平成31年3月27日付東京新聞

取手中3自殺 いじめ隠蔽認める 市教育長、否定一転「意図的」

茨城県取手市で二〇一五年十一月に市立中学三年の女子生徒=当時(15)=がいじめを苦に自殺した問題で、いじめの意図的な隠蔽を否定していた市の伊藤哲教育長は二十六日、一転して「客観的には意図的と判断せざるを得ない」と認めた。当初いじめの事実さえ認めなかった市教育委員会の隠蔽体質が改めて問われそうだ。市教育委員会が同日開いた臨時会合後の記者会見で明らかにした。

市教育委員会は一六年三月、自殺について「いじめによる重大事態ではない」と議決。不信感を抱いた生徒の両親からの訴えで県が調査委員会を設置。二十日に公表された調査報告書は、いじめと自殺の因果関係を認めた上で、市教委事務局の職員が「議決を導くため、教育委員に都合の悪い情報を提供せず、ミスリードするような姿勢だった」と意図的な隠蔽を示唆していた。

報告書の発表直後、伊藤教育長は「意図的、恣意的ではなく、いじめ防止対策推進法の無理解による」と述べていた。この点について伊藤教育長は会見で「隠蔽する意図を確認できていないという意味で発言していた」と釈明した。

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平成31年3月22日付朝日新聞社説

いじめ自殺 危機感持ち防止へ動け

生徒が発するSOSを、先生が見逃してしまう。それどころか、先生の言動が生徒を死へと追い詰める。

こんな悲劇を繰り返してはならない。学校の関係者は、いじめ防止と異変の早期察知へ、強い決意で態勢を整えてほしい。

いじめが原因で生徒が自殺した二つの事件を巡り、自治体の調査委員会が相次いで報告書を公表した。

兵庫県尼崎市では2017年末、市立中学2年の女子生徒が自殺した。

この生徒へのいじめはクラスから部活動、SNSへとひどくなっていった。苦しみ、孤立感を深めた生徒はアンケートなどでいじめのサインを何度も発していたが、クラスの担任、学年主任、部活の顧問ら関わりがあった6人の先生は、誰もそれを受け止められなかった。

生徒が属していた部活では部員間のもめ事が続いていて、それをこの生徒が言いふらしていると誤解した2人の先生のうち、1人が強く叱責。その直後、生徒は自ら命を絶った。

茨城県取手市では15年秋、市立中3年の女子生徒が自殺した。同級生によるいじめを教師側が認識できず、生徒と加害側2人のグループが授業に遅刻した際は、この生徒だけが担任教師に叱責された。校舎内のガラスが割れたトラブル時には、現場にいなかったこの生徒も連帯責任を問われ、自殺に至った。

それから3年余り。市教委がいじめと自殺の関係を否定するような議決をし、不信を強めた生徒の両親からの訴えで茨城県が調査する異例の展開を経た報告書には、生徒が絶望へと追い込まれる過程が記されている。

先生の感覚の鈍さと、事実関係を把握せずに思い込みで行われた理不尽な指導。二つの事件には共通する問題点が浮かび上がる。先生が自らを省みるのはもちろん、学校に配置されるカウンセラーや保健師、事務職員らも含め、しっかりとアンテナを張り、話を聞き、情報を共有する組織作りが欠かせない。

学校の外にも多様な窓口を設けることが大切だろう。

兵庫県川西市の「子どもの人権オンブズパーソン」は、条例に基づく相談・救済機関だ。いじめや不登校など幅広い問題に関して、学校の対応に限界を感じた子や保護者と向き合う。

同様の仕組みは約30自治体にあるが、NPOや弁護士会の窓口とともにもっと増やしたい。

亡くなった2人を思い、教訓を共有し、必要な対策をとる。再発を防ぐための取り組みを急がねばならない。

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平成31年3月21日付東京新聞

取手中3自殺、いじめ認定 茨城県調査委「担任の言動が助長」

茨城県取手市で二〇一五年十一月、市立中学三年の中島菜保子さん=当時(15)=が自殺した問題で、県の調査委員会は二十日、同級生によるいじめと自殺との因果関係を認める報告書を公表した。報告書では「担任の言動がいじめを誘発し助長した」とも指摘した。

報告書によると同級生の女子生徒三人が菜保子さんを連日のように「くさや」と呼び、他の生徒に「臭くない?」と告げるなど、複数の行為をいじめと認定した。

自殺当日には、いじめていた生徒が教室のガラスを割ったのに、担任が事実関係を調べないまま、無関係な菜保子さんも連帯責任として指導。「いじめで心理的に追い詰められていた菜保子さんをさらに深い苦しみに陥れ、自殺の引き金になったといえる」とした。

いじめた生徒と菜保子さんが遅刻した際には菜保子さんだけをしかるなど、それまでの担任の言動がいじめを助長したと指摘。いじめた生徒と一体的に「菜保子さんの心理に影響を与えていった」と認定した。

当初調査した取手市教育委員会はいじめを確認できず、一六年三月、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」に該当しないと議決していた。県調査委委員長の栗山博史弁護士は「両親は最初からいじめによる自殺を訴えており、法律などから重大事態は明らか。ここまで違法な市教委の対応は珍しい」と批判した。 (鈴木学)

<取手市立中3女子生徒いじめ自殺> 2015年11月、市立中学3年の中島菜保子さん=当時(15)=が日記に「いじめられたくない」などと書き残して自殺した。市教委は、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に当たらないと議決したうえで、第三者委員会を設置した。疑念を抱いた両親は17年5月、文部科学省に、市教委の調査の中止と第三者委の解散を申し入れた。市教委は直後に議決を撤回。同年12月、両親の求めに応じ、県が新たな第三者委を設置し、いじめと自殺の因果関係を調べていた。

取手市調査報告書ポイント

取手中3自殺 娘の訴え、やっと届いた 遺族「3年超…長すぎた」

報告書の公表を受け、記者会見する中島菜保子さんの父考宜さんと母淳子さん=20日午後、茨城県庁で
 取手市遺族

茨城県取手市の市立中学三年だった中島菜保子さん=当時(15)=が「いじめられたくない」と書き残して自ら命を絶ち、間もなく三年半。県の調査委員会が二十日に公表した報告書では、「くさや」と呼ばれ、アルバムに中傷を書き込まれるなど、壮絶ないじめの実態が示された。両親は「娘の訴えが受け入れられた。やっとたどり着いた」と語った。 (越田普之、宮本隆康)

「ほんとうんこだよ」「クソってるね」。報告書によると、卒業時の思い出となるはずの菜保子さんのアルバムに、複数の加害生徒から心無い言葉が書かれていた。ほかにも、加害生徒は菜保子さんに視線を送った上で、こそこそ話をしたり、体育の授業で仲間外れにしたりした。

報告書では担任教諭の責任も重いとした。加害生徒と菜保子さんが授業に遅刻した際などに、菜保子さんだけを叱責し、新たないじめを誘発する土壌をつくったと指摘。加害生徒と担任が「補完し合いながら」菜保子さんを追い詰めていったと認定した。

「認定に三年以上かかったのは、あまりにも長すぎた」。県庁で記者会見した父親の考宜(たかのぶ)さん(47)は、取手市教育委員会が当初「いじめによる重大事案に該当しない」と判断したことへの不信感を、あらためてにじませた。

報告書は両親が訴えてきたことに沿う内容だが、菜保子さんに報告するつもりはないという。「一つの区切りのようにとらえられるかもしれないが、私たちは娘のことを背負って生きていかなければならない」と声を絞り出した。

取手市の藤井信吾市長は会見し「当初の対応が不適切だったために、遺族に大変長い間、心痛をかけたことに深くおわびする。本来、市の職責で調査しなければいけなかった」と謝罪。

伊藤哲教育長は「事実関係は市教委がつかんでいる内容と、それほど異なっていない。事実をどう受け止めるかが大切。反省をしなくてはいけない」と話した。

取手市いじめ認定

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平成30年4月7日付朝日新聞茨城版

保護者会開催めど示せず いじめ自殺で新教育長

 取手市長

就任会見する伊藤哲教育長=取手市藤代

取手市立中学校3年の中島菜保子さん(当時15)が自殺した問題で、新たに教育長に就任した伊藤哲(さとし)氏(61)が6日、市内で会見した。市教委がいじめを認めなかった当初の対応を「重大な過失だった」と認める一方、保護者会開催のめどは明言しなかった。

伊藤氏は中島さんの両親に「長年ご心労をおかけしていることを深くおわびする」と頭を下げ、「この事案を改めてとらえ直して誠実に取り組んでいく」との決意を表明。2005年から3年間、市教育長を務めており、「経験を生かしたい」と抱負を述べた。

また、市教委が「いじめによる重大事態に該当しない」と議決したうえで、調査委員会を設置したことについて、「重大事態の認識が欠けていたのが最大の過ち」と改めて認めた。

一方、3月末の保護者会は元担任教諭が体調不良を理由に欠席して混乱。両親は夏までに元担任が出席しての開催を望んでいるが、伊藤氏は「医師の判断もあり、開催時期や方法を含めて探っていきたい」と述べるのにとどまった。両親との信頼回復についても「話し合う機会を何とかつくりたい」と話した。

伊藤氏は県の教育行政に携わり、3月まで県教育財団専務理事を務めた。辞任した矢作進前教育長の後任に1日付で就いた。任期は20年3月までの2年間。(佐藤清孝)

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平成30年3月19日付毎日新聞東京本社版夕刊

取手中3自殺 「いじめ隠蔽」、市教委謝罪へ 保護者会で

取手中3いじめ

大井川和彦知事(手前)に徹底した調査を依頼する中島菜保子さんの両親=水戸市笠原町の県庁で2017年11月6日午後2時30分、玉腰美那子撮影

茨城県取手市で2015年11月、市立中学3年の中島菜保子さん(当時15歳)がいじめを苦にする書き込みを日記に残して自殺した問題で、市教育委員会が24日、当時の同学年の生徒を対象に2年ぶりの保護者会を開く。市教委側が当初、自殺を隠して調査し、「いじめはなかった」とした対応を謝罪する予定

だが、「プライバシー保護」を理由に報道公開しない方針で、遺族は「何も期待できない」と話している。

保護者会は同日午後7時から、市役所藤代庁舎1階で開く。同学年だった元生徒約140人も出席できる。

市教委によると、県設置の第三者調査委員会が元生徒らへの聞き取りを行うことから、これまでの経緯を改めて説明し、謝罪するという。矢作進教育長のほか、当時の校長や教頭も出席予定。

報道公開しない方針について、市教委の小林幸典教育参事は「生徒のプライバシー保護のほか、質疑応答でさまざまな意見が出ることが予想され、(公開して報道されれば)一方的な印象を与えてしまう」と説明した。保護者会の後、報道陣に対応するかは不明。

毎日新聞が情報公開請求で入手した市教委の資料や菜保子さんの両親によると、市教委と学校は自殺直後、「受験を控えた生徒たちへの配慮」を理由に、自殺の事実を隠して「突然死」と生徒らに説明。保護者会は16年3月、卒業の2日前に開かれ、学校側は「いじめはなかった」と説明し、紛糾した。

再度の保護者会開催を求めてきた菜保子さんの父考宜さん(46)は、出席の意向を示したうえで「これまでの経緯もあるので公開すべきだとは思うが、今更何も期待できないとも感じる」と諦めの声を漏らした。【安味伸一、玉腰美那子】

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平成30年2月21日付朝日新聞茨城版

いじめ問題で教育長辞任へ 防止条例制定にメド

 取手市立中3女子

市教委定例会で辞任について同意された矢作進教育長(右)=取手市

取手市立中学校3年の中島菜保子さん(当時15)が自殺した問題で、矢作進市教育長(66)が任期途中の3月31日付での辞任を表明し、20日の市教委定例会で同意を得た。同日の定例会で、3月議会に提案する「いじめ防止対策推進条例」の最終案が決まったことから区切りをつけたという。

会見で矢作教育長は、県が設置した調査委員会で「調査が適正に進んでいくと思う」としたうえで、4月施行予定のいじめ防止条例を基に、「市を挙げていじめ防止に取り組んでいけるめどがついた」と辞任の理由を述べた。また、中島さんの自殺については「日記が出てきたのに重大事態ととらえることができなかったことが、長引かせる大きな問題だったと反省している」と振り返った。

矢作氏は小学校長を経て2012年から教育長を務めてきた。19日に藤井信吾市長と市教委に辞職願を提出した。

この問題を巡っては、市教委が「いじめによる重大事態に該当しない」と議決したうえで、16年3月に第三者委員会を設置したが、17年6月に解散した。

その後、両親の求めに応じて、県が自殺の背景や市教委の対応などについて調べる一方、市教委はいじめ防止条例制定に向けて検討委員会を設け、審議してきた。

中島さんの父・考宜(たかのぶ)さん(46)は「教育長が辞めても菜保子が戻ってくるわけではない。市教委にはもっと真摯な対応をしてほしかった」と話した。(佐藤清孝)

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平成29年12月21日東京新聞茨木版

取手・中3自殺「丁寧に向き合って」 初会合で遺族訴え

取手いじめ遺族

取手市で二〇一五年十一月、市立中学三年生の中島菜保子さん=当時(15)=が「いじめられたくない」と書き残して自殺した問題で、県が設置した調査委員会の初会合が二十日、県庁で開かれた。自殺の背景、取手市教育委員会の対応などを調べる。出席した遺族は「娘の気持ちなどに丁寧に向き合っていただきたい」と訴えた。 (鈴木学)

菜保子さんが亡くなって二年。会合で、菜保子さんの父・孝宜さん(46)は委員らに対し「私たちが調べた内容以上に生徒たちの関係を掘り起こすことは難しいかもしれない。私たちができなかったことは、不適切な表現かもしれないが、加害生徒や先生への聞き取りだ。そういったことを総合的に捉え、一つ一つ丁寧に向き合っていただきたい」と訴えた。

大井川和彦知事は「ご遺族の気持ちに寄り添いながら誠実に調査を進め、結果を踏まえ県の教育環境の改善に努める」と述べた。

調査委のメンバーは市川須美子・独協大法学部教授(教育法)、蒲田孝代弁護士、栗山博史弁護士、臨床心理士の佐竹由利子さん、ソーシャルワーカーの竹村睦子さん、森嶋昭伸・日本体育大児童スポーツ教育学部教授(学校教育)

の六人。委員の任期は二年。知事のあいさつ後、会合は非公開で、今後の進め方などを協議した。

この問題で、取手市教委は、菜保子さんの自殺について「いじめによる重大事態に該当しない」と結論付けた上で第三者委を設置したが、両親の求めで今年六月に解散した。

両親は「市教委との信頼関係が完全に失われている」として、新たな調査委は県で設置するよう、県教委と市教委に申し入れた。それに応じ、県も異例の設置を決めた。

中島さん

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平成29年12月15日毎日新聞東京本社版

取手いじめ 友の自殺「学校は隠した」 元同級生が不信感

取手いじめ

美帆さん(仮名)は、誕生日に中島菜保子さんからプレゼントされたネックレスを大事に持っている。奥の写真は生前の菜保子さん

=茨城県取手市で、玉腰美那子撮影

 

2015年11月に茨城県取手市立中3年の中島菜保子さん(当時15歳)がいじめへの苦しみを日記に残して自殺した問題で、20日に開かれる県の第三者調査委員会を前に、同級生だった4人が毎日新聞の取材に応じた。学校や市教育委員会が当時、「受験への配慮」を理由に自殺の事実などを伏せたまま生徒らに調査した上で「いじめはなかった」と結論づけたことについて、「隠さず言ってほしかった」と異口同音に語った。2年が過ぎても、大人たちへの不信感を拭えないという。【玉腰美那子】

 

うわさあったのに

取材に応じたのは、菜保子さんと同級生だった友人の女子生徒4人で、いずれも現在は高校2年の17歳。

菜保子さんと中3で同じクラスだった令佳さん=仮名=は、亡くなった翌日の全校集会を鮮明に覚えている。生徒の間では「自殺した子がいる」とのうわさが流れていたが、校長は菜保子さんの自殺を「思いがけない突然の死」と伏せた。「受験に配慮したのかもしれないけど、隠されると気になる」と語り、友人として菜保子さんの死に向き合うため「きちんと言ってほしかった」と言う。

市教委の聞き取り調査は自殺から1~2カ月後にあったが、ここでも自殺を伏せての「カウンセリング」名目だった。自宅が近所の実香さん=仮名=は、「最近学校どう」「菜保子さん変わったことなかった」と遠回しに聞かれた。しかし、生徒たちの間では既に「いじめがあった」との空気が広がっていた。「いじめを認めたくないから隠したんだと思う。先生たちにもそう感じた」と語った。

中2の時に同じクラスだった美帆さん=仮名=は、菜保子さんから誕生日に贈られたネックレスを大切に持っている。自宅で自殺を図った11月10日、菜保子さんが学校で泣いているのを偶然見かけた。「どうしたの」と声を掛けたが、返事はなく、それが最後に見た姿となった。「(自殺を伏せた)市教委の聞き取りでは、いじめのことが思いつかなかった」と悔やんでいる。

幼なじみだった加奈さん=仮名=も「死んでしまうほど苦しんでいたとは」と自分を責めるように言った。加奈さんは思う。

「ああしていれば、こうしていればと考える。すごく悲しい」

 

取手市立中3女子生徒の自殺

茨城県取手市で2015年11月10日、市立中3年の中島菜保子さん(当時15歳)が自宅で自殺を図り、翌日死亡した。

市教委は「受験への配慮」を理由に自殺の事実を伏せて調査し、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に該当しないと結論。

市教委は第三者調査委を設置したが、両親が「公平な調査を」と反発し、今年6月に第三者委は解散した。県が新たに第三者委を設置し、原因を調べる。

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平成29年12月12日NHK水戸放送局

いじめ調査委 専門家6人選定へ

おととし、茨城県取手市の女子中学生が「いじめられたくない」と書き残して自殺した問題を受けて、茨城県が設置することになった新しい調査委員会の委員に、弁護士や大学教授など6人の専門家が選定される見通しとなったことがわかりました。 調査委員会の初めての会議は今月20日に開かれ、いじめの有無や自殺の背景などを調査することにしています。 おととし11月、「いじめられたくない」と書き残して自殺した取手市の中学3年生、中島菜保子さん(当時15)をめぐっては、市の第三者委員会が「いじめはなかった」という前提で調査を行うなど対応が問題となりました。 このため、遺族の要望を受けて特例として新しい調査委員会が茨城県に設置されることになり、必要な条例の整備や委員の選定を進めてきました。 その結果、調査委員会の委員には、遺族の要望を踏まえて2人の弁護士のほか、大学教授が2人、いじめに詳しい専門家と臨床心理士の2人の合わせて6人が選定される見通しとなったことがわかりました。 調査委員会では今後、いじめがあったかどうかや自殺に至った背景、それに学校や市の教育委員会の対応についても調査を進めることにしていて、初めての会議は今月20日に開かれる予定です。 これについて、中島さんの父親の考宜さんは「私たち遺族の思いが反映された委員会になり、安どしています。娘に向き合った公平な調査を慎重に進めてもらいたいです」と話しています。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/mito/20171212/1070001056.html

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平成29年11月10日毎日新聞
取手・中3自殺 両親苦悩の2年 第三者委、再調査へ
取手いじめ知事再調査
菜保子さんの写真を見返す父考宜さん(右)と母淳子さん。自宅にはピアノの演奏や旅行などで笑顔を見せる菜保子さんの
写真が飾られている=茨城県取手市で7日午後1時8分、玉腰美那子撮影

2015年11月にいじめられて苦しんでいる思いを日記に残し、自ら命を絶った茨城県取手市立中3年の中島菜保子さん(当時15歳)の父考宜(たかのぶ)さん(46)と母淳子さん(47)が、いじめの有無や自殺との因果関係を改めて調べる県の第三者委員会が近く設置されるのを前に、毎日新聞の取材に応じた。いじめを認めなかった市教委の第三者委が解散して5カ月。両親は「今度こそ真実を明らかにしてほしい」と語る。【玉腰美那子】
菜保子さんが自殺して11日で2年。考宜さんは今も朝に目が覚めるたび「何かできなかったのかという絶望感」にさいなまれている。菜保子さんの部屋は、お気に入りのぬいぐるみや韓国アイドルのポスター、ノートが置かれた机など「あの日」のままだ。
「いじめがあったのではないか。調べてほしい」
両親が学校に訴えたのは、自殺から5日後に菜保子さんの日記を見つけたからだった。「いじめられたくない」「(ひとり)ぼっちはいや」。悲痛な訴えを目にした淳子さんは「やっぱりいじめが……。こんなに苦しんでいたの」と驚き、娘の気持ちに気づけなかった自分も責めた。
ところが、学校が全校生徒を対象に「いじめの有無」について行ったアンケート調査では、菜保子さんの名前も自殺の事実も伏せられていた。「いじめは認められない」と発表されたのは、16年3月に同級生が卒業した直後。2人は不信感を募らせた。
さらに2人の心をかきむしったのは、市教委が同級生らに「(菜保子さんが)ピアノで悩んでいた様子はなかったか」と尋ねていたと聞いたからだった。
2歳のときにピアノを習い始めた菜保子さんは「ピアニストになりたい」と夢を語っていた。ピアノを専門的に学ぶため東京の私立高への進学を決めていた。2人は「あれほど本気でピアノに取り組んでいたのに、それを苦にして自殺するなんてありえない。
菜保子の努力を踏みにじっている」と振り返る。
毎日新聞の情報公開請求で開示された16年3月16日の臨時市教委の議事録を見ると、「いじめはなかった」とした根拠として、アンケートや聞き取り調査の結果の他に、もう1項目が挙がっている。しかし「公にすれば個人の権利を害する恐れがある」として黒塗り(非開示)にされている。考宜さんは「ピアノを原因にしているのではないか。まだ何か隠している」と疑う。
考宜さんは「(自殺後の)市教委の対応が正しかったかも含めて、今度こそしっかり調査し、真実と向き合う大人の姿を見せてほしい」と求める。

【ことば】取手中3女子生徒の自殺
2015年11月10日、茨城県取手市立中3年の中島菜保子さん(当時15歳)が自宅で自殺を図り、翌日死亡した。市教委は「受験への配慮」を理由に自殺の事実を伏せて調査し、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に該当しないと結論。市教委は第三者調査委を設置したが、両親は「公平な調査を」と反発し今年6月に第三者委を解散。県が12月上旬にも新たな第三者委を設置する。

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