平成30年12月14日付NHK大阪放送局

水泳中死亡 コーチ過失認め和解

5年前、東大阪市内のプールで水泳教室の練習中に死亡した男性の両親が損害賠償を求めていた裁判は、指導していたコーチの過失で男性が熱中症になって死亡したことを教室側が認め、4000万円を支払うことで和解が成立しました。 平成25年8月、東大阪市内の屋内プールで開かれた障害者向けの水泳教室で、國本考太さん(当時24)が意識を失い死亡しました。 國本さんの両親は指導していた女性コーチが適切な処置を取らなかったため熱中症になって死亡したと訴えて、教室を運営するNPO法人などに損害賠償を求めていました。 1審は去年、法人側に770万円の賠償を命じましたが、コーチの過失で死亡したとまでは言い切れないと判断したことから両親が控訴していました。 両親の弁護士によりますと2審の大阪高等裁判所はコーチの過失と死亡との因果関係を認める見解を示したうえで、双方に和解するよう促したということです。 そして、12日、コーチがみずからの過失により熱中症になって死亡したことを認め、法人側が4000万円を支払うことなどで和解が成立しました。 コーチは和解の席で両親に謝罪したということです。 國本さんの母親は取材に対して「息子は帰ってきませんが、和解でようやく顔向けできます。水泳中に熱中症で命を落とす危険があるということを知ってもらいたい」と話しています。

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平成30年12月14日付朝日放送

【大阪】水泳クラブ熱中症死亡訴訟で和解成立

水泳の練習中に熱中症を発症して死亡した男性の遺族が賠償を求めていた裁判で、指導者側の過失と熱中症との因果関係が認められ、大阪高裁で和解が成立しました。 国本考太さん(当時24)は、2013年8月、東大阪市の室内プールで、障害者向けの水泳クラブの練習中に熱中症で意識を失い、搬送先の病院で死亡しました。考太さんの両親は、高温多湿の中、過酷な練習をさせたことが死亡の原因だとして、当時、指導していた女性コーチらを相手取り提訴。1審の大阪地裁は「水分補給などの注意義務を怠った」として、コーチ側に770万円の賠償を命じましたが、死亡との因果関係は認めなかったため、両親が控訴していました。裁判は12日、熱中症による死亡と安全配慮義務違反との間に「因果関係」があることを確認した上で、コーチ側が経緯を謝罪し、4000万円を支払うことなどで和解が成立しました。考太さんの母親は「『間違っていることは、訂正せねばならない』という言葉を裁判官さんからいただいたことが、すごく嬉しかった」と和解について話しました。水泳指導中の過失と熱中症との因果関係が認められた裁判例は、全国初とみられます。

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平成30年7月12日付東京新聞神奈川版

鶴見の中学校 跳び箱事故 市教委報告書「指導の手引」とズレ

鶴見中跳び箱事故

び箱事故で、首の後ろに大きな手術のあとが残る男子生徒=県内の病院で

横浜市鶴見区の市立中学校で昨年5月、保健体育の跳び箱の練習中に首を脱臼骨折し、胸から下にまひが残る中学3年の男子生徒(15)が本紙の取材に応じ、「二度と同じようなけががないよう、授業の改善を」と訴えた。市教育委員会が先月末にまとめた事故の報告書では原因があいまいにされており、男子生徒は「しっかり調べてほしい」と求めている。 (梅野光春)

事故当時、体育館ではクラス三十八人が習熟別に四グループに分かれて跳び箱を実施。男子生徒は五段(高さ約九十センチ)の六人グループの一人で、跳び箱の上で前転する「台上前転」の後、次の順番で開脚跳びをした際に事故に遭った。

報告書によると、手をついた時に腰が高くなって体勢を崩し、跳び箱の向こう側に敷かれたマットに首から落ちたという。男子生徒は「右手が滑り、やばいと思った。マットから起きようとしたが、体は全然動かなかった」と振り返る。

市内の病院で手術を受けた際、「この部分を骨折して歩けるようになった人はほぼいない、と説明を受けた」と母親(39)が明かす。手術後しばらくは首も回せず、たんを吸い出すチューブをのどに入れた時期もあった。現在は平たん地なら車いすで自走できるが、胸から下にまひが残り、県内の病院でリハビリ中だ。

事態は深刻なのに、原因究明は不十分なままだ。各校に配られる文部科学省「器械運動 指導の手引」には跳び箱の注意事項を明記している。その中に、台上前転のような「回転系」の後に、開脚跳びなど「切り返し系」をやると「回転感覚が残っていて事故につながる」とある。

男子生徒は「この順番はだめだと、先生は知っていたのか」と疑念を感じている。しかし市教委は「その点は担当教諭に確認していない」と手ぬるい。担当教諭は今年三月に依願退職して海外に赴き、再調査しにくいという。

報告書の論理にもおかしな点がある。事故となった開脚跳びの際「本人がはっきりと切り返し系を意識していた」ため、「技の順番の問題とは言えない」と順番の影響を否定した。

ところが「指導の手引」を所管するスポーツ庁政策課学校体育室は「本人がやろうと思っていても、体の感覚で回転系の動きが残っていると、跳び箱に手をついた時に回ろうとして腰が高くなることがあり、事故につながる、と注意を促している」と解説する。

本人の意識と無関係だからこそ危ない-というポイントを、市教委の報告書は見落とした形だ。その上、事故原因を明示していない。

さらに、報告書を受けた再発防止策も、ちぐはぐさが表れている。跳ぶ順番は今回の事故と無関係としたはずなのに、市教委は対策の一番に「切り返し系の技を回転系より先に取り上げること」を挙げた。「指導の手引が学校現場で読まれていない可能性があるため、強調した」と担当者は説明するが、筋が通らない。

こうした矛盾を感じながら、男子生徒は「跳び箱は不得意だった。保健体育では、苦手な種目は避けられるよう選択肢を示してほしい」と願う。

ロボット製作などにあこがれ、工業高に進学する夢は、手先が動かず細かい作業ができないため、あきらめた。それでも「リハビリの効果で、動く部分も少しずつ出てきた」と前向きだ。

この秋には、中学校に戻りたいという。

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平成29年8月28日朝日新聞
野球部員「100m走100本」で熱中症 コーチの指示

 私立美濃加茂高校(岐阜県美濃加茂市)硬式野球部の2年男子生徒(16)が部活動中に重度の熱中症で救急搬送され、集中治療室で一時治療を受けたことが分かった。コーチである男性非常勤講師(26)の指示で100メートル走を100本以上した後だったという。
 同校によると、コーチは8月16日午後1時ごろ、生徒に100メートル走を100本命じ、さらに30本を追加。
生徒は練習開始から約3時間後、残り数本のところで意識がもうろうとなって倒れたという。給水はコーチの許可を得るよう指示され、この間に生徒が補給したのは2回だった。16日の美濃加茂市の最高気温は27・8度だった。
 当時、近くには監督(33)もいた。監督はこうした練習内容を了承し、室内練習場で別の部員を指導しながら、この生徒の様子も時折見ていたという。
 生徒は搬送先の病院の集中治療室で5日間治療を受けるなど、1週間入院した。その後、自宅で療養し、28日は登校予定といい、野球を続ける意思を示しているという。
 生徒は主力として期待されていたといい、コーチは生徒の生活態度を理由に「気合を入れ直さないといけない」と考えたという。
 同校から連絡を受けた県高校野球連盟は25日、同校に報告書提出を求めた。同校は26日、コーチを無期限指導停止、監督を厳重注意の処分とし、部の保護者会を開いて再発防止策などを説明した。赤崎耕二校長は「体罰に近い行き過ぎた指導だった。生徒の健康管理を徹底し、二度と事故が起きないようにしたい」とコメントした。
 同校野球部は1973年創部で部員数54人。夏の甲子園に80、90年の2回、出場した。今夏の成績は岐阜大会8強だった。
■「事実なら体罰そのもの」
 〈体罰問題に詳しい日本体育大の森川貞夫名誉教授(スポーツ社会学)の話〉 事実なら、生徒への一方的な押しつけで体罰そのもの。高野連も注意喚起をしているのに、今どき信じがたい。なぜ健康管理がしっかりできなかったのか、学校の責任も問われる。仮に「気合」を入れ直すためであっても、なぜその練習をするのか本人が理解しなければ意味がない。指導者は科学的なトレーニング法を学習し、実践しなくてはならない。

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平成29年8月7日朝日新聞
北海学園大アメフット部員、練習中に倒れ死亡 熱中症か

 札幌市清田区の北海学園大清田ラグビー場で6日午後2時10分ごろ、練習中の同大のアメリカンフットボール部員から「熱中症のような症状で、目を開いたまま呼びかけに反応しない」と119番通報があった。部員の斉藤純希さん(21)=同市西区=が意識不明の状態で病院に運ばれたが、間もなく死亡した。
 札幌豊平署によると、斉藤さんは約30人の部員とともにランニングの練習中に倒れたという。同署は熱中症の可能性もあるとみて死亡原因を調べている。
 気象庁によると、6日の札幌市の最高気温は29・2度だった。

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平成29年8月7日朝日新聞
練習後走り倒れた女子マネジャー死亡 新潟の高校野球部

 新潟県加茂市の加茂暁星高校で7月、野球部の練習直後に倒れ、意識不明になっていた2年生の女子マネジャー(16)が、5日に入院先の新潟市内の病院で亡くなったことが県警への取材で分かった。死因は低酸素脳症だった。
 同校によると、女子生徒は7月21日午後5時半すぎ、同校から約3・5キロ離れた野球場での練習に参加。午後7時半ごろに練習を終え、男子部員と一緒に走って学校に戻った直後、玄関前で倒れたという。
 女子生徒は普段、球場を行き来する際は、用具などを積み込むマイクロバスに乗っていた。この日はけがをした部員がバスに乗るなどしたため、監督が「マネジャーはマイペースで走って帰るように」と指示していた。女子生徒が倒れた直後、駆けつけた監督は「呼吸は弱いけれどある」と判断し、救急車が来るまでの間、AED(自動体外式除細動器)は使用しなかったという。
 女子生徒は救急搬送された病院で治療を受けていたが、5日午後6時すぎに亡くなった。加茂署は業務上過失致死の疑いも視野に、関係者から事情を聴く方針。同校は朝日新聞の取材に対し、「生徒のご家族には誠意を持って対応し、このようなことが起こらないように対策を取りたい」とコメントしている。

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平成29年4月25日朝日新聞西部本社版

校内の柔道大会で後遺症 福岡県に1億2千万円賠償命令

  福岡市の県立高校で2011年、柔道の試合で頭を打ち重度の後遺症が残ったとして、当時1年だった男性(22)と両親が福岡県に計約2億6900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、福岡地裁であった。平田直人裁判長は「事故を未然に防止する注意義務に違反した」と過失を認め、県に計約1億2400万円の支払いを命じた。

 判決によると、11年3月、校内で開かれた武道大会で、男性はクラス対抗の柔道の試合に出場。

同級生と対戦中に転倒して畳で頭部を打ち、頸髄(けいずい)損傷などで四肢まひなどの重度の後遺症が残った。

 判決は、前年度の大会でも骨折など2件の事故があったのに、原因分析や予防策を協議した形跡がないと指摘。また生徒らの歓声で盛り上がり、冷静さを欠く試合になって事故が起きる可能性があったとし、「大会固有の危険性を十分に説明し、指導したとは認められない」と結論づけた。

 県側は「生徒の安全面に配慮した指導をした」などと主張していた。県教育委員会の城戸秀明教育長は「判決内容を慎重に検討し対応を考える。今後も安全指導の徹底を図っていきたい」とコメントした。(加藤美帆)

 

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平成28年12月23日 大分合同新聞

  竹田市の竹田高校剣道部で練習中に重い熱中症(熱射病)で倒れ死亡した工藤剣太さん=当時(17)=の両親が、当時の顧問らに賠償責任を負わせるため、県に求償権を行使するよう求めた訴訟の判決で、大分地裁は22日、「元顧問に重過失があった」とする両親の主張を認め、元顧問に100万円の支払いを請求するよう県に命じた。
 両親の代理人弁護士は「学校事故における過失の程度を争った訴訟で、公務員の重過失を認めた判決は全国でも
初めてとみられる。画期的な判決」と評価。両親は「公務員であっても個人として責任を問われることを示した判決。

学校での子どもの安全を守ることにつながる」と述べた。
 事故があったのは2009年8月。事故の賠償責任が問われた別の民事訴訟の判決は、県などに賠償金の支払いを
命じた。両親は今回の訴訟で、県の賠償金について「元顧問らが負担するべきだ」と主張。国家賠償法は、公務員に重過失があった場合は、県が公務員に賠償金を負担させる「求償権」を持つと定めており、訴訟では元顧問らの重過失を認定するかが最大の焦点となった。
 竹内浩史裁判長は「事故当時、剣太さんは竹刀を落としたのに、気付かず竹刀を構えるしぐさを取った。熱射病による
異常行動と容易に認識できたのに、元顧問は何ら合理的な理由もなく演技をしていると決めつけ、練習を継続させた」と指摘。「元顧問は『演技するな』と言い、剣太さんを前蹴りし、倒れた剣太さんにまたがって10回ほど頬を平手打ちした。

適切な措置を取らなかったばかりか、状態を悪化させるような不適切な行為にまで及んだ。注意義務違反の程度は重大であり、その注意を甚だしく欠いた」として重過失があったと認定した。
 その上で、別の訴訟に基づく賠償額のうち、保険で賄うことができずに県が負担した200万円が「求償権の上限」と認定。

事故時の施設の状況や勤務条件などを考慮し、求償上限の半分に当たる100万円を元顧問に求償できると結論づけた。
 両親は当時の副顧問にも賠償金を負担させるよう求めていたが、竹内裁判長は「元副顧問は注意義務に違反した過失は
あるが、元顧問を補佐する立場であり、状態を悪化させるような不適切な行為はしていない」として、元副顧問に重過失があったとは認めなかった。

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平成28年11月6日 東京新聞

命守るのは指導者 部活中や体罰子どもの死亡ゼロへ

スポーツ指導者を多数輩出する日本体育大は七日から、部活動や体育の授業中の事故や体罰で子どもを亡くした遺族らを講師に招いた研修会を始める。実際に起きた事例を学び、安全への意識を高める狙い。講師の一人で、二〇〇三年七月に高校の部活動で長女を亡くした草野とも子さん(66)=東京都江戸川区=は「教員になる人たちには、親のつらさ、悲しさと命の大切さを分かってほしい」と話している。 (小林由比)

草野さんの長女恵さん=当時(15)=は専修大付属高校(杉並区)一年の時、バレーボール部の合宿中に倒れ、二日後に熱中症と急性硬膜下血腫で亡くなった。

湿度が70%近い真夏の体育館で、一つの動きをできるまで繰り返させられた。経験が浅かった恵さんは水を飲む時間すらなかった。二日目には吐き気などの熱中症の症状があったにもかかわらず、顧問の指示で練習を続け、転倒した際に床で頭を強打した。症状が悪化しても、顧問は病院に連れていかず、コートの外にいた恵さんは意識を失った。

病院に駆けつけた草野さんは、人工呼吸器につながれ、目を半分見開いたままの恵さんを前に、泣き叫ぶしかなかったという。

「なぜあんなに元気だった娘が亡くならなくてはいけなかったのか」 学校から詳しい説明はなく〇六年、学校を相手に損害賠償訴訟を起こし、〇九年に和解した。和解条項には、学校に専門家らによる安全対策委員会を設置することが盛り込まれ、自らもメンバーに加わった。

「娘と同じ目に遭う子が二度と出ないよう学校や教員の意識を変えたい」。その一心で、今も学校に通い続ける。

学校側も草野さんの声に耳を傾け、安全対策に力を入れている。

「スポーツ指導者に無知や、健康や命を大切にする認識がないことは許されない」と草野さんは言う。「命は一度消えたらもう灯をともせない。次世代の教員として子どもたちの命を預かる学生たちに、そのことを伝えたい」 

◆安全意識低い現状に危機感 企画の南部准教授

研修会を企画したのは、体育学部の南部さおり准教授。法医学が専門で、前任の横浜市立大では柔道事故などを医学的に検証し、学校に指導や対応を提言してきた。その中で「指導者になる人たちが子どもの命を守るという視点で自分を律したり、合理的な判断をするための教育を受けていない」と、現状に対する危機感を強く

感じたという。

今年四月から日体大でスポーツ危機管理学の教員として、運動中の子どもが熱中症になったり、脳振とうを起こしたりしたときの危険性や、体罰、指導がきっかけで子どもが自殺に追い込まれる「指導死」などの問題を教えている。

スポーツの分野で国内トップクラスの学生たち自身が、熱中症などの危険な状況を経験していることが多いといい、「それが普通という感覚を持つのは怖い」と指摘する。

研修会は、講義を受ける学生だけでなく、幅広く教職志望の学生らに聞いてもらおうと初めて企画。遺族ら八人に講師を依頼した。「先生の卵」を対象に遺族が講師を務める研修会は全国でも珍しいという。

初回の七日は住友剛・京都精華大教授(教育学)が学校事故の現状について講演するほか、剣道部で体罰を受け亡くなった子どもの遺族らが参加する。第二回(十二月十二日)は、草野さんらが講演。第三回(来年一月三十日)は、いじめや指導死がテーマ。一般の人も無料で参加できる。会場は日体大世田谷キャンパス。申し込み、問い合わせは南部准教授=045(479)7115=へ。

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朝日新聞デジタル 平成28年9月24日5:00

柔道事故死ゼロ、止まる 部活中、昨年以降3人死亡3人重体 全柔連が注意喚起

3年間死亡事故ゼロが続いていた中学・高校の柔道の部活動で、昨年から今年にかけて3人の生徒が死亡する事故が発生した。同時期、3人の生徒が意識不明になる重大事故も起こった。事態を重く見た全日本柔道連盟は事故防止対策の徹底を呼びかけている。▼3面=事故の傾向は

全柔連への事故報告で明らかになった。昨年5月に大外刈りを受けた福岡市の中1女子が急性硬膜下血腫で死亡。同8月に横浜市の高1男子が柔道部の坂道ダッシュの練習中に倒れて熱中症で亡くなり、今年4月には仙台市の高3男子が袖釣り込み腰をかけた相手と倒れ込んで頸椎(けいつい)などを損傷して死亡した。

中学で武道が必修化された2012年度から3年間は死亡事故はゼロだった。部活動で再び死亡事故が発生した要因として、必修化を機に指導現場でもたれた緊張感が薄れてきたのではとの指摘がある。必修化された柔道の授業では重大事故は報告されていない。

名古屋大学大学院の内田良准教授(教育社会学)の調査によると、11年度までの29年間に部活動や授業など学校の柔道で118人(中学40人、高校78人)が死亡した。大多数が部活動中の事故だった。

事故には、いくつかの傾向がある。まず被害者は1年生が多い。内田准教授の調査によると、1年生が中学で53%、高校では65%。入部間もない初心者や、進学して練習レベルに慣れない段階の事故とされる。それと呼応して、全柔連が03~14年に障害補償・見舞金を給付した重大事故57件を発生月別にみると、4~9月が84%を占めている。

受傷部位は頭部が多く、かけられた技は大外刈りが多い。全柔連が03~14年に報告を受けた頭部外傷の重大事故で技が判明している29件のうち、大外刈りが15件で最も多かった。ほかに背負い投げ、大内刈りが3件ずつ、払い腰、体落としが2件ずつで続いた。

また、頭部外傷の事故の中には、技をかける側とかけられる側の体重差や技能差が大きいケースがあることもわかっている。

09年度までの12年間に日本スポーツ振興センターが見舞金を給付した中学・高校の部活動の死亡・重度障害事故(318件)では、柔道が50件で最も多く、野球35件、バスケット33件、ラグビー31件が続いた。武道の必修化に際して、柔道の安全対策は大きな課題になっていた。

重大事故の再発を受けて全柔連は7月28日、「元気に家を出た子どもたちの安全を守り、無事に家に帰すのは柔道指導者の義務」と強く注意喚起し、啓発活動を促す文書を都道府県連盟などに送っている。(編集委員・中小路徹)

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