平成29年10月27日東京新聞社説
福井中2自殺 寄り添う心を欠く怖さ

 教師は絶大な権力を持つ。一方的に振りかざせば、生徒は追い込まれてしまう。福井県池田町で三月、中学二年の男子がその犠牲になった。生徒に寄り添う心を欠いた指導は、教育とは呼べない。
 精神的に追い詰められ、逃げ場を奪われたその男子生徒は、生徒会室前の廊下にかばんを残して校舎三階から飛び降り自殺した。
 自殺の原因について、池田町の調査委員会の報告書は「担任、副担任の厳しい指導叱責にさらされ続けた生徒は、孤立感、絶望感を深めた」と結論付けた。生徒の痛みを理解できない教師像を強くうかがわせる。
 母親は手記に「『教員による陰険なイジメ』で息子は尊い命を失ったのだと感じています」とつづった。生徒の声なき訴えに、全国の教師は耳を傾けねばなるまい。
 一学年一学級の小規模校。隅々にまで目が行き届くはずの環境下で、なぜ悲劇は起きたのか。報告書からは、まるで教師の暴言を当たり前のようにみなす独善的な学校の様子が読み取れる。
 マラソン大会の準備が遅れ、担任は校門前で大声で怒鳴った。周りが身震いするくらいだったという。職員室の前で「おまえ辞めてもいいよ」と、生徒会役員だった生徒に大声を出しもした。
 忘れた宿題を執拗にとがめる副担任の前で、土下座しようとしたり、泣きだして過呼吸の症状が出たりしたこともあった。だが、管理職にも家族にも伝えなかった。
 担任、副担任の双方から厳しく責め立てられては、生徒は心のよりどころを失ってしまう。校長ら管理職も二人の振る舞いを知っていたという。適切な対応を怠った学校の責任は極めて重大だ。
 福井県は全国学力テストで常に上位の成績を上げる。それは評価できるとしても、学力重視に傾き過ぎて、子どもの思いや気持ち、特性を蔑ろにしていないか。
 教師の体罰や叱責の犠牲となった子の遺族らは「指導死」とも呼ぶ。二〇一二年に大阪市の高校生が部活動顧問から体罰を受け自殺した。二月には愛知県の中学生が「担任に人生を壊された」とのメモを残して命を絶った。
 文部科学省調査では、教職員との関係に悩んで自殺したとみられる小中高校生は〇七年度からの十年間で十六人に上る。
問題の担任は指導方法を助言した同僚に「手加減している」と返したという。
 子どもの身になって考え、感じる力が欠かせない。「指導死」という言葉などあってはならない。

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平成29年10月25日朝日新聞福井版
池田中の自殺 知事「胸痛む」 県教委は5人派遣

 池田町の町立池田中学校で今年3月に2年生の男子生徒が自殺した問題で、西川一誠知事は24日の定例会見で「非常に悲しいことであり、胸が痛む」と語った。その上で、「町がしっかり対応できるよう、県教委はバックアップしてほしい。
県も支援する」「学校や地域で動揺があってはいけない。安心して落ち着いた学校運営や授業ができるよう、県として可能な限り応援する」などと述べた。
     ◇
 県教委は23日から、池田中と町教委に計5人の教職員を派遣した。
 校長が19日に退職願を出して自宅待機になり、教頭が職務を代行している。学校の管理・運営を支えるため、県教委義務教育課の指導主事(50)と池田小学校の教諭(55)を派遣した。
 男子生徒を叱責した、当時の30代の副担任(国語の教諭)も17日から休んでいるため、義務教育課の指導主事(46)を送った。
 一方、町教委などには抗議の電話が殺到し、業務に支障が出ているため、県教委の職員2人を交代で派遣する。
(堀川敬部)

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平成29年10月24日朝日新聞デジタル
「子の指導死、表面化は氷山の一角」 繰り返される悲劇
池田中調査報告書
福井県池田町立池田中学校で男子生徒が自殺した問題で、調査委員会がまとめた全57ページの調査報告書の写し

 福井県池田町で中学2年生の男子生徒が自殺した問題で、学校での指導がもとで同じように我が子を亡くした遺族も悲痛な思いを抱いている。繰り返される「指導死」。再発防止が課題だ。

■「他人事だったのか」
 「大人が押しつけるような教育は改めないといけないのに、現場は変わっていない」。大阪市立桜宮高校のバスケットボール部主将だった男子生徒(当時17)を自殺で亡くした父親(48)は、池田町で起きた中学生の自殺に胸を痛める。
 生徒は顧問から平手打ちや暴言を繰り返し受け、2012年12月に自殺した。顧問は懲戒免職となり、傷害と暴行罪で有罪に。遺族は市を相手に損害賠償を求める裁判を起こし、昨年2月に元顧問の暴行を自殺の原因と認める判決が出た。
こうした動きが大きく報道されてきた一方で、池田町の中学生は昨年10月ごろから担任や副担任から厳しい指導や叱責を受け、今年3月に自殺した。
 桜宮高校の生徒の父親は、5年近く前の出来事が「風化している。他の地域の教員には他人事だったのか」と感じる。
池田町の事案については、「当事者しかわからない面がある」と断った上で、「なぜ管理職ら周りが異常に気づき対応しなかったのか」と話す。
 大阪市教育委員会は再発防止に向けて13年、「生徒第一主義」「体罰の排除」という部活動の指針を示した。14年には体罰や暴力行為に対する懲戒処分の基準を改正。「授業で問題を解けない」「指示通りにプレーしない」など子どもに非がないのに体罰などをした場合は、より厳しく処分するようにした。
 今年3月には、「暴言」も懲戒処分の対象と明示。市教委の担当者は「暴言の抑止がその先にある体罰の抑止につながる」と話す。だが、体罰をしていた教諭が再び体罰で処分を受けるケースがあるなど、根絶されたとは言えない現状もある。

■価値観押しつけないで
 「『指導死』親の会」共同代表の大貫隆志さん(60)=東京=は「再発しないようにと活動してきたので、ものすごく悔しい」と肩を落とす。00年、中学2年生だった次男陵平さん(当時13)が自殺。学校でお菓子を食べたことで教師から1時間半にわたり叱られた翌日のことだった。
 08年に「親の会」を立ち上げ、生徒指導を原因とする自殺を「指導死」と名付け、社会に訴えてきた。大貫さんは、池田町教委が設置した調査委員会がまとめた報告書について「行き過ぎた指導を自殺の原因だとはっきり認めたことは画期的」と評価する。だが、再び子どもの命が失われたことに、「指導死が起きる恐れが学校で共有されていない。子ども一人ひとりの特性に合わせた接し方が求められている」と話す。
 教育評論家の武田さち子さんは「表面化している指導死は、氷山の一角」と指摘。背景に長時間労働などの教師の労働環境もあると分析する。「『生徒のため』と言いながら、教師が子どもをストレスのはけ口にしてしまう」。また、「生徒を効率よく管理し、学力やスポーツの成績を上げることが重視され、どうすれば一人一人の子どもが幸せになれるかを考える指導が難しい状況も問題」と話す。
 教育現場で指導死を防ぐにはどうしたらいいか。武田さんは「悪い行為をしかっても、人格は否定せず、教師側の価値観の押しつけや思い込みを慎む必要がある。指導中や指導後の子どもの様子に気をつけるほか、保護者との情報共有を徹底する必要がある」と提案する。

■一人で抱え込まないで
 教師の指導に悩む子どもや保護者はどうすればいいのか。不登校や引きこもりに関するニュースを発行する「不登校新聞」の
石井志昂(しこう)編集長(35)は「行政が設ける既存の相談窓口だけではなく、子どもや親が信じられる第三者機関を増やす
必要がある」と話す。
 子どもに異変を感じた親に向けては「子どもに心配していることを伝え、何があったのか率直にたずねてみる。子どもが話して
くれたら、最後まで聞く」とアドバイスする。「一人で抱え込まず、子どもにとって何が一番いいかを探してほしい」
 石井さんは13歳で不登校になった。「つらいなら、学校に無理して行く必要はない。僕は不登校になった後、気持ちを聞いて
くれる人に出会えて救われた。学校で見つけられなくても、そういう人は必ずいることを知ってほしい」(金子元希、長富由希子)

■「指導死」の定義(「指導死」親の会による)
①不適切な言動や暴力行為などを用いた「指導」を、教員から直接受けたり見聞きしたりすることにより、児童・生徒が精神的に
追い詰められ、死に至ること
②妥当性、教育的配慮を欠く中で、教員から独断的、場当たり的な制裁が加えられ、結果として児童・生徒が死に至ること
③長時間の身体の拘束や反省、謝罪、妥当性を欠いたペナルティーなどが強要され、それらへの精神的苦痛に耐えきれずに
児童・生徒が死に至ること
④暴行罪や傷害罪、児童虐待防止法での虐待に相当する教員の行為により、児童・生徒が死に至ること

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平成29年10月17日朝日新聞
小6から確執、「副担任代えて」母は訴えたが 中2自殺

池田中校舎
福井県池田町立池田中学校=福井県池田町稲荷

 福井県池田町の町立池田中学校で今年3月に2年の男子生徒(当時14)が自殺した問題で、家族が生徒を叱責した副担任を代えるよう希望するなど、学校側に改善を求めていたのに、適切な対応が取られていなかったことがわかった。
両者の関係に問題があったことは校長や教頭にも報告されていたが、具体的な対応の指示はなかったという。
 同校は生徒数40人で、1学年1学級。有識者らでつくる調査委員会が作成した報告書によると、副担任は昨年4月、池田中に異動となり、男子生徒のいた2年生を受け持つことになった。副担任は生徒が小学6年の時、同じ小学校の家庭科の講師だった。当時ミシン掛けで居残りをさせられ、帰りのバスに間に合わなかったことがあり、生徒は家族に「副担任は嫌だ」と言っていたという。
 昨年5月、生徒は「副担任が宿題未提出の理由を言い訳だとして聞いてくれない」と言って登校をしぶった。同じ日の午後に担任が家庭訪問をした際、母親は「副担任を代えてほしい」と求めたという。
 しかし、担任は「代えることはできない。副担任と2人にならないようしっかり見ていきます」と答えた。この件は教頭に報告したが、学校からの指示は特になかったという。
 今年2月にも国語の宿題の件で副担任から怒られたとして登校をしぶり、生徒は母親に「副担任は何をいっても言い訳と決めつける」と訴えた。この日夜に家庭訪問をした担任は「副担任については私がちゃんとみます」と答えたが、担任は副担任には特に話をしなかった。また、校長と教頭には、副担任の指導には生徒の気持ちをくんでいない面があるなどと報告したが、校長らからの指示はなかったという。
 また、自殺する前日、副担任から課題の未提出の理由をただされ、生徒が過呼吸を訴えたが、この件についても担任から家族や管理職に報告はなかった。
 報告書では、「校長、教頭、事情を知っていた他の教員も生徒の気持ちを理解し、適切に対応することはなかった」とし、学校の対応について「問題があった」と結論づけた。
 生徒の同級生の保護者によると、15日夜に開かれた保護者会では、生徒の母親の手紙が読み上げられた。自殺後の学校の対応に関して不信感と憤りをつづった内容だったという。
 同校では16日、職員会議を開いて今後の対応を協議したが、町教委によると、具体的なことは何も決まらなかったという。
 一方、福井県教委は16日から同校にスクールカウンセラーを重点的に派遣し、教職員や生徒のケアにあたっている。
17日には県内の小中高校と特別支援学校の校長を集め、再発防止に向けた研修会を開く。淵本幸嗣・県教委企画幹は「大変重く受け止めている。小中高校や特別支援学校の管理職の研修を実施し、再発防止を徹底する」と話す。

「教師のいじめ」「校長先生悪びれず」自殺生徒の母に涙

 福井県池田町の町立池田中学校で今年3月に2年の男子生徒(当時14)が自殺した問題で、亡くなった生徒の母親が
16日夜、生徒の祖父母とともに自宅で取材に応じた。息子が自殺にいたったことについて、「原因については、教師による
いじめだと思っています。本当にただただつらい。息子が戻ってきてくれれば、帰ってきてくれればいいんですけど」と目に
涙を浮かべながら話した。
 母親は息子について、「おじいちゃんおばあちゃん子で、私にもいつも『お母さん』と言って寄ってきて、本当に可愛くて、
可愛くて」と振り返った。
 有識者らによる委員会が作成した調査報告書は9月26日に受け取ったという。報告書は、「関わりの深い担任、副担任の
両教員から立て続けに強い叱責(しっせき)を受け、精神的なストレスが大きく高まった」としている。
 母親は「正直なところ、担任については(息子が)『怒られるんや』と話していたんですが、そんなにひどいとは思わなかった」
と話した。
 母親は息子が副担任から叱責されていることを担任に相談していた。だが、その担任からもひどく怒られていたことを知った
のは、息子の自殺後、生徒たちを対象にしたアンケートの結果を見たときだという。「もし知っていたら、学校になんて絶対
連れて行きませんでした。今でも毎日、毎日悔やんでいます」と後悔の念を語った。
 学校の対応にも、不満や怒りをにじませた。「事故(自殺)当日、校長先生が(面会に)来ても悪びれた様子もなく、頭を下げる
こともなかった」と話した。(山田健悟)

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平成29年10月16日毎日新聞
福井・中2転落死 「担任らに叱責され自殺」町教委報告

 福井県池田町の町立池田中学校で今年3月、校舎3階の窓から2年の男子生徒(当時14歳)が転落して死亡する事故があり、町教委は15日、「担任と副担任から強い叱責を受けて追い詰められた末の自殺」と結論づける報告書を公表した。
 町教委の委託を受け、事故等調査委員会が調査して報告書をまとめた。報告書などによると、男子生徒は昨年10月以降、宿題提出の遅れなどを理由に、担任の30代男性教諭と副担任の30代女性教諭から繰り返し叱責を受け、大声で怒鳴られることもあった。
 生徒は3月14日朝、3階窓から飛び降りて死亡。現場に遺書と見られるノートが残されていた。調査委は「厳しい指導叱責が不適切であることには気づくことができた」と指摘。教諭2人は生徒への対応について管理職に報告をしていなかった。
 堀口修一校長は「指導監督が十分にできず、彼を苦しめ、傷つけ追い詰めてしまった」と謝罪した。【立野将弘】

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平成29年10月16日朝日新聞
中2が自殺、「教師の指導や叱責でストレス」 福井
福井町教委

生徒の自殺について調査報告書がまとまり、記者会見で謝罪する池田町教育委員会の内藤徳博教育長
(左から4人目)ら=15日夜、福井県池田町、堀川敬部撮影
福井地図
 福井県池田町教委は15日、町立池田中学校で2年の男子生徒(当時14)が今年3月に自殺したと発表した。
担任と副担任から厳しい指導や叱責を繰り返され、精神的なストレスが高まったことが大きな要因だと結論づけた。
内藤徳博教育長は「大変深く反省している。学校の対応に問題があった」と謝罪した。
 町教委によると、生徒は3月14日午前8時ごろに登校後、姿が見えなくなった。校舎脇に倒れているのが見つかり、病院で死亡が確認された。遺書とみられるノートがあったという。生徒は校舎3階の窓から転落したとみられ、町教委は4月、有識者らによる調査委員会を設置。ほかの生徒や遺族らから聞き取るなどして、生徒が死に至った背景などを調べてきた。
 調査委員会の報告書によると、生徒は昨年10月以降、宿題提出の遅れや生徒会活動の準備の遅れなどを理由に、担任や副担任から繰り返し叱責を受けた。今年に入っても、役員を務めていた生徒会を辞めるよう担任から叱責され、副担任の執拗な指導も続いた。
 報告書は「大きな精神的負担となるものであった」と指摘。指導に対し、生徒が土下座しようとしたり過呼吸を訴えたりしたことが「追い詰められた気持ちを示すものだ」とした。いじめが疑われる点もあったが、いじめによる自殺ではないと判断したという。
 生徒はこうした指導などについての不満を家族に相談。家族から事情を訴えられた担任は、対応を約束したが、適切な対応を取らず、副担任と叱責を繰り返したという。
 生徒の自殺について、町教委は15日夕、保護者への説明会を開いた。その後、記者会見した調査委員会の松木健一・福井大大学院教授は「叱責を繰り返したことは指導の範囲を超えていた」と述べた。

「聞いた人が身震いするくらい怒られていた」 中2自殺 福井県池田町で自殺したとされる中学2年の男子生徒は、担任や副担任から再三しかられ、「死にたい」と漏らしていた。
町教委は15日、有識者らでつくる調査委員会の報告書を公表。生徒が逃げ場を失い、追い詰められていく状況が詳細につづられていた。
 「改めて亡くなられた生徒さんのご冥福を祈りますとともに、遺族の方々におわび申し上げます」。15日夜に池田町内であった記者会見で、内藤徳博教育長や堀口修一・池田中学校長らは深々と頭を下げた。
 会見では16ページの調査報告書の概要版が配られた。内藤教育長は学校の指導体制に問題があったと認め、「生徒の特性を見極めていきたい。二度と繰り返さぬようにしたい」と述べた。
 調査報告書は男子生徒の自殺の理由を「関わりの深い担任、副担任の両教員から立て続けに強い叱責を受け、精神的なストレスが大きく高まった」「一方で、指導叱責について家族に相談したが、事態が好転せず、絶望感が深まり、自死を選択したものと考えられる」と判断した。学校実施のアンケートで複数の生徒が、男子生徒が死にたいと言っていた、などと回答したことも明らかにした。
 報告書によると、生徒会副会長だった男子生徒はマラソン大会の運営にも携わっていた。だが昨年10月、校門前で担任から大声で、準備の遅れを怒鳴られた。目撃した生徒は「(聞いた人が)身震いするくらい怒られていた。かわいそうだった」と話したという。
 昨年11月、宿題を出していない男子生徒が、理由を生徒会や部活動のためと答えると、副担任は「宿題ができないなら、やらなくてよい」と言った。生徒は「やらせてください」と土下座しようとしたという。
 今年も生徒会の開催日に、担任から大声で「お前辞めてもいいよ」としかられたり、宿題の未提出の理由を副担任にただされ、過呼吸の症状を訴えたりしていたという。
 報告書は、男子生徒は「まじめで優しい努力家だが対人関係が器用でない一面がある」とし、担任らが「よく観察すれば、厳しい指導が不適切だと気づくことはできた」と記した。
 その上で、担任が生徒指導について副担任と協議したり、上司や同僚に報告したりなど、問題解決に向けた適切な行動をとらず、副担任と一緒に厳しい叱責を繰り返したと指摘。土下座や過呼吸の件なども家族に知らせず、その結果、「生徒は逃げ場の無い状況に置かれ、追い詰められた」と結論づけた。

■男子生徒が自殺するまでの経緯
2016年
10月 マラソン大会のあいさつの準備が遅れたことを理由に担任が校門前で大声で怒鳴る
11月 課題未提出で副担任が問いただす。生徒は土下座しようとする
2017年
1月か2月ごろ 生徒会の日に職員室の前で担任から「お前辞めてもいいよ」と大声で叱責される
2月上旬 忘れ物をした生徒を担任が強く叱責
2月21日 登校を拒否
3月6日 担任から課題未提出の指導。早退を求める
3月7日 登校を拒否。「僕だけ強く怒られる」
3月13日 過呼吸を訴える
3月14日 中学校で自殺
(調査委員会の報告書から抜粋)

■教員の指導が原因とみられる主な自殺
 2004年3月 長崎市立中学校2年の男子生徒が、校内でのたばこ所持で、教員から指導を受けた直後に校舎から
飛び降り自殺。遺族が起こした訴訟で、長崎地裁は08年、判決で自殺の原因を「行きすぎた指導」と判断
 06年3月 北九州市立小学校5年の男児が自宅で首つり自殺。新聞紙を丸めた棒を振り回して女児に当たったことを、
担任から胸ぐらをつかまれるなどして注意されていた。両親が訴訟を起こし、福岡高裁で10年、市側が責任を認める内容
の和解が成立
 12年12月 大阪市立の高校2年のバスケットボール部主将の男子生徒が、男性顧問から暴力を受けて自殺
 16年3月 広島県府中町の中学3年の男子生徒が、万引きしたとの誤った情報にもとづいた進路指導を受けて自殺した
ことが学校の報告書で明らかに
 17年2月 愛知県一宮市の中学3年の男子生徒が飛び降り自殺。担任からプリントを何度も配布をさせられるなどし、
ストレスを蓄積させた、と第三者調査委が検証
(学年はいずれも当時)

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