2020年12月23日付毎日新聞

愛知の中3自殺訴訟 一宮市が和解案を拒否「第三者委の報告書と差」

 名古屋地裁一宮支部=愛知県一宮市で、川瀬慎一朗撮影
  愛知県一宮市立中学3年の男子生徒(当時14歳)が2017年に自殺し、両親が市に損害賠償を求めた訴訟で、市は23日、名古屋地裁一宮支部の和解案に応じない方針を明らかにした。審理継続を求める上申書を同日、地裁支部に提出したという。 地裁支部は11月12日、市が請求額の約9割を支払うとし、学校側の安全配慮義務違反など原告の主張をほぼ認める内容の和解案を示した。次回和解協議は24日。

 市の対応について、原告側代理人の鈴木泉弁護士は取材に「和解案は裁判所が双方の主張を踏まえて出したもの。今さら主張をする市に憤りを感じる」と話した。【井口慎太郎】

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2020年11月13日付毎日新聞

愛知・中3自殺訴訟 名古屋地裁支部が和解案提示 「一宮市が請求額9割支払う」内容

愛知県一宮市立中学3年の男子生徒(当時14歳)が2017年2月に自殺したのは、担任教諭との関係が悪化したのに学校が適切な対応をしなかったためなどとして、両親が市に損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁一宮支部(坪井宣幸裁判長)は12日、市が請求額の約9割を支払うなどとする和解案を示した。両親の代理人弁護士によると、学校側の安全配慮義務違反や予見可能性など原告の主張をほぼ認める内容。

訴状によると、担任教諭は生徒らにばかりプリント配りをさせたほか、体育祭の組み体操で手を骨折した際も配慮がなかったとしている。進路指導で別の教諭から受験について心ない発言もされ、生徒が強いストレスを抱えたとした。生徒は17年2月6日夜、大阪市の商業施設から飛び降りた。直前に友人に渡したゲーム機に「担任に人生全てを壊された」と記していたという。

和解案では、担任との不和などで強い精神的負担や葛藤を抱えていた生徒に、受験直前の面談で進路指導教諭が「全部落ちたらどうする」と発言したことに、「衝動的に自死を選択することは予見できた。通常の受験生でも強い衝撃を受ける。生徒の心情を理解し寄り添う姿勢が感じられない」と指摘。「無用に強い精神的不安、失望など負荷をかけるもので安全配慮義務違反に当たる」とした。

両親の代理人弁護士は「ほぼ我々の主張を認めている。和解案をしっかり受け止めたい」と話し、生徒の母親は「本人が帰ってくるわけではないが、訴えが裁判所に認められたことはよかった」と語った。

市側は自殺と学校側対応に因果関係はないとして請求棄却を求めてきた。取材に対し担当者は「和解案の内容を確認していきたい」と話した。和解の成立には市議会に諮る必要がある。次回和解協議は12月定例市議会後の同月24日に開かれる。【川瀬慎一朗】

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平成30年2月7日中日新聞

中3自殺、一宮市を提訴 両親「担任のいじめなど原因」

愛知県一宮市立浅井中学校3年の男子生徒=当時(14)=が昨年2月、「担任に人生を壊された」とする遺言を残して飛び降り自殺した問題で、男子生徒の両親が6日、自殺は、当時担任だった男性教諭による「いじめ」などが原因として、一宮市に損害賠償を求める訴えを、名古屋地裁一宮支部に起こした。

訴状によると、両親は男子生徒が担任の男性教諭から頻繁にプリントを配らされたり、他の生徒より頻繁に叱るなどの「いじめ」を受けていたと主張。一昨年9月の体育祭で両手親指を骨折し、筆記ができないのに体育祭の感想文を書くよう指示し、代筆も認めなかったなどと訴えた。

進路指導の際には、別の教諭が受験の6日前の面談で志望校について「全部落ちたらどうする」と配慮のない言葉を投げかけることもあったという。

これら複数の教職員による行為によって男子生徒が「自死を選択するまで追いつめられた」としている。

市教委が設置した第三者委は昨年8月、担任との関係悪化が自殺の一因とする検証結果をまとめ、「学校の対応は不十分」とする報告書を公表。

ただ、この中では、担任の「いじめ」と取れる内容を認めるのは困難との見解を示している。

6日に市役所で会見した男子生徒の父親(50)は「第三者委の報告書は、事実と違うところが多い。学校、市教委全体に怒りがある」と語った。

母親は「息子が命をかけて訴えた真実が知りたい」と話した。

中野和雄教育長は「お亡くなりになりました生徒さんのご冥福をお祈りいたします。(訴訟については)まだ訴状を見ていないので、コメントは差し控える」とのコメントを出した。

生徒は昨年2月6日午後11時35分ごろ、大阪市のJR大阪駅前にある商業施設7階から飛び降りた。生徒が友人へ託した携帯ゲーム機には「担任によって学力、存在価値、生きがい、性格、進路etc…私の人生全てを壊されたからですね」などと記されていた。当時の校長は一度、「担任によるいじめがあった」とPTA総会で認め、直後に撤回している。

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平成29年8月25日朝日新聞
中3自殺「学校の対応不十分」 関係悪化でストレス蓄積
中3自殺
記者会見した第三者調査委員会の福田晧一委員長(左から2人目)ら=24日午後、愛知県一宮市役所
 愛知県一宮市立浅井中学校3年の男子生徒(当時14)が2月に大阪市内のビルから飛び降りて自殺した問題で、検証していた第三者調査委員会(福田晧一委員長)は24日、「学校の対応が不十分だった」とする報告書を公表した。
教員との関係悪化でストレスが蓄積したことなどが自殺につながったという。
 男子生徒の自殺をめぐっては、担任への不信感を募らせていたと遺族が主張。昨秋の体育祭で生徒が骨折した際に担任が対応しなかったことや、プリント配布を何度もさせた行為などがあったと訴えていた。また、当時の校長が「教員によるいじめとの認識」と発言したが、後に撤回。市教委が設置した第三者委が検証していた。
 報告書によると、男子生徒は体育祭でけがをした際、担任の対応に不満を持って関係が悪化した。さらに、2月の三者面談で進路指導の教員から「全部落ちたらどうする」と言われたことなどでストレスを増大させたという。
 第三者委は「(男子生徒は)物事を否定的に捉えやすく、白黒はっきりさせたがる性格だったこともあり、自ら命を絶つ方向に進んでいったと考えられる」と推定。支援が必要な生徒なのに、教員間で情報が共有されなかった点などを批判した。一方、遺族が主張した「プリントの配布」や、当時の校長が発言した「教員によるいじめ」は、いずれも「認められなかった」。学校の対応が不適切だったかどうかも言及しなかった。
 報告書を受け取った市教委の中野和雄教育長は記者会見で、「学校として至らぬ点があったのは痛恨の極み。
相手の思いをしっかり理解し、くみ取ることができなかった。再発防止に努めたい」と話した。
 男子生徒の父親(50)は「とても納得いくような報告書ではない。あれだけ調査して、肝心なことが書いていない。
いろいろな要因が取り上げてもらえず、まるでこちら側に非があるかのようだ」と批判している。(中野龍三、浦島千佳)
■これまでの経緯
2017年2月6日 男子生徒が大阪市内のビルから飛び降り自殺
       10日 愛知県一宮市教育委員会が自殺を発表し、「悩んでいたことに気づかなかった」と書面でコメント。
遺族側は「学校に再三相談していた」と抗議
11日 市教委が「不適切だった」とコメントを撤回
  12日 PTA臨時総会で学校側が「教員によるいじめとの認識」と発言
  13日 学校側が会見し、前日の発言は「遺族の意向をくみ取って話した」と説明を一転。いじめの有無は第三者調査委員会で検証するとした。市教委の聞き取りに担任は「いじめはしていない」と説明していることが判明
  17日 市教委が第三者委を設置
  23日 第三者委が初会合
6月2日 遺族側が第三者委に「調査状況を知らせるよう求めたが回答がない」として抗議書を提出
8月24日 第三者委が検証報告書を公表

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平成29年2月15日中日新聞

骨折で成績低下、志望校進学厳しく 一宮・自殺の中3生徒

  愛知県一宮市立浅井中学校3年の男子生徒(14)が、大阪市内の商業ビルから飛び降り自殺した問題で、男子生徒が昨年9月の体育祭で両手親指を骨折した後、けがでペンをうまく握れず「受験前なのに学習が遅れている」と家族に訴えていたことが分かった。骨折後、2学期の成績が落ち込み、志望校への進学は厳しい状況だったという。

 両親らによると男子生徒は理数系の科目が得意で、県外の工業高等専門学校が第1志望だった。仲の良い友人と一緒に目指し、母親と見学にも行っていた。

 ところが、骨折で9月末から1カ月ほど通院。ペンを持って計算や英単語を書くことなどができず、「書かないと覚えられない」と悩んでいた。母親の要請で学校は10月の中間考査で、解答時間の延長と別室で受けさせるなど対応した。しかし、2学期の内申は1学期より少し下がり、模試の偏差値も10ポイント近く下落。高専への進学は、2月の三者面談で「成績的に厳しい」と伝えられていたという。

 市教委によると、男子生徒のけがの理由を母親が電話で担任に問い合わせた際、担任は「用事がある」と言ってすぐに対応せず、教頭に報告もしていなかった。また、学校の災害共済給付制度を利用してけがの治療費などを請求する書類を生徒が担任に提出したが、突き返されたという。担任はこれらの一部を否定しているが、同校はこの対応を「不適切」としている。

 両親は「学校の不適切な指導とともに、骨折が原因で思うように学力が伸び悩んだことも、自殺のいろんな理由の1つだったのではないか」と話した。

 市学校教育課の坂井辰美主監は取材に「授業中にノートの補助や授業要旨のプリントを準備するなど配慮するべきだった」と話した。

 男子生徒は自殺する前に友人へ託した携帯ゲーム機に、メモ機能を使い、「担任によって学力、存在価値、生きがい、性格…私の人生全てを壊された」などの文章を残していた。

 浅井中は13日、全校生徒600人にアンケートを実施。14日から生徒向けにスクールカウンセラーも配置し、11人がカウンセリングを受けた。

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平成29年2月13日中日新聞夕刊

「担任の指導、不適切」 一宮・中3自殺で校長謝罪 

 愛知県一宮市立浅井中学校3年生の男子生徒(14)が6日夜に大阪市内の商業施設のビルから飛び降りて自殺した問題で、上田隆司校長が13日、市役所で会見し、「担任の生徒への指導が不適切だった」と謝罪した。

前夜に同校であった臨時のPTA総会で「担任のいじめがあった」と発言したが「遺族の気持ちをくみ取り、いじめという言葉を使った。いじめの有無は不明で、第三者委員会で検証していく」と修正した。

 PTA総会は12日午後7時すぎから体育館であり、1~3年生の保護者460人が参加。担任の男性教諭は出席しなかった。

 出席者らによると、上田校長は冒頭「かけがえのない生徒の命を守れなかった」と謝罪。「教員によるいじめという認識に立ち、改善に取り組みたい」と言及。担任に対し「厳しい処分を考えている」と話した。

 上田校長の説明によると、男子生徒は、普段から担任の男性教諭に不信感を持っていたという。原因として、プリント類の配布を男子生徒ともう1人の生徒ばかりに命令していたことや、昨年の体育祭の組み体操で両手の親指を骨折したのに十分な対応をされなかったことなどを挙げた。

 その上で「学校の対応は生徒にとって十分でなく、思い悩んで今回のような取り返しのつかない結果となった」と話した。

 13日の会見で上田校長は、男性教諭は、男子生徒の保護者が手のけがについて電話で問い合わせた際に、同僚との飲み会を優先して対応しなかったことや、昨年度のクラスの級長を決める選挙で、自らの都合の良いように結果を改ざんしていたことなど問題があったことを明かした。

 男性教諭は男子生徒への対応について「プリントの配布を頼んだことはあったが、いつもではない」などと一部を否定しているという。

 13日朝には学校が全校集会を開き、全校生徒に謝罪した。

 男子生徒は6日深夜、大阪市のJR大阪駅前にある商業施設「グランフロント大阪」の7階から飛び降りた。

同級生へ預けた携帯ゲーム機に、メモ機能を使った「ゆいごん」と記した文書があり、「担任に私の人生を全て壊された」などとつづられていた。

 男子生徒の父親は本紙の取材に「立場を利用して嫌がらせをしたということで、いじめと言われれば、そう思う。ただ、学校は担任だけの責任にしようとしているようにも感じる。相談していたのに対応しなかった学校の責任の方が大きいと思っている」と話した。

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平成29年2月12日毎日新聞

愛知・中3飛び降り死担任教諭に不信感 市教委が公表 

 愛知県一宮市立中学校3年の男子生徒(14)が6日に大阪市のビルで飛び降り自殺したとみられる問題で、一宮市教育委員会は11日に記者会見し、この生徒が担任の男性教諭に不信感を持っていたことを明らかにした。

市教委は第三者委員会を設置し、原因と担任教諭や学校の責任などについて調査する。

 市教委によると、生徒は昨年9月の体育祭の組み体操でけがをして、病院で両手親指の骨にひびが入ったことが分かった。それを母親が学校に連絡した際、担任教諭はけがを教頭に報告しておらず、対応などから不信感を持つようになったという。保険手続きにも不備があり、両親は改善を求めていた。

 生徒も両親に「担任が親身になってくれない」と話していたとされる。学校側は別の教諭が見守ったり、進路指導の担当を代えたりして対応をしていた。

 両親は「自殺の原因は不信感がたまったから」と話しているという。生徒は今月6日の夕方、友人に「さよなら」と言って行方が分からなくなった。友人に預けた携帯ゲーム機に「遺言」と題して「担任によって学力、存在価値、生きがい、性格、私の人生全てを壊された」などと書き込まれていた。

 記者会見した中野和雄教育長は「行動の裏にある心が見えなかった。おわびしたい」と謝罪した。さらに「自ら死を選ぶまでに思い悩んでいたことに気付かず、申し訳ない。責任を感じている」とした10日のコメントを「担任と学校に対する不信感などから生徒が自ら死を選ぶまでに至ったことは責任を感じている」と訂正した。【河部修志】

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