかが問われている今回の
裁判は、部活動に関わる教員の今後の活動にも大きな影響を与えるため、上級審の判断を仰ぎたい」としています。

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