平成31年2月4日付共同通信

高3自殺、第三者委が意見聴取 岩手、遺族「真相究明を」

岩手県立不来方高(同県矢巾町)3年のバレーボール部員新谷翼さん=当時(17)=が昨年7月に自殺した問題で、県教育委員会の第三者委員会は3日、翼さんの両親から意見を聴取した。

父親の聡さん(51)は「なぜ息子が亡くなったのかいまだに分からない。しっかりと真相究明してほしい」と求めた。

遺族側は、部顧問の男性教諭による行き過ぎた指導が原因だったと主張している。聡さんは聴取後、県庁で記者会見し「(翼さんの同級生は)卒業間近だ。アンケートや聞き取りが難しくなるので残念だ」と語った。

第三者委は大学教授や弁護士ら計6人で構成されている。

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平成31年1月7日付朝日新聞岩手版

高3自死で第三者委始動 事実認定急ぐ

バレーボール部に所属していた県立高校3年の男子生徒(当時17)が昨年7月に自殺した問題で、原因などを調べる第三者委員会が6日、岩手県庁で初会合を開いた。

岩手弁護士会の佐々木良博弁護士を委員長に選び、今後の調査方針などを話し合った。

会合は非公開。県教育委員会や高校に対し、部員らに行った聞き取り調査結果の提出を求めることや、実務を担う3人の調査員をおくことなどを決めたという。今後の具体的な調査方法や調査対象は、次回以降の会合で決める。男子生徒の同級生が3月で卒業するため、開始を急ぐ。

第三者委は、自殺にいたるまでの事実経過や背景▽学校の対応▽自殺と学校生活の関係性▽学校や県教委の対応の妥当性▽再発防止策などの5項目について検証、県教委に報告する。

一方、男子生徒の遺族側は「部活の顧問の指導が自殺につながった」と主張し、県教委や学校の対応に不信感を示す。遺族の代理人弁護士は5日、遺族との面談などを求める要望書を第三者委に提出した。

佐々木委員長は「一番のポイントは、判断の前提になる事実認定。あいまいさが残らない、遺族側も学校側も理解できる内容の報告書を作りたい」と述べた。

佐々木氏以外の委員は次の通り。

伊藤欣司・平和台病院長▽大御均・山形県臨床心理士会長▽神谷拓・宮城教育大准教授▽栗林徹・岩手大教授▽藤田祐子弁護士(仙台弁護士会)(加茂謙吾)

 

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平成30年12月27日付朝日新聞岩手版

バレー部員自殺、第三者委6人決まる 来月に会合

バレーボール員自殺

記者会見する高橋嘉行・県教育長

県立高校の男子バレーボール部員だった新谷翼さん(当時17歳)が今年7月に自殺した問題で、県教委は26日、顧問の指導に行き過ぎがなかったか調査する第三者委員会の初会合を1月6日に開くと発表した。

委員は6人で臨床心理士や精神科医、スポーツ教育学など教育研究者のほか弁護士が務める。遺族が指名した委員は採用しなかったが、高橋嘉行教育長は委員について「部活動の指導死や体罰・暴言などに詳しい。中立公正な調査をお願いしたい」と話した。

県教委は当初、年内の初会合をめざしていたが、人選や日程調整で開催が遅れた。第三者委は月2回ペースの会合を開催するが、年度内に結論を出すのは難しい状況だという。

新谷さんの父聡さん(51)は「人選は発表直前まで知らされなかった」と指摘。その上で「第三者委には公平公正な調査で真実を明らかにしてほしい」と話した。(渡辺朔、加茂謙吾)

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平成30年12月25日付朝日新聞

部活指導、問われる「言葉の暴力」 高3自殺、顧問「殴る蹴るはしてない」

バレーボール

新谷翼さん=遺族提供

スポーツの現場で、体罰や暴力の根絶に向けた取り組みが続く中、「言葉の指導」のあり方も問われている。岩手県で7月、バレーボール部員だった県立高校3年の男子生徒(当時17)が自ら命を絶った。遺族側は顧問の暴言が男子生徒を追い込んだと主張。県教育委員会は第三者委員会の人選を進めており、早期に初会合を開いて自殺との因果関係を調べる方針を示している。

男子生徒は、新谷翼さん。父の聡さん(51)は「翼が生きていたこと、翼に何が起こったかを知ってもらいたかった」と名前を公表した理由を説明した。

中学、高校で全国選抜チームの合宿に参加した経験があり、約197センチの長身をいかして活躍していた。しかし7月3日朝、自室で亡くなっている翼さんを家族が見つけた。

葬儀後、机の引き出しから自筆の遺書が出てきて、「恩を仇(あだ)で返してしまいごめんなさい」などと家族への謝罪のほか、バレーボールが「一番の苦痛」で、「ミスをしたら一番怒られ、必要ないと、使えないと言われた」と記されていた。

単身赴任中だった聡さんが、翼さんと最後に顔を合わせたのは7月1日夜。社会人チームとの試合後、一家で食卓を囲んだ。翼さんは仲間と1セット奪えたことをうれしそうに話していた。「宝物のような存在で、いまだに実感がわかない。長期合宿にでも行っているんだろうなと……」

遺族側は、県教委が部活の生徒や顧問だった男性教諭(41)らから聞き取った調査結果から、「言葉の暴力」があり、自殺につながったと訴えている。

調査によると、翼さんは男性教諭から、「バカ」「アホ」、「背は一番でかいのに、プレーは一番下手だな」などと言われたといい、男性教諭はおおむね発言を認めている。

ただ、殴ったり蹴ったりはしていないとして指導の行き過ぎを否定し、「3年生になり、高いレベルにいってほしいという思いはあった」「翼さんだけをターゲットにして怒ったこともない」と答えている。

自殺から5カ月以上になるが、第三者委はまだ開かれていない。

聡さんは「男性教諭が暴言を吐いていたことは明らか。それ自体許されないことなのに、『指導の一環』という言葉でひっくるめて容認しているのではないか」と述べ、学校と県教委の対応に不信感を示す。

(加茂謙吾)

■「暴言は人権侵害」 専門家指摘

言葉の暴力でスポーツの指導者が処分されるケースも出ている。神戸市では8月、市立中の女子バスケットボール部の顧問教諭が、部員たちに「単細胞」「ゴキブリ」といった不適切な発言を繰り返したとして、戒告処分を受けた。

大阪市立桜宮高校バスケットボール部主将が顧問から体罰を受け、自殺した事件などが問題になった2013年、日本オリンピック委員会(JOC)や日本体育協会(現・日本スポーツ協会)は「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」を採択。「言葉や態度による人格の否定、脅迫、威圧、いじめや嫌がらせ」などを「暴力行為」とした。

文部科学省も「身体や容姿にかかわること、人格否定的な発言」を許されない指導とするガイドラインを作成している。

スポーツ指導において、殴らなければ許されるという安易な考えはなくなっていない。早稲田大学の友添秀則教授(スポーツ倫理学)は「暴言は、指導者にすべての権限を握られている生徒への人権侵害だという本質が理解されていない。誤ったスポーツ指導だと学校の管理職が心がける必要がある」と指摘する。

(編集委員・中小路徹)

■岩手県教育委員会が部員や顧問らに行った聞き取り調査の内容

<男子生徒に顧問が行ったとされる言動>

顧問の説明

<バカ><アホ>

(言葉の)前後に付け足す形で言う癖がある

<脳みそ入っていないのか>

(指導が)「脳みそに入っていないのか」と言ったと思う

<そんなんだから、いつまでも小学生だ>

同じ指摘を繰り返すようなときに発言したかもしれない

<(体が)大きいからできないんだ><背は一番でかいのに、プレーは一番下手だな>

発言はしているかもしれない

<どこにとんでるんだ、バカ><だからお前はいつもこうなんだよ>

言うと思う

<助言を求めても無視する>

同じことを言いたくないので何もしゃべらないでジェスチャーや目線などで「いいよ」と言うことはある

 (社説)学校と指導死 奄美の悲劇から学ぶ

生徒がものを言えない雰囲気が、自分の学校にも満ちていないか。先生一人ひとりが胸に手を当ててもらいたい。

鹿児島県奄美市で3年前、中学1年の男子が自殺した。いじめに加わったと担任に疑われ、家庭訪問を受けた直後だった。ところがよく調べると、いじめといえる言動はなく、誤解に基づくものだった。市の第三者委員会がそう結論づけた。

教師の一方的な指導に追いつめられての死を、遺族らは「指導死」と呼ぶ。公の統計はないが、教育評論家武田さち子さんの調べでは、この30年間に全国の小中高校で、未遂を含め少なくとも76件おきているという。

国の指針は、背景に学校生活がからむ自殺については、詳しく調査のうえ、検証結果を地域で共有するのが望ましいとしている。とりわけ教員の行いに原因がある指導死は、学校側の対応次第で根絶できるものだ。徹底した取り組みを求める。

改めて思うのは「性悪説」に基づく指導の危うさだ。

報告書によると、担任は生徒らの言い分をよく聞かないまま反省と謝罪を強いた。学校全体も「毅然(きぜん)たる対応」を生徒指導の方針に掲げ、細かな校則違反も厳しく点検。

この担任によるものだけでなく、体罰や暴言が以前から目撃されていた。

そんな雰囲気では、身に覚えのないことで叱られても、中学生が抗弁できなくて当然だ。亡くなった生徒も「何でおれが」と漏らしていたようだ。

生徒の「指導」から「支援」へ――。発想の転換を促す報告書の指摘は、重い。

チームワークの欠如も指摘された。担任は自分だけで対処しようとし、校長や一部の同僚はその様子を目にしながら、任せきりにしたとされる。組織で対応する意識を持ち、時間をかけて生徒の言い分を聞いていれば、と思わずにいられない。

一方で、教員の働きすぎが大きな社会問題になり、負担の軽減が求められている。「一体どうしろというのか」との声が、現場から聞こえてきそうだ。

だからこそ、周囲の力も借りた対応が大切になる。

まず思い浮かぶのは養護教諭だ。教室では言えない本音も、保健室では話しやすいと言われる。スクールカウンセラーや事務職員の存在も大きい。教育委員会などが設ける、地域の相談窓口との連携も深めたい。

少し引いた立場から複数の目が注がれる。そんな環境をつくることで、教員ひとりにかかる負担の軽減と、逸脱行為の歯止めが両立できるといい。

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平成30年9月7日朝日新聞西部本社版

高校男子バレー部員、父「顧問指導で自殺」 校長は関連否定 岩手

岩手県の県立高校3年の男子生徒(当時17)が7月、自宅で自殺した。生徒は男性教諭(41)が顧問を務めるバレーボール部に所属。部活の悩みなどを記したメモを残しており、父親は「顧問の指導が自殺につながった」と主張している。

男子生徒は7月3日朝、自室で亡くなっているのを家族が見つけた。自室に残されたメモには「ミスをしたら一番怒られ、必要ないと、使えないと言われました」などと記されていた。

県教委が部員に聞き取ったところ、顧問がボールを男子生徒の顔面付近にあてたり「そんなんだから、いつまでも小学生だ」と発言したりしていたといい、遺族は顧問の指導が自殺につながったと主張している。

顧問も一部行為については認めているが、指導の行き過ぎを否定。高校の校長は「将来への不安が自殺につながったと思う」と述べ、自殺との関連を否定している。県教委は第三者委員会を設置し、調査する方針。

この顧問は前任の高校のバレーボール部で過剰な指導があったとして、元部員が顧問や県を提訴。盛岡地裁は一部で不法行為があったと認め、慰謝料などの支払いを命じた。訴訟は仙台高裁で係争中。(加茂謙吾)

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