令和元年5月23日付朝日新聞西部本社版
高1自殺、元同級生に10万円賠償命令 熊本地裁
熊本市内の県立高校1年の女子生徒(当時15)が2013年に自殺したのはいじめに学校側が適切な対応をしなかったためなどとして、遺族が県と元同級生1人に損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁(小野寺優子裁判長)は22日、元同級生に11万円の支払いを命じた。一方、高校の教職員の対応と自殺との因果関係は否定し、県に対する請求は棄却した。
判決によると、女子生徒は13年4月に入学し、付属の学生寮で生活。夏休みで帰省していた同年8月、実家で亡くなった。母親らが16年7月、提訴していた。
判決は、女子生徒が13年5月ごろから、寮の同級生らから、LINEで「レスキュー隊呼んどけよ」などと書き込まれたり、中学校の卒業アルバムに落書きをされたりしたと認定。「『いじめ』に該当するか、準じた行為」と判断した。
書き込みについては、「加害行為などの可能性を想起させ、違法な脅迫行為だ」と指摘。落書きの件と合わせて「不法行為に当たる」として、慰謝料など計11万円の支払いを元同級生に命じた。
一方、寮生を指導する立場の教諭「舎監長」の対応については、「適切さを欠くとは言えない」と指摘。遺族側は「いじめの認識を持つべきだった」と主張したが、判決は、教諭が女子生徒と元同級生らに他人の中傷をしないよう指導するなど合理的な措置をとったとして、「いじめと判断しなかったからといって、安全配慮義務に違反したとはいえない」との判断を示した。
担任の教諭については、女子生徒が生活状況などを尋ねるテストで「死んでしまいたいと本当に思う時がある」との項目にマークをしたことを見逃し、舎監長の教諭にその事実を伝える義務があったのにしなかったと認定。そのうえで、「テストの回答が直ちに自殺を図る具体的なおそれがあることに結びつくまでとは言いがたく、自殺を予見できたともいいがたい」と指摘し、「自殺との因果関係は肯定できない」と結論付けた。
この問題をめぐっては、学校の調査委員会が16年2月、「いじめが直接的な影響を与えたとは認め難い」とする報告書をまとめた。しかし、調査委のメンバーに校長らが含まれていたことなどから遺族が反発。改めて調査した県の第三者委員会は17年7月、LINEの脅迫的な書き込みなど6件をいじめ行為と認めたが、自殺の直接の原因は「特定できなかった」と結論づけた。
ただ、LINEの書き込みなどが「『寮生活を続けたくない』と思うきっかけになったことは否定できない」とも指摘。退寮の願いがかないそうにないと感じる中でうつ状態となり、「改善されないまま自死につながったのではないかと考えられる」とした。(杉山歩)