平成30年11月2日毎日新聞
自殺未遂で学校「家庭内問題」と不適切対応 山梨
女子生徒が昨年12月に回答した、いじめの有無を尋ねるアンケートには、いじめの被害を担任らに相談した後も状況は「変わらない」と書かれていた=2018年11月1日、山本将克撮影
山梨県北杜市で昨年、自殺を図った当時中学1年の女子生徒(14)が、いじめ被害を訴えたにもかかわらず、学校側がいじめによる「重大事態」と判断しなかった問題で、学校側は国のガイドラインに反し、自殺未遂の翌日に家庭内の問題が原因と独自に認定し、いじめの可能性を当初から排除していた。女子生徒は自殺未遂の前、クラスメートに対する不信感を
担任らに伝えていた。
毎日新聞が入手した内部資料によると、女子生徒は昨年10月下旬、「学級の雰囲気が許せない」「その場にいなくなった友達や先生の悪口を言っている生徒がいる」などと担任らに伝えた。女子生徒は翌月、自宅で手首を切ったが軽傷だった。
国のガイドラインは「詳細な調査を行わなければ事案の全容は分からない。軽々に『いじめはなかった』『学校に責任はない』という判断をしない」と定めている。
謝罪する北杜市教育委員会の幹部ら=山梨県北杜市で2018年11月1日午前10時55分、野呂賢治撮影
だが、学校と市教委は自殺未遂の原因を家庭内の問題と即座に認定。女子生徒が昨年12月、いじめられていると明記した書面を学校に提出し、担任との面談で、いじめの存在を告げた後も、重大事態とせず第三者委員会の設置を見送っていた。
市教委はこれまで、今回のケースは重大事態に当たらないと説明してきたが、保護者から第三者委の設置要請があった今年5月の時点で「重大事態と認定しなければならなかった」と1日になって説明を一転させた。同日、記者会見した市教委の井出良司教育部長は「保護者と被害生徒につらい思いをさせていることを深くおわびする」と謝罪した。
文部科学省は取材に「(いじめに関する)国の基本方針やガイドラインとは異なる、あり得ない対応だ。全くなっていない。県教委を通じ、しっかりと報告を求め、対処していきたい」とした。
【野呂賢治、金子昇太】