2021年3月25日付朝日新聞

3自殺、厳しい練習は「部活動の意義を逸脱」第三者委

写真・図版

公表された第三者委員会の調査報告書

茨城県高萩市で2019年4月に市立中学3年の女子生徒(当時15)が自殺した問題で、市が設けた第三者委員会は報告書をまとめ、25日に公表した。部活動の顧問が威圧的な指導を繰り返していたことが発覚していたが、第三者委は自殺の原因は複合的で「単純明快な説明は困難」とした。一方で、試合に勝つための厳しい練習を肯定する見解が、威圧的な指導を助長したとして、運動部の改革を提言した。

女子生徒は19年4月30日に自宅で死亡した。市教委によると、遺族から提供された紙に、生徒の手書きで、部活顧問の男性教諭が部員たちに「殺すぞ」「殴るぞ」などと暴言を吐いたり、肩を小突いたりしたことなどが記されていた。市教委の調査に教諭はそうした言動を認め、「叱咤(しった)激励のためだったが、行きすぎだった」と話していた。

今回の報告書は、非公開を望む遺族の意向に配慮して、自殺に至った理由など具体的な記述部分は黒塗りで公表された。

ただ、再発防止策の提言で、学校や自治体の自殺予防対策の不十分さとともに、部活動の問題点についても言及。「勝利経験が生徒の成長を促すとの考えから、試合に勝つための厳しい練習を肯定する見解は、生徒の自主的・自発的な参加という部活動の本来の意義を逸脱している」と指摘した。部活動の参加が事実上義務化されている点は改める必要性があるとした。

報告を受けて、遺族は「先生方が出してくださった結果が、各部署で共有され、いかされることで、同じような悲しい事件が二度と繰り返されることがありませんように心から願います」とのコメントを出した。(片田貴也)

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令和元年5月11日付朝日新聞

(縦横無尽)「言葉の暴力」また部活動で 中小路徹

部活動指導における暴力は殴る、蹴るだけではないことを見つめ直すべき出来事が、また起こってしまった。

茨城県高萩市立中学3年の女子生徒が4月30日に自死した。市教育委員会によれば、生徒が残した紙に、所属していた卓球部の顧問の指導の様子が記されていた。

市教委が記述内容を顧問に確認したところ、顧問は、部員が練習に集中できていない時などに「殺すぞ」「殴るぞ」などの暴言を部員全体に発したこと、練習態度が悪いと感じた時に何人かの肩を小突いたこと、気合を入れるために道具を床に投げつけたり、物をたたいたりしたことを認めたといい、市教委も「不適切」とした。

生徒は3月15日から部活に参加していなかったが、学校には通っていた。部活動が自死につながったかどうかは、今後設けられる第三者委員会の調査を待つ必要がある。しかし、顧問の指導が正しかったかどうかは別問題だ。

2013年、大阪市立桜宮高校バスケットボール部主将が顧問から暴力を受けて自死した事件が明らかになったことなどを機に、指導で直接的な暴力は認められないという認識は高まりつつある。

だが、それ以外の言動についての軽率な考え方はまだ根強く、今回の卓球部の指導からも推し量れる。13年に日本体育協会(現・日本スポーツ協会)などが採択した「暴力行為根絶宣言」では、身体的制裁のみならず、言葉や態度による脅迫、威圧についても「スポーツの価値を否定する暴力行為」と定める。文部科学省も、パワハラと判断される言葉や態度による脅し、威圧は許されない

指導とするガイドラインを作成している。それが、なかなか浸透しない。

昨夏には、岩手県立高バレーボール部に所属していた3年生の新谷翼さんが自死した。原因は県教委の第三者委員会が調査中だが、これまでの調査では、顧問が「背は一番でかいのに、プレーは一番下手だな」「どこにとんでるんだ、バカ」などの言葉をぶつけ、顧問も発言をほぼ認めている。

父親の聡さんは「指導者は悪気もなく、生徒を追い詰める。一人の世界に完結せず、指導者本人が言葉の暴力を自覚できるよう、複数による体制など、誰かの意見が入る機会が必要だ」と話している。(編集委員)

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令和元年5月7日付東京新聞夕刊

茨城・高萩 中3自殺、部活顧問暴言か 卓球部員に「殺すぞ」

茨城高萩

記者会見で謝罪する高萩市教育委員会の大内富夫教育長(右)ら=6日午後、茨城県高萩市役所で

茨城県高萩市教育委員会は六日、市立中三年の女子生徒(15)が四月末に自殺したと発表した。所属する卓球部顧問の男性教諭が、暴言を吐くなど不適切な指導をしていたことが判明。

今後、第三者委員会を設置して自殺との因果関係を調べる。 (水谷エリナ)

市教委によると、女子生徒は四月三十日、自宅で自殺し、家族が見つけた。女子生徒が自筆で残したメモに、教諭が部活中、全部員に対し「ばかやろう」「殺すぞ」などと発言したほか、物を床に投げ付けたり、複数の部員の肩を小突いたりしたことなどが記されていたという。

学校側の調べに、教諭は大筋で事実関係を認め「行きすぎた指導だった」と話したという。

女子生徒は昨年九月、学校のアンケートに「学校は楽しいけれども、部活動はつまらない。やっているとイライラする」と記述していた。女子生徒は今年三月十五日以降、登校していたが、部活には参加していなかった。

教諭の指導を巡っては三月二十日、市教委に匿名の電話があり、学校側が教諭を指導し、部活の様子を見守るなどしていた。

大内富夫教育長は「学校や教委の責任はとても重い。本当に申し訳ない」と述べた。

女子生徒の中学校では七日、全校集会が開かれた。市教委によると校長が「命を大切にしてほしい。悲しみを乗り越え学校生活を充実させて」と呼び掛けた。涙を流す生徒もいたという。

市教委はスクールカウンセラーを常駐させ、心のケアに努めるとしている。

 

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