平成31年3月6日付朝日新聞長崎版

私立高の対応「適切でない」 いじめ自殺問題で県

長崎市の私立高校の男子生徒(当時16)が2017年4月に自殺し、第三者委員会が作成した「自殺の主な原因が同級生によるいじめ」とする報告書を学校側が不服として受け入れない考えを遺族に伝えた問題で、長崎県は5日、「遺族への対応が示されない状態が長く続くのは適切ではない」との見方を示した。

この日の県議会文教厚生委員会で、山田朋子氏(改革21)が第三者委の報告書を認めない学校の姿勢は異例だと指摘し、県の考えを質問。私立学校を所管する学事振興課の松尾信哉課長が「報告書を真摯に受け止め、対応を一刻も早く遺族にお示しするよう指導している」などと答えた。

いじめ防止対策推進法は、いじめにより重大な被害が発生した疑いが認められるとき、学校の設置者が都道府県知事に報告するよう定めているが、同課によれば、その規定には期限がない。

松尾課長は「強制力はないが、指導を続けていく」と答弁した。

昨年11月に第三者委がまとめた報告書は、自殺の主な要因として、空腹時のおなかの音をからかうなどの「同級生によるいじめ」を挙げたうえで、「教師による理不尽な指導」「学習に対する悩みや焦り」などが重なったと指摘していた。(横山輝)

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平成31年3月2日付西日本新聞

長崎・高2自殺、遺族が卒業式で涙 「学校は変わって」

長崎高2自殺卒業式

男子生徒が通った私立高卒業式に出席し、遺影を胸に思いを語る遺族=1日午前11時40分ごろ、長崎市(写真の一部を加工しています)

2017年4月に自殺した長崎市の高校2年男子生徒=当時(16)=が通った私立高で1日、卒業式があり、両親と兄の3人が遺影を携えて出席した。学校側は遺族の参列を拒んでいたが、前日に急きょ認めたという。取材に応じた父親は「良い学校に生まれ変わってほしい」と訴えた。

式は非公開。遺族によると、校長は式辞の最後に「かけがえのない友を失ったことを忘れないでほしい」と述べた。式の間、両親は涙を流しながら男子生徒を思い浮かべたといい、母親は「同級生には心の痛みが分かる人になってほしい」と声を震わせた。

自殺の原因を調べた第三者委員会は「同級生のいじめが主要因」とする報告書をまとめたが、学校側は「事実の裏付けが示されていない」として受け入れを拒否している。

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平成31年2月28日付朝日新聞西部本社版

自殺生徒は「学習障害」「能力異常に低い」教職員が発言

山口県周南市で2016年、県立高校2年の男子生徒(当時17)が自殺したことをめぐり、教職員が県の調査検証委員会の聞き取り調査に対し、「いじられて嬉しい人もいる」などと発言していたことがわかった。生徒の両親は27日、記者会見し発言を批判。県教育委員会に、いじめ自殺に関係した教員の処分や再発防止などを申し入れた。

検証委は昨年5~11月、教職員20人にいじめの有無について聞き取り調査を実施。今月5日に公表した報告書とともに、調査概要をまとめた非公表の文書を遺族に渡していた。

両親によると、非公表の文書には複数の教職員が聞き取り調査に「(からかいや揶揄などで)いじられて嬉しいという人もいる」「(男子生徒は)学習障害」「能力が異常に低い」「(いじめに)大きな問題はない」などと発言したと記載されていた。

検証委は「いじりと呼ばれていた行為は、いじめにあたる」と報告書で認定した。両親は会見で、こうした発言について「激しい憤りと強い疑問を感じずにはいられない」と批判。母親は「同じことが繰り返されないよう、県教委は学校を指導してほしい」と語った。

両親はこの日、いじめが自殺の主な要因と認定した検証委の報告書を踏まえ、「いじり」は「いじめ」だとの認識を学校現場に徹底▽教員向けにいじめ防止の研修を実施し、経過と成果を遺族に報告▽いじめ自殺に関係した教員の処分――などを求める申入書を県教委に提出した。

県教委学校安全・体育課の原井進課長は両親に対し、いじめ自殺を防げなかったことを「心からおわびを申し上げます」と初めて謝罪。申入書の内容については「検討し、丁寧に対応したい」と話した。(棚橋咲月)

県の調査検証委員会が実施した聞き取り調査に対する教職員の主な発言

・「いじられて嬉しいという人もいる」

・「(自殺した生徒は)学習障害」「異常に字が汚い」「能力が異常に低い」

・「(携帯用ゲーム)ポケモンGOがすごく流行っていた。ゲームも好きそうだったので、それが原因だった」

・「いじられながらも相手をしてもらった方がいい」

・「(遺族の)お父さんは今回大きな『いじめ』があったと思っているかもしれないから、これを説得するのは難しいかもしれないけど、大きな問題はない」

・「靴下の色を言われてむかつく人もいるし、何とも思わない人もいる」

・「自分たちはいじりを行っていた生徒も知っているが、みんな良い子」

※遺族が山口県教委に提出した申入書から

「見殺しにされた…」自殺生徒の両親、教職員発言に憤慨

山口県周南市で2016年7月に県立高校2年の男子生徒(当時17)が自殺したことについて、県の調査検証委員会の聞き取りに対する教員らの発言が明らかになった。27日に県庁で記者会見した遺族の両親は教員らのいじめに関する認識に対して怒りを口にし、関係した教員らの処分を県教育委員会に求めた。

「傷つき、苦しめられた息子を見殺しにしたのと同じ」「激しい怒りを感じる」。県教委への申し入れ後、記者会見した両親は教職員らの発言について、厳しい言葉で批判した。

今回明らかになったのは、県の検証委が昨年5~11月に教職員20人に聞き取った内容をまとめたもの。男子生徒に対する、いじめやいじりについて、「いじられながらも相手をしてもらった方がいい」「(いじりをした生徒も)みんな良い子」などといった教員らの発言が、両親に示された聞き取り調査の概要に記されていた。

特に両親が指摘したのは、亡くなった男子生徒について教員が「能力が異常に低い」「学習障害」「やりとりもかみ合わない」「質問に対してくどくど言い訳をする」とした発言。母親は「一方的

に人格を否定する内容に、憤りを超えた強い感情を遺族として抱く」と批判し、「真実から目を背ける教員に子どもを指導する資格などない」と訴えた。

今回の発言には「どこまで本人が傷ついていたかがわからない。体調とかもあると思う」「進路は悩んでいたと思う」とするものもあった。これらについて、両親は「責任転嫁するかのような発言には強い憤りを覚える」とし、関係教員の処分を強く求めた。

両親はこの日、県教委学校安全・体育課の原井進課長らと面会した。原井課長は自殺を防げなかったことを初めて謝罪し、「真摯(しんし)に受け止め、丁寧に対応することで再発防止に全力で取り組む」と話した。

いじめの有無を調べていた県の検証委は今月5日、報告書を公表。男子生徒に対し、LINEメッセージによる仲間はずれなど18項目のいじめを認定し、自殺の主要因になったと結論づけた。

教職員からも部活動の押しつけなど5項目の「いじめに類する行為」があったとした。(棚橋咲月、井上怜)

 

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平成31年2月26日付西日本新聞

長崎高2自殺、いじめ認定に学校異議 第三者委の報告「不服」

長崎私立高2

「よく体や手が震えて」などと記された男子生徒の手記。いじめ認定の証拠の一つになった

 

長崎市の私立高2年だった男子生徒=当時(16)=が2017年4月に自殺したことを受け、原因調査のため学校側が設けた第三者委員会が「自殺は同級生のいじめが主要因」とする報告書をまとめていたことが分かった。だが学校側は、いじめの認定を不服として報告書を受け入れない考えを男子生徒の両親に伝えており、学校自身が第三者委の調査結果を認めない異例の事態になっている。

11年の大津市立中生徒の自殺問題を機に成立したいじめ防止対策推進法は、いじめを把握しながら対応を怠った学校や教育委員会の姿勢を改めるため、重大事案発生時に第三者委など調査組織の設置を義務付けている。文部科学省によると、調査結果に対し、問題の根幹となるいじめの存在自体を学校側が否定する例は「聞いたことがない」としている。

両親や関係者によると、男子生徒は17年4月20日に学校から帰宅後に外出し、戻らなかったため長崎署に行方不明者届を提出。21日、市内の公園で自殺しているのが見つかった。

自宅には、亡くなる約1カ月前に男子生徒が書いたとみられる手記が残されていた。数年前から空腹時のおなかの音を同級生に「さんざんdisられた(侮辱された)」などと記され、教室内の物音も男子生徒が発した音としてからかわれたと訴えている。

生徒の死を一部保護者らにしか明らかにせず、原因を調べない学校の姿勢に不信を抱いた両親が調査を求めると、学校側は弁護士らでつくる第三者委を設置し、同年7月に調査を始めた。

約1年半後の昨年11月にまとめた報告書は、本人の手記や同級生へのアンケートから、おなかの音を侮辱する行為や、男子生徒が音が鳴らないよう休み時間に別室で間食する際に、ドアを無理やり開けた同級生の行為をいじめと認定した。

ところが学校側は今年1月、報告書を受け入れない意向を両親に通知。今月開いた保護者会でも「(報告書は)いじめがあったとする裏付けが薄い」などと主張したとみられる。報告書は男子

生徒が卒業するはずだった3月までに総括することなどを提言しているが、宙に浮いているという。

両親は「学校はいじめ自殺があったことに真剣に向き合い、次の被害者を生まないため誠実に行動してほしい」と要望。西日本新聞の取材に同校の担当者は「微妙な事柄のため検討中で、現時点でコメントできない」としており、自殺の有無を含めて回答していない。

◇    ◇

法理念と差を埋めよ

いじめ問題に詳しい関西外国語大・新井肇教授(生徒指導論)の話 いじめの重大事件の背景調査は、事実を明らかにすることで学校が再発防止や改善に役立てるために行われる。

第三者が調査することで、身内だけでは気付きにくい問題点を洗い出すことが可能になる。いじめの定義が浸透していない教育現場もみられ、法の理念と現場とのギャップを埋める作業も必要だ。

×    ×

【ワードBOX】いじめ防止対策推進法

2013年施行。自殺など心身に深刻な危害が及ぶ「重大事態」について学校側に調査と報告を義務付け、文部科学省は再発防止のため報告内容を尊重するよう指導している。第三者委員会の調査が不十分として再調査や委員交代を遺族側が求めるケースなど法律が想定していない事例もあり、運用面で模索が続いている。

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平成31年2月21日付神戸新聞社説

大津いじめ訴訟 加害者の重い責任認めた

いじめが自殺の原因と明確に認め、多くの被害者や遺族に救済の道を示した判決といえる。

大津市の中2男子いじめ自殺訴訟で、大津地裁は加害者側の元同級生2人に、ほぼ請求通り計約3750万円の支払いを命じた。

2012年に遺族が、元同級生と市に賠償を求めて提訴した。その後、市の第三者委員会がいじめと自殺の因果関係を認定し、過失責任を認めた市は遺族と15年に和解した。

一方、元同級生側は「遊びの延長だった」と反論し、訴訟が続いていた。

判決は、元同級生2人が顔面に落書きしたり、蹴ったりする暴行など執拗ないじめ行為があったことを認定した。「いじる」「いじられる」という上下関係の固定化などから、絶望感を抱き、

男子生徒は死にたいと願うように至ったと指摘した。

いじめ自殺を巡る損害賠償訴訟では、加害者側が自殺を予見できたとする立証が原告側には高いハードルだった。

判決の根拠となったのは、「息子だけの裁判ではない」との思いで闘い続けた遺族側が提出した証拠だった。地裁は全校生アンケートなど約500点を丹念に分析し、自殺は予見できる事態だった、と結論付けた。

「遊び」や「いじめと思っていない」は加害者側がよく使う表現だが、繰り返された行為自体の悪質性を基に重い責任を認めたのは画期的といえる。

大津のいじめ自殺問題は、深刻ないじめ被害への対策を社会が求められる契機となった。いじめを定義した議員立法の「いじめ防止対策推進法」成立にもつながった。

全国の学校でのいじめ認知件数が急激に増えるなど、積極的な状況把握への意識が根付いた学校が増えたのは確かだ。

しかし、いじめを理由にした自殺は後を絶たず、学校や教育委員会の不適切な対応もいまだに多い。遺族側への情報開示や調査する機関の独立性は大きな課題として残っている。

いじめの危険性に警鐘を鳴らした判決である。学校関係者は異変を見逃さないこと、被害者の目線でとらえることの大切さを改めて認識し、いじめの根絶を実現しなければならない。

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平成31年2月20日付京都新聞

中2自殺、元同級生側に賠償命令 大津地裁「いじめが原因

  大津市で2011年10月、中学2年の男子生徒=当時(15)=が自殺したのは元同級生によるいじめが原因として、遺族が元同級生3人と保護者に計3800万円の損害賠償を求めた訴訟で、大津地裁(西岡繁靖裁判長)は19日、元同級生2人に約3700万円の賠償を命じる判決を言い渡した。西岡裁判長は「いじめが自殺の原因で、予見可能性はあった」と述べた。もう一人の同級生について判決は、「一体となって関与していたとまではいえない」として、賠償を命じなかった。

裁判で遺族側は、男子生徒が自殺の前日に「ぼく死にます」との電話を元同級生にかけていた経緯などから、いじめを苦に自死したと主張。一方、元同級生側は男子生徒に馬乗りになるなど一部の行為自体は認めたものの、いじめではなく、「遊びだった」などと反論。いじめと自殺の因果関係が大きな争点になった。

訴訟は、遺族が12年2月、大津市や元同級生3人、保護者を相手取り、計約7700万円の損害賠償を求めて提訴。当初、市側は争う姿勢を示したが、後に自殺との因果関係や過失責任を認めたため、15年に和解が成立している。

大津いじめ事件は、いじめの問題を社会に広く投げかけ、学校に常設の対策組織を置くことを明記した「いじめ防止対策推進法」が成立するきっかけとなった。

「いじめが危険行為と認定された」中2自殺賠償判決で原告父が涙

男子生徒の自殺から、7年4カ月余り。19日の大津地裁判決は、いじめを自殺の原因と認定しただけでなく、いじめが「被害者を自死に追い詰める」という危険な行為であることを司法が認めた。

弁護士は「いじめ自殺を二度と繰り返さないという司法のメッセージだ」と高く評価し、父親は「これまでのいじめ訴訟を大きく前進させる。ここまでの画期的判決が出るとは」と涙を流した。

この日、男子生徒の父親と母親は、法廷で並んで判決を聞いた。ほほえむ息子の遺影をハンカチに包み、手元にしのばせていた。

「男子生徒を格下と位置づけ、暴行がエスカレートしていった」「自殺の主たる原因はいじめ行為や関係性にあった」。判決が読み上げられるほどに、父親は涙をこらえきれない。「原因を家庭に求めることはできない」。うつむいていた母親もハンカチで目元を覆った。公判が終わっても父親はしばらく立ち上がれず、おえつした。

なぜ、自ら命を絶ってしまったんだ-。息子の自殺の直後、父親は分からなかった。ひょうきんで、友達も多かった男子生徒。もしかして、自分の子育てに至らない点があったのか。思い悩んだ。

しかし、中学校が実施したアンケートで、同級生に殴られ、ハチの死骸を食べさせられ、教科書を破られるなどのいじめを受けていたと知った。でも、学校はいじめが自殺の原因だと認めない。

「何とか息子の名誉を回復させてあげたい」。両親は大津地裁に提訴した。裁判は丸7年、審理は33回に及んだ。

判決後の会見で、父親と遺族側代理人の石田達也弁護士は「いじめは、一般的に人を死に追い込む危険な行為だと初めて認められた。大きな一歩だ」と何度も強調した。いじめ自殺の裁判の多くは、全国で加害者側の自殺の予見性を否定しており、遺族は悔しい思いを続けていた。

7年間、父親は全国のいじめ被害者や遺族との交流を重ねてきた。全国から応援の手紙を何通も受け取った。今も苦しむ人がこんなに多くいるのか。息子の名誉を回復させるために始めた裁判は、いつしか「全国のいじめ被害にあった多くの子どもたちと遺族のため」に変わっていった。

判決後、息子への思いを聞かれた父親は「息子は、きょうの判決を勝ち取るために生まれてきたのかな」と声を震わせた。

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平成31年2月20日付京都新聞社説

大津いじめ判決 悲劇繰り返さぬ社会に

  大津市の中学2年の男子生徒がいじめを苦に自殺した問題で、大津地裁はいじめと自殺の因果関係を認め、元同級生2人に約3700万円の賠償を命じた。

遺族の提訴から7年余り。問題は社会に大きな波紋を広げ、いじめ防止対策推進法成立のきっかけとなった。いじめと自殺の因果関係が認められる例はまれだという。

判決を重く受け止めたい。命令を受けたのは元同級生だが、悲劇を繰り返さない社会をどうつくるのか、厳しく問われているのは大人である。

判決は「自殺はいじめが原因で、予見可能だった」とした。「友人関係を上下関係に変容させて固定化し、男子生徒を精神的に追い詰めた」と判断。いじめではなく遊びの認識だったという元同級生側の主張を退けた。

近年は「いじり」と呼ばれる行為があり、外部から見るといじめとの境界があいまいだ。被害者は笑っていても、内面では深く傷ついているともいわれる。

当事者の子どもはもちろん、学校や保護者ももっと被害に敏感になるべきだ。判決はそう問いかけているようにも思える。

大津の問題を受けて、さまざまないじめ対策が取られるようになったが、いじめを苦にした自殺は後を絶たない。

全国の小中学校、特別支援学校の2017年度のいじめ認知件数は過去最多の41万4378件だった。被害の掘り起こしが進んでいるともいえるが、ようやく実態把握の緒に就いたとみるべきだ。

今回の問題では学校・市教委の隠蔽体質が批判を受けた。重大ないじめの調査のため全国の教委が設置する第三者委員会についても、文部科学省は「特別な事情がない限り、調査結果は公表が原則」との立場だが、報告書が公表されないケースが少なくない。

具体的な事例から学ばないと、教訓は生かせない。子どもを守ることより、組織防衛や事なかれ主義が前に出る現状を変えない限り、いじめは根絶できないと認識するべきだ。

施行から5年が過ぎたいじめ防止対策推進法は、超党派の国会議員が改正に向けた議論を進めている。より実効性のある対策が求められる。

近年はパワハラやセクハラなど個人を傷つける事案に、社会が厳しい目を向けるようになった。体罰や虐待も含め、子どもを取り巻く環境だけが旧態依然であってはならない。今回の判決を、いじめをなくす契機としたい。

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平成31年2月18日付京都新聞夕刊

いじめと自殺の関連焦点 大津の損賠訴訟、19日判決

大津判決前

大津市で2011年10月、中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺したのは元同級生によるいじめが原因として、遺族が元同級生3人と保護者に計3800万円の損害賠償を求めた訴訟で、大津地裁(西岡繁靖裁判長)が19日、判決を言い渡す。最大の争点は、いじめと自殺の因果関係だ。提訴から7年余り。いじめの問題を社会に広く投げかけ、いじめ防止対策推進法が成立する発端となった事件だけに、司法の結論に注目が集まりそうだ。

裁判で遺族側は、男子生徒が自殺の前日に「ぼく死にます」との電話を元同級生にかけていた経緯などから、いじめを苦に自死したと主張。一方、元同級生側は男子生徒に馬乗りになるなど一部の行為自体は認めたものの、いじめではなく、「遊びだった」などと反論している。いじめの認識自体に隔たりがある。

昨年9~12月の尋問でも、元同級生たちはいじめとされる行為について、仲間内での「じゃれ合い」や「罰ゲーム」だったと述べ、男子生徒を身体的、精神的に傷つけた認識はなかったと振り返った。一部の保護者は「いじめとは思っていなかった」と答えた。

ただ、大津家裁は14年、元同級生のうち2人について男子生徒への暴行などを認めた上、保護観察処分にした。残る1人は不処分だった。15年に成立した遺族と大津市との和解では、地裁が市の第三者調査委員会の報告書に基づき、複数のいじめ行為を事実認定。市側の不適切な対応と男子生徒の自殺の予見性を認める判断を示した。判決では地裁が報告書を改めてどう評価するのか注目される。

訴訟は12年2月、遺族が市のほか、元同級生3人と保護者に計7700万円の損害賠償を求めて提訴した。当初、市側は争う姿勢を示したが、後に自殺との因果関係や過失責任を認めた。

男子生徒の自殺から7年4カ月。元同級生たちは成人になった。判決を前に、男子生徒の父親は「成人を迎えるまでに自らの行為を顧みてほしかった」と話し、「いじめは人を死に追いやる恐ろしい行為なんだという因果関係を証明したい。学校現場や教師への警鐘となり、いじめ自殺の未然防止に生かせるはずだ」と訴える。

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平成31年2月17日付河北新報

<仙台・高1自殺>おびえるような指導「見た」 全校調査に複数回答

  宮城工高(仙台市)の1年の男子生徒=当時(15)=が昨年8月に自殺した問題で、宮城県教委の第三者委員会が実施した在校生アンケートの結果、男子生徒について「(教員から)おびえるような指導をされているところを見た」との回答があったことが16日、分かった。17日の第三者委会合で報告される。  関係者によると、男子生徒がおびえるような指導を受けているところを見たかどうかを尋ねる質問で、「見た」との答えが複数あった。男子生徒が「威圧的な指導をされたところ」と「学習不備のため、部活動を禁止されたところ」をそれぞれ「見た」という回答もあった。  男子生徒が他の生徒に「先生が怖い」「学校をやめたい」などと相談していたことも明らかになった。  遺族側は、男子生徒の自殺の背景には学校での行き過ぎた指導があったと主張し、早期の原因究明を求めている。  第三者委は1月16~29日、宮城工高の全校生徒940人を対象にアンケートを実施。質問は25項目で、無記名の回答も可とした。  17日に県庁で開かれる第三者委会合では、遺族が初めて意見陳述する。在校生アンケート、教職員への聞き取り調査結果を踏まえ、男子生徒が自殺に至った原因や背景を審議する。

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平成31年2月14日付朝日新聞埼玉版

川口市、第三者委認定「いじめ」を一転否認

埼玉県川口市立中学校でいじめが原因で不登校になった元生徒(16)が、学校や市教育委員会の対応が不適切だったとして市に500万円の慰謝料を求めた訴訟の第4回口頭弁論が13日、さいたま地裁(岡部純子裁判長)で開かれた。市側は訴状の認否で、市教委が設置した第三者委員会が調査報告書でいじめと認定した行為を一転して否認する準備書面を提出した。

調査報告書は昨年3月、第三者委が生徒や教諭への聞き取り調査などから7行為をいじめと認定。「不登校はいじめが主因」とまとめた。これを受けて当時の学校教育部長も、記者会見で「学校の対応の遅れ、市教委の見通しの甘さなどすべてについて(元生徒側に)謝罪した」と話した。

訴状も報告書に基づき、7行為をいじめとした。しかし、市側はこの日の準備書面で、報告書でいじめと認定された、元生徒の自宅を他の生徒がスマートフォンで無断撮影してLINEにあげたことについて、「遊び」として否定するなど、7行為すべてについて一転いじめを否認した。

こうした市側の主張に元生徒側は反発。岡部裁判長は市側に対し、次回(5月15日)までにいじめを否認した根拠について説明するよう求めた。

市教委は「いじめ防止対策推進法のいじめの有無と、自治体相手の損害賠償での違法性(いじめの存在)の有無は異なると考えている」とコメントした。

元生徒の母親は「度重なる事実とは異なる主張が、どれほど子どもを傷つける行為か考えて欲しい」と話している。(堤恭太)

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