平成29年8月31日読売新聞茨城版
いじめ防止条例化へ 検討委員会が初会合…取手・中3自殺

 取手市立中学校3年の中島菜保子さん(当時15歳)が自殺した問題で、いじめ防止対策推進条例の制定に向け、市教育委員会が設置した有識者の検討委員会が30日、藤代庁舎で初会合を開いた。市教委は来年4月の条例施行を目指す。
 委員長に長野雅弘・聖徳大児童学部教授、副委員長に学識経験者の松浦勉氏が選ばれた後、市教委が、いじめ防止の基本方針や、児童生徒の自殺などの重大事態を調査する常設の対策委員会設置などを盛り込んだ条例案の骨子を提示。委員からは「予防に重点を置いた条例にするべきだ」「子供の発信に周囲の大人が気付くことが重要」といった意見が出された。

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平成29年8月31日神戸新聞
川西・高2いじめ自殺5年 両親、再発防止へ支援に力

川西高2いじめ
いじめを受けて自殺した息子の写真を見ながら5年間を振り返る両親=神戸市内

 2012年、兵庫県川西市の兵庫県立高校2年の男子生徒=当時(17)=が2学期の始業式前日、いじめを苦に自殺してから、来月2日で5年となる。いじめと自殺の関連が裁判などで認められ、両親にとっては息子の「名誉回復」に向けた取り組みに区切りがついて迎える初の命日となる。「あの子の死を風化させないことが、再発防止につながる」。
両親は神戸新聞社の取材に、経験を語り、いじめに苦しむ当事者やその家族をサポートする活動に力を入れる決意を語った。(井上 駿)
 男子生徒は、同級生3人から「ムシ」と呼ばれたり「汚い」と言われたりするなど言葉の暴力を受けていた。学校が設置した第三者委員会はいじめと自殺を「関連づけるのは困難」と結論づけたが、両親が県や同級生などを相手に起こした損害賠償請求訴訟では、関連が認められた。学校は今年5月、判決の内容を盛り込んだ追加報告書を県教育委員会に提出した。
 だが、男子生徒の死以降も全国でいじめを受けた児童生徒の自殺が相次ぎ、この1年間だけでも、県内では四つの第三者委が発足している。一方、事実の隠蔽や不十分な実態調査など、学校や教育委員会、調査する第三者委のずさんな対応が浮き彫りになるケースも少なくない。父親(65)は「子どもを失った親が願うのは『何があったのかを知りたい』という一心。学校や教委は、その願いに応えていない」と批判する。
 息子の死を風化させないために、「全国学校事故・事件を語る会」の活動にこれからも力を注ぐという両親。今月26日には、神戸市内で開かれた同会の大集会に参加した。いじめを受け、今も後遺症に苦しむ若者に、母親(59)は「私は優しい息子を亡くしてしまった。私も頑張るから、一緒に頑張ろうね」と、亡き息子の姿を重ね合わせながら語り掛けた。
 5年の歳月で2人の心の傷が癒えたわけではない。息子も写る家族写真は自宅のあちこちに飾られ、部屋も当時のまま。家族思いで優しかった息子との思い出を支えに、なんとか生きてきた。「加害生徒を許すことはできない。息子を守れなかった自分たちを責める気持ちも消えない」 もし、天国の息子に会えたなら。相談もなく先に逝った親不孝を叱った後、ぎゅっと抱きしめようと、母親は決めている。
いつか訪れるその日まで、同じ苦しみを味わう人がもう二度と出ないよう、息子の人生と命の重さを積極的に伝えていくつもりだという。
 【無料の子ども相談電話など】
 ▽チャイルドライン(0120・997777)=18歳まで対象。午後4~9時。一部地域は夏休み明け前後に時間拡大、
日・祝日は休みの地域も
 ▽24時間子供SOSダイヤル(0120・078310)=24時間受け付け
 ▽子どもの人権110番(0120・007110)=月-金曜日〈祝日を除く〉午前8時半~午後5時15分

【川西市の高2男子いじめ自殺】2012年9月2日、兵庫県立高校2年の男子生徒=当時(17)=が川西市内の自宅で
自殺した。その後、同級生3人から言葉によるいじめを受けていたことが判明。県警は13年5月、同級生3人を侮辱容疑
で書類送検。神戸家裁は3人を保護観察処分とした。同年12月、両親が同級生や県などに損害賠償を求めて提訴。
神戸地裁判決はいじめと自殺の関連を認め、同級生と県に計210万円の支払いを命じた。学校は今年5月、自殺と
いじめの関連を認める追加報告書を県教育委員会に提出した。

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平成29年8月29日河北新報
<仙台中2自殺>市いじめ再調査委 来月23日に初会合

 仙台市泉区の南中山中2年の男子生徒=当時(14)=が2016年2月に自殺した問題で、市は28日、いじめ防止対策推進法に基づき、市長が設置する第三者機関「市いじめ問題再調査委員会」の初会合を9月23日に開くと発表した。
 委員会のメンバーは、任期2年の常任委員が県内外の社会福祉士、大学教授、弁護士ら4人。このほか、男子生徒の遺族が推薦した県外の弁護士、精神科医、教育学者の3人が臨時委員として協議に加わる。
 委員会は初会合で正副委員長を互選し、郡和子市長から再調査の諮問を受ける。男子生徒の自殺を巡っては、奥山恵美子前市長が市教委の調査結果を受け、再調査の方針を決めていた。

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平成29年8月29日東京新聞
いじめ疑い自殺に専門官 文科省が設置検討

 文部科学省は二十八日、学校でいじめが原因とみられる子どもの自殺などが起きた際、現地に赴き、学校や教育委員会への指導のほか、遺族対応などを担う「いじめ・自殺等対策専門官」を省内に配置する方針を決めた。教職経験者や有識者など外部人材の活用を検討し、二〇一八年度の機構定員要求に盛り込む。
 一三年施行のいじめ防止対策推進法は、いじめが原因で子どもが重大な被害を受けた場合は「重大事態」として対処するよう求めているが、最近は学校や教委の初動ミスで遺族が不信感を抱くケースが目立つ。
文科省は知識と経験が豊富な専門官を派遣することで、早期に適切な対応をとるとともに、再発防止につなげたい考えだ。
 専門官は同省でいじめ問題を担当する児童生徒課に二人程度配置することを検討。通常時は全国を回って協議会などに出席し、いじめの早期発見や予防のための研修を実施するなど普及啓発活動に取り組む。
 いじめが原因とみられる子どもの自殺が起きた際は、教委などの要請がなくても現地に入り、情報を収集。
警察など関係機関との連絡も行う予定という。
 文科省は来年度から、教員や保護者の法的な相談に乗るなど仲介役を果たす弁護士を派遣する「スクールロイヤー制度」の創設も決めており、将来的にはこうした専門家との連携を強め、対応を充実させていくことも想定している。

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平成29年8月29日中国新聞
いじめ影響の可能性
広島の中3死亡第三者委調査へ

 広島市佐伯区の五日市観音中3年の女子生徒が7月に同校で死亡し、後にいじめを受けていたことが判明した問題で、市教委は28日、いじめを苦に命を絶った可能性があるとして、第三者でつくる「市いじめ防止対策推進審議会」に調査を諮問する考えを示した。
 中区役所で開いた教育委員会議で、市教委の担当者が、悪口や嫌がらせなど女子生徒に対する少なくとも7件のいじめを認知した経緯や学校側の対応を説明。
「いじめを苦に命を絶った」とする遺族の訴えも踏まえ、いじめ防止対策推進法が定める「重大事態」に当たるとして、審議会で調査を進めるとした。
 審議会は同法に基づき市教委が2014年7月に設置し、学識経験者や専門家たち5人で構成。来月初旬に諮問する予定で、調査内容の詳細は遺族の意向を確認しながら決めるという。これまで教員から聞き取りをするなど調査を進めていた学校側とも情報を共有する。
 生徒の両親は、「第三者による調査組織の調査が適切に行われ、このような事件が起きた背景が少しでも解明されることを期待するばかりです」とのコメントを代理人の弁護士を通じて出した。
 この日、同校では3年生の授業が再開し、学年集会があった。大下茂校長によると、学年主任が女子生徒の死を悼み、「相手の立場を考えて行動できるように」などと呼び掛けた後、全員で黙とうをしたという。
 (野田華奈子、有岡英俊、新山京子)

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平成29年8月28日河北新報
青森中学生いじめ自殺1年 遺族の不信感強く
あれから1年
亡くなった男子生徒の小さい頃の写真と仏壇。今月19日には同級生らがお菓子を持って訪れた=青森県東北町
あれから1年、
いじめによる子どもの自殺に関するパネル展で、家族から葛西さんへのメッセージを読み上げる剛さん=26日、青森市

 昨年8月に青森県内で、2人の中学生がそれぞれ、いじめ被害を訴えて自殺してから1年がたった。息子、娘の一周忌を迎えた遺族は、現在も続く原因究明の調査に「今度こそは遺書の内容を読み取って」「曖昧な調査はしてほしくない」と思いを募らせる。

<10月末までに報告>
 「19日が迫ってくるのが怖かった。1年がたったけど、息子が亡くなって、もう戻ってこないという事実に変わりはない」昨年8月19日にいじめ被害を示唆する遺書のようなメモを残して自殺した東北町上北中1年の男子生徒=当時(12)=の母(50)は、一周忌をこう振り返った。
 男子生徒が自殺した翌月、町いじめ防止対策審議会による調査が始まった。12月にまとまった調査報告書では、男子生徒に対する校内でのいじめを認めたものの、自殺に至ったのはいじめのほか、小規模の小学校から人数の多い中学校へ進学したストレス、思春期の影響などの複数の要因があると結論付けた。
 納得のいかなかった遺族は今年1月、町に再調査を要請。3月に町いじめ問題再調査委員会が設置され、現在も調査報告書を再検討している。
 男子生徒の母は「本人が自殺の一番の原因はいじめだと書き残している。この一言では、駄目ですか。息子が残したメモを、遺書として扱ってほしい」と調査への思いを吐露した。再調査委は10月末までに報告書案を遺族に報告する方針だ。

<「日に日につらく」>
 昨年8月25日に自殺した青森市浪岡中2年の葛西りまさん=当時(13)=の父剛さん(39)は、今年の8月25日を普段
通り過ごした。剛さんは「特別な日にしたくなかった。今も亡くなった事実を受け入れたくないが、時間がたつと思い出す機会
が増え、日に日につらくなっている」と話す。
 自殺から4カ月後の昨年12月、市いじめ防止対策審議会は葛西さんへのいじめを認定した。今年3月に調査報告書案を
遺族へ説明したが、葛西さんが思春期特有のうつだった可能性があるとの記載について、具体的な根拠を示せなかった。
 不信感を持った遺族は翌4月、内容の一部再検討や一部委員の解任を要望した。審議会や市教委は応じなかったが、
5月末、審議会の全委員が任期満了に伴い退任。退任間際に、審議会は「(自殺には)いじめ以外の要因がないと断言できる
情報を得られなかった」として自殺が「いじめを含むさまざまな要因が関わった死」との見解を示した。
 宙に浮いた報告書案は、顔触れを一新する審議会の資料になる。新たな委員は全国規模の職能団体からの選出が決まり、
現在も選任作業が続く。剛さんは「いじめさえなかったら娘は亡くなっていないという家族の気持ちを、正面から受け止めて
もらえていない。曖昧な調査結果からは曖昧な再発防止策しか生まれない」と語った。

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平成29年8月28日朝日新聞
野球部員「100m走100本」で熱中症 コーチの指示

 私立美濃加茂高校(岐阜県美濃加茂市)硬式野球部の2年男子生徒(16)が部活動中に重度の熱中症で救急搬送され、集中治療室で一時治療を受けたことが分かった。コーチである男性非常勤講師(26)の指示で100メートル走を100本以上した後だったという。
 同校によると、コーチは8月16日午後1時ごろ、生徒に100メートル走を100本命じ、さらに30本を追加。
生徒は練習開始から約3時間後、残り数本のところで意識がもうろうとなって倒れたという。給水はコーチの許可を得るよう指示され、この間に生徒が補給したのは2回だった。16日の美濃加茂市の最高気温は27・8度だった。
 当時、近くには監督(33)もいた。監督はこうした練習内容を了承し、室内練習場で別の部員を指導しながら、この生徒の様子も時折見ていたという。
 生徒は搬送先の病院の集中治療室で5日間治療を受けるなど、1週間入院した。その後、自宅で療養し、28日は登校予定といい、野球を続ける意思を示しているという。
 生徒は主力として期待されていたといい、コーチは生徒の生活態度を理由に「気合を入れ直さないといけない」と考えたという。
 同校から連絡を受けた県高校野球連盟は25日、同校に報告書提出を求めた。同校は26日、コーチを無期限指導停止、監督を厳重注意の処分とし、部の保護者会を開いて再発防止策などを説明した。赤崎耕二校長は「体罰に近い行き過ぎた指導だった。生徒の健康管理を徹底し、二度と事故が起きないようにしたい」とコメントした。
 同校野球部は1973年創部で部員数54人。夏の甲子園に80、90年の2回、出場した。今夏の成績は岐阜大会8強だった。
■「事実なら体罰そのもの」
 〈体罰問題に詳しい日本体育大の森川貞夫名誉教授(スポーツ社会学)の話〉 事実なら、生徒への一方的な押しつけで体罰そのもの。高野連も注意喚起をしているのに、今どき信じがたい。なぜ健康管理がしっかりできなかったのか、学校の責任も問われる。仮に「気合」を入れ直すためであっても、なぜその練習をするのか本人が理解しなければ意味がない。指導者は科学的なトレーニング法を学習し、実践しなくてはならない。

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平成29年8月26日中国新聞
罰でランニング部活の高1重体
  東京の特別支援学校

 東京都教育委員会は25日、知的障障害特別支援学校「都立永福学園」(杉並区)で高等部1年の男子生徒(15)がバスケットボール部の活動中、熱中症で意識不明の重体になったと発表した。顧問の教員が、指示した時間内に走れなかった罰として科した追加のランニング中に倒れたという。
 生徒の意識は回復しておらず、都教委は「長時間のランニングは体罰に当たり、不適切な指導だった」としている。
 都教委によると、生徒には軽度の知的障害がある。21日午後、顧問の男性教員(31)が生徒ら7人に校舎の外周約450びを1分25秒以内で走り、それを超えた秒数分、罰として外周を走るよう指示。全員が罰を受け、生徒は2分8秒だったため43周(約19♂)走ることになったが、21周走ったところで体調不良になり、練習を終えた。23日午後に残り22周を走っていた途中で倒れ、熱中症による脱水症状で救急搬送された。
 当時、杉並区の気温は32度で、2周ごとに休憩と水分を取るようにしていたという。

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平成29年8月26日中国新聞
死亡中3「いじめあった」
広島市教委臨時校長会で認識

広島市佐伯区の市立中3年の女子生徒が7月に同校で死亡した問題を受け、市教委は女子生徒がいじめを受けていたとの認識を示した。大半の学校が28日以降に授業を再開するのを前に25日、臨時園長・校長会を東区内で開催。いじめの兆候を見逃さず迅速に対応するよう各学校に求めた。
 市教委はこれまでの学校の調査で、女子生徒に対する少なくとも計7件の悪口やからかいを把握。「7件の事案を把握した時点で、いじめがあったと認識した」としている。
 会議は冒頭を除き非公開。市立小中高校の校長や幼稚園長たち約230人が出席し、糸山隆教育長が「学校という教育の場で生徒の尊い命が失われたのは痛恨の極み」と訓示。教職員が感度を高めるよう求め「ささいな兆候でもいじめの疑いを持つ」「組織的に対応できるよう教職員全員で共通理解を図る」など6項目の留意点を説明した。
 続いて担当者が「持ち物を隠す」「悪口を言う」など、いじめが疑われる行動の具体例を紹介。各校での教職員研修を求めた。
(野田華奈子)

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平成29年8月25日朝日新聞青森版
いじめ自殺から1年、調査今も
青森いじめ自殺1
葛西りまさんの写真を見ながら話す父親の剛さん=青森市
青森いじめ自殺2
葛西りまさんが亡くなったJR北常盤駅には、りまさんの好きなバラの花束が供えられていた=藤崎町
青森いじめ自殺3
亡くなった葛西りまさん=遺族提供

 県内の中学生2人が、いずれもいじめを訴える文書を残して自殺して1年になる。第三者委員会による調査が
行われたが、認定された「背景」や「原因」に、それぞれの遺族が強く反発。やり直しの調査が今も続いている。
 青森市立中2年だった葛西りまさん(当時13)は昨年8月25日午前10時ごろ、JR奥羽線北常盤駅で電車に
はねられ死亡。スマートフォンに「もう、二度といじめたりしないでください」と書き残していた。東北町立中学1年
だった男子生徒(当時12)は同月19日午前5時半ごろ、自宅の小屋で自殺しているのが見つかった。自室には
「いじめがなければもっと生きていたのにね」と書かれたメモが残されていた。
 青森市と東北町の教育委員会は同年9月から有識者らによるいじめ防止対策審議会で、それぞれ事実関係を
調査。どちらもいじめがあったと認定した。ところが、自殺の「背景」や「原因」をめぐり、遺族との見解の相違が
あらわになった。
 りまさんの問題では3月、報告書案が自殺の背景の一つとして「思春期うつ」を挙げたことに、遺族が「根拠がない」
と強く反発。一部の委員の解任や再調査を求めた。最終報告が出されないまま、任期満了を理由に委員全員が
退任。新たな委員はまだ6人中3人しか決まっていない。
 昨年12月に答申された東北町の最終報告書は、自殺の原因について、本人の特性や思春期の心性など様々な
背景が複合的に関与していたと判断。これに対し、遺族は「(調査に)不審な点が多い」として、町長に再調査を要請
した。これが認められ、3月に町長直轄の再調査委員会が立ち上がり、関係者への聞き取りをやり直すなどしている。
■初動きちんと 子ども目線で
 大津市の中学生いじめ自殺をきっかけに、2013年いじめ防止対策推進法が成立し、学校や自治体などに客観的
な事実を明らかにする迅速で公平な調査が義務づけられた。しかし、調査方法やその内容に遺族が異議を唱える
ケースが全国で相次いでいる。
 いじめで自殺した子の遺族らでつくる川崎市のNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」理事の小森美登里さんに
よると、同法が定めているにもかかわらず、初動調査が遅れたり、遺族との情報共有を怠ったりする場合が多いという。
小森さんは「教育現場に法律が浸透していない」と指摘したうえで、「遺族は学校で何があったかを知りたいだけ。
初動調査がきちんとしていれば第三者委も必要ない」と話す。
 一方、13年に神奈川県内の中学生が自殺した問題で、第三者委の委員長を務めた小林正稔・神奈川県立保健
福祉大教授(コミュニティ心理学)は、遺族の希望通りでなくても、理解してもらえる調査をすることが大切だと指摘する。
「原因を明らかにすることではなく、遺族や子どもと同じ目線で考え、どういう状況だったのかを明らかにすることが、
再発防止のために最も大切なことだ」と話した。(山本知佳)
■報告案「根拠ある説明ない」葛西さん父親
 葛西りまさんが亡くなって25日で1年。父・剛さん(39)に現在の思いを聞いた。
 遺骨は、居間にある仏壇横の棚に置いたまま。剛さんは「まだ受け入れられない、認めたくないという思いがあります」
と話す。
 棚を埋め尽くすのは、ポップコーンやチョコレート、ミッフィーのぬいぐるみ、バラの花……。すべて、りまさんが好き
だったものだ。買い物に行くとつい買ってしまう。母と姉は、季節ごとにりまさん用の新しい靴や洋服を買い、今月も
紺色のワンピースを買ったばかりだ。
 いじめの調査には積極的に協力した。ただ、聞き取りの際、複数の委員のうち質問をするのは1人だけで、「真剣に
聞いてくれているようには見えなかった」。それでも、最後にはしっかりした報告書が出てくると信じていた。
 それだけに、報告書案に記されていた「思春期うつ」という言葉に衝撃を受けた。説明を求めても、納得できる根拠は
なかった。「何があったかを知りたいだけなのに、説明できないまま委員の任期は終わった。(真実とは)別の結論を
つくっているようだ」。声に力が入る。
 新しい委員もまだ半数しか決まっていない。「(調査が)いつ始まるのかもわからない。市教委には怒りしかない」

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