学校事件の報道

2020年11月10日付NHK熊本放送局

中1男子自殺の第三者委が初会合

  去年4月熊本市で中学1年生の男子生徒が自殺したことを受け、自殺の原因を調べる第三者委員会の初会合が開かれ、今後遺族や学校関係者への聞き取りを進めていくことなどを確認しました。
9日の初会合は、弁護士や児童精神科医など5人の委員が出席し非公開で行われました。
中学1年生の男子生徒は、去年4月自宅マンションから飛び降りて自殺しましたが、市は同級生へのアンケートや出身の小学校への聞き取りなどから「いじめなどのトラブルはない」と国に報告しました。
これに対し生徒の遺族から「小学校の時の担任にストレスを感じていたようだが報告書には書かれていない」と指摘を受けたことから、自殺の原因を詳しく調べるため今回第三者委員会が設立されました。
9日は委員の間でこれまでの経緯を共有したうえで、今後委員会として遺族や学校関係者への聞き取りを行っていくことなどを確認したということです。
委員長を務める奥博司弁護士は「双方の意見を聴いて、じっくり腰を据えて調査や議論をするが、事案から2年近くたとうとしているので迅速に進めたい」と話していました。
また男子生徒の母親は「調査までにこれほど時間がかかるとは思いませんでしたが、当時の担任や管理職は正直に誠実に向き合ってほしい」と話していました。

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

2020年10月29日付朝日新聞

丸刈り・大声あいさつ強制 行き過ぎ指導、元生徒提訴へ

写真・図版

学中に受けた「指導」について話す男子生徒=2020年10月14日午前11時25分、広島市中区

行き過ぎた生徒指導により、退学を余儀なくされたとして、広島県呉市の私立呉港(ごこう)高校に通っていた男子生徒が29日、同校を運営する学校法人と校長らを相手に約180万円の損害賠償を求める訴えを広島地裁に起こす。学校側は事実をおおむね認めて和解を望んでいるが、生徒側は提訴に踏み切る構えだ。

訴状などによると、男子生徒は同校に入学直後の昨年4月、通学途中の電車内でスマートフォンを操作しているのを同校の教諭に見つかり、没収された。母親が学校で注意を受け、スマホを返してもらえたのは2週間後だった。

同年5月には、授業の教材を忘れたとして、担任教諭の指示で自宅まで取りに帰らされた。電車で往復3時間。学校に戻ると授業は終わっていた。同校は他の生徒にも同様の指導をしており、「帰宅改善指導」と呼ばれているという。

さらに男子生徒を追い込んだのが「校内反省指導」だ。昨年5月、友人らと放課後に校外で喫煙したと疑われ、この指導を受けるように校長から通告された。

男子生徒は髪を丸刈りにし、約20日間、授業を受けられず、別室で自習を強いられた。休憩や登下校時間も含めて一日中私語は厳禁とされる一方、下校時に教員に会うと声を張り上げてあいさつするよう指導された。毎朝、前日に書かされたA4判1枚の反省文を大声で読み上げさせられもした。「内容が幼稚園レベル」「お前はこの学校にいらん」などと教員から罵倒されることもあったという。

男子生徒は大声の強制でのどに炎症を起こしたとして、通院のために欠席すると母親が学校に連絡したところ、「かすれた声で頑張り、努力の姿勢を示せば、反省の意思が伝わる」「休ませては駄目だ」などと言われたという。

 部活顧問からも体罰 教諭「殴打は4回でなく3回」

7月にも、提出物を忘れたとして所属していた運動部の顧問の教諭に拳で4回、胸を殴られたという。同校によると、教諭は「殴打の回数は4回ではなく3回」と主張している。男子生徒は体罰の翌日から学校へ通えなくなり、昨年11月に退学を決め、今年2月に通信制高校に編入学した。

訴状では、校内反省指導などについて「生徒に苦痛を与えるだけで、合理性・相当性を著しく欠く」などとして、校長や教員は児童・生徒に懲戒を加える際に「教育上必要な配慮をしなければならない」と定める学校教育法施行規則に違反していると主張する。

同校の加賀英雄教頭は朝日新聞の取材に対し、「そういったことがあった」と事実をおおむね認めた上で、「退学の時期と体罰の時期がずれており、体罰が退学の原因になったとは考えていない」と話した。体罰をした顧問の教諭を処分したというが、内容は「個人情報にあたる」として明らかにしなかった。

同校では10年ほど前から、問題があった生徒に反省を促すため、校内反省指導を続けてきたという。今春から、校内反省指導の期間を原則2~4日に短縮し、丸刈りの強制はやめ、スマホの校内への持ち込みも許可するなど指導方法を「改善した」という。男子生徒の訴えについては「訴状が届いてから検討するが、できれば和解したい」としている。

一方、男子生徒は取材に対し「友だちの前で丸刈りで先生にあいさつするのは恥ずかしかった。学校全体として(体罰を含む厳しい指導を)認める体質なんだなと思った」と話し、「友だちもできて仲良くなれたのに、学校生活は終わってしまった」と悔しさをにじませた。男子生徒の父親は「若者が暴力で人生を狂わされたことに(学校は)自覚を持ってほしい」と語った。(西晃奈)

 識者「教員側の『あなたたちのため』が最大の病」

「有無を言わさず型にはめる体質。生徒に意味があることだと思ってやっているのか」。原告の代理人弁護士は、力で制圧しようとする生徒指導の是非を司法に問いたいという。

生徒指導をめぐっては、1990年、神戸市の兵庫県立高校で女子生徒が教諭が閉めた鉄製の門に挟まれて圧死する事件が起きた。門を閉めた教諭は業務上過失致死罪に問われ有罪が確定。兵庫県が遺族に6千万円を支払うことで示談が成立した。最近では、2017年に大阪府立高校の女子生徒が髪を黒く染めるよう強要されたとして賠償訴訟を起こし、大阪地裁で係争中だ。

名古屋大大学院の内田良准教授(教育社会学)は「基本的に学校の外に出たら学校の管轄外なのに、越権のような形で介入し、暴力的な指導で囲い込んでいる。本来は警察や福祉機関が対応すべきだ」と批判。「当事者(教員側)は人権侵害だと思っているわけではなく、『あなたたちのためですよ』と思ってやっている。それが最大の病だ」と指摘する。

さらに「ツーブロック」の髪形を禁止する東京都立高校の校則が話題になったことにも触れ、「教室や学校の秩序を保つという考えが非常に根強い。それをよしとする社会の風潮も問われなければいけない」と問題提起。「(今回の事案は)学校の行き過ぎた生徒指導の問題が極端にわかりやすい形で出てきた。非常に悪質だ」と話している。(宮崎園子)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn
2020年10月19日付東京新聞

わいせつ教員を再び教壇に立たせないで 免許再取得認めないよう法改正訴え広がる

 児童生徒にわいせつ行為をした教員を再び教壇に立たせないよう訴える声が広がっている。現行の教育職員免許法では、教員が懲戒免職で免許を失っても、3年経過すれば再取得が可能だからだ。文部科学省は法の見直しを検討しているが、保護者の団体は「子どもは心に傷を負ったまま大きくなり、言えない子もいる。被害を起こさせないことが大事だ」と強調する。(土門哲雄)
子どもにわいせつ行為をした教員に免許を再交付しないよう訴える保護者ら=9月28日、東京都千代田区の文部科学省で

子どもにわいせつ行為をした教員に免許を再交付しないよう訴える保護者ら=9月28日、東京都千代田区の文部科学省で

◆中学から19歳まで続いた

 「先生を疑うという発想がなかった。自分が悪いんだと思って、言えなかった」。東京都のフォトグラファー石田郁子さん(43)は1日、トークイベントで体験を語った。
「ヒューマンライツ・ナウ」のオンライントークイベントで学校での性被害撲滅を訴えた石田郁子さん

「ヒューマンライツ・ナウ」のオンライントークイベントで学校での性被害撲滅を訴えた石田郁子さん

 石田さんは中学3年の時、男性教員からキスをされた。卒業後もわいせつ行為を受け、19歳まで続いたという。30代後半になって性被害を受けていたと認識し、教育委員会に調査を求めたが、教員は否定。現在まで処分されていない。教委担当者は「事実認定には至らなかった」とする。
 石田さんは2019年2月、賠償を求めて提訴したが、東京地裁は同8月、損害があっても20年で賠償の請求権が消滅する「除斥じょせき期間」を経過したとして、請求を棄却。判決を不服として東京高裁に控訴中だ。イベントで対談したNPO法人「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長の伊藤和子弁護士は「教師の立場を利用した性犯罪をしっかり処罰していくため、法改正が必要」と話した。
 石田さんは今年9月、子どもにわいせつ行為をした教員を原則懲戒免職にし、免許を再取得できなくすること、第三者委員会による調査を必ず行うことなどを文科省に提言。小中高校生らの保護者でつくる「全国学校ハラスメント被害者連絡会」も同月、わいせつ行為で懲戒処分となった教員に免許を再交付しないよう求める5万4000人分の署名を提出した。

◆過去最多282人処分

 全国の公立小中高校などでわいせつ行為やセクハラを理由に処分を受けた教員は18年度、282人で過去最多。教え子の女児7人への強制性交などの罪で19年12月、千葉市立小学校の元教諭が懲役14年判決を受けるなど、近年、教員によるわいせつ事案は後を絶たない。
 文科省は、子どもにわいせつ行為をした教員を懲戒免職とするよう都道府県教委などに指導。教員免許を失った教員を教委などが確認できるシステム「官報情報検索ツール」の閲覧期間を、現行の直近3年から、来年2月に40年に延長する予定だ。

◆先生を選ぶことはできない

 萩生田光一文科相は9月29日の閣議後記者会見で、わいせつ行為をした教員への対応について「教壇に戻さないという方向を目指して法改正をしていきたい」と話した。
 ただ、教員免許の再取得を認めないことについては、再取得までの期間が定められた他の国家資格との均衡を考える必要があり、更生可能性や冤罪えんざい、職業選択の自由への配慮も必要と指摘した。一方で「弁護士や医者は選べるが、学校の先生は子どもや親が選べない」とも強調した。
 教育評論家の武田さち子さんは「教師がわいせつ行為を否定したら、学校も認めない。傷ついた子どもは『うそつき』と言われてさらに傷つく」と話し、事件や処分になるのは氷山の一角だと強調。「子どもが犠牲にならない仕組み作りを求める」と訴えた。
シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn
2020年10月20日付神戸新聞NEXT

宝塚・中2自殺で再発防止策 市教委「教育一からやり直す」

再発防止策を公表する宝塚市教育委員会の森恵実子教育長(左から2人目)ら=宝塚市役所
再発防止策を公表する宝塚市教育委員会の森恵実子教育長(左から2人目)ら=宝塚市役所
神戸新聞NEXT
神戸新聞NEXT
  兵庫県宝塚市で2016年12月、いじめを受けた市立中学2年の女子生徒=当時(14)=が自殺した問題で、同市教育委員会が19日に再発防止策を公表した。「私たちはかけがえのない大切な命を救うことができませんでした」との一文から始まる基本方針は33項目に及ぶ取り組みを記す。9月25日には市立長尾中学校内で教員の体罰による傷害事件も起こる中、市教委や学校には確かな実行が求められている。 方針に盛り込まれたのは新規の取り組み6件、拡充・継続の取り組み27件。19日に会見した森恵実子教育長は「全部の学校で一律に実践していく。宝塚の教育を一からやり直していく」と説明した。

市教委に担当を設置するほか、各学校にも対策チームを置く。いじめの実態をつかむアンケートを市内で統一した様式にするほか、女子生徒が自殺した毎年12月を「いじめ防止月間」と定め、学校内でいじめについて学ぶ機会をつくるという。

全教職員への研修は既に実施している。ただ、長尾中の傷害事件で逮捕された教諭も8月に研修を受けていたことから、森教育長は「経験を積むと自己流の指導が身についてしまい、研修を人ごとに感じてしまう。参加型の研修をし、自分の学校でも起こりうるんだということを共有することが大事だ」と説明した。

今後、市教委、学校が方針を元に行動計画を策定し、改革の進捗状況を第三者を交えて市総合教育会議などで検証するとしている。(大盛周平)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

2020年10月20日付共同通信

奈良の中1いじめ自殺訴訟が結審 提訴から5年余り、来年3月判決

訴訟結審後に記者会見する、自殺した女子生徒の母親=20日午前、奈良市

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

2020年10月20日付NHK奈良放送局

“いじめ”自殺 来年3月判決へ

7年前、橿原市で中学1年の女子生徒が自殺したのはいじめが原因だったとして、遺族が市や当時の同級生などに賠償を求めている裁判の審理が終わり、来年3月23日に判決が言い渡されることになりました。
平成25年3月、橿原市で中学1年の女子生徒が自殺し、遺族は同級生から仲間はずれにされたりインターネットの「LINE」に悪口を書き込まれたりするなど学校でのいじめが原因だとして、当時の同級生3人と橿原市に対しあわせて9700万円余りの賠償を求めています。
20日、奈良地方裁判所で行われた裁判で、女子生徒の母親は「将来のあった子どもがなぜ自殺を選んだのか、本当のことを知りたい。この裁判で、教育現場に一石を投じる判断をしてほしい」と訴えました。
一方、これまでの裁判で、市と同級生側の弁護士は「自殺にいたるようないじめはなかった」と主張しています。
審理は20日で終わり、来年3月23日に判決が言い渡されます。
裁判のあと会見を開いた女子生徒の母親は「加害生徒には自身の行為を振り返って反省したうえで、残りの人生を歩んでほしい」と話しました。
また、市や学校などに対し「安心して子どもを学校に預けていたが、そうではなかった。救えるはずの命を救えなかったということを重く受け止めて反省してほしい」と話していました。

【アンケート結果開示されず】
この裁判では、遺族側が橿原市教育委員会に対し、教員を対象に行ったアンケート結果の開示を求めていますが、開示されていません。
遺族側が不服を申し立てていますが、市の審査会は4年以上審議を続けており、現在も結論に至っていません。
これについて、原告側の佐藤真理弁護士は「名前を隠せば公開できるはずだ。それに応じないのはおかしい。重要な資料が眠っている」と対応を批判しました。
一方、橿原市は「審査する複数の外部の委員の日程を調整すると、1か月か2か月に1回ほどしか審査会を開けないうえ、膨大な資料を一つ一つ精査しているため、時間がかかってしまう。

なるべく早く結論を出したい」と話しています。

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

2020年10月14日付朝日新聞

柔道技で傷害容疑の中学校教諭、過去にも体罰で2度処分

写真・図版

会見で謝罪する森恵実子・兵庫県宝塚市教育長(右から2人目)ら=宝塚市役所

 生徒2人に柔道技で重軽傷を負わせたとして、兵庫県宝塚市立長尾中学校教諭の上野宝博(たかひろ)容疑者(50)=同県西宮市柏堂西町=が傷害容疑で逮捕された事件で、宝塚市教育委員会は13日に会見を開き、上野容疑者がこれまで3件の体罰で2度処分を受けていたことを明らかにした。

上野容疑者は9月25日午後4時半から午後5時ごろまでの間、顧問を務める柔道部の部員で1年生の男子生徒2人に対し、道場内で柔道の寝技をかけるなどして負傷させた疑いがあるとして、12日に兵庫県警に逮捕された。

宝塚市教委によると、上野容疑者は9月25日、柔道部の活動中、差し入れのアイスキャンディーを食べたとして、男子生徒2人に柔道技をかけて負傷させた。生徒は2人とも入部間もなく、柔道はそれまで未経験だったという。

うち1人には、投げ技や寝技で失神させた後、ほおをたたいて目を覚まさせ、さらに技をかけるなどし、背骨を圧迫骨折させた。この生徒がその場から逃れるように帰宅した後、仮入部だったもう1人の男子生徒にめがねを外させ寝技を繰り返し、首や腰などに軽傷を負わせたという。現場には副顧問の40代の男性教諭もいたが、上野容疑者に恐ろしさを感じて止められなかったという。

市教委によると、上野容疑者は別の中学にいた2011~12年に生徒のほおをたたくなどした2件の体罰で、13年2月に訓告処分を受けた。さらに同年6月には頭突きで生徒の鼻を折り、同年10月に減給の懲戒処分を受けたという。

同市の森恵実子教育長は「子どもたちの模範となるべき教職員としてあってはならない事態を引き起こしてしまった。心から深くおわび申し上げます」と謝罪した。(石村裕輔)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

2020年10月14日付毎日新聞

柔道部顧問が中1生徒の背骨折る 傷害容疑で逮捕 アイス食べたことに立腹 兵庫

中学校の柔道部顧問で、1年生の男子生徒2人に暴行を加えて背骨を折るなどの重軽傷を負わせたとして兵庫県警宝塚署は12日、傷害の疑いで同県宝塚市立長尾中学校教諭、上野宝博(たかひろ)容疑者(50)=同県西宮市柏堂西町=を逮捕した。2人が無断でアイスキャンディーを食べたことに腹を立て、「柔道の練習だ」といって体罰を加えたという。

調べでは、上野容疑者は9月25日午後4時半ごろから約30分間、校内の武道場で、12歳と13歳の部員2人を柔道技で投げ飛ばして顔をたたいたり、寝技をかけたりしてけがをさせた、

としている。12歳の生徒は背骨骨折で全治3カ月の重傷。もう1人の生徒は執拗(しつよう)に寝技をかけられ、首を打撲する軽傷を負った。容疑をほぼ認めているという。

宝塚市教委によると、上野容疑者は、2人が道場内にあった冷蔵庫のアイスキャンディーを無断で食べたことに立腹。2人は謝ったが、練習中に一方的に投げ技や寝技を繰り返し、1人は絞め技で失神した後も平手打ちで起こし再び技をかけ続けた。副顧問の40代の男性教諭が現場にいたが、「恐怖で制止できなかった」と傍観していた。重傷の生徒が逃げ帰り、保護者が学校に問い合わせて発覚。10月に被害届が出され、宝塚署が捜査していた。

市教委によると、上野容疑者は2016年4月に長尾中に赴任した。2年生の生徒指導を担当し、柔道三段。負傷した2人は初心者だった。上野容疑者は当初、同校の調査に「指導が行き過ぎた」と弁明。当日夜に教頭らと生徒宅に謝罪に行った際に体罰だと認めたという。

上野容疑者は前任校でも11~13年に、体罰で生徒の鼻を骨折させるなどし計3回処分(減給1、訓告2)されていた。怒りを抑えるための「アンガーマネジメント」と呼ばれる研修も受けていたという。

記者会見した森恵実子教育長は「体罰を受けた恐怖は筆舌に尽くしがたく、胸が押しつぶされそうになる。心から深くおわび申し上げる」と陳謝した。【関谷徳、土居和弘】

 

「人道的な問題」被害者団体が批判

2011年に名古屋市立高校の柔道部員だった次男を練習中の事故で亡くした「全国柔道事故被害者の会」の倉田久子代表(60)は、「初心者を相手に年齢も体格も立場も上の人間が指導を外れた暴力を振るうとは、柔道を離れた人道的な問題だ。誰が考えてもあるまじき行為」と批判した。

また、上野容疑者が過去に3回、体罰を理由に処分を受けていたことについて、「指導を続けさせる宝塚市教委のあり方、市全体、ひいては兵庫県全体の問題だ。指導の場に立たせないような処分が必要だが、トップが本気で取り組まなければ改善されない。第三者委員会が調査するならば、被害者の立場に立つ委員を選び、被害者側が傍聴し、報告書をチェックできる態勢を取るか注視する必要がある」と話す。

柔道では、中高生の練習中の事故が多発し、各地で訴訟も起きている。同会では、重篤事故の被害者の共通点として、①初心者②1年生③実力差④体格差――などを挙げている。

倉田代表は「柔道による事故は変わらず起き続けている。全日本柔道連盟は安全な指導方法を普及啓発しているが、意識の低い指導者には届いていない。指導者資格制度を見直す時期が来ている」と訴えた。【稲田佳代】

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn
2020年10月13日付朝日新聞

 中1自殺、元担任に訓告相当 いじめの訴え伝えず暴言も

 写真・図版
大阪市役所=大阪市北区
 大阪市立中1年の男子生徒(当時12)が2018年に自宅マンションから転落死し、市の第三者委員会がいじめなどで「衝動的に自殺したと考えられる」とした事案で、市教育委員会は12日、30代の元学級担任の男性教諭=18年5月に依願退職=を文書訓告相当と判断したと発表した。50代の当時の校長は9月10日付で文書訓告にした。

第三者委は今年3月、いじめと自殺の因果関係を認め、学校の対応が不十分だったとする報告書を公表していた。

市教委によると、元担任は、生徒がいじめを訴えたアンケートを管理職に伝えなかったうえ、「メガネつぶしたろか」と生徒に暴言を吐いていたという。

校長についてはいじめの未然防止ができなかったなど管理監督責任があるとした。(長富由希子)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

2020年10月13日付NHK大津放送局

大津の中学生いじめ自殺から9年

大津市で、中学2年生の男子生徒がいじめを苦に自殺してから、11日で9年になりました。
県内の学校では、いまもいじめ行為が後を絶たず、亡くなった生徒の父親は「行政や学校が手を取り、真剣に対策してほしい」と訴えています。
平成23年10月11日、大津市の中学2年生の男子生徒がいじめを苦に自殺してから、11日で9年になりました。
県によりますと、県内の小中学校や高校などで確認されたいじめ行為は、平成30年度は6847件と過去最多になり、いまも、いじめ行為が後を絶ちません。
大津市では、7年前にいじめ対策推進室を設けるなど対策に力を入れてきましたが、今年度からは、いじめ以外の課題にも取り組みたいとしていじめ対策を見直しました。
具体的には、いじめ相談に関わる臨床心理士を4人から3人に減らし、夜間に子どもの相談に乗る専用ダイヤルを廃止しました。
一方で、無料通信アプリLINEを使ったいじめ相談は継続し、市内の公立の小中学校に配置していた、いじめ対策担当の教員は「子ども支援コーディネーター」として、いじめだけではなく、不登校や虐待などの相談にも応じています。
大津市の佐藤健司市長は「いじめは深刻な子どもの人権問題で、引き続き対策に力を注いでいきたい。一方で、不登校や児童虐待などで多くの子どもたちが苦しんでいる実態があり、解決に向けて取り組んでいきたい」とコメントしています。
亡くなった生徒の父親は「いじめは人を死に追い込む恐ろしい行為で、対策の見直しや予算の削減で危機意識が薄れるのではないかと不安がある。いじめを1つでも少なくするために、行政や学校、保護者が手を取り、真剣に対策してほしい」とコメントしています。

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn