学校事件の報道

2021年2月10日付朝日新聞

吹奏楽部顧問が部員蹴り、暴言…謹慎処分に 広島新庄高

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広島新庄中学・高校=広島県北広島町

 広島新庄中学・高校(広島県北広島町)の吹奏楽部顧問の男性教諭(42)が、部員への体罰や暴言を理由に、昨年12月末から2週間の謹慎処分を受けていたことが、同校への取材でわかった。現在、顧問も外れている。教諭は2018年9月にも別の部員への暴言で謹慎処分となったという。

学校や関係者によると昨年10月、部活動の練習中に筆記用具を忘れた高2の男子生徒に対し、足を蹴る体罰を加えた。生徒にけがはなかった。教諭は学校の調査に「生徒の態度で理性を失いかけた。蹴る意思があった」と認めたという。教諭は部員たちに「バカ」「本気でやらんと殺すよ」などの暴言も繰り返していたという。

さらに、昨年8月の校内合宿中に、飲酒していたとの情報が保護者から寄せられた。当初、学校に「一度きり」と説明したが、その後、複数回飲酒したことを認めた。こうした虚偽報告も処分の理由となった。

学校は、4月から顧問に復帰させることを念頭に、吹奏楽部の指導方法をまとめたガイドラインを作成中という。

保護者からは「女子生徒にマッサージをさせている」との指摘もあった。学校が昨秋調べたところ、教諭は18年以降、女子生徒によるマッサージを頻繁に受けていたことを認めたという。マッサージをした生徒は複数おり、学校側に「自発的にした」と説明したという。

6年連続で中国大会へ 校長「情熱が…」

 18年にも部活指導中に、高1の女子生徒に「クズ」「カス」と暴言を吐いたとして、2週間の謹慎処分を受けた。学校はパワハラなどの研修をしたという。

この教諭は07年に吹奏楽部の外部講師として着任し、数年後に教諭として採用された。同校は11年に全日本吹奏楽コンクール中国大会に初出場し、14~19年の6年連続で中国大会に進んだ。荒木猛校長は取材に対し、「強くしたいという部活動にかける情熱が間違った形で出てしまったと理解している。暴力や暴言は肯定できない」と話した。

学校が昨年、吹奏楽部の全部員に調査したところ、処分の対象となった事案以外にも、この教諭に胸ぐらをつかまれたと話す生徒や、指揮棒を投げたり、譜面台を蹴ったりしたと訴える生徒もいたという。荒木校長は「過去の実態を詳細に把握することは難しく、生徒に重大なけがなどがない限り、調べる予定はない」としつつ、「非常に残念で申し訳ない。生徒、保護者との信頼関係の構築に努めたい」と話した。

県学事課の担当者は「内部管理の問題。校内で適切に対処していただく」と話している。

県吹奏楽連盟の古土井(ふるどい)正巳理事長は「事実であれば非常に残念」と話している。吹奏楽部員の保護者の一人は「子どもは先生の顔色を見ておびえながら部活をしている。教員としてあるべき姿ではないし、クラブは先生の私物じゃない」と憤った。(西晃奈)

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2021年2月10 日付毎日新聞

いじめを苦に自殺した女子生徒の両親ら遺族が兵庫県加古川市に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論後、記者会見する遺族側代理人の渡部吉泰弁護士=同県姫路市で2021年2月10日午前11時1分、韓光勲撮影拡大
いじめを苦に自殺した女子生徒の両親ら遺族が兵庫県加古川市に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論後、記者会見する遺族側代理人の渡部吉泰弁護士=同県姫路市で2021年2月10日午前11時1分、韓光勲撮影

兵庫県加古川市で2016年9月、市立中2年の女子生徒(当時14歳)がいじめを苦に自殺したのは学校が適切な対応を怠ったためであり、自殺後の調査でもいじめを示唆していた情報を隠すなど実態解明に後ろ向きな態度で深く傷つけられたとして、両親が市に約7700万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日、神戸地裁姫路支部(倉地真寿美裁判長)であった。両親が意見陳述で学校と市教委への不信と再発防止のための体質改善を訴えたが、市側は請求棄却を求めて争う姿勢を示した。

被害生徒の父は法廷で「娘の死を置き去りにし、反省の気持ちをみじんも感じない姿勢を許すことができない」と市教委の姿勢を批判。母は「この事案を決して忘れず、教訓にしなければならない」と訴えた。

神戸地裁姫路支部=兵庫県姫路市で2021年2月10日午後1時35分、韓光勲撮影拡大
神戸地裁姫路支部=兵庫県姫路市で2021年2月10日午後1時35分、韓光勲撮影

一方、市側は答弁書で、自殺の原因となったいじめがどの行為なのかが明らかでないと主張。代理人弁護士は「学校の注意義務違反と、生徒の自死との間に、法的因果関係は認められない」と述べた。

市教委の第三者委員会の調査報告書を基にした訴状などによると、被害生徒は1年生だった15年夏ごろから、部活動で仲間外れにあっていた部員と親しくしたことで多数派による無視や仲間外れを受けるようになった。クラスでも小学校の頃からの嫌なあだ名で呼ばれ、無視や陰口も言われるなどのいじめを受け、クラス替えとなった2年生になっても続いた。

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2021年2月10日付神戸新聞NEXT

加古川・中2自殺訴訟 きょう10日「口頭弁論」

神戸新聞NEXT
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 兵庫県の加古川市立中学校2年の女子生徒=当時(14)=が2016年にいじめを受けて自殺した問題で、生徒の遺族が同市に約7700万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日、神戸地裁姫路支部である。3年前、第三者委員会が調査を経ていじめを自殺の原因と認めたが、その後、事実確認などを巡り市と遺族の溝は深まり、訴訟に至った。行政による遺族らへの対応や支援に明確な規定はなく、「遺族を支える専門的な担当が必要だ」との声も上がる。(斉藤絵美)

 「これまでのさまざまな第三者委の報告書には、背景調査や再発防止策は示されているが、事態をどう収束させるかについては書かれていない」。学校での事故やいじめ、体罰などで子どもを亡くした遺族らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」代表世話人の内海千春さん(61)は話す。

16年9月、女子生徒がいじめをほのめかすメモを残して自殺したことを受け、加古川市教育委員会はいじめ防止対策推進法に基づく重大事態と判断し、第三者委を設置。第三者委は17年12月に報告書をまとめ、学級や部活動でのいじめが自殺の原因と認定した。

しかしその後、学校が「紛失した」としていた、いじめの存在を示すメモを部活動の顧問らが破棄していたことが判明。さらに、事実関係などについて話し合う中で、市が「法的責任はない」という姿勢に固執したことなどから、遺族は「深く傷つけられた」として訴訟に踏み切った。

これに対し岡田康裕市長は、「メモ自体の存在は隠していない」と隠蔽(いんぺい)を否定。「司法の場で判定してもらわざるを得ない」とした。

いじめの調査に関わる遺族らへの対応について、文部科学省は「寄り添いながら調査を進める」と指針で示す程度。内海さんは、日航ジャンボ機墜落事故(1985年)や尼崎JR脱線事故(2005年)で加害企業が置いた遺族担当者を例に挙げ、「被害者、加害者の本音を聞くコーディネーター的な専門職を行政に設置してほしい」と望む。

さらに内海さんは「学校や教育委員会は沈静化にのみ躍起になり、遺族の怒りの裏にある実態を見ようとしない」と指摘。「行政に厳しい発言をするのは非難ではなく、『助けてくれ』という叫び。遺族は救済すべき人ということを忘れないで」と訴えている。

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中2女子いじめ自殺 同級生も不登校 教員の圧力感じ転校

 いじめを受け自殺した女子生徒が通っていた中学校。同級生もクラスの輪に入れない時期があったが、女子生徒と励まし合って通った=兵庫県加古川市で2021年2月5日午前11時5分、藤顕一郎撮影拡大
いじめを受け自殺した女子生徒が通っていた中学校。同級生もクラスの輪に入れない時期があったが、女子生徒と励まし合って通った=兵庫県加古川市で2021年2月5日午前11時5分、藤顕一郎撮影

3年8カ月前、いじめを原因に自殺した中学2年の女子生徒(当時14歳)を巡る調査で、学校側の対応に不信感を募らせた同級生が別の中学校に転校した。被害生徒に寄り添い、加害生徒に注意を促したものの、いじめはやまず、守れなかったことを悔いて学校に通えなくなった。そんな同級生に対し、学校側は第三者委員会による調査の有無や被害生徒の両親とのやり取りを問いただした。こうした事実は一切明らかにされず、学校側からの謝罪はいまだにない。「いじめ対応で不登校になった生徒がいたことを隠し続けたいのではないか」。同級生の母が抱いた不信感は今も消えない。

友の死に「(自分は)役立たずや」

亡くなった女子生徒は校内の駐輪場で自転車を分解されたこともあった=兵庫県加古川市で2021年2月5日午前11時6分、藤顕一郎撮影拡大
亡くなった女子生徒は校内の駐輪場で自転車を分解されたこともあった=兵庫県加古川市で2021年2月5日午前11時6分、藤顕一郎撮影

自殺した生徒と同級生は2015年4月、兵庫県加古川市の市立中に入学し、同じクラスになった。好みの漫画や猫の話をするうちに友達になった。部活動は違ったが、カラオケや花火大会に一緒に出かけ、自宅も行き来してよく遊んだ。友へのいじめに同級生が気づいたのは2学期ごろ。自転車が分解され、悪口を書かれた紙を投げつけられている姿を見かけた。

 「よくないよ」。加害生徒の一人に注意すると、「それ以上言うな」と反発された。3学期からは自らもクラスメートから無視されるようになった。それでも、母には「私が学校に行かなくなったら(被害生徒の)居場所がなくなる。頑張って行かないと」と話したという。この頃から、被害生徒に「一緒にいると癒やされるよ」と勧められた猫を飼い始めた。春休みには2人で体を寄せ合ってプリントシールを撮った。

2年生では違うクラスとなり、一緒に過ごす時間は減ったが、朝は廊下で「おはよう」と声を掛け合った。だが、夏休み明けから被害生徒を見かけなくなった。体調が悪いのかと心配していたが、16年9月、彼女は自ら命を絶っていた。

 そのことを学校で知った同級生は泣き声をあげながら帰宅し、母にこう漏らした。「役立たずや。何もしてやれなかった」

亡き友の家に花を持って訪れた。一緒に過ごした1年生の3学期、教室での出来事を、彼女の両親に伝えた。2人ともクラスで無視され、プリントの配布を外されたり、机に落書きをされたりしたこと。休み時間を一緒に過ごし、どちらかが学校を休んだ時には、一人になったこと。彼女から「1年間仲良くしてくれてありがとう‼ 2年生でも一緒のクラスがいいね~」との手紙をもらっていた。

 その後、同級生は自室で布団にこもるようになり、学校に行けなくなった。

教諭「弁護士はつけているのか」

16年11月になって市教委は被害生徒が自殺し、「いじめ」の文言が入ったメモが残されていたと発表し、自殺の原因を調査するため大学教授や弁護士らによる第三者委員会を設置した。翌年2月、同級生は自宅で第三者委の聞き取りを受けた。母も立ち会う中、自分が見聞きしたことを包み隠さず伝えた。

同級生が学校に呼び出されたのはこの直後だった。学年主任の教諭から個室で「もう調査はあったのか」と聞かれた。答えずにいると、「最初に呼ばれると思ったのに」と言われた。被害生徒の両親と会ったことを明かすと、「何を話したのか」「弁護士はつけているのか」などと何度も聞かれた。

 その後も2、3回、学校に呼び出され、母が学校に抗議した。同級生が再び学校に通い始めると、教諭らがげた箱で待ち伏せていたこともあった。教諭らの質問攻めに遭うことを恐れ、また学校への足は遠のいた。見かねた母は教諭らに「学校を変わることも考えている」と伝えたが、「転校なんてできるはずがない」とあしらわれたという。学校が信じられなくなり、同級生は17年6月、市外の中学校に転校した。

いじめを受けて自殺した女子生徒の両親が加古川市を相手取った訴訟が続く神戸地裁姫路支部=兵庫県姫路市で2021年2月5日午前10時26分、藤顕一郎撮影拡大
いじめを受けて自殺した女子生徒の両親が加古川市を相手取った訴訟が続く神戸地裁姫路支部=兵庫県姫路市で2021年2月5日午前10時26分、藤顕一郎撮影

校長は「知らない」

第三者委がまとめた報告書によると、被害生徒は1年生だった15年夏ごろから、所属していた部活動で無視や仲間外れ、嫌なあだ名で呼ばれるなどのいじめを受け、2年生まで続いた。自殺の3カ月前に行った校内アンケートで被害生徒はいじめを訴える回答をしていたが、学校は対応しなかった。報告書は自殺の原因をいじめと認定し、「学校が対応していれば無力感から脱することができ、自死行為をせずに済んだと考えるのが合理的」と総括した。

一方、被害生徒の部活動の顧問らが部員を集めていじめの状況を紙に書かせたが、部員同士のトラブルとして処理し、メモをシュレッダーで破棄。第三者委には紛失したと報告していたこともその後に判明した。ただ、第三者委の聞き取りで部員らの証言は得られており、調査結果には影響しなかったという。

県教委は18年11月、重大ないじめに対処していなかったとして当時の校長を戒告処分とし、学年主任と担任を訓告、部活動の顧問ら2人を厳重注意とした。被害生徒の遺族は20年9月、学校側が適切に対応していれば自殺は防げたなどとし、市に損害賠償を求めて神戸地裁姫路支部に提訴。2月10日に第1回口頭弁論がある。

第三者委の調査などを同級生から聞き出そうとしたことについて、学年主任だった教諭は毎日新聞の取材に対し、被害生徒の裁判があることを理由に「すみません」と述べてコメントしなかった。同級生が転校するまでの経緯について当時の校長にも尋ねたが、「17年3月末で異動し、何も知らない」と話した。市教委は「個別事案についてはプライバシーの観点からお答えできない」とした。

同級生は19年4月から県内の私立高校に通う。20年末、病気で亡くなった友人の墓参りでクラスメートが学校を休んだことがあり、帰宅して母親に言った。「お墓、私も行った方がええよな」。母の目には、被害生徒の死に向き合い始めているように映った。母は言う。「学校側は『不登校は良くない』と決めつけ、娘に寄り添うどころか、何か情報を得ようと追い回した。今も許せない。いじめや、被害生徒が亡くなったことにきちんと向き合ってほしかった」【藤顕一郎】

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2021年2月9日朝日新聞デジタル

小6自殺、いじめ認定するも「主因でない」 第三者委

写真・図版

佐藤裕・野田市教育長に答申する金子英孝・委員長(右)=2021年2月8日、千葉県野田市、石原剛文撮影

 千葉県野田市の市立小学校6年の男児が2019年7月に自殺した問題で、いじめの有無などを調べていた第三者委員会「市いじめ問題対策委員会」は8日、いじめがあったことは認定したものの、自殺の主な原因とは判断しない調査結果を市教育長に答申した。目立つ児童への支援を教職員が積極的に行いがちだと問題提起し、「SOSを出すことが苦手な子への支援のあり方」を念頭に置いた再発防止策を要望した。

調査報告書などによると、男児は19年7月13日、午前中の土曜授業に出席した後、自宅で自殺した。遺族が調査を望んだこともあり、市教育委員会は「重大事態」として第三者委を同月に設置。男児が通っていた小学校の6年生約130人や担任らに聞き取りをするなど調査を続けてきた。

男児は6年生の時、別の児童から机を離されたり、机の上に教科書を立てて壁をつくられたりしたほか、プリントなどを投げるようにして渡されたりした。

男児が授業で音読をつっかえると、この児童に「練習してないじゃん」と言われた。男児は下校時、友人に「おれは暴言をはかれている」などと話し、帰宅後も母親にそう話した、とされる。男児はこの日、自殺した。

第三者委は男児が受けた行動について「高学年の学校生活ではしばしば見られるありふれた行為」とする一方で、「心理的な影響を与える行為」ととらえ、累積が相当のストレスになったのではと指摘。男児は友人に「嫌だ、ひと泡ふかせてやりたい」と話しており、いじめがあったと認定した。

一方で、どの時点で自殺を決意したかを結論づける情報は得られなかったという。男児は規律を守り思いやりがある性格だが、いじめについて相談するべき内容かどうか分からず1人で苦しみ、周囲に心境の重大さが伝わらなかったことが考えられると説明。机を離されるなどしたことはストレスになりうるが、第三者委は「いじめだけが、明らかに自殺の要因であるとは判断できなかった」と結論づけた。

ここから続き

学校では、教師が机を離された行為に気付き、「つけなさい」と声かけをしたものの、男児の抱えていた悩みに気付かなかったという。

第三者委は、いじめ防止対策の環境が学校で整っていたとしたうえで「それが十分に機能していたとは言い難い」と指摘し、子どもたちの行動について「なぜ」と思うことが、子どもたちの関係を把握できる可能性について言及。「いじめ防止の授業」の実施や、教職員への自殺予防の研修の実施などを提言した。

男児の両親は市教委に対し、「調査報告書の内容については納得していない」と話し、再調査を望んでいるという。佐藤裕・市教育長は「実効性のある再発防止に全力で取り組む」と話している。(石原剛文)

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 中2女子いじめ自殺 同級生も不登校 教員の圧力感じ転校

いじめを受け自殺した女子生徒が通っていた中学校。同級生もクラスの輪に入れない時期があったが、女子生徒と励まし合って通った=兵庫県加古川市で2021年2月5日午前11時5分、藤顕一郎撮影
いじめを受け自殺した女子生徒が通っていた中学校。同級生もクラスの輪に入れない時期があったが、女子生徒と励まし合って通った=兵庫県加古川市で2021年2月5日午前11時5分、藤顕一郎撮影

3年8カ月前、いじめを原因に自殺した中学2年の女子生徒(当時14歳)を巡る調査で、学校側の対応に不信感を募らせた同級生が別の中学校に転校した。被害生徒に寄り添い、加害生徒に注意を促したものの、いじめはやまず、守れなかったことを悔いて学校に通えなくなった。そんな同級生に対し、学校側は第三者委員会による調査の有無や被害生徒の両親とのやり取りを問いただした。こうした事実は一切明らかにされず、学校側からの謝罪はいまだにない。「いじめ対応で不登校になった生徒がいたことを隠し続けたいのではないか」。同級生の母が抱いた不信感は今も消えない。

友の死に「(自分は)役立たずや」

亡くなった女子生徒は校内の駐輪場で自転車を分解されたこともあった=兵庫県加古川市で2021年2月5日午前11時6分、藤顕一郎撮影

 自殺した生徒と同級生は2015年4月、兵庫県加古川市の市立中に入学し、同じクラスになった。好みの漫画や猫の話をするうちに友達になった。部活動は違ったが、カラオケや花火大会に一緒に出かけ、自宅も行き来してよく遊んだ。友へのいじめに同級生が気づいたのは2学期ごろ。自転車が分解され、悪口を書かれた紙を投げつけられている姿を見かけた。

「よくないよ」。加害生徒の一人に注意すると、「それ以上言うな」と反発された。3学期からは自らもクラスメートから無視されるようになった。それでも、母には「私が学校に行かなくなったら(被害生徒の)居場所がなくなる。頑張って行かないと」と話したという。この頃から、被害生徒に「一緒にいると癒やされるよ」と勧められた猫を飼い始めた。春休みには2人で体を寄せ合ってプリントシールを撮った。

2年生では違うクラスとなり、一緒に過ごす時間は減ったが、朝は廊下で「おはよう」と声を掛け合った。だが、夏休み明けから被害生徒を見かけなくなった。体調が悪いのかと心配していたが、16年9月、彼女は自ら命を絶っていた。

 そのことを学校で知った同級生は泣き声をあげながら帰宅し、母にこう漏らした。「役立たずや。何もしてやれなかった」

 亡き友の家に花を持って訪れた。一緒に過ごした1年生の3学期、教室での出来事を、彼女の両親に伝えた。2人ともクラスで無視され、

プリントの配布を外されたり、机に落書きをされたりしたこと。休み時間を一緒に過ごし、どちらかが学校を休んだ時には、一人になったこと。

彼女から「1年間仲良くしてくれてありがとう‼ 2年生でも一緒のクラスがいいね~」との手紙をもらっていた。

 その後、同級生は自室で布団にこもるようになり、学校に行けなくなった。

教諭「弁護士はつけているのか」

 16年11月になって市教委は被害生徒が自殺し、「いじめ」の文言が入ったメモが残されていたと発表し、自殺の原因を調査するため大学教授や

弁護士らによる第三者委員会を設置した。翌年2月、同級生は自宅で第三者委の聞き取りを受けた。母も立ち会う中、自分が見聞きしたことを

包み隠さず伝えた。

 同級生が学校に呼び出されたのはこの直後だった。学年主任の教諭から個室で「もう調査はあったのか」と聞かれた。答えずにいると、「最初に

呼ばれると思ったのに」と言われた。被害生徒の両親と会ったことを明かすと、「何を話したのか」「弁護士はつけているのか」などと何度も聞かれた。

 その後も2、3回、学校に呼び出され、母が学校に抗議した。同級生が再び学校に通い始めると、教諭らがげた箱で待ち伏せていたこともあった。

教諭らの質問攻めに遭うことを恐れ、また学校への足は遠のいた。見かねた母は教諭らに「学校を変わることも考えている」と伝えたが、「転校なんて

できるはずがない」とあしらわれたという。学校が信じられなくなり、同級生は17年6月、市外の中学校に転校した。

 

校長は「知らない」

 第三者委がまとめた報告書によると、被害生徒は1年生だった15年夏ごろから、所属していた部活動で無視や仲間外れ、嫌なあだ名で呼ばれる

などのいじめを受け、2年生まで続いた。自殺の3カ月前に行った校内アンケートで被害生徒はいじめを訴える回答をしていたが、学校は対応しなかった。

報告書は自殺の原因をいじめと認定し、「学校が対応していれば無力感から脱することができ、自死行為をせずに済んだと考えるのが合理的」と総括した。

 一方、被害生徒の部活動の顧問らが部員を集めていじめの状況を紙に書かせたが、部員同士のトラブルとして処理し、メモをシュレッダーで破棄。

第三者委には紛失したと報告していたこともその後に判明した。ただ、第三者委の聞き取りで部員らの証言は得られており、調査結果には影響しなかった

という。

 県教委は18年11月、重大ないじめに対処していなかったとして当時の校長を戒告処分とし、学年主任と担任を訓告、部活動の顧問ら2人を厳重注意

とした。被害生徒の遺族は20年9月、学校側が適切に対応していれば自殺は防げたなどとし、市に損害賠償を求めて神戸地裁姫路支部に提訴。

2月10日に第1回口頭弁論がある。

 第三者委の調査などを同級生から聞き出そうとしたことについて、学年主任だった教諭は毎日新聞の取材に対し、被害生徒の裁判があることを理由に

「すみません」と述べてコメントしなかった。同級生が転校するまでの経緯について当時の校長にも尋ねたが、「17年3月末で異動し、何も知らない」

と話した。市教委は「個別事案についてはプライバシーの観点からお答えできない」とした。

 同級生は19年4月から県内の私立高校に通う。20年末、病気で亡くなった友人の墓参りでクラスメートが学校を休んだことがあり、帰宅して母親に言った。

「お墓、私も行った方がええよな」。母の目には、被害生徒の死に向き合い始めているように映った。母は言う。「学校側は『不登校は良くない』と決めつけ、

娘に寄り添うどころか、何か情報を得ようと追い回した。今も許せない。いじめや、被害生徒が亡くなったことにきちんと向き合ってほしかった」【藤顕一郎】

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2021年2月6日付西日本新聞

高3いじめ自殺、私立校側が控訴「上級審の判断仰ぐ」

福岡県内の私立高3年だった山口勲大(いさむ)さん=当時(18)=が2013年に自殺したのは学校側が同級生のいじめへの対応を怠ったためだとし、遺族が高校を経営する学校法人に損害賠償と謝罪文の校内掲示を求めた訴訟で、学校側は控訴期限の5日、約2643万円の支払いを命じた福岡地裁判決を不服として控訴したことを明らかにした。4日付。学校側の控訴を受け、遺族も付帯控訴する方針。

  1月22日の地裁判決は、いじめと自殺の因果関係を認めた上で「適切に対応していれば自殺を防ぐことは可能だった」と学校側の責任を認定。謝罪文は「社会的名誉が毀損(きそん)されたとは言えない」として退けた。

学校側の弁護士は控訴理由について「判決は重く受け止めているが、普遍的な判断かどうか上級審の判断を仰ぐ必要がある」と説明。山口さんの父親(67)は「受け入れてもらえず残念。控訴審で心からの謝罪を求めたい」とコメントした。 (森亮輔)

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2021年1月25日 付京都新聞

大津いじめ訴訟、元同級生に400万円賠償命令 最高裁が上告退け確定

最高裁の判決を受け、会見する男子生徒の父親(25日午後2時、大津市・滋賀弁護士会館)

最高裁の判決を受け、会見する男子生徒の父親(25日午後2時、大津市・滋賀弁護士会館)

大津市で2011年に市立中2年の男子生徒=当時(13)=が自殺したのは元同級生らによるいじめが原因だとし、遺族が元同級生らに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は25日までに、二審大阪高裁判決を不服とした両親の上告を退ける決定をした。元同級生2人に対して計約400万円の支払いを命じた二審判決が確定した。

元同級生側の賠償額は一審大津地裁判決より大幅な減額となったが、一、二審が認定した「いじめと自殺の因果関係」を支持した形で、遺族側の代理人弁護士によると、いじめによる自殺を一般的に生じうる「通常損害」と認めた判決が最高裁で確定するのは初めて。この自殺問題は、13年のいじめ防止対策推進法施行の契機となった。

最高裁決定を受け、大津市内で会見した父親は「加害者にはこの判決を重く受け止め、今からでも遅くないので、真摯[しんし]に息子に対して犯した罪と向き合い、猛省してもらいたい」と求めた。

二審判決は一審判決を踏まえ、元同級生らの一連の加害行為を「いじめ」と断じた上で、自殺に及ぶことは、社会でも認知され一般的にあり得るとし、元同級生らの損害賠償義務を認定。一方、「両親は家庭環境を適切に整えられず、男子生徒を精神的に支えられなかった」などとして、賠償額を一審判決の計約3750万円から減額した。

一、二審判決によると、男子生徒は11年9月以降、元同級生らに殴打されたり、ハチの死骸を口にのせられたりするなどのいじめ行為を受け、同10月11日、自宅マンションから飛び降り死亡した。

遺族は12年2月、元同級生らと市に約7700万円の損害賠償を求めて提訴。過失責任を認めた市とは15年に和解金1300万円を支払うなどの内容で和解し、分離された元同級生らとの訴訟が続いていた。

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2021年1月24日毎日新聞

「当時いじめの認識なかった」 鹿児島県立高いじめ、真相明かされず 遺族に不信感

 鹿児島県教委の説明後、「納得できない」と涙する田中拓海さんの母親(左)=鹿児島県庁で2021年1月22日午後5時、足立旬子撮影拡大
鹿児島県教委の説明後、「納得できない」と涙する田中拓海さんの母親(左)=鹿児島県庁で2021年1月22日午後5時、足立旬子撮影

鹿児島県立高校の1年生だった2014年に自殺した男子生徒(当時15歳)の母親(58)が、県教育委員会の対応に不信感を募らせている。県の第三者委員会は19年、背景に「いじめがあった」と認定。事実を知りたい母親は、その後も学校や県教委に説明を求め続け、1月22日にようやく実現した。しかし、県教委側の説明の内容は乏しく、母親が新たに得られた情報はほとんどなかった。

県教委設置の第三者委「いじめ特定できず」

亡くなったのは、田中拓海さん。遺書は残されていなかった。母親の依頼を受けて拓海さんが通学していた高校が生徒にアンケートをしたところ「拓海さんのかばんに納豆を入れられていたというのを聞いた」「スリッパを隠されていた」などの記載があった。

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2021年1月22日付朝日新聞デジタル

いじめ自殺訴訟、高校側に2600万円賠償命令 福岡

写真・図版

亡くなった生徒の遺影とともに記者会見に臨んだ父親(右)=福岡市中央区

  福岡県太宰府市の私立筑紫台高校3年の男子生徒(当時18)が2013年に自殺したのはいじめが原因だったとして、遺族が同校を運営する学校法人・筑紫台学園に計約9500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、福岡地裁であった。小野寺優子裁判長はいじめによる自殺と認め、学校側がいじめを防ぐ義務を怠ったとして約2600万円の支払いを命じた。

生徒は13年11月、福岡県春日市のマンションから飛び降りて亡くなった。近くにあった携帯音楽プレーヤーに元同級生らの名前や「絶対に許さない」などのメモが残されていた。遺族は16年10月、元同級生8人と筑紫台学園を提訴。1年生の2学期ごろから元同級生から殴る蹴るなどの継続的、集団的な暴力を受けたと訴えた。

元同級生とは賠償金の支払いや謝罪を受けることで和解が成立したが、筑紫台学園側は訴訟で「いじめはなかった」と主張し、自殺との因果関係も否定していた。一方で、学校がいじめ防止対策推進法に基づき設置した第三者委員会は15年3月、いじめがあったと認め、「(自殺は)いじめとの因果関係が明白に認められる」とする報告書をまとめていた。

判決は、教諭が実際に生徒がいじめられている現場を確認していたのに校内で情報共有や調査をせず、生徒に対する安全配慮義務を果たさなかったと指摘。「いじめ問題への感受性が鈍く、発見の端緒が見逃された」と結論づけた。遺族が求めた謝罪文の校内掲示は認めなかった。

判決後の記者会見で、生徒の父親は遺影に向かって「良かったね。こんなにいい判決が出るとは思わなかった」と語りかけ、声を詰まらせた。「これまで学校からの謝罪は一言もなかった。二度とこういうことが起きないように願うばかりです」と話した。

筑紫台学園は代理人弁護士を通じ「判決は重く受け止める。判決文を精査し、弁護士と協議して適切に対応していく」とするコメントを出した。(山野健太郎)

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