平成29年10月24日朝日新聞デジタル
「子の指導死、表面化は氷山の一角」 繰り返される悲劇
池田中調査報告書
福井県池田町立池田中学校で男子生徒が自殺した問題で、調査委員会がまとめた全57ページの調査報告書の写し

 福井県池田町で中学2年生の男子生徒が自殺した問題で、学校での指導がもとで同じように我が子を亡くした遺族も悲痛な思いを抱いている。繰り返される「指導死」。再発防止が課題だ。

■「他人事だったのか」
 「大人が押しつけるような教育は改めないといけないのに、現場は変わっていない」。大阪市立桜宮高校のバスケットボール部主将だった男子生徒(当時17)を自殺で亡くした父親(48)は、池田町で起きた中学生の自殺に胸を痛める。
 生徒は顧問から平手打ちや暴言を繰り返し受け、2012年12月に自殺した。顧問は懲戒免職となり、傷害と暴行罪で有罪に。遺族は市を相手に損害賠償を求める裁判を起こし、昨年2月に元顧問の暴行を自殺の原因と認める判決が出た。
こうした動きが大きく報道されてきた一方で、池田町の中学生は昨年10月ごろから担任や副担任から厳しい指導や叱責を受け、今年3月に自殺した。
 桜宮高校の生徒の父親は、5年近く前の出来事が「風化している。他の地域の教員には他人事だったのか」と感じる。
池田町の事案については、「当事者しかわからない面がある」と断った上で、「なぜ管理職ら周りが異常に気づき対応しなかったのか」と話す。
 大阪市教育委員会は再発防止に向けて13年、「生徒第一主義」「体罰の排除」という部活動の指針を示した。14年には体罰や暴力行為に対する懲戒処分の基準を改正。「授業で問題を解けない」「指示通りにプレーしない」など子どもに非がないのに体罰などをした場合は、より厳しく処分するようにした。
 今年3月には、「暴言」も懲戒処分の対象と明示。市教委の担当者は「暴言の抑止がその先にある体罰の抑止につながる」と話す。だが、体罰をしていた教諭が再び体罰で処分を受けるケースがあるなど、根絶されたとは言えない現状もある。

■価値観押しつけないで
 「『指導死』親の会」共同代表の大貫隆志さん(60)=東京=は「再発しないようにと活動してきたので、ものすごく悔しい」と肩を落とす。00年、中学2年生だった次男陵平さん(当時13)が自殺。学校でお菓子を食べたことで教師から1時間半にわたり叱られた翌日のことだった。
 08年に「親の会」を立ち上げ、生徒指導を原因とする自殺を「指導死」と名付け、社会に訴えてきた。大貫さんは、池田町教委が設置した調査委員会がまとめた報告書について「行き過ぎた指導を自殺の原因だとはっきり認めたことは画期的」と評価する。だが、再び子どもの命が失われたことに、「指導死が起きる恐れが学校で共有されていない。子ども一人ひとりの特性に合わせた接し方が求められている」と話す。
 教育評論家の武田さち子さんは「表面化している指導死は、氷山の一角」と指摘。背景に長時間労働などの教師の労働環境もあると分析する。「『生徒のため』と言いながら、教師が子どもをストレスのはけ口にしてしまう」。また、「生徒を効率よく管理し、学力やスポーツの成績を上げることが重視され、どうすれば一人一人の子どもが幸せになれるかを考える指導が難しい状況も問題」と話す。
 教育現場で指導死を防ぐにはどうしたらいいか。武田さんは「悪い行為をしかっても、人格は否定せず、教師側の価値観の押しつけや思い込みを慎む必要がある。指導中や指導後の子どもの様子に気をつけるほか、保護者との情報共有を徹底する必要がある」と提案する。

■一人で抱え込まないで
 教師の指導に悩む子どもや保護者はどうすればいいのか。不登校や引きこもりに関するニュースを発行する「不登校新聞」の
石井志昂(しこう)編集長(35)は「行政が設ける既存の相談窓口だけではなく、子どもや親が信じられる第三者機関を増やす
必要がある」と話す。
 子どもに異変を感じた親に向けては「子どもに心配していることを伝え、何があったのか率直にたずねてみる。子どもが話して
くれたら、最後まで聞く」とアドバイスする。「一人で抱え込まず、子どもにとって何が一番いいかを探してほしい」
 石井さんは13歳で不登校になった。「つらいなら、学校に無理して行く必要はない。僕は不登校になった後、気持ちを聞いて
くれる人に出会えて救われた。学校で見つけられなくても、そういう人は必ずいることを知ってほしい」(金子元希、長富由希子)

■「指導死」の定義(「指導死」親の会による)
①不適切な言動や暴力行為などを用いた「指導」を、教員から直接受けたり見聞きしたりすることにより、児童・生徒が精神的に
追い詰められ、死に至ること
②妥当性、教育的配慮を欠く中で、教員から独断的、場当たり的な制裁が加えられ、結果として児童・生徒が死に至ること
③長時間の身体の拘束や反省、謝罪、妥当性を欠いたペナルティーなどが強要され、それらへの精神的苦痛に耐えきれずに
児童・生徒が死に至ること
④暴行罪や傷害罪、児童虐待防止法での虐待に相当する教員の行為により、児童・生徒が死に至ること

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平成29年10月17日朝日新聞
小6から確執、「副担任代えて」母は訴えたが 中2自殺

池田中校舎
福井県池田町立池田中学校=福井県池田町稲荷

 福井県池田町の町立池田中学校で今年3月に2年の男子生徒(当時14)が自殺した問題で、家族が生徒を叱責した副担任を代えるよう希望するなど、学校側に改善を求めていたのに、適切な対応が取られていなかったことがわかった。
両者の関係に問題があったことは校長や教頭にも報告されていたが、具体的な対応の指示はなかったという。
 同校は生徒数40人で、1学年1学級。有識者らでつくる調査委員会が作成した報告書によると、副担任は昨年4月、池田中に異動となり、男子生徒のいた2年生を受け持つことになった。副担任は生徒が小学6年の時、同じ小学校の家庭科の講師だった。当時ミシン掛けで居残りをさせられ、帰りのバスに間に合わなかったことがあり、生徒は家族に「副担任は嫌だ」と言っていたという。
 昨年5月、生徒は「副担任が宿題未提出の理由を言い訳だとして聞いてくれない」と言って登校をしぶった。同じ日の午後に担任が家庭訪問をした際、母親は「副担任を代えてほしい」と求めたという。
 しかし、担任は「代えることはできない。副担任と2人にならないようしっかり見ていきます」と答えた。この件は教頭に報告したが、学校からの指示は特になかったという。
 今年2月にも国語の宿題の件で副担任から怒られたとして登校をしぶり、生徒は母親に「副担任は何をいっても言い訳と決めつける」と訴えた。この日夜に家庭訪問をした担任は「副担任については私がちゃんとみます」と答えたが、担任は副担任には特に話をしなかった。また、校長と教頭には、副担任の指導には生徒の気持ちをくんでいない面があるなどと報告したが、校長らからの指示はなかったという。
 また、自殺する前日、副担任から課題の未提出の理由をただされ、生徒が過呼吸を訴えたが、この件についても担任から家族や管理職に報告はなかった。
 報告書では、「校長、教頭、事情を知っていた他の教員も生徒の気持ちを理解し、適切に対応することはなかった」とし、学校の対応について「問題があった」と結論づけた。
 生徒の同級生の保護者によると、15日夜に開かれた保護者会では、生徒の母親の手紙が読み上げられた。自殺後の学校の対応に関して不信感と憤りをつづった内容だったという。
 同校では16日、職員会議を開いて今後の対応を協議したが、町教委によると、具体的なことは何も決まらなかったという。
 一方、福井県教委は16日から同校にスクールカウンセラーを重点的に派遣し、教職員や生徒のケアにあたっている。
17日には県内の小中高校と特別支援学校の校長を集め、再発防止に向けた研修会を開く。淵本幸嗣・県教委企画幹は「大変重く受け止めている。小中高校や特別支援学校の管理職の研修を実施し、再発防止を徹底する」と話す。

「教師のいじめ」「校長先生悪びれず」自殺生徒の母に涙

 福井県池田町の町立池田中学校で今年3月に2年の男子生徒(当時14)が自殺した問題で、亡くなった生徒の母親が
16日夜、生徒の祖父母とともに自宅で取材に応じた。息子が自殺にいたったことについて、「原因については、教師による
いじめだと思っています。本当にただただつらい。息子が戻ってきてくれれば、帰ってきてくれればいいんですけど」と目に
涙を浮かべながら話した。
 母親は息子について、「おじいちゃんおばあちゃん子で、私にもいつも『お母さん』と言って寄ってきて、本当に可愛くて、
可愛くて」と振り返った。
 有識者らによる委員会が作成した調査報告書は9月26日に受け取ったという。報告書は、「関わりの深い担任、副担任の
両教員から立て続けに強い叱責(しっせき)を受け、精神的なストレスが大きく高まった」としている。
 母親は「正直なところ、担任については(息子が)『怒られるんや』と話していたんですが、そんなにひどいとは思わなかった」
と話した。
 母親は息子が副担任から叱責されていることを担任に相談していた。だが、その担任からもひどく怒られていたことを知った
のは、息子の自殺後、生徒たちを対象にしたアンケートの結果を見たときだという。「もし知っていたら、学校になんて絶対
連れて行きませんでした。今でも毎日、毎日悔やんでいます」と後悔の念を語った。
 学校の対応にも、不満や怒りをにじませた。「事故(自殺)当日、校長先生が(面会に)来ても悪びれた様子もなく、頭を下げる
こともなかった」と話した。(山田健悟)

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平成29年10月16日毎日新聞
福井・中2転落死 「担任らに叱責され自殺」町教委報告

 福井県池田町の町立池田中学校で今年3月、校舎3階の窓から2年の男子生徒(当時14歳)が転落して死亡する事故があり、町教委は15日、「担任と副担任から強い叱責を受けて追い詰められた末の自殺」と結論づける報告書を公表した。
 町教委の委託を受け、事故等調査委員会が調査して報告書をまとめた。報告書などによると、男子生徒は昨年10月以降、宿題提出の遅れなどを理由に、担任の30代男性教諭と副担任の30代女性教諭から繰り返し叱責を受け、大声で怒鳴られることもあった。
 生徒は3月14日朝、3階窓から飛び降りて死亡。現場に遺書と見られるノートが残されていた。調査委は「厳しい指導叱責が不適切であることには気づくことができた」と指摘。教諭2人は生徒への対応について管理職に報告をしていなかった。
 堀口修一校長は「指導監督が十分にできず、彼を苦しめ、傷つけ追い詰めてしまった」と謝罪した。【立野将弘】

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平成29年10月16日朝日新聞
中2が自殺、「教師の指導や叱責でストレス」 福井
福井町教委

生徒の自殺について調査報告書がまとまり、記者会見で謝罪する池田町教育委員会の内藤徳博教育長
(左から4人目)ら=15日夜、福井県池田町、堀川敬部撮影
福井地図
 福井県池田町教委は15日、町立池田中学校で2年の男子生徒(当時14)が今年3月に自殺したと発表した。
担任と副担任から厳しい指導や叱責を繰り返され、精神的なストレスが高まったことが大きな要因だと結論づけた。
内藤徳博教育長は「大変深く反省している。学校の対応に問題があった」と謝罪した。
 町教委によると、生徒は3月14日午前8時ごろに登校後、姿が見えなくなった。校舎脇に倒れているのが見つかり、病院で死亡が確認された。遺書とみられるノートがあったという。生徒は校舎3階の窓から転落したとみられ、町教委は4月、有識者らによる調査委員会を設置。ほかの生徒や遺族らから聞き取るなどして、生徒が死に至った背景などを調べてきた。
 調査委員会の報告書によると、生徒は昨年10月以降、宿題提出の遅れや生徒会活動の準備の遅れなどを理由に、担任や副担任から繰り返し叱責を受けた。今年に入っても、役員を務めていた生徒会を辞めるよう担任から叱責され、副担任の執拗な指導も続いた。
 報告書は「大きな精神的負担となるものであった」と指摘。指導に対し、生徒が土下座しようとしたり過呼吸を訴えたりしたことが「追い詰められた気持ちを示すものだ」とした。いじめが疑われる点もあったが、いじめによる自殺ではないと判断したという。
 生徒はこうした指導などについての不満を家族に相談。家族から事情を訴えられた担任は、対応を約束したが、適切な対応を取らず、副担任と叱責を繰り返したという。
 生徒の自殺について、町教委は15日夕、保護者への説明会を開いた。その後、記者会見した調査委員会の松木健一・福井大大学院教授は「叱責を繰り返したことは指導の範囲を超えていた」と述べた。

「聞いた人が身震いするくらい怒られていた」 中2自殺 福井県池田町で自殺したとされる中学2年の男子生徒は、担任や副担任から再三しかられ、「死にたい」と漏らしていた。
町教委は15日、有識者らでつくる調査委員会の報告書を公表。生徒が逃げ場を失い、追い詰められていく状況が詳細につづられていた。
 「改めて亡くなられた生徒さんのご冥福を祈りますとともに、遺族の方々におわび申し上げます」。15日夜に池田町内であった記者会見で、内藤徳博教育長や堀口修一・池田中学校長らは深々と頭を下げた。
 会見では16ページの調査報告書の概要版が配られた。内藤教育長は学校の指導体制に問題があったと認め、「生徒の特性を見極めていきたい。二度と繰り返さぬようにしたい」と述べた。
 調査報告書は男子生徒の自殺の理由を「関わりの深い担任、副担任の両教員から立て続けに強い叱責を受け、精神的なストレスが大きく高まった」「一方で、指導叱責について家族に相談したが、事態が好転せず、絶望感が深まり、自死を選択したものと考えられる」と判断した。学校実施のアンケートで複数の生徒が、男子生徒が死にたいと言っていた、などと回答したことも明らかにした。
 報告書によると、生徒会副会長だった男子生徒はマラソン大会の運営にも携わっていた。だが昨年10月、校門前で担任から大声で、準備の遅れを怒鳴られた。目撃した生徒は「(聞いた人が)身震いするくらい怒られていた。かわいそうだった」と話したという。
 昨年11月、宿題を出していない男子生徒が、理由を生徒会や部活動のためと答えると、副担任は「宿題ができないなら、やらなくてよい」と言った。生徒は「やらせてください」と土下座しようとしたという。
 今年も生徒会の開催日に、担任から大声で「お前辞めてもいいよ」としかられたり、宿題の未提出の理由を副担任にただされ、過呼吸の症状を訴えたりしていたという。
 報告書は、男子生徒は「まじめで優しい努力家だが対人関係が器用でない一面がある」とし、担任らが「よく観察すれば、厳しい指導が不適切だと気づくことはできた」と記した。
 その上で、担任が生徒指導について副担任と協議したり、上司や同僚に報告したりなど、問題解決に向けた適切な行動をとらず、副担任と一緒に厳しい叱責を繰り返したと指摘。土下座や過呼吸の件なども家族に知らせず、その結果、「生徒は逃げ場の無い状況に置かれ、追い詰められた」と結論づけた。

■男子生徒が自殺するまでの経緯
2016年
10月 マラソン大会のあいさつの準備が遅れたことを理由に担任が校門前で大声で怒鳴る
11月 課題未提出で副担任が問いただす。生徒は土下座しようとする
2017年
1月か2月ごろ 生徒会の日に職員室の前で担任から「お前辞めてもいいよ」と大声で叱責される
2月上旬 忘れ物をした生徒を担任が強く叱責
2月21日 登校を拒否
3月6日 担任から課題未提出の指導。早退を求める
3月7日 登校を拒否。「僕だけ強く怒られる」
3月13日 過呼吸を訴える
3月14日 中学校で自殺
(調査委員会の報告書から抜粋)

■教員の指導が原因とみられる主な自殺
 2004年3月 長崎市立中学校2年の男子生徒が、校内でのたばこ所持で、教員から指導を受けた直後に校舎から
飛び降り自殺。遺族が起こした訴訟で、長崎地裁は08年、判決で自殺の原因を「行きすぎた指導」と判断
 06年3月 北九州市立小学校5年の男児が自宅で首つり自殺。新聞紙を丸めた棒を振り回して女児に当たったことを、
担任から胸ぐらをつかまれるなどして注意されていた。両親が訴訟を起こし、福岡高裁で10年、市側が責任を認める内容
の和解が成立
 12年12月 大阪市立の高校2年のバスケットボール部主将の男子生徒が、男性顧問から暴力を受けて自殺
 16年3月 広島県府中町の中学3年の男子生徒が、万引きしたとの誤った情報にもとづいた進路指導を受けて自殺した
ことが学校の報告書で明らかに
 17年2月 愛知県一宮市の中学3年の男子生徒が飛び降り自殺。担任からプリントを何度も配布をさせられるなどし、
ストレスを蓄積させた、と第三者調査委が検証
(学年はいずれも当時)

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平成29年10月14日NHK大阪放送局
体罰受け後輩自殺 元部員語る

5年前、大阪市立桜宮高校で、バスケットボール部の男子生徒が顧問から体罰を受けたあと自殺した問題について、一緒にクラブ活動をしていた元部員の男性が東京都内で講演し、「教師は子どもに対し人としての尊厳を持って接してほしい」と呼びかけました。
講演会は、教師の指導や体罰がきっかけで子どもを亡くした親たちで作る「指導死親の会」という団体が、東京・港区で開いたシンポジウムの一環として行いました。
講演した谷豪紀さん(24)は、以前、桜宮高校のバスケットボール部に在籍し、平成24年に顧問の教師から体罰を受けて自殺した男子生徒の2年先輩でした。
谷さんによりますと、スポーツの強豪校だった桜宮高校では、当時、クラブ活動で、思うようなプレーができないといった理由で、平手打ちなどの体罰がたびたび行われていたということです。
当時は、生徒たちの間でも体罰は必要だという考えが多く、こうした学校の雰囲気に強い違和感を感じていたほか、優れた選手だった後輩の生徒が体罰を受けて自殺したと知り、非常に悔しく、怒りを覚えたということです。
谷さんはその上で「教師は子どもたちに対し人としての尊厳を持って接してほしい」と呼びかけました。
講演の後、谷さんは「今も体罰を受けている生徒たちは、甘んじて受け入れるのではなく、許されないものだから、ほかの大人に訴えてほしい」と話していました。
http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20171014/4743001.html

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平成29年10月12日朝日新聞滋賀版
大津中2いじめ自殺から6年、父親が会見
大津いじめから6年
会見で心境を語る男子生徒の父親(左)=大津市役所

 いじめを受けていた大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が自ら命を絶ってから6年がたった11日、男子生徒の父親(52)と越直美市長らが同市役所で会見を開いた。父親は、いじめによる子どもの自死がなくならないことを挙げ、「いじめ防止対策推進法の施行前と変わっていない」と訴えた。推進法が風化しているとの懸念も示し、いじめをなくす取り組みの強化を呼びかけた。
 父親が会見の冒頭で触れたのは、男子生徒の死から6年たった今も、いじめや体罰などで命を落とす子どもがなくならないことの悔しさだった。
 父親は「いじめ行為が人の命を奪いかねない認識がない」などと述べ、首長や教育長らリーダーの規範意識が低いと非難した。自治体によっていじめ対策に差が出ているとし、「(大津)市のいじめ問題の取り組みを日本全国に波及させてほしい」と語った。
 男子生徒は生きていれば今月25日で20歳の誕生日を迎えていた。「成人式に出て社会人になる姿を見たかった」などと、ハンカチで涙を拭いながら話した。
 推進法ができて4年。父親は「息子が命がけで作った法律。本当にこれが子どもの命を守る法律になるまで、私はそれを見届ける使命がある」と前を向いた。
 越市長は「亡くなられた中学生のつらさや無念さを忘れてはいけない。いじめ対策には終わりはない」と決意を語った。越市長は市役所でこの日朝、約50人の市教委職員らと黙禱した。(北川サイラ)

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平成29年10月3日大分合同新聞
高裁も重過失認定 竹田の剣道部員死亡
大分竹田1
大分竹田2
2009年に竹田高校(竹田市)で剣道部の練習中に工藤剣太さん=当時(17)=が熱中症で倒れて死亡した事故を巡り、元男性顧問(54)=大分県教委職員=らの賠償責任が問われた訴訟の控訴審判決が2日、福岡高裁であった。佐藤明裁判長は、元顧問に「重過失があった」と認定。100万円を請求するよう県に命じた一審大分地裁判決を支持し、県側の控訴を棄却した。
原告の両親側の代理人弁護士によると、学校現場の事故に関し、住民訴訟により公務員個人の賠償責任を認めた判決は高裁レベルで初めて。「部活動の指導において暴力行為には厳しい措置が取られると明確化した。
今後の教育界に大きな影響を与える」と評価した。
判決理由で佐藤裁判長は、当時の状況を「剣太さんの熱射病(重い熱中症)を疑うべき事態だったにもかかわらず、元顧問は演技だと決め付けて指導を続けた」と判断。「生徒の安全確保を図る教諭の立場にありながら、わずかな注意をすれば有害な結果を予見できたのにそれもしなかった」と非難し、「重過失があると言わざるを得ない」と結論付けた。
両親側が付帯控訴していた元副顧問の男性教職員(50)の賠償責任は「元顧問の意向に反することは困難だった。
重過失があるとまでは言えない」と退けた。
訴訟は剣太さんの両親が、部活動を指導していた元顧問と元副顧問の責任を追及するため15年12月に提訴。
県に対し、2人に賠償金の支払いを請求(求償)するよう求めた。
16年12月の一審判決は、剣太さんが熱中症で異常を来し、竹刀を落とされたのに気付かず構えを取るなどした行動を元顧問が「演技」と決め付け、蹴ったり頬をたたくなどの暴行を加えて状態を悪化させたと認定。県による賠償額約2750万円のうち、保険で賄う分を差し引いた200万円の半額を元顧問に請求するよう県に命じた。
県側は「部活動に携わる教員に大きな影響がある」などとして控訴していた。

「学校事故の壁」に風穴
◆解説◆
学校現場で事故を起こした教諭に、個人としての賠償責任を問えるか。福岡高裁は一審大分地裁に続き、剣道部元顧問に重過失があったとして責任を認めた。熱中症の生徒に暴行を加えた事実や、死亡という重大な結果を踏まえれば、常識的な感覚に沿った判断と言える。
公務員が職務上の行為で損害を与えた場合、国家賠償法の規定で、賠償責任は国や自治体が負う。「故意」や「重過失」があったと認められれば、国や自治体が公務員個人に賠償額を請求できるが、実際に責任が問われるのはまれだ。
死亡した生徒の両親は「学校の外で大人が子どもをたたけば犯罪だが、学校内なら個人は責任を負わない。
そんなことが許されるのか」と訴えてきた。今回の判決は、そうした“壁”に風穴を開けたと言える。
「熱血指導」が悪質な不法行為になっていないか。教育関係者はいま一度省みる必要があるだろう。

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平成29年9月28日朝日新聞大阪版
大阪市、元顧問に賠償金の半額求め提訴へ 桜宮高自殺

 大阪市立桜宮高校バスケットボール部の男子生徒(当時17)が2012年に自殺した問題で、大阪市議会は27日、市が遺族に支払った損害賠償金など計8723万円の半額を、部の顧問だった男性教諭に支払いを求める訴訟を大阪地裁に起こす議案を可決した。
 バスケ部の主将だった男子生徒は12年12月に自殺した。元教諭は暴力をふるっていたなどとして懲戒免職となった。その後、遺族は市に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こし、元教諭の暴行などが自殺の原因として約7500万円の支払いを命じる判決が確定。市が賠償金と遅延損害金を16年に支払っていた。

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平成29年9月27日毎日新聞
自殺の事実、学校伏せる 死亡当日

 茨城県取手市で2015年11月、市立中3年の中島菜保子さん(当時15歳)がいじめを苦にする書き込みを日記に残して自殺した問題で、学校側が死亡当日、「受験を控えた同級生たちへの配慮」を理由に自殺の事実を伏せる方針を両親に伝えていたことが分かった。市教委はこれまで「遺族の意向もあった」と説明していたが、両親は毎日新聞の取材に意向を否定しており、自殺当初から事実を隠そうとしていた疑いが強まった。
 「市教委が自殺の事実を隠した」とする毎日新聞の報道を受け、菜保子さんの父考宜(たかのぶ)さん(46)と母淳子さん(47)が当時の資料を調べ、判明した。それによると、菜保子さんが病院で死亡した同年11月11日午後、中学校の男性教頭(当時)が自宅を訪問。「受験を控えた3年生ということを考えると、不慮の事故で亡くなったという形で話をさせてほしい。いろいろな意味での教育的配慮だ」と話し、自殺の事実を他の生徒に伏せる方針を伝えた。
 その後、教頭は「調査は進めたい」とし、アンケートなどを行う方針を伝えた。これに対し、淳子さんが「死に損にならないようお願いしたい。ちゃんと調べてほしい」と泣きながら懇願すると、教頭は「責任を持って調べたい」とだけ答えた。
 毎日新聞の情報公開請求で開示された公文書によると、市教委はこの日の夜に臨時会合を開き、自殺の事実を伏せて「突然の思いがけない死」と生徒たちに伝える方針を決定。学校は12日に全校集会を開き、菜保子さんの自殺を「思いがけない突然の死」と生徒たちに説明した。
 両親は16日に日記を見つけ、いじめを調査するよう求めたが、学校は自殺の事実を伝えないまま、菜保子さんの名前を出さずにアンケート調査を実施。「いじめは確認できない」と結論づけた。
 考宜さんは、学校側がいう意向を示したことはないとし、「最初から菜保子の死と真摯に向き合っていなかったことが分かる。子どもを盾に保身を図っていたとしか思えない」と話した。取手市教委と当時の教頭は「回答を控えたい」として、取材に応じなかった。【玉腰美那子】

「全体的な事実把握調査を」大井川知事
 茨城県取手市立中3年の中島菜保子さんが自殺した問題で、先月の県知事選で初当選した大井川和彦知事が26日の就任会見で、「全体的な事実関係を把握する。スピード感を持って調査したい」と述べ、いじめの有無にとどまらず、市教委の対応も調査する方針を示した。
 この問題を巡っては、市教委が2016年3月に「いじめによる重大事態に該当しない」と議決したが、今年5月に文部科学省の指導を受けて撤回。橋本昌前知事は先月、遺族の要望を受け、知事直轄の新たな第三者調査委員会を設置する意向を示していた。大井川知事もこれを引き継ぐ意向で、10月3日に開会する定例県議会に第三者委設置の条例案を提出する方針。
 菜保子さんの父考宜さん(46)は「真摯で誠意ある公平な調査をしてほしい」と話した。【玉腰美那子】

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平成29年9月26日東京新聞夕刊
「いじめと判断 極めて困難」 都立高生自殺 都教委が報告書

 二〇一五年に自殺した東京都立小山台高校一年の男子生徒=当時(16)=へのいじめの有無について、都教育委員会は二十六日、「いじめがあったと判断することは極めて困難」とする調査結果を公表した。
調査は約一年八カ月間に及んだが、自殺の原因も「遺書はなく、解明は困難」とした。
 報告書は、いじめ防止対策推進法に基づき、学識経験者らでつくる調査部会がまとめた。無料通話アプリ「LINE(ライン)」や短文投稿サイト「ツイッター」への書き込みや、生徒が級友から体形をからかわれたと母親に相談していたことなど、いじめを疑わせる五つの行為について検討した。
 LINEには、生徒が複数の級友に対し、感謝の書き込みをしていたなどとして、心身の苦痛を感じていたと認めるのは困難とし、級友らへの聞き取りなどでも「いじめは認定できない」とした。自殺の原因についても「解明は困難であり、調査部会の能力や権限を越えている」とした。
 報告書を受け、遺族側は「調査が不十分」として、小池百合子知事宛てに再調査を求める意見書を提出。
都は、報告書の内容を精査した上で、再調査するかどうかを決める。都教委は「今後とも各学校におけるいじめ防止と自殺予防の徹底に向け、全力を尽くす」とコメントした。
 生徒は二〇一五年九月二十七日、JR中央線の大月駅(山梨県)のホームから飛び込み、特急電車にはねられて死亡した。都教委は校内アンケートなどから、いじめの可能性を調べる必要があると判断。
都教委のいじめ対策委員会が一六年一月、初めて調査部会を設置し、調査を進めていた。委員計八人のうち四人は生徒の遺族が推薦した。

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