2022年12月22日北海道新聞

旭川いじめ再検証開始 市の再調査委 委員長に尾木直樹氏

再調査委員会の初会合終了後、オンラインで記者会見する尾木直樹委員長(西野正史撮影)
再調査委員会の初会合終了後、オンラインで記者会見する尾木直樹委員長(西野正史撮影)

 旭川市内の公園で昨年凍死した中学2年の広瀬爽彩(さあや)さん=当時(14)=へのいじめ問題をあらためて調査する旭川市の再調査委員会が22日、東京都内で初会合を開いた。

市はいじめと自殺の因果関係の有無の再検証など3項目を諮問した。

再調査委は委員長に教育評論家の尾木直樹氏、副委員長に弁護士の野村武司氏をそれぞれ選んだ。

委員はこのほか、精神科医の斎藤環氏、児童心理に詳しい立命館大教授の仲真紀子氏、弁護士の伊東亜矢子氏のいずれも道外を拠点とする計5人。

初会合では、委員ら出席者が広瀬さんに黙とうをささげた後、今津寛介・旭川市長が《1》いじめと自殺の因果関係《2》いじめの事実関係《3》当時の学校と市教委の対応と再発防止策の3項目の検証を盛り込んだ諮問書を尾木氏に手渡した。オンラインで公開した冒頭以外は非公開で、今後の調査の進め方などを協議した。

尾木氏は、終了後の記者会見で「遺族の悲しみ、苦難に寄り添い、法に従って調査を進めたい」と述べた。調査期間については明示を避けたものの今後、月に複数回、会合を開き、市教委の第三者委(1年4カ月)より短い期間で検証結果をまとめる意向を示した。

今後、遺族への聞き取りや、第三者委から引き継いだ資料を用いるなどして事実関係を再検証する。

市教委の第三者委は、9月に公表した最終報告書で、深夜の呼び出しなど6項目のいじめを認定し、凍死を自殺とする見解を示したが、いじめと自殺の因果関係は不明確としたため、遺族側は、結果を不服とする所見書を市と市教委に提出。今津市長が再調査を行うことを決めた。

(綱島康之、山口真理絵)

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2022年12月22日毎日新聞

体罰で生徒アンケ「おとしめること書くな」担任が指示か 長崎の私立高

瓊浦高=長崎市で、中山敦貴撮影

  長崎市の私立瓊浦(けいほ)高の男子バドミントン部や野球部で監督らによる体罰や暴言があった問題で、19日に学校に体罰アンケートの記載を求められた生徒から「担任に『(加害教職員を)おとしめるようなことは書くな』と言われた」との声や、「体罰についてだけ回答するように言われた」との声が出ていることが関係者への取材で分かった。関係者からは「本当に事実究明や再発防止につながるのか」との懸念が上がっている。

関係者や学校によると、男子バドミントン部や野球部での体罰などを受け、19日に全校生徒を対象に体罰に関するアンケートを実施。4月以降に体罰を受けたかや時期、場面、場所、内容、負傷内容などを尋ね、体罰以外の不適切行為や暴言について直接尋ねる項目はなかった。

関係者によると、実施の際に担任が特定の加害教職員の名を挙げて「おとしめるようなことは書くな」との趣旨の発言をしたり、別の担任が「体に直接触れられたことだけを書くように」などと指示をしたりしたという。

校内では今回のアンケート前から、野球部顧問に無断で寮の部屋に入られたり私物を触られたりするなど、体罰以外の不適切行為や暴言を受けたとの訴えも生徒から上がっている。

アンケートを巡る指摘について、同校の佐藤一司教頭は取材に「うみを出し切らなければいけないと思い、暴言なども含めて把握するためにアンケートをした。驚いている」と答えた。【樋口岳大】

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令和4年12月21日 中国新聞デジタル

学校側の調査は不十分 広島大付属三原中の組み体操訴訟 遺族の母親訴え

広島大付属三原中(広島県三原市)の3年男子生徒=当時(14)=20166月に死亡したのは運動会の組み体操の騎馬の崩落が原因として、同市の遺族が広島大(東広島市)に約9600万円の損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が21日、広島地裁福山支部であった。本人尋問で遺族の母親が学校側の調査は不十分などと訴え、結審した。判決は来年4月26日。

母親は運動会まで生徒に病気などはなかったと証言。崩落前後の映像を撮影した保護者がいないか学校にアンケートを求めたが断られたとし、「学校は真実を追求してほしい」と訴えた。騎馬を構成していた生徒から後頭部に膝が当たったなどと直接聞いた内容と、その後に学校側が聞き取った内容が異なっているとした。

この日は当時の担任の男性教諭の証人尋問もあり、生徒も加わって机を騎馬に見立てて動きを検証した結果、男子生徒の後頭部に脚が当たることはないとの結論だったと証言した。

口頭弁論後、遺族側の代理人弁護士は「騎馬に対する教員の危険意識が薄い。学校側の聞き取りには疑問点も多い」と指摘した。大学側の代理人弁護士は「騎馬の崩落はないという主張は変わらない」と述べた。(東山慧介)

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 2022年12月20日付朝日新聞デジタル

桜宮高で追悼集会、校長「風化させてはならぬ」 体罰事件から10年

写真・図版

大阪府立桜宮高校のアリーナ前に置かれている献花台=2022年12月20日午前11時6分、大阪市都島区、飯塚悟撮影

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大阪府立桜宮高校の追悼集会で全校生徒の前で話す森口愛太郎校長=2022年12月20日午前11時58分、大阪市都島区、飯塚悟撮影

大阪市立(現・大阪府立)桜宮高校バスケットボール部の主将だった2年生の男子生徒が顧問から暴行を受け、自殺した事件から23日で10年となる。同市都島区の同校で20日、追悼集会があった。

 全校生徒や教職員ら約900人が出席した。事件を直接知る教員は異動や退職などで一人もいなくなった。

  • 「死を覚悟させる部活って…」 息子が残した手紙に両親が思うこと

 1分間の黙禱(もくとう)の後、森口愛太郎校長は「痛ましい事案を決して風化させてはいけないという、強い決意を確認する場としたいと思います」などと述べた。

 さらに生徒には「この事案を昔のこと、自分の知らないことと他人事にするのではなく、自分が選んで入ってきた桜高(さっこう)のこと、自分の母校でのことと、頭や心の中にとどめておいてください」と呼びかけた。

 男子生徒は元顧問の男性から繰り返し暴力や暴言を受け、2012年12月23日に自宅で自殺した。暴力が自殺の大きな要因になったとして元顧問は懲戒免職となり、13年9月に傷害と暴行の罪で懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受けた。

 事件後、同校は体罰の根絶をめざし、「地域に開かれた学校」を掲げて地域住民を招いての学校行事を重ねてきた。昨秋からは市教委による部活動改革の実践研究に協力し、地元の中学生とスポーツ体験会で交流している。教職員も、怒りの感情を抑える「アンガーマネジメント」などの研修を毎年受けている。宮崎亮

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2022年12月19日 付熊本日日新聞

優秀な指導者の「恐怖支配」元教え子の後悔 熊本市 懲戒免職元教諭の体罰や暴言【放置された不適切指導】㊤

「元教諭から毎日のように殴られた」と証言する紫谷星伍さん=熊本市中央区

熊本市教育委員会は2日、42件の体罰や暴言などを踏まえ、市立校に勤務していた元教諭を懲戒免職処分とした。被害に遭った元児童や保護者、教員、元管理職など20人以上の証言から、元教諭の不適切な指導がなぜ放置され続けたのかを考える。元教諭にも取材を申し入れているが、今のところ実現していない。

◇ ◇

天草市の自営業紫谷[しこく]星伍さん(32)は地元の成人式に出席した12年前、小学生の頃に担任をしていた男性の元教諭を見つけた。「やられたこと、全部覚えてますから」とすごむと、元教諭は「俺も若かったけん、本当に悪かった」と謝った。

拍子抜けした紫谷さんは、仕返しするつもりで固めていた拳を緩めた。

元教諭は20194月に自殺した熊本市立中1年の男子生徒の小学6年時の担任。複数児童に不適切な指導を繰り返したとして、2日付で懲戒免職処分となった。

紫谷さんは一連のニュースを見るうちに「あの時、自分が殴っていたら、子どもたちは犠牲にならずに済んだだろうか」と思うようになった。

忘れられない場面がある。「そこに座れ」。元教諭は砂利の上に正座するよう小学4年の紫谷さんに命じ、「痛いだろう」と靴で太ももを踏み付けた。石がすねに食い込み、紫谷さんが泣き出すと、元教諭はにやっと笑ったという。

紫谷さんは忘れ物が多く、元教諭に連日殴られた。「1回で2030発の時もあり、体中にあざがあった」。ある日、登校中に怖くなって公園に隠れた。それがきっかけで周囲が事情を知り、元教諭の行為が校内で問題化。元教諭は手を上げても寸前でやめるようになり、やがて異動した。

紫谷さんが注意欠陥多動性障害(ADHD)と分かったのは、その後だ。

一方、元教諭には担当教科や文化系部活動の優秀な指導者という側面もあった。男子生徒の自殺

を調べた熊本市の詳細調査委員会の報告書には、多くの教職員や児童、保護者が元教諭の指導力を高く評価したとある。男子生徒が通った小学校で指導した部も、数々の賞を獲得している。

男子生徒の友人だった元児童(15)が元教諭について覚えているのは、数秒以内の整列や大きい声での返事、5分前行動などを強要する厳しい指導。「外からは統率の取れたクラスに見えたと思う」としつつ、「恐怖支配だった。返事の声が小さいと、壁に向かって『はい』と何十回も言わされた」と証言する。

報告書によると、元教諭から被害を受けたとする子どもや保護者が不適切な指導の再発防止を求める嘆願書を市教育長に出すと、支持する側は寛大な処置を求める嘆願書を出した。

市教育委員会の複数の担当者が、指導力を評価する声があるため元教諭の処分が保留され続けた

と考えていた、とも報告書は指摘している。

「大人たちが元教諭を教壇から引きずり降ろす機会はいくらでもあった。成人式で仕返しをやめた私も、動かなかった大人の一人なんです」。紫谷さんは今も後悔している。(植木泰士)

 

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2022年12月15日付朝日新聞デジタル

運動部活動での事故、沈静化は「遺族にすれば隠蔽」 再発防ぐ方法は

写真・図版

福岡大の小佐井良太教授=本人提供

学校の運動部活動で、重大な事故が繰り返されている。なぜなのか。再発防止策は、どう見いだせるのか。

 学校事故の実情に詳しい福岡大の小佐井良太教授(法社会学)に聞いた。

 ――再発防止に向けた動きはどうなっているのでしょうか。学校で起きた事故については、日本スポーツ振興センターが死亡見舞金や医療費を支給する災害共済給付制度があり、事故のデータは報告されていますが。

 もともと、この制度は、事故の報告をする際に厳密な検証を義務づけているわけではありません。

 1995年に熊本県の中学校の弓道部で起きた死亡事故を私が調べて論文に書いた際、日本スポーツ振興センターの前身の組織から聞いたのは、「死亡見舞金は、死亡の事実があれば給付する」ということでした。

 給付のために必要な事実を確認する、という質のもので、個別の情報からただちに事故の再発防止につなげられる形のものではありません。

 ――どんな類型の事故が多いのか、分析材料にできないでしょうか。

 柔道部で生徒が死亡したり、重い後遺症が残ったりする事故が多いことを問題視した名古屋大の内田良教授が、給付制度で集められたデータから、柔道の重大事故は新入生に多いことや、大外刈りが危ないといった傾向を分析しました。それは、一件一件の事故についてのわずかな記述を集めて、見えてきたものでした。

 重大事故、軽微な事故を問わず、データを収集・分析して、事故防止に活用しようとする取り組みが、2014年ごろから、文部科学省やスポーツ庁の委託事業として始まっています。

 集められたデータをうまく使い、現場に還元して事故防止に役立てることが必要です。

再発防止へ「働きかけの流れは構築途上」

 ――再発防止そのものを目的に、事故情報を収集する動きはあるのでしょうか。

 文部科学省が2016年に「学校事故対応に関する指針」を出し、学校管理下で子どもが亡くなるなどの重大事故が起こった場合、子どもの保護者からの要望などがあれば、学校設置者などが外部の専門家らによる調査委員会を立ち上げることをルール化しました。

 この制度がスタートして、ようやく6年。今は、それを通じて集まり始めたデータを活用して傾向を分析し、具体的に再発防止へと働きかけていく流れの構築途上にあるとみています。

 ――なぜ、近年までそうした指針がなかったのでしょうか。

 先述した熊本の弓道部で起きた死亡事故は、部員が放った矢がチームメートの頭に刺さった事故でした。過去に似た事故がなかったか、報道などを調べたところ、その3年前に神奈川の中学校弓道部でほぼ同種の死亡事故が起きていました。

 その情報は神奈川県の関係者には知られていましたが、外部には広がっていなかった。弓道競技の学校関係者からは、「不祥事には互いに触れないのがマナーだ」というような話を聞きました。

 事故がどのように起こったかを共有し、洗いざらい検証して再発防止に生かすのではない。「不幸にして起きた事故」として、沈静化させてやり過ごすことに腐心した結果、一つ一つの事故がバラバラに切り離されてきたのが、かつての学校現場での対応だと思います。

事故が関係者にとってショックなのはわかります。ただ、そうやって結局は同じ事故が繰り返されてしまいます。

被害者や遺族からすれば、事故の状況について学校に聞いても十分な説明がなく、教育委員会に開示を求めると黒塗りの資料が出てきたり、一方的なことが書かれていたりする。そっとしておこうという配慮かもしれませんが、遺族からすれば隠蔽です。

そこで、事実を知るための裁判を起こすということが、長らく繰り返されてきました。

全国学校事故・事件を語る会や全国柔道事故被害者の会など、当事者たちが学校事故の再発防止などに向けた要求をしていった中で、少しずつ状況が変わってきてはいますが。

 

「上下関係の硬直性を変えなければ」

――部活動の重大事故で設置される調査委員会に課題はありますか。

調査委員会のメンバー構成や専門性、実際にどのような調査が行われているかについての検証は、20年に文科省が報告書を公表していますが、まだ制度が始まって6年で、十分な検証はなされていません。

スポーツの事故でいえば、委員会のメンバーに教育の専門家や弁護士らに加え、その競技の団体関係者が入ってくる形になるかと思いますが、事故があった時の選手の動きの解析などは、本来はデータ解析などの専門家が入らなければできないことだと思います。

必要な調査を行うための委員の構成を確保できているか、再発防止に資する形になっているのか、不十分ならどう調査能力を高めていくのか、が課題になってくると思います。

――競技団体にできることは。

全日本柔道連盟が努力しているように、各団体が競技に携わるプロの目で事故情報を共有することで、事故の根絶につなげられます。そのためには、「けがをするのが当たり前」「強くなるためにはけがは避けられない」といった意識を変えなければなりません。

安全対策がおろそかな指導者を、それに気づいている後輩の指導者が問いただしていくのが難しいといった上下関係が生む硬直性を変えるところから始めるべきだと思います。(聞き手・中小路徹

〈災害共済給付制度〉学校管理下での事故に起因する死亡や疾病について、見舞金や医療費を給付する日本スポーツ振興センターの制度。死亡事故や障害が残る事故については毎年、統計的な傾向や発生状況が明らかにされるが、簡単な概要にとどまっている。

〈事故被害者の動き〉全国学校事故・事件を語る会は2003年、学校での事故・事件などで子どもを亡くした兵庫県内の4家族が集まって活動していた遺族の会を母体に結成された。柔道では、04年に横浜市立中学校で柔道部員が顧問から何度も投げられて高次脳機能障害が残った事案など重大事故が相次いでいたことから、10年、被害者の家族らが集まり、全国柔道事故被害者の会が結成された。

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2022年12月14日付熊本日日新聞

上級生らの「行き過ぎた指導」所属部活動で41件 熊本工高1年自殺 「死ね」「殺すぞ」暴言や1時間正座

自殺した生徒が所属していた部活動内で行き過ぎた指導があったことについて謝罪する

熊本工高の柿下耕一校長(左)ら=14日、熊本市中央区

熊本工高(熊本市中央区)は14日、10月に自殺した1年の生徒が所属していた部活動の

部員を対象に調査した結果、暴言など明らかに改善が必要とされる上級生らの「行き過ぎた指導」が41件確認されたと明らかにした。

学校は4月~11月上旬の間、所属部活動内で行き過ぎた指導などがなかったかアンケートや聞き取りを実施。3年生31人、2年生22人、1年生25人が回答した結果、12年生が41件の行き過ぎた指導を受けていた。「死ね」「殺すぞ」といった暴言や約1時間の正座も確認された。

生活や服装などに関する「厳しい指導」は12年生で13件確認。3年生は全員が行き過ぎた指導も厳しい指導も「受けたことがない」と回答した。

ほかの部活動は教員らに聞き取った。柿下耕一校長は「(生徒が所属する部活動は)突出していた。もっと早く把握していれば対応できたかもしれない」と説明。「行き過ぎた指導の未然防止と再発防止に全力で取り組む」と強調した。

所属部活動内の指導に関する調査は、県教育委員会が「上級生による厳しい指導が自殺に影響した可能性を排除できない」として、学校に指示していた。(上島諒)

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2022年12月9日毎日新聞

「いじめの詳細、学校から知らされず」 遺族側憤り 神戸中3自殺

 

第三者委員会の調査報告書を受けて記者会見する遺族代理人の野口善国弁護士(左)ら=神戸市中央区で2022129日午後5時、中田敦子撮影

「『なぜ』『なぜ』という疑問を打ち消すことができない」――。神戸市立中学3年の女子生徒(当時14歳)が自殺した問題で、第三者委員会は生徒に対する複数のいじめを認定し、学校側の情報共有不足など対応の不備を指摘した。9日記者会見した遺族側の弁護士は「(いじめは)予想もしていなかった悲惨な内容だ。なぜ学校がもっと早く教えてくれなかったのか」と憤った。

遺族代理人の野口善国弁護士(兵庫県弁護士会)によると、女子生徒の両親は、小学5年から続いていたいじめの詳細を学校側から知らされていなかった。自傷行為について「いじめが原因でない」との説明を受けた時も「そうかな」と疑問に思っていたという。

両親はいじめに気付いてあげられなかったことについて自責の念を抱いているという。

野口弁護士は「ショックを受け、コメントを発表できる状態ではない」とおもんぱかった。

その上で学校の対応について「最初の集団いじめが見つかった時に断固たる指導をして解消すべきなのに、中学校で加害生徒を同じクラスにした。こんなことがあるのか」と非難した。

市教育委員会もこの日記者会見を開き、河野剛至(たけし)・児童生徒担当部長が「SOSを周囲の大人が受け止められなかった。重く受け止めている」と話した。両親にいじめの深刻さが伝わっていなかった点については「十分に伝えきれていなかった」と釈明した。【山本真也、中田敦子】

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2022年12月9日朝日新聞

いじめ・自傷見逃し 第三者委「学校の致命的誤り」 神戸・中3自殺

いじめを認定した調査報告書について、記者会見で説明する第三者委員会のメンバー=神戸市中央区の市教育委員会で2022129日午前1146分、山本真也撮影

神戸市垂水区で2020年、市立中学3年の女子生徒(当時14歳)が自殺した問題で、市教育委員会が設置した第三者委員会は9日、「いじめが自死に強く影響した」とする調査報告書を市教育長に提出した。いじめや生徒の自傷行為がエスカレートしていたのに、学校側はその兆候を見逃し、「いじめは解消した」と判断していた。報告書は学校が組織的な対応を怠り、家族との情報共有も不十分だったと指摘。「致命的な誤りで、自死は防げた」と厳しく批判した。

20年9月5日朝、生徒が自宅で死亡しているのを父親が発見。机には「学校疲れた」「死にたいな」とのメモが残されていた。市教委は同年12月、いじめ防止対策推進法に基づき、弁護士や精神科医らによる第三者委を設置。同級生や教諭らに聞き取り調査した。

 

報告書によると、生徒は小学5年の時、触った物を汚物扱いされるなど、同じクラスの7割が関与する集団いじめを受けた。中学に入学後も他の女子生徒から嫌がらせを受けたり、男子生徒5人からばい菌扱いされたりした。

学校はこの5人を1回指導しただけで、組織的・継続的な指導をしなかった。生徒は193月に自傷行為を始めたが、学校は母親に「いじめは解消している」と説明し、いじめの深刻さを伝えていなかった。

生徒へのいじめはその後も続き、他の女子生徒からLINE(ライン)で「殺すぞ」「はやくしねや」とメッセージを送られることもあった。

中学3年の時、加害生徒5人のうち3人と同じクラスになり、精神的な負担が増加。担任に「席を近くしないで」と席替えを再三訴えた。自殺の1カ月前にはSNS(ネット交流サービス)に「死にたいってなんなんだろう」「誰か助けて」と投稿。しかし、死の直前まで友人らのLINEグループから削除されるなどのいじめが続いた。

報告書はいじめがトラウマになり、生徒の自己肯定感が著しく損なわれていたと指摘。

進学への不安も重なって精神的に追い込まれていたが、周囲がそれを理解せず、適切な支援ができなかったと結論づけた。

第三者委のメンバーで、精神科医の山下仰(こう)・武庫川女子大教授は記者会見で

「学校は早々にいじめが解消したと判断し、被害生徒に寄り添った対応ができず、責任は重い」と述べた。【山本真也】

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2022年12月8日付熊本日日新聞

県央高3いじめ自殺、開示命令に不服 県、最高裁に特別抗告

県の第三者機関がまとめた調査報告書の黒塗り部分を示す遺族=10月中旬、熊本市中央区

20134月にいじめを理由に自殺した県央の県立高3年の女子生徒=当時(17)=の遺族が県と当時の同級生8人に損害賠償を求めた訴訟で、県は7日、いじめに関与した生徒の氏名を黒塗りにしていない県の第三者機関の「調査報告書」を熊本地裁に提出するよう命じた福岡高裁

決定を不服として、最高裁に特別抗告した。同高裁にも許可抗告をした。

県教育委員会は特別抗告の理由について「係争中で申し上げられない」とした。遺族は「娘に何が起こったのか知りたいだけなのに、なぜそこまでする必要があるのか。信じられない」と話している。

1129日付の高裁決定は、報告書のうち聞き取り調査などに回答した証言者の氏名以外の部分は、公務の遂行に著しい支障が生じる具体的な恐れは認められないと判断した。(臼杵大介) 

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