いじめ根絶誓い黙禱 岐阜市の中3自殺から1年
令和2年7月4日付朝日新聞岐阜版
加藤義人会長(左)が柴橋正直市長に提言書を手渡した=2020年7月3日午後4時5分、岐阜市役所、高木文子撮影
昨年7月に岐阜市立中学3年の男子生徒がいじめを苦に自殺してから、3日で1年が経った。生徒が通っていた中学では在校生が祈りを捧げ、亡くなった現場で手を合わせる人の姿もあった。
生徒が飛び降りて亡くなった岐阜市内のマンション前には早朝、男性公務員が訪れた。「(献花の)花はないが手を合わせにきました」。午前7時半すぎには制服姿の男子生徒が立ち寄り、現場に向かって手を合わせると、すぐに学校へ向かった。
近所の女性は「悲しい出来事。口には出さないけれど気にかけていました」と声を落とした。
市内の小中学校は今年度から、生徒の月命日にあたる毎月3日を「いじめを見逃さない日」としている。
亡くなった生徒の中学では、朝の全校放送で呼びかけ、在校生が黙禱。校長は「いじめにどう向き合うか決意することが、亡くなられた仲間に対して、本当の意味で哀悼の意を表すことではないか」と語りかけた。
午後の全校集会では、次男をいじめによる自殺で失い、同校のいじめの実態調査にもあたった大河内祥晴さんが講話した。
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いじめによる生徒の自殺を受けて設けられた諮問機関「岐阜市公教育検討会議」(会長=加藤義人・岐阜大客員教授)は3日、柴橋正直市長に答申した。「すべての子どもが互いの自由を大切にする」ことをめざし、生命や人間関係への深い学びや、教員の多忙の解消などを提言した。
会議は学識者や企業経営者、PTA関係者らでつくり、昨年10月に発足した。市長は答申を踏まえて教委と話し合い、年度内に市教育大綱の見直しをめざす。
提言は、最も重要な教育方針に「自由の相互承認」を盛り込んだ。他者との違いを認め、他者と自分の自由を大切にするという意味合いで、柴橋市長は「突き詰めれば命の尊厳に行き着くという、大きな命題をいただいた」と話した。
提言は、市の公教育の課題も挙げた。中学3年時点の学力は高いが、自己肯定感のある子の割合が全国より低い。不登校の児童生徒の割合も全国より高い。
具体的な施策は、探究型の学びを核としたカリキュラム▽義務教育学校の導入の検討▽教員の業務の「見える化」やチーム担任制の検討などを提案。生命や人間関係についての学びは、優先度が高いとした。
加藤会長は「施策のPDCA(計画、実行、評価、改善)を、定期的に検証する仕組みを設けることが望ましい」と助言した。(高木文子)