平成29年5月24日朝日新聞宮城版

中2自殺、小学校教諭も暴言か 「臭いと言われた」

  仙台市で4月、いじめを訴えていた市立中学2年の男子生徒が自殺した問題で、生徒の遺族が「(生徒は)小学校時代から、教諭に『臭い』と言われていた」などと話していることが分かった。

遺族関係者が23日、明らかにした。

 この日、市教育委員会の担当者らが、生徒の自殺を受けて中学校で実施していたいじめについてのアンケート結果を遺族に報告した。この席上で、遺族関係者が市教委にこうした訴えを伝え、小学校時代の状況についても調査するように求めたという。

 遺族関係者によると、生徒は小学4年から6年にかけて、男性教諭から自作のゴム鉄砲を折られたり、「臭い」などと言われたりしていた。市教委の訪問前に、遺族が過去にあったことを思い出した内容として、この関係者に伝えたという。

 市教委は「現時点で小学校教諭による具体的ないじめの事実は把握していないが、今後も引き続き調査したい」としている。

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平成29年5月23日河北新報社説

仙台・中2自殺/体罰が引き金なら許されぬ

  生徒は、教諭の体罰におびえていたという。心に負った傷はどれほど深かったか。信じ難い事実に言葉を失う。

文部科学省がきのう、仙台市の奥山恵美子市長、大越裕光教育長を呼んで指導した。
 青葉区で先月下旬、いじめを訴えて自殺した中学2年男子(13)がその前日、男性教諭から頭を拳でたたかれる体罰を受けていた。1月には、別の女性教諭からも口を粘着テープでふさがれるという信じ難い行為をされていた。
 校長は、これらの重大な事実を自殺から20日間以上たって別の生徒の保護者からの通報で知ったという。

決定的な失態と言わざるを得ない。
 体罰は学校教育法で禁じられている児童、生徒への暴力である。体罰といじめが同じ生徒の身に降りかかり、死に追いやられた可能性がある。
 逆に、今回のことで、学校運営の陰に折り重なっている深刻な悪弊が見えてきた。
 体罰を行った2人の教諭は男子生徒の自殺についての個別の聞き取り調査の際、校長に報告していなかった。
 男性教諭は頭をたたいた行為について「管理職に報告するほどのことではないと判断した」と釈明しているという。

しかし、翌日の自殺との関連に思い至らなかったとは考えられない。包み隠さず事実を話すべきだった。保身を指摘されても仕方あるまい。
 同市教委は、2教諭の怠慢を厳しく指弾している。ただ一連の対応で、学校が校内を掌握する統治機能は十分なのか甚だ疑問だ。
 コントロールが効いていない中でのアンケート調査や聞き取りでは意味がないのではないか。
 見過ごせないのは、別の保護者の関係者が「(男性教師が)男子生徒の頭を日常的にたたいていたと聞いた」と証言し、市教委もきのう「他の生徒に体罰をしていた」と市議会に報告したことだ。
 体罰の常習化などはもってのほかだが、ある程度の力の行使を容認するような雰囲気が校内に浸透していなかっただろうか。
 身体的な痛みや恐怖で生徒を抑えつける体罰は何の役にも立たないことは、現場の教師が一番よく知っているはずだ。いじめとともに徹底的な検証が不可欠だ。
 体罰禁止などの指導徹底を求める文科省の通知では「体罰は、力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為の連鎖を生む恐れがある」と指摘している。
 男子生徒の自殺も、教諭らの体罰が、それを日ごろ見聞きしていた生徒のいじめを誘発し、逃げ場のない所まで生徒を追い詰めたのではないか。その最後の引き金が体罰だったとしたら救われない。
 保護者や市民の学校現場への不信感はピークに達している。市教委、学校は早急に第三者による調査委員会を立ち上げ、自殺の原因究明と、体質改善に歩みだすべきだ。

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平成29年5月23日河北新報

<仙台中2自殺>女性教諭「体罰と認識」

  仙台市青葉区の市立中2年の男子生徒(13)が同校教諭2人から体罰を受けた上、いじめ被害を訴えて4月に自殺した問題で、1月に男子生徒の口に粘着テープを貼った50代の女性教諭が市教委の聞き取りに「当初から体罰という認識があった」と説明していることが22日、分かった。市議会議員協議会で、市教委が明らかにした。
 女性教諭は「授業中に大声を出した男子生徒を注意するための行為。その後の男子生徒の様子に特段の変化がなかったため、校長などに報告しなかった」と話したという。議員らは「体罰だと認識していたなら、生徒に対する人権無視だ」と批判した。
 市教委はまた、自殺前日の4月25日、授業終了のあいさつの際に居眠りしていた男子生徒の頭を拳でたたいた50代の男性教諭が、他の生徒にも頭を小突いたり、髪をかき乱したりしていたことを明らかにした。
 体罰が発覚した今月19日以降、同校の全教諭に聞き取りした結果、他の教諭による男子生徒への体罰は確認されなかったことも報告した。
 市教委は22日、教諭2人を無期限の自宅待機とするとともに、全市立学校に体罰禁止の徹底を通達した。
 協議会後、奥山恵美子市長は特に支援が必要な児童生徒への対応に関し、学校や支援機関の連携の在り方を考える専門組織を発足させる方針を示した。

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平成29年5月10日河北新報社説

仙台・中2自殺/危機管理の意識が足りない

 子どもを守るのは社会の責務なのに、またも中学生の尊い命が失われてしまった。悲憤を抑えきれない。
 仙台市青葉区で先月下旬、市立中2年男子(13)が、自宅近くのマンションから身を投げた。市立中生の自殺はこの3年間で3人目。教育関係者は、この異常事態を深刻に受け止めるべきだ。
 当初校長は「同級生とのトラブル」と表現し「その都度指導し解消した」と説明。しかし、数日して「いじめだった」と認めた。市教育長は「自死の直接原因かは不明」とし因果関係を調べるという。
 事が起きてから重大性に気付き、収拾に追われるパターンの繰り返しだ。どうしてこれまでの教訓が生かされないのか。学校や市教委の危機管理意識を問わざるを得ない。
 男子生徒は昨年6月と11月にあった学校などのアンケートで「いじめられている」と回答した。「無視される」「物を投げられる」とも記した。その後、机に「死ね」と書かれていたこともあった。
 国はいじめ対策で、当事者の訴えを幅広くすくい取り、速やかに対応する基本方針を明確にしている。
 いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」のガイドラインでは、「疑い」の段階であっても本人や保護者の申し立てを重視し「重大事態」とみなすよう学校側に求める。自殺など最悪の結果を招かないための防護線といえる。
 これに照らせば、学校は昨年のアンケートの段階で危険性を認識し、詳細調査に入るべきだったのだろう。

生徒間の意識が変わるポイントになった可能性はある。
 ただ、いじめ防止は法が定めた単一的なマニュアルの上意下達だけでは実現されない。最終的に、現場の教員が個々のケースごとに生徒たちに向き合い、対応力を発揮してこそ法制度も機能する。
 学校は連休中、全校アンケートを実施、回収した。背景を調べることから検証を始める。市教委は第三者委員会による調査も行う。いじめとの関連という核心部分の解明は難しい作業となろう。
 今回の件は、過去のいじめ自殺の検証と再発防止の取り組みのさなかで起きた。これらを一連の問題として捉える視点も当然必要だろう。
 指導に構造的な問題がありはしないか。なぜ連鎖するように生徒が自ら命を絶たねばならなかったか。

遺族はもちろん、同級生たちにもしっかり聴き取りし、納得できる共通認識を探ってほしい。
 市教委は1月、今後5年間の教育プラン「第2期市教育振興基本計画」で、いじめ防止を最優先課題に掲げ、独自の施策をまとめた。処方箋はできつつあるのに、厳しい現実がそれを追い越していく。
 どうすれば、いじめを克服し、命を大切にする教育が実現できるのか。日々の実践の中からその道筋を見つけていくしかあるまい。

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平成29年5月1日河北新報

<仙台中学生自殺>「いじめ続いていた」遺族関係者

 仙台市青葉区の市立中2年の男子生徒(13)が自殺した問題で、遺族関係者が30日、取材に対し「いじめはずっと続いていた。トラブルが解消した事実はない」と証言した。校長は4月29日の記者会見で「生徒間で悪口を言い合うトラブルはあったが解消した」と説明。遺族関係者の認識と大きく異なっている。
 遺族関係者によると、同じクラスの複数の男子生徒からターゲットにされ、集団でからかわれたり、「臭い」「ばか」などと悪口を言われたりした。最近も「同級生にやられる」などと悩んでいたという。
 遺族関係者は「入学した直後から、ずっと同級生による嫌がらせに悩んでいた。トラブルが解消した事実はなく、学校側の説明に憤りを感じる」と話した。
 市教委によると、男子生徒は昨年6月と11月、全校生徒を対象にしたアンケートに「いじめられている」と回答。「無視される」「物を投げられる」などと書き込んでいた。
 校長は会見で「トラブルはその都度指導し、その後解消した。どちらが一方的という話ではない」との見方を示し、「いじめとは判断していない」と述べた。
 3月まで勤務した前校長は30日、取材に「全て市教委に伝えてある。何も話すことはない」と答えた。
 市教委によると、男子生徒は4月26日午前10時15分ごろ、自宅近くのマンションから飛び降り、死亡した。
 市内の中学校では2014年9月、泉区の館中1年の男子生徒=当時(12)=がいじめを苦に自殺。16年2月にも同区の南中山中2年の男子生徒=同(14)=が自殺し、市教委の第三者委が「いじめによる精神的苦痛が自殺の一因」と結論付けた。
 この2年7カ月で市内の中学生3人が自殺するという異常事態に、館中と南中山中生徒の父親2人は「息子の死が何ら教訓になっていない」と憤った。
 学校側は5月1日夜、初めて保護者説明会を開く。

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平成29年4月30日朝日新聞宮城版

いじめ調査「複数の同級生がからかう」 仙台の中2自殺

 仙台中22

記者会見で市立中2年の男子生徒が自殺したことを発表する仙台市教委の大越裕光教育長(左)=仙台市役所

  また、いじめが疑われる自殺が起きた。一つの自治体で3年足らずの間に、いじめが絡む中学生の自殺が2件発生。そして今回亡くなった仙台市立中学2年の男子生徒(13)もいじめを訴えていた。この異常な状況で浮き彫りになったのは、市教育委員会の問題意識の希薄さだった。

 29日午後に記者会見した大越裕光・市教育長と校長らは当初、「いじめというより、からかい」「『もう帰れ』『うざい』など、子どもが普通に使う言葉の言い合い」といった発言に終始。いずれも男子生徒と複数の同級生との「1対1の問題」とし、状況を深刻なものと捉えていない様子が随所に伺えた。

 ただ、約2時間続いた会見の後半で状況は一変する。1年生時に関わった同級生の数は「クラス12人の男子のうち半数」だったことが判明。さらに、いじめ調査のアンケートで、別の生徒から「男子生徒が複数の同級生にからかわれている」と指摘されていたことも明らかになった。

 この段階で「個人レベルのからかい」は「集団でのいじめ」という構図が色濃くなった。結果的に、男子生徒や別の生徒が訴えた「SOS」を、学校側が矮小化(わいしょうか)した格好だ。

 一方、同級生や地域での取材では、男子生徒がいじめで真剣に悩んでいたことが分かった。

 同級生の一人は「1年生の1学期に、クラスで『臭い』などと言われ『死んでも誰も悲しまない』という悩みを聞いた」と打ち明ける。ただ、その後は話を聞かなくなり、「落ち着いたのかと思っていた」。

 男子生徒を知る高校生も「クラス全体でいじるような状況が1年生の時からあったと聞いている」。その際、教員はただ見ていたようだという。

 3年生の生徒によると、今学期に入っても男子生徒の机に「死ね」と書かれたといううわさを聞いた。

「友だちとは『いじめで亡くなったんじゃないか』と言い合っている」と話す。在校生には28日に校内放送で伝えた。泣いて過呼吸になった生徒が何人もいたという。

 一方、「明るくていいやつで、いじめられていたとは分からなかった」「よく変顔をして笑わせてくれた」と話す生徒もいた。(山本逸生、矢田文、加藤秀彬)

 

■「恐れていたこと起きた」

 仙台市では2014年と16年にも、いじめを受けた市立中学生が自ら命を絶った。遺族らは、教訓が全く生かされていない現状に憤り、早期に他の生徒へアンケートをするよう求める。

 昨年2月に亡くなった2年の男子生徒の父親は「一番恐れていたことが起きた。本当にショック」と絶句する。

悲しむ遺族を増やしたくないと、別の遺族とともに市教委に再発防止を訴えてきた。自分たちの事案から、解決したように見えた後のフォローが大切との教訓が導き出されたはず――。「結局はひとごとで現場に危機感がない」

 真相を知るため、少しでも早いアンケートを強く訴える。「時間が経つと学校は守りに入る。連休の前にやらないと隠されてしまう」

 98年に15歳の一人娘をいじめによる自殺で亡くした川崎市のNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」理事の小森美登里さん(60)も「『亡くなった生徒について知っていることがあるか』など一日も早く全生徒に調査し、結果を遺族と教育委員会、学校が共有することが重要」と指摘する。

 いじめ防止対策推進法は、いじめで命を失うなどの重大事態が起こった疑いがあれば、学校がアンケートなどで事実関係を明らかにし、保護者らに情報提供するよう定めている。2人の中学生の死に触れ、「全く反省していない。これが重大事態でないというのなら、事実の誤解ではなく、曲解しようとしているとしか思えない」。

(中林加南子、山田雄介)

 

■問題意識の甘さ露呈

 複数の同級生による「いじめ」の疑いを市教委が知ったのは、29日の記者会見の場だった。

 男子生徒によるいじめ調査アンケートでの訴えを「1対1のトラブル」と言い張る学校側に、記者団が他の生徒の記述を確認するよう求めて初めて、こうした事実が明らかになった。

 「今知った」「我々は把握していない」。飛び出す発言の数々は市教委の問題認識の甘さを露呈した。

 クラスの男子半数とのトラブルを訴えた男子生徒。主に1対1の言い合いにせよ、相当な心の負担だったはずだ。

いじめ防止対策推進法は、いじめを「心身の苦痛を感じているもの」と定義する。

 心の問題であるいじめは当事者同士の表面的な言動だけでは気づかないことが多い。周囲の生徒らの話など客観的な情報も重要だ。今回は他の生徒の指摘さえ見過ごされた。これでは、勇気を出して問題を訴えた生徒の思いを踏みにじったに等しい。

 生徒らの叫びが学校の一部にしか届かなかったことが、自殺という最悪の結果を招いた恐れもある。市教委は傍観者ではない。主体的に、問題の解決に関わる姿勢が問われる。(森治文)

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平成29年4月30日河北新報

<仙台中2自殺>昨年の調査 いじめ訴え

 仙台中2

自殺した男子生徒が通っていた仙台市青葉区の市立中

  仙台市教委は29日、青葉区の市立中2年の男子生徒(13)が26日に自殺したと正式に発表した。

学校や市教委が昨年実施したいじめに関するアンケートで、男子生徒が「無視される」「物を投げられる」などと訴えていたことも明らかにした。
 いじめと自殺の関連は不明としたが、学校と市教委は他の生徒らへの聞き取りやアンケートを実施し、男子生徒の学校での様子やいじめの有無を詳しく調べる方針。
 大越裕光教育長や校長らが市役所で記者会見した。市教委によると、男子生徒は26日午前10時15分ごろ、自宅近くのマンションから飛び降り、死亡した。1時限目の授業後、上履きのまま校外に出たとみられ、マンション近くのアパート駐車場に制服の上着と生徒手帳が残されていた。遺書は見つかっていない。
 いじめに関するアンケートは、全校生徒を対象に昨年6月と11月の2回実施。当時中1だった男子生徒は「冷やかしや悪口、無視される」「物を投げられる」などと回答した。
 その後、学校による同級生男子6人への聞き取りで「臭い」「ばか」といった男子生徒に対する悪口が確認されたが、校長は会見で「お互いに悪口を言い合う状態で、双方を指導して解消した」と強調した。
 校長によると、男子生徒はほとんど欠席もなく、26日も普段と変わらず登校した。自殺の事実は28日に全校放送で生徒に報告し、保護者向けの説明会を5月1日夜に開く。
 市内の中学校では2014年9月、泉区の館中1年の男子生徒=当時(12)=がいじめを苦に自殺。

16年2月にも同区の南中山中で2年の男子生徒=当時(14)=が自殺し、市教委の第三者委員会が「いじめによる精神的苦痛が自殺の一因」と結論付けた。
 大越教育長は相次ぐ自殺に「痛恨で言葉を失っている。自死につながらないよう、さらに対策を打ち出さなければならない」と語った。遺族は市教委を通じて「家族の現在の願いは、大切に育ててきた息子を安らかに見送ること」とのコメントを出した。

 

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