学校事件の報道

学校事件: 名古屋市立中1女子SNSいじめ自殺

2021年3月17日付朝日新聞

学校の説明「納得できない」 名古屋中1自殺で保護者会

 臨時の保護者会に集まる人たち=2021年3月16日午後6時48分、名古屋市、小松万希子撮影

 名古屋市立中学1年の女子生徒(13)が9日に自殺した問題で、女子生徒が通っていた中学校で16日、臨時の保護者会が開かれた。女子生徒はLINEで嫌がらせを受けていると学校に相談していた。同市教育委員会によると、市立中学校の生徒がネットで誹謗(ひぼう)中傷や嫌なことをされる事案は昨年の1、2学期だけでも118件にのぼるという。

中1女子が自殺 「SNSで嫌がらせ」と相談 名古屋

名古屋市教委の昨年11月の調査によると、スマートフォンや携帯電話を利用する児童・生徒の割合は小学5年で52%、中学2年で76%にのぼる。ネットを通じた嫌がらせは「SNS上に『いい子ぶっている』などと悪口を書かれる」「ゲームセンターで遊んでいる様子を無断で撮影して掲載される」「友達同士の会話を無断で録音されて拡散される」などがあったという。

学校側は被害の相談があれば加害側に事実確認し、指導や書き込みを削除させるほか、深刻な場合は警察に相談することもある。だが市教委の担当者は「LINEグループのような閉ざされた世界で、子どもたちがどんなやりとりをしているのかは全く分からない」と把握が難しい面があることを認める。

今月亡くなった女子生徒は昨年11~12月、校内の生徒からLINEグループで誹謗中傷の投稿をされたと学校側に2回相談した。この時、「(当該生徒の)名前は言いたくない」と話したという。学校側は生徒指導担当の教諭らで情報を共有し、12月に学年集会や全校集会でSNSで嫌がらせの書き込みをしないよう指導。女子生徒は今年1月の相談で初めて2人の生徒名を挙げたが「やり返されるのが怖い」と、指導をしないよう頼んだため、学校側は直接的な指導をしなかった。女子生徒はその頃から遅刻や欠席などが目立つようになり、スクールカウンセラーのカウンセリングを受けさせたり、登校しても別室で過ごさせたりする対応をしてきたが、命を守ることができなかった。

この問題は「いじめ防止対策推進法」の「重大事態」として、第三者の有識者による「いじめ対策検討会議」で学校側の対応のあり方についても調査されるとみられる。

16日夜に中学校で開かれた臨時保護者会には約340人が出席。保護者からは、学校が当該生徒の名前を把握しながら直接指導しなかったことについて「もっと踏み込んで対応すべきだったのではないか」などの意見が出たという。保護者会後に報道陣の取材に応じた校長は、「今回のケースについては(踏み込んだ指導を)すすめていくのは適切ではないと判断したが、適切だったかどうか、(検討会議の)調査結果も踏まえて考えたい」と話した。

保護者会に出席した母親の一人は「『報復が怖いから指導しないで』という生徒の意向を受けてこういう形になったという説明は納得できない。そこを乗り越え、守ってこその学校じゃないかと思う。13歳というキラキラした年なのに命を絶つなんて、自分の子だったらと思うとたまらない」と声を詰まらせた。

18歳以下を対象に相談を受ける「チャイルドライン」(0120・99・7777、毎日午後4~9時、HPでのチャットも可)を運営するNPO法人「チャイルドライン支援センター」の高橋弘恵理事によると、いじめがひどくなることを警戒し、相手の名前などを「言いたくない」「言わないで欲しい」などと話す子どもは多いという。しかし「誰にも言わずに解決することは難しい。自分を守るために、SOSを出すことは大切だ」と訴える。

周りの大人には、話したがらない子どもに無理に聞いてはいけないと助言する。「あなたを守りたい」という気持ちを繰り返し伝え、子どもから話してもらうよう努めることが大事だという。(堀川勝元、山本知佳、小松万希子)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn