令和5年2月18日付東京新聞

八王子中2自死「学校管理下のいじめ確認できない」死亡見舞金を支給せず 日本スポーツ振興センター

東京都八王子市で2018年8月、市立中学2年永石陽菜(ひな)さん=当時(13)=が自殺した問題で、災害共済給付制度を運営する日本スポーツ振興センター(本部・東京都)が「学校の管理下で行われたいじめが確認できない」などとして、死亡見舞金の不支給を決めていたことが、関係者への取材で分かった。

 

◆市の調査結果と異なる結論…その理由は?

永石陽菜さん=両親提供

永石陽菜さん=両親提供© 東京新聞 提供

 市の再調査委員会は21年に「いじめと学校の対応のまずさが主な要因」とする報告書を公表しており、遺族は「市の調査結果と異なる」と強く反発している。

 市の再調査では、交流サイト(SNS)上でのいじめを認めた上で「中学校の管理下の出来事が主な要因」とした上で、「学校側が問題を放置したことも自殺の要因」としていた。

 これに対し、センター側は「SNS上のいじめの詳しい日時が不明で、学校の管理下で行われた事実が確認できなかった」と指摘。学校側の対応も「体罰や暴言などがない」として、安全な学校生活を妨げる要因ではないと認定した。

 遺族の代理人弁護士は「市の再調査の報告書では、部活動の現場での態度による心理的ないじめも挙げられている」として、SNSによるいじめだけを判断材料としていることを問題視。さらに「学校がいじめを調査しなかったことも大きな問題とされた」とも指摘し、不支給決定の判断に疑問を呈している。

 永石さんの父、洋さん(61)は「市は学校の管理下でのいじめと認めているのに、なぜ覆らせるのか。失望している」と話した。

 永石さんの自殺を巡っては19年8月、市教委が委嘱した第三者調査部会は、いじめと自殺の直接の因果関係を否定。遺族側の申し立てで市は再調査委員会を設置し、21年5月に「いじめと学校の対応のまずさが自殺の主な要因」と結論付けていた。(布施谷航)

 災害共済給付制度 日本スポーツ振興センターが運営。幼稚園や小中学校、高校などの管理下で児童や生徒が負傷したり死亡したりした場合に、医療費、障害見舞金、死亡見舞金を支給する。「学校などの管理下」は、授業中や保育中、部活動などの課外指導中、休憩時間、通学・通園中などを指す。

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2023年2月11日付琉球新報デジタル

<社説>高2遺族が県提訴 「指導死」防止策まとめよ

わが子を失った遺族の訴えを県は厳粛に受け止めるべきだ。その上で、なぜ高校生が自死に追い込まれたのかを明らかにし、「指導死」防止策を早急にまとめてほしい。

2021年1月、運動系の部活に所属していた県立コザ高校2年の男子生徒が自ら命を絶った問題で、生徒の自死は教諭だった元顧問のパワーハラスメントが原因などとして、遺族が県に損害賠償を求め、那覇地裁に提訴した。
提訴の理由について遺族はコメントで「沖縄県に対して、『指導死』による息子の死を認めてもらいたいという気持ちからです。一人の指導者からの暴言や侮辱も明らかな体罰だということ、そして、指導という名の執拗(しつよう)なパワハラがあったときちんと認めてもらいたいと考えています」としている。さらに高校や管理職、県教育委員会に対しても責任を認めるよう求めた。
県や県教委、高校関係者は遺族の切実な声に真摯(しんし)に向き合い、事実関係を法廷で明らかにすべきだ。それを踏まえ責任の所在について明確な審判が示されるべきである。
訴状によると、元顧問は生徒を叱る際に「気持ち悪い」「キャプテンを辞めろ」などと発言。部活動外の時間に雑用を強要したり、携帯電話で緊急ではない連絡や指示をしたりした。暴言を伴う激しい叱責(しっせき)によって「自死を選択せざるを得ない心理状態に追い込まれた」と主張している。
これほどの暴言を浴びせられ、生徒は相当なダメージを負ったはずだ。訴状はさらに「元顧問が指導中に暴言等に及ぶことがあると把握していたが、何らの対処もせず、放置していた」として、学校長らの責任を厳しく指摘している。問題は生徒と元顧問の関係だけにとどまらない。周囲の教諭らはなぜ元顧問の行為を止めきれなかったのか検証すべきだ。
提訴を受け、玉城デニー知事は「(自死事案は)本来あってはならない事件であり非常に遺憾に思っている。訴状が届き次第、適切に対応していきたい」と述べた。それを言葉だけに終わらせてはならない。県は総務私学課内に第三者委員会を設置し、再調査を進めている。遺族が納得できる結果を出してほしい。
命を絶った生徒は極端な勝利至上主義の犠牲者だったとも言える。部活の在り方を考え直さなければならない。
コザ高校の出来事を受け、生徒自身が部活動のあるべき姿を協議する高校生検討委員会(県教育庁主管)が今月、「県高校部活生メッセージ2023」を発表した。指導者に対しては「私たちは人形ではない、理不尽な指導をやめてほしい」、学校に対しては「指導者を集めて、指導方法を改めて調査してほしい」と求めている。まっとうな要望であり、県教委の施策に反映されることが望ましい。
生徒の死を無にしてはならない。県は「指導死」の防止に全力を挙げるべきだ。

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2023年2月10日 付北海道新聞

旭川いじめ再調査委員会、結論急ぐ意向 中2死亡との因果関係解明へ遺族に寄り添う姿勢強調

一昨年3月に広瀬さんの遺体が見つかった永山中央公園=9日
一昨年3月に広瀬さんの遺体が見つかった永山中央公園=9日
旭川市
 【旭川】いじめを受けていた旭川市の中学2年広瀬爽彩(さあや)さん=当時(14)=が2021年3月に凍死して見つかる前に行方不明となってから、13日で2年を迎える。昨年12月に始まった今津寛介・旭川市長直属の再調査委員会は最大の焦点であるいじめと死亡の因果関係の解明に向け、遺族に寄り添う姿勢を強調。再調査委委員長で教育評論家の尾木直樹氏は、結論までの期間について、市教委第三者委(1年4カ月)より短くする意向だ。
 1月22日、一面雪景色の旭川市の永山中央公園。尾木氏ら5人の委員全員が、広瀬さんの遺体が見つかった園内に設けられた献花台に花を手向けた。委員らの「お母さんの思いを知りたい」との意向を受け、広瀬さんの自宅を訪れ、約2時間半話を聞いた。
 再調査委が遺族側に寄り添う姿勢を示すのは、昨年9月に最終報告を行った市教委第三者委が遺族側と信頼関係を築けなかったためだ。第三者委は遺族側に一部資料の提供を拒まれたことなどを理由に、最終報告書ではいじめと死亡の因果関係を「不明」との表現にとどめた。ただ、委員長は、記者会見でいじめと死亡について一定の関連があると踏み込む一方で「相当因果関係があるとは断定できない。損害賠償レベルの話ではない」と法的な責任はないとの見方を示した。
 委員長の発言は再調査の結論に影響しかねず、遺族側関係者は「委員長は訴訟を前提とした相当因果関係まで言及する立場にない」と強く反発。広瀬さんがいじめを受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)となり、自殺に追い込まれたとの主張を崩さない。
 一方、市は問題の教訓を踏まえて4月に「いじめ防止対策推進部」を新設し、弁護士や心理士ら計18人を配置する。市長権限で加害者の転校を市教委に求めるなど「是正勧告」の行使も検討する。今津市長は「二度と同じことを起こさない決意」としている。(山口真理絵、綱島康之)
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令和5年2月10日付琉球新報デジタル

「指導という名の執拗なパワハラ、認めて」部活高2自死、遺族が沖縄県を提訴 元顧問の暴言に「追い込まれた」

那覇地方裁判所(資料写真)
 2021年1月に沖縄県立コザ高校2年の男子生徒=当時(17)=が自ら命を絶った問題で、生徒が自死したのは部活動の顧問だった元教諭のパワーハラスメントが原因などとして、遺族が9日、県に約1億3900万円の損害賠償を求め那覇地裁に提訴した。

 生徒は運動系の部活に所属し、主将を務めていた。21年2月中旬、県教育委員会は第三者調査チームを設置。調査チームは同3月5日、「自死は部活動顧問との関係を中心としたストレスが要因となった可能性が高い」とする詳細調査報告を県教委に提出した。県教委は21年7月に元顧問を懲戒免職処分とした。

訴状によると、元顧問は生徒を叱る際に「気持ち悪い」「キャプテンを辞めろ」などと発言。部活動外の時間に雑用を強要したり、携帯電話で緊急ではない連絡や指示をしたりした。暴言を伴う激しい叱責(しっせき)によって「自死を選択せざるを得ない心理状態に追い込まれた」と主張した。当時の校長らも、元顧問の暴言などを止める措置を講じず、安全配慮義務に違反したとしている。

提訴後、遺族側代理人の池味エリカ弁護士らが那覇市内で記者会見した。「提訴したのは、県に『指導死』による息子の死を認めてもらいたいという気持ちからだ。指導という名の執拗(しつよう)なパワハラがあったときちんと認めてもらいたい」などとする遺族のコメントを読み上げた。

半嶺満県教育長は「コザ高校の事件については、誠に遺憾に思っている。今回の訴訟提起については、訴状が届き次第適切に対応していく」などとコメントした。

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2023年2月8日付朝日新聞デジタル

報告書受けて県教委が対策公表、新たな対策は一部 東稜高いじめ問題

写真・図版

調査報告書で示された提言への対応を議論する県教育長ら=2023年2月7日午前9時53分、熊本県庁、長妻昭明撮影

 熊本県立東稜高校に通っていた男性(23)のいじめ被害を調査した第三者委員会が、調査報告書で同校や県教育委員会の対応を問題視したことを受け、県教委は7日、対応策を公表した。従来通りの対応が多く、報告書で求められた新たな対応は一部にとどまった。

 昨年10月に公表された報告書は、いじめを認定したうえで、男性が被害を訴えたのに認めなかった学校の対応を問題視。学校と県教委に対し、いじめへの理解徹底などを求めていた。

 この日、県教委は定例委員会で対応策を示した。いじめの理解徹底については、県立学校長と管理職に報告書と、元生徒の男性が提出した意見書を共有し、被害者を中心に考えるいじめ防止対策推進法の考えを説明するなど新たな取り組みを実施したと説明した。

 一方で、報告書で求められた調査記録の保管や事案に応じた調査主体の決定については、以前からの対応を継続。学校が誤った対応をした場合に是正できるよう、県教委が重大事態の認定を学校とは異なる立場で検討すべきだと報告書が指摘した点は「生徒や保護者から重大事態としての調査の申し出があった場合は必ず県教委に報告する旨の周知を図る」にとどめた。

 男性の母親は取材に「報告書が出ても県教委から謝罪はなく、知事宛てに要望書を出しても回答はない。今回の対応策についても一切説明はなかった」と県のこれまでの対応に不満を述べた。対応策の内容は分からないとしたうえで「当事者に問題点や改善点を聞かず、県教委が独自に考えた対応策では不十分だと思う。今後、対応策の内容を見て抗議や要望などを考えたい」と話した。(長妻昭明)

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2年前に広瀬爽彩さんの遺体が見つかった旭川市内の公園。当時と同様に雪が降り積もっている=5日(西野正史撮影)
2年前に広瀬爽彩さんの遺体が見つかった旭川市内の公園。当時と同様に雪が降り積もっている=5日(西野正史撮影)
 【旭川】旭川市内の公園で凍死した中学2年の広瀬爽彩(さあや)さん=当時(14)=がいじめ被害にあった2019年当時に通っていた中学の元校長(63)が1月下旬の北海道新聞のインタビューで当時の対応を「適切だった」と答えたことに対し、保護者からは元校長の責任を指摘し、説明を求める声が上がった。市内の教育関係者は市教委の対応も不十分だったとして対策拡充を訴えた。
 元校長はインタビューで市教委第三者委員会が昨年9月にまとめた最終報告書を読んでいないと答えた。今津寛介市長はこれについて「当時の学校の責任者で調査対象者だった人でありながら残念だ」と話した。ただ、市長直属の第三者委が再調査中だとして詳細なコメントは避け、「真相が明らかになることを願っている」と述べた。
 子どもが当時、広瀬さんと同じ中学に通っていた旭川市内の40代女性は元校長が記者会見などで説明していないことについて「当時の保護者にも説明すべきだ」と訴える。広瀬さんが川に入った19年6月前後の学校の対応についても「なぜ真剣に広瀬さんのSOSを受け止められなかったのか」と疑問視した。
 この点、元校長はインタビューで、いじめの加害者側の話を聞いた上で、広瀬さんの話も聞こうとしていたが、転校で実現できなかったと主張。いじめの認定は市教委が「保留した」とし、昨年11月に市教委幹部と面会した際、「市教委は責任逃れに終始している」と批判する文書を渡したとも述べた。
 第三者委の最終報告も市教委について「責任逃れの姿勢」があると指摘しているが、野崎幸宏教育長は取材に「元校長個人の見解なのでコメントは控える。(市教委の)第三者委から指摘された改善策を優先する」と話した。
 学校でのいじめ撲滅に取り組むNPO法人「学校の底力」理事長で旭川工業高の岩岡勝人教諭(59)は「困っている子どもに寄り添い、原因を見つけるのが学校の仕事。最悪の事態に至ったのだから、当時の学校の対応は適切とは言えない」と指摘する。市教委の対応にも注文を付け、教員研修などいじめ対策を拡充する必要性を強調した。
 広瀬さんは2年前の21年2月13日に行方不明となり、同3月23日、市内の公園で遺体で見つかった。(村田亮、綱島康之、佐藤愛未)
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 【旭川】広瀬爽彩さんが2019年に通っていた中学校の元校長(63)は一連のいじめを認定する考えがあったとしながら、広瀬さんが川で自殺を図った行動は、自傷行為にとどまり、さらにいじめが原因ではないと認識していたことを明らかにした。広瀬さんの死について「道義的責任は感じる」としながら、法的責任はないと主張。いじめ問題に詳しい池坊短期大(京都)の桶谷守学長は「問題と向き合い、事実や対応を自ら検証する姿勢が必要だ」と批判する。
 「あの浅さで自殺未遂はできない」。インタビューで元校長が最も強い憤りを表したのは、19年6月に広瀬さんが川に入ったことが市教委第三者委の最終報告書などで自殺未遂とされている点だ。川の水深が膝下程度だったことから元校長は「広瀬さんに自殺の意図はなかった」と話した。
 ただ、最終報告書では、広瀬さんが当時「もう死にます」などと話した後に「川の中に入って膝下まで水につかる」自殺未遂と記載している。この点について元校長は「自傷行為ではあるが、自殺未遂ではない。さまざまな理由で『死にたい』と言う子はいっぱいいる」と述べ、当時はいじめによる自殺未遂との認識もなかったことを強調した。
 また、元校長は最終報告書を「一度も読んでいない」と明かした。理由として、第三者委が遺族側の意見も踏まえ、表現を調整した経緯などから、内容が「公平中立ではない」などと指摘した。
 元校長ら退職者は現行制度上、懲戒処分の対象外となり、今後、市教委が処分することはないが、教頭や当時の担任など現役教員は対象となる。
 「学校としてはきちんと対応していたので、教頭や担任ら学校の教員について(法的責任は)ないと思っている。一番、爽彩さんのことを考えて対応したのは学校だ」。元校長はこう話す一方で、「道義的責任は感じる。居場所を探していた爽彩さんの気持ちを受け止められなかったのが痛恨の極み」と述べた。
 元校長は昨年11月、市教委幹部と面会。その際に提出した文書には、「(市教委は)責任逃れに終始し、絶望に近い感情を抱いた」と記載し、市教委の対応を強く批判した。
 桶谷学長は元校長にいじめ防止対策推進法に関する理解が欠如しているとの認識を示し、「法に定められている通り、被害者に寄り添うのが基本だ」と語った。
 元校長は、当時の資料などがないため、説明責任を果たすための記者会見などをする考えはないとしている。(綱島康之、村田亮)
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2023年2月5日 付北海道新聞

旭川中2いじめ 元校長、当時の学校の対応は「適切」「本人に聞き取りできなかった」

 【旭川】旭川市内の公園で2021年3月に凍死した中学2年広瀬爽彩(さあや)さん=当時(14)=がいじめ被害にあった19年当時に通っていた中学校の元校長(63)が、この問題が発覚してから初めて北海道新聞のインタビューに答えた。広瀬さんの失踪から13日で2年―。元校長は市教委第三者委が認定したいじめについて、「学校でも確認し、いじめとして報告しようと思っていたが、本人への聞き取りなどができなかった」などと学校が認定できなかった理由を説明。当時の学校の対応を「適切」とした上で、市教委への不信感も示した。
■川入水「自殺未遂でない」

 元校長は20年3月に退職し、現在は無職。1月下旬に旭川市内で2回にわたって取材に答えた。

旭川市教委などに提出した文書を前にインタビューに答える元校長。「広瀬さんの気持ちを受け止められず、痛恨の極み」と悔やむ

旭川市教委などに提出した文書を前にインタビューに答える元校長。「広瀬さんの気持ちを受け止められず、痛恨の極み」と悔やむ

19年6月に広瀬さんが川で自殺を図ったことについて、元校長は川が浅いなどの理由で「自殺未遂ではない」との認識を示した。その後の学校の対応については、複数の教員が本人の心のケアや加害生徒への指導を行っていたと説明した。
 第三者委がまとめた最終報告書は「学校の組織的対応はなく、法の趣旨に反する」としていた。元校長は「それは市教委の言い分。実際には私が全部指示を出した。何人の教員が動き、どれだけの労力を使ったか」と反論した。

 学校がいじめの認定に至らなかった理由について、加害者側から聞き取りはできていたが、広瀬さんが入院していた病院側から川で自殺を図った経緯を本人に聴取しないよう求められたという。広瀬さんが19年8月に転校したため「本人に確認できなかった」と弁解した。

広瀬さんの遺体が発見された公園内に設置された献花台=1月27日

広瀬さんの遺体が発見された公園内に設置された献花台=1月27日

同9月には一連の問題について地元月刊誌が「女子生徒が『いじめ』で自殺未遂」と報じたため、学校は「ありもしないことを書かれた」などと記事の内容を否定する文書を全校生徒の保護者に配布した。
 この文書について、元校長は「いじめを否定したのではなく、川での自殺未遂を否定する趣旨だった」と説明。この後、問題への対応が市教委の主導となったこともあり、「いじめとする報告が、保留になった」と釈明した。
 文部科学省によると、本人への聴取ができなくても保護者や周囲の調査からいじめと認知することは可能。最終報告書は「問題は法制度の理解不足にある」と学校と市教委の対応を批判している。(綱島康之、村田亮)
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2023年1月25日付朝日新聞デジタル

(大学で取り組む反暴力:1)「先生の言葉一つで、生徒が死ぬ」 子を亡くした親の思い、学ぶ

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研修会で学生たちに語りかけた倉田久子さん(左)と山田優美子さん(中央)。右が南部さおり教授
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研修会で被害者の母親の話を聞く日体大の学生たち

大阪市立桜宮高男子バスケットボール部の主将が、顧問からの暴力などを理由に自死したことが明らかになり、この1月で10年が経つ。以来、スポーツにおける反暴力の啓発については、競技団体だけでなく、大学でも様々な取り組みを行ってきている。3回にわたってリポートする。

昨年12月16日、「学校・部活動における重大事故・事件から学ぶ研修会」が日本体育大学で開かれた。

「将来、子どもを指導するかもしれない学生のみなさんに、一人の高校生に起こったことを聞いていただきたいと思います」

日体大の学生たちに、そう語り始めたのは、山田優美子さん。教員の不適切な指導などで子どもを亡くした親たちでつくる「学校事故・事件を語る会」のメンバーだ。

優美子さんの息子・恭平さんは2011年6月、自ら命を絶った。愛知県の県立高校の野球部員だった。

山田さんは、部員たちが監督から暴力的な指導を受けても、受け入れるしかなかった現実を、涙を交えて語った。

「今日もみんなが殴られた。1人は倒れたところに蹴りが入った」と、恭平さんが泣きそうな顔で山田さんに語っていたこと。

恭平さんも練習中、監督からパワハラの標的になっていた状況を、死後にチームメートから聞いたこと。

恭平さんが亡くなった時のことは、「頭が痛いと欠席した翌日、学校に送り出しました。でも、恭平はそのまま別の場所で亡くなりました。私は第一発見者でした」と語った。

そして自責の念。「自分は何もしなかった。野球を取り上げてはいけないと、本人の退部の申し出が却下されても、『退部を認めてください』と、監督に親の立場で言わなかった。甘く見ていました」

最後にこう語りかけた。

「みなさんの一挙手一投足が、子どもに与える影響の大きさを知っておいてください。先生の言葉、目線一つで、生徒が死ぬしかないようなことになる存在でもあるのです」

「私の話を聞いて、教師になるのが怖くなった方がいるかもしれません。その怖さを知った方にこそ、教師になってほしいです。皆さんのまっすぐな目を、とても頼もしく思います」

■指導現場に出る前に情報を

この研修会は、スポーツにおける体罰問題に詳しい南部さおり教授(スポーツ危機管理学)が、16年から始めた。今回はコロナ禍で3年ぶりだった。

日体大には、保健体育教員やスポーツ関連の職を目指す学生が多い。それは、運動部活動をはじめ、子どものスポーツ指導に携わる可能性が高い、ということでもある。

そこで、運動部活動での重大な事件・事故の被害者遺族に、起こったことのリアルを伝えてもらう。

「部活動で何が起きているか、スポーツ活動の中でどうすれば子どもの命を守れるか、本気で考えたい」。

学生たちにそんな場を、という南部教授の意図だ。

今回は、柔道事故の撲滅を目指す「全国柔道事故被害者の会」の代表、倉田久子さんも講演をした。

11年に当時高校1年の息子を、柔道部での練習中に頭を打った事故で亡くしている。取材に「スポーツに死と隣り合わせの面があるということを、指導現場に出る前に、情報として得ておくことに意義があると感じます」と話した。

スポーツ文化学部3年で、アーチェリー部マネジャーの秋元香穂さんは研修会に参加し、「普段は講義を受ける形で学ぶが、経験された方の言葉は重い。教育関係の仕事を目指している中、より真摯に学びを深めていきたいと思いました」と話した。(編集委員・中小路徹)

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令和5年1月24日付朝日新聞デジタル

「突然死したということに」命絶った息子、耳を疑った学校側の言葉

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長崎地裁での口頭弁論後、取材に応じる生徒の両親=2023年1月24日午後2時48分、長崎市万才町、石倉徹也撮影
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昨年11月の提訴後に会見する父親(右)=2022年11月4日、長崎市

 2017年、長崎市の私立海星高2年の男子生徒(当時16)が自殺したのは、学校側がいじめ対策を怠ったためだとして、両親が学校側に約3200万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が24日、長崎地裁であった。この日、母親(50)が法廷に立ち、息子の死からまもなく6年を迎える心境を語った。

 母親の意見陳述によると、遺族が学校に不信感を持ったのは、息子の死から1週間後のことだった。

 「マスコミが騒いでいるので、突然死したということにした方がいいかもしれませんね」

 当時の教頭(現校長)が隠蔽(いんぺい)を示唆するような言葉を電話越しに投げかけた。

 さらに翌日、こう告げたという。

この学校にはいじめという認識がない」

遺族はその後、かつて海星高にいた生徒や保護者らと面会し、過去にもいじめで苦しい思いをした人がいることに気づいたという。「この学校にはいじめという認識がないために、つらい思いをしながら耐えている生徒がたくさんいるのです」

1811月にまとまった第三者委の報告書は、学校側のいじめに対する認識不足を強く批判した。

生徒や教職員へのヒアリングを元に「いじめに対する認識不足は、生徒のみならず学園全体にも指摘できる」とした。学校には、いじめ対策委員会が設置されていたが、会議は一度も開催されず、いじめ防止の年間計画も作られていなかった。報告書は、教頭の「突然死」「転校」の発言も、「遺族への配慮に欠け、不適切」と指摘した。

「学校全体としていじめを許さない校風をつくっていれば、私の息子が亡くなることはなかったのではないか。無念でなりません」

遺族は、学校側の対応に不信感を募らせていく。「私たちはこの学校からこれでもかというくらい傷つけられてきました」

学校側は191月、「同級生によるいじめ」を自殺の主な要因に挙げた報告書の受け入れを拒否すると遺族に伝えた。「事実関係の裏付けが示されていない」というのが理由だった。

さらに学校側は、学校管理下で発生した事件に起因する死亡に対し支給される死亡見舞金の申請についても協力を拒み、「損害賠償請求権を放棄するなら申請に協力する」と遺族に持ちかけてきたという。

「こんな脅迫が平気でできることに、私たちは悔しくて悔しくてたまりませんでした」

 

法廷で陳述20分、最後に訴えたのは

生徒アンケートの「秘匿」も明らかになった。

訴状によると、学校側は生徒の死の19日後、同級生らに記名式のアンケートを実施。数十人がいじめがあったことをうかがわせる内容を記していた。だが学校側はその結果を遺族に伝えていなかった。

遺族がその存在を知ったのは昨年3月、裁判所に証拠保全を申し立て、裁判官立ち会いのもと、弁護士らが学校に資料開示を求めたからだ。

訴えは、私立学校を所管する長崎県にも向けられた。学校側は当初、「原因はいじめ」と遺族には認める発言もしたが、県学事振興課には「いじめが原因ではない」と報告していた。学校側がいじめ防止対策推進法にのっとった対策をしていないことも県は知らなかった。

「行政による学校の指導の不備が、いかに生徒の学校生活を脅かすことになるのか。長崎県にも自覚を持ってもらいたい」

法廷で話し始めて20分。母親は涙ぐみながら、こう最後に訴えた。「息子はディズニーが大好きで、ディズニーで働く夢を持っていました。息子が私たちの元に戻ってくることはありませんが、この裁判が、子どもたちを守るために必ず役に立つと信じています」

 

学校側は請求の棄却求める

一方、学校側はこの日、請求の棄却を求めた。学校側は答弁書で「中3以来のいじめがいつ誰がと具体的に特定されていない」と反論。報告書が「自死直前のいじめの存在は見つからなかった」などとしながら、いじめを主な要因に認定している点についても「理解できない」と主張している。

石倉徹也

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