2016年10月28日 中国新聞社

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全国の国公私立の小中高、特別支援学校が2015年度に把握したいじめは22万4540件で、前年度から3万6468件増えて過去最多となったことが27日、文部科学省の問題行動調査で分かった。文科省は「件数増は、積極的な把握に努めた結果だと捉える方針が浸透したため」と分析している。年度間に30日以上欠席した不登校の小学生も1717人増の2万7581人と最多を更新。中学生は1395人増の9万8428人、高校生は3565入減の4万9591人たった。

いじめは、小学校が15万1190件(2万8456件増)で過去最多。中学校は5万9422件(6451件増)、高校は1万2654件(1250件増)だった。

内容は全体の63・5%を占めた「冷やかしや悪口」が最も多く、「パソコンや携帯電話でのひぼう・中傷など」は4・1%。現在の状況を見ると、88・6%でいじめは解消し、1・9%が解消に向けて取り組み中たった。

千人当たりのいじめ件数を都道府県別で見ると、最多が京都の90・6件、最少が佐賀の3・5件。前年度の30・5倍から縮小したが、依然26倍近い差があった。中国地方5県では、山口の17.2件が最多。島根13・〇件、鳥取8・7件、岡山6・8件と続き、広島の5・1件が最少たった。

児童生徒が心身に大きな被害を受けるなど、いじめ防止対策推進法で規定されている「重大事態」は298校で313件(136件減)。自殺した児童生徒で、いじめがあったのは9人たった。

国のいじめ防止対策協議会は、学校によっていじめや重大事態の把握、いじめ解消の解釈に依然隔たりがあるとして、改善を求める提言を24日に大筋でまとめている。

不登校の要因は家庭内の問題のほか、学校に関わるものでは友人関係、学業不振が多かった。不登校の日数別内訳も初めて調査項目に追加。小中学生の計12万6009人のうち、57・4%の7万2324人は欠席日数が90日以上、うち4402人は出席日数がO日たったことも判明した。長期の不登校が続く児童生徒への対応が改めて問われそうだ。

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朝日新聞デジタル

平成28年10月4日4:00

いじめ、届かぬSOS 「トラブル」扱い、対策後手に

いじめから子どもたちを救おうと超党派で成立した「いじめ防止対策推進法」。だが、自殺に追い込まれる子どもたちが後を絶たず、法律は見直しのめどとなる施行3年を迎えた。どこに問題があるのか。各地の現場から、見直しに向けた課題を探る。

「LINEで悪口を言われている」「部活動に行きづらい」「仲間とのトラブルがある」――。青森市の中学校に、2年の女子生徒とその保護者から相談が寄せられたのは昨年6月から今夏のことだった。

学校は「一方的にやられているわけではない」などとして「よくある子ども同士のトラブル」ととらえた。今年8月22日。自殺が増えるといわれる夏休み明け直前の職員会議では、不登校や病気の子など十数人の「気になる子ども」の一人としてこの生徒の名前を挙げ、目配りすることを確認した。

24日、2学期が始まり、翌日に生徒は自ら命を絶った。13歳だった。

スマートフォンには「遺書」と題した文章が残され、家族や教員への感謝の言葉とともに、悲痛な訴えがあった。

「噂(うわさ)流したりそれを信じたりいじめてきたやつら」「もう、二度といじめたりしないでください」

学校にとっての「子ども同士のトラブル」は、生徒にとって「いじめ」だった。成田一二三・市教育長が「いじめが濃厚に考えられる」と記者会見で認めたのは、生徒の死から1週間後だった。

「いじめ」とは何か。2013年9月に施行されたいじめ防止対策推進法は、深刻さや継続性にかかわりなく、被害者が苦痛と感じるものすべてをいじめと認定すると定める。いじめを見逃さないためだが、定義の広さをいかせないまま学校が対応し、子どもたちが追い詰められる現実がある。

14年7月に青森県八戸市の県立高2年の女子生徒(当時17)が亡くなった事例がその典型だ。生徒はLINEでの仲間はずれや無視を相談したが、学校側は「友人とのトラブル」と認識。第三者委は報告書で、学校は「いじめに対する感度が低かった」と指摘した。

生徒の父親は言う。「いじめと認めれば、先生たちの認識も変わり、子どもの孤立感や恐怖感を想像して対応できたのではないか」

青森県東北町でも今年8月19日、中学1年の男子生徒(当時12)が「いじめがなければもっと生きていたのに」とのメモを残して自殺した。青森県内では、8月の2件の自殺で第三者委の調査が進んでいる。

もう一つ、いじめが疑われた自殺の多くで明らかになるのは、法が求める教員間の「情報共有」の不十分さだ。朝日新聞の調べでは、法施行後、いじめと自殺の関係を第三者委が調査し終えた12件のうち9件で、情報共有不足が指摘された。

14年9月に中学1年の男子生徒が亡くなった仙台市。学校は当初、生徒らの相談を法に基づく学校の「いじめ防止等対策委員会」で対応し、謝罪の会や集会を開いた。しかし、生徒は「チクッた」と言われ、保護者が再び学校に連絡したが、担任は他の教員らに相談しなかった。9日後、生徒は自殺を図った。

当初は学校組織で対応しながら、「優先するほかの対応がクラス内にいくつかあった」(市教委)といい、担任が生徒側の訴えを抱え込む形になった。トラブルの多い学年で、その年の11月のアンケートで把握したいじめ認知件数は15件。生徒への対応は後回しになった。

第三者委は、生徒を継続的に観察しなかったことや、教員らが「そこまで追い詰められているという認識はなかった」と答えたことなどから、「学校として対応できる態勢になかった」とも言及した。

昨年7月に中学2年の男子生徒(当時13)が自殺した岩手県矢巾(やはば)町では、生徒が担任とやりとりする「生活記録ノート」でいじめの被害を訴えていた。学校側は、学校全体に危機意識が欠け、情報を共有できずに自殺を防げなかったと認めて謝罪した。

■教員には戸惑いや反発も

法の趣旨はなぜ、徹底されていないと指摘されるのか。文部科学省が今年3~6月に約10の自治体で行った教員らへの聞き取りからは戸惑いや反発もうかがえる。

いじめを広くとらえる法律の定義について、「社会通念上のいじめと隔たりが大きい」「何でもいじめになると、子どもは言いたいことも言えない」との声があった。

また、一人の教員の判断で「いじめではない」と決めてしまわぬよう、法が求める組織的な情報共有や対応に対しても「自分で解決できるとの自負があって報告しない担任がいる」。一方で、「自分の指導力のなさを実感し言いにくい」という教員もいた。「すべて報告していたら仕事にならない」「パンクする」。多忙さや人手不足の訴えも多かった。

LINEやツイッターといったインターネット上の悪口など、最近のいじめは表に出にくく、陰湿化、深刻化しているといわれる。ネットパトロールの予算が削られ、「SNSによるいじめについては効果的な対策がない」と嘆く教員もいた。

■いじめ積極認定、法律で成果も

法の運用で課題が見える一方、法を生かし解決を模索する動きもある。

広くなった「いじめの定義」に沿うように学校でのアンケートを工夫し、いじめ発見に成果を上げているのが京都府だ。いじめという言葉を使うと、子どもたちが狭い意味でとらえる可能性があるため、「いやな思いをしたことはありますか?」などと聞く。

そのアンケートを重視して集計に反映させた結果、児童生徒1千人あたりのいじめ認知件数は13、14の両年度で全国最多。「早期発見が解消につながる」と府教委の担当者はみる。

法が問題解決に結びつく例も出てきた。「法がなければ第三者を入れない調査をしていた。教員だけでは事実関係の確認にこだわりすぎて、いじめと認められず前に進めなかったかもしれない」。首都圏のある中学校校長は話す。

この学校では、「子どもがいじめを受けている」という保護者の訴えを機に、法に基づいて弁護士ら第三者を交えた調査委員会を設置。いじめの詳細までは確認できなかったが、いじめられている雰囲気の中で生徒が苦しんでいたとして、いじめを積極的に認定した。その後、生徒は学校に戻った。

校長は「法律は自殺への対処を定めたものと思いこんでいた。でも、教員同士で相談し合うなど、日常の教育現場の中でもっといかすべきだと分かった」と振り返る。これを機に、教員も前より注意深く生徒の様子を見るようになったという。

■学校への支援、求める声も

法を生かしていくために何が必要なのか。

元中学校長でいじめ問題に詳しい嶋崎政男・神田外語大教授は「教員は過去に学び、小さなサインに気づく感性を磨く努力が不足している」と指摘する。ただ、教員の多忙さや保護者との関係の難しさもあり「法律は意義があるが、学校の負担が大きい。学校支援を条文に盛り込み、福祉や医療、司法など専門家が支える態勢を整えるべきだ」と提案する。

法制定のきっかけとなるいじめ自殺があった大津市では13年度、市に「いじめ対策推進室」を設け、新たに臨床心理士などの専門家を雇用。2億数千万円をかけ、55の全小中学校にはいじめ対策に専念する教員も置いた。越直美市長は「学校内外で子どもの声をじっくり聞けるようになった。亡くなった生徒の無念さを忘れず、国も各地の取り組みを予算で支えてほしい」と求める。

98年に高1の娘がいじめで自殺し、10年以上講演活動を続けてきたNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」の小森美登里さん(59)は「法律にも問題はあるが、正しい対応ができていれば守れた命がいっぱいある」と教員の対応を重視。教員が子どもの目線に立てていないと感じており、「子どもが『大丈夫です』と言ったとき、もしかしたら死を覚悟した瞬間かもしれない。加害者の子も虐待やいじめを受けていないか。そんな想像を働かせて、背景に寄り添って対応してほしい」と訴える。

〈いじめの相談窓口〉

●24時間子供SOSダイヤル

0120・0・78310/毎日、いじめなど子どもや保護者のSOS全般に応える。都道府県と政令指定市の教育委員会などの相談機関につながる

●チャイルドライン

0120・99・7777/月~土曜(一部地域は日曜日も)の午後4~9時、18歳以下が対象、通話料無料。NPO法人のチャイルドライン支援センターが運営

●子どもの人権110番

0120・007・110/平日午前8時半~午後5時15分、通話無料

●フリースクール全国ネットワーク

03・5924・0525/平日の午前9時半~午後6時

●NPO法人ユース・ガーディアン

0570・090・112/平日の午前11時~午後7時、専用フォームからメールで相談も。保護者や教員などからの相談も受け付ける。

●NPO法人ジェントルハートプロジェクトは、ホームページ(http://npo-ghp.or.jp/別ウインドウで開きます)などで、いじめ問題にかかわる様々な情報を発信。いじめ自殺の遺族や、教育評論家による講演依頼も受け付けている。

榎本瑞希、中林加南子、水沢健一、菅野雄介、木村司が担当しました。

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平成28年10月2日 朝日新聞社説

いじめ防止法 「形」だけでは機能せぬ

  「いじめ防止対策推進法」が施行されて3年たった。

 今もなお、いじめられて命を絶つ子どもが後を絶たない。

 法は施行後3年で見直しを検討する規定があり、文部科学省の有識者会議が議論している。

 子どもの命にかかわる問題だ。きちんと検討してほしい。

 防止法は、2011年に大津市の中学2年生が自殺した問題を受けてつくられた。

 特徴は、学校や自治体に対し防止や対策のための「形」をつくるよう求めたことだ。

 例えば学校がすべきこととして、「いじめ防止基本方針」を掲げ、対策組織を設けるよう義務づけた。

学校全体で方針を立て、情報を共有して取り組むのが狙いだった。

 ところが、それらが機能していない現実が明らかになった。

 防止法の施行後、自殺を受けて教育委員会などが設けた第三者委員会による報告12件のうち、少なくとも9件が、学校での情報共有が不十分と認めた。

 教員がいじめと考えなかったり、一人で抱え込んだり、学校全体で取り組む認識が浸透していなかったり。それぞれの報告が指摘する問題点だ。

 自殺の起きていない他の学校はどうか。各地の学校の基本方針は自治体の方針の焼き直しが多く、校内でどこまで議論したかわからないものが目立つ。

 いじめの相談に対応できない教員が珍しくないとの指摘がある。多忙で会議をなかなか開けないとの現場の声もある。

 基本方針や組織が働かない背後には、複雑な要因が絡み合っているに違いない。

 自校でのいじめの前例をもとに話し合う。教委や学校で研修を企画する。教員の事務仕事を減らす……。

有識者会議は、そんな改善策も議論してほしい。

 法のもう一つの特徴は、自殺など深刻な事態が起きた時、どう対処するかを定めたことだ。

 法は速やかに教委や学校の下に組織を設け、子どもへのアンケートなどの調査をするよう求めている。

保護者に情報を適切に提供することも盛り込んだ。

 だが、調査が遅れる事例が少なくない。学校が情報を伏せ、遺族と対立する構図もある。

 事実を確認しなければ問題を把握できない。なぜ我が子が亡くなったか知りたい遺族に最大限応えるのは基本的なことだ。

 教員が子どもの変化に気づく力をどうつけるか。チームワークをどう組むか。保護者にどう向き合うか。

いずれもいじめに限らない学校教育の課題だ。そこまで突っ込んで検討してもらいたい。

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朝日新聞デジタル 平成28年9月29日

いじめ前兆、進まぬ情報共有 生徒自殺9件で「不十分」

水沢健一、木村司 2016年9月29日10時24分

「いじめ防止対策推進法」が施行された2013年9月以降、いじめと自殺の関係が問われた12件のうち少なくとも9件で、第三者委員会が、同法で求められている学校での情報共有が不十分だったと認定していたことがわかった。同法は28日で施行から3年が過ぎたが、3年で法の見直しを検討する規定がある。より情報共有を進める仕組みをどう作るかが、見直し論議の焦点になりそうだ。

同法は大津市の中2男子が11年に自殺した事件を機に自民、民主などが法案を共同提出し、13年9月28日に施行された。

文部科学省への取材などによると、法施行後、いじめによる自殺と疑われたケースは3年で少なくとも20件あり、小4から高3の20人が亡くなっている。

このうち、同法に基づく弁護士らによる第三者委員会が調査を終えた12件について、報告書や答申の内容を分析したところ、一部の教員でいじめの情報を抱え込んだり、学校の対策組織が動いていなかったりして、校内でいじめの情報共有ができていなかったケースが9件あった。

同法は被害者が苦痛を感じるものを全ていじめと定義。一部の教員の判断で「いじめではない」と決めることなどがないよう、教員らが担当を超えて情報を共有する対策組織を校内に常設することを義務づける。同法の運用を定めた文科省の「いじめ防止基本方針」でも、情報共有の必要性が明記されている。

第三者委の指摘のうち、長崎市新上五島町で14年1月に自殺した中3男子は作文などでいじめを示唆していたが、同委は情報を共有すべき学校の「いじめ防止対策委員会」について「具体的な活動を行った形跡は認められなかった」と指摘。14年7月の青森県八戸市の高2女子の事例では、保護者が担任にいじめを訴えていたが、すぐに学年主任に伝えるべき情報ととらえず「情報共有不足で組織的な対応ができなかった」と認定した。昨年11月に自殺した名古屋市西区の中1男子についても「ふざけ行為が組織的に協議された形跡に乏しい」とされた。

また、9件以外でも、岩手県滝沢市の中学2年の男子生徒のケースでは、第三者委が学校の対応について「生徒間でよくある、からかい、いたずらといった認識だった」と認定。法律にあるいじめの定義への理解不足を指摘した例もあった。

現在、第三者委の調査が進む8件でも、岩手県矢巾町で昨年7月に自殺した中2男子について、生徒の訴えがあったのに情報を共有できずに自殺を防げなかったとして、学校が遺族に謝罪している。情報共有の不足を指摘される事例が今後、さらに増える可能性がある。

文科省は有識者会議「いじめ防止対策協議会」で、法施行からの学校での取り組みを検証しており、10月にも論点をまとめる。(水沢健一、木村司)

〈文部科学省の「いじめ防止対策協議会」で座長を務める森田洋司・鳴門教育大学特任教授(教育社会学)の話〉 法律が広く定義するいじめと、各教員が考えるいじめには、なおギャップがあり、問題の抱え込みもなくなっていない。情報共有が進まない背景にはこうした事情もある。いじめかどうかの判断のブレがこれまで悲劇を招いてきた。子どもの苦しみに向き合うことを後回しにせず、あらゆる情報を報告し合い、対策組織で議論していく中で教員がいじめに対応する技量も上がる。法律が定めたプロセスの徹底が不可欠だ。

〈いじめ防止対策推進法〉 大津市の中2男子が2011年に自殺した事件を機に自民、公明、民主など6党が法案を共同提出して成立し、13年9月28日に施行。インターネット上を含め、被害者が苦痛を感じるものを全ていじめと定義。複数の教職員や専門家が情報共有して対応するための「対策のための組織」を校内に常設し、自殺などの「重大事態」は第三者委員会で調べることなどを義務づけた。

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朝日新聞デジタル 平成28年9月24日5:00

柔道事故死ゼロ、止まる 部活中、昨年以降3人死亡3人重体 全柔連が注意喚起

3年間死亡事故ゼロが続いていた中学・高校の柔道の部活動で、昨年から今年にかけて3人の生徒が死亡する事故が発生した。同時期、3人の生徒が意識不明になる重大事故も起こった。事態を重く見た全日本柔道連盟は事故防止対策の徹底を呼びかけている。▼3面=事故の傾向は

全柔連への事故報告で明らかになった。昨年5月に大外刈りを受けた福岡市の中1女子が急性硬膜下血腫で死亡。同8月に横浜市の高1男子が柔道部の坂道ダッシュの練習中に倒れて熱中症で亡くなり、今年4月には仙台市の高3男子が袖釣り込み腰をかけた相手と倒れ込んで頸椎(けいつい)などを損傷して死亡した。

中学で武道が必修化された2012年度から3年間は死亡事故はゼロだった。部活動で再び死亡事故が発生した要因として、必修化を機に指導現場でもたれた緊張感が薄れてきたのではとの指摘がある。必修化された柔道の授業では重大事故は報告されていない。

名古屋大学大学院の内田良准教授(教育社会学)の調査によると、11年度までの29年間に部活動や授業など学校の柔道で118人(中学40人、高校78人)が死亡した。大多数が部活動中の事故だった。

事故には、いくつかの傾向がある。まず被害者は1年生が多い。内田准教授の調査によると、1年生が中学で53%、高校では65%。入部間もない初心者や、進学して練習レベルに慣れない段階の事故とされる。それと呼応して、全柔連が03~14年に障害補償・見舞金を給付した重大事故57件を発生月別にみると、4~9月が84%を占めている。

受傷部位は頭部が多く、かけられた技は大外刈りが多い。全柔連が03~14年に報告を受けた頭部外傷の重大事故で技が判明している29件のうち、大外刈りが15件で最も多かった。ほかに背負い投げ、大内刈りが3件ずつ、払い腰、体落としが2件ずつで続いた。

また、頭部外傷の事故の中には、技をかける側とかけられる側の体重差や技能差が大きいケースがあることもわかっている。

09年度までの12年間に日本スポーツ振興センターが見舞金を給付した中学・高校の部活動の死亡・重度障害事故(318件)では、柔道が50件で最も多く、野球35件、バスケット33件、ラグビー31件が続いた。武道の必修化に際して、柔道の安全対策は大きな課題になっていた。

重大事故の再発を受けて全柔連は7月28日、「元気に家を出た子どもたちの安全を守り、無事に家に帰すのは柔道指導者の義務」と強く注意喚起し、啓発活動を促す文書を都道府県連盟などに送っている。(編集委員・中小路徹)

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教員の叱責や体罰で自殺 「指導死」の実態 子どもの遺族が訴え

教員の叱責や体罰で自殺 「指導死」の実態 子どもの遺族が訴え

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教員から叱責されたり体罰を受けたりしたあとに自殺した子どもの遺族が、東京でシンポジウムを開き、行きすぎた指導で子どもたちが亡くなっている実態を知ってほしいと訴えました。

シンポジウムは、教員の行きすぎた指導をきっかけに子どもが自殺するケースを「指導死」と呼んで、再発防止を求めている遺族のグループが東京・港区で開いたもので、およそ70人が参加しました。

この中で、4年前に部活動の顧問からの生徒指導が原因で自殺したとされる新潟県の男子高校生の父親が講演しました。
自殺をめぐっては、県教育委員会が設けた第三者委員会がことし7月、「生徒指導が最大の要因であったことは否定できない」とする報告書をまとめていて、父親は「一方的な叱責が自殺につながったが、学校や教育委員会は真摯(しんし)に対応しなかった。現状を変えるため多くの人に『指導死』の実態を知って欲しい」と訴えました。
続いて、北海道や広島県から参加した遺族らがパネルディスカッションを行い、「教育委員会は遺族が納得できる調査を行って欲しい」と訴えました。
グループによりますと、教員の指導をきっかけにした子どもの自殺や自殺未遂は、平成に入ってから全国で60件余りに上るという調査結果もあるということで、代表の大貫隆志さんは「私たちのような思いをする人が出ないようにしてほしい」話していました。

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平成9月13日 朝日新聞

生徒「死にたい」、学校側訴え把握 青森中1自殺

  8月に青森県東北町の町立中学校1年の男子生徒(当時12)が自殺した問題で、生徒が生前、家族に同級生からの嫌がらせを訴えた上で「死にたい」と話していたのを、学校側が把握していたことが、関係者への取材でわかった。学校は嫌がらせは確認できないとして、同級生への指導はしていなかった。

 遺族らによると、男子生徒は席替えで席が近くなった同級生から嫌がらせを受けていると話し、悩んでいたという。母親は6月13日に学校を訪れ、生徒が「(自分が)死んじゃえばいい」と漏らしていることを担任に伝えた。席替えを求めたが、担任は「定期テストが終わるまではできない」とし、同30日まで席替えをしなかった。学校は6月中に生徒と同級生の双方から事情を聴いたが、具体的なトラブルは把握できないとして同級生への注意などはしなかった。町教育委員会には、席替えをしたことなどを理由に、解決済みとして報告していたという。

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NHK大分放送局

平成28年9月8日

剣道部死亡賠償訴訟で弟が証言

 7年前に県立竹田高校の男子生徒が剣道の部活動中に熱中症で倒れて亡くなった事故をめぐって、生徒の両親が剣道部の顧問ら2人に賠償金を支払わせるよう県に求めている裁判で、同じ部活動に参加していた生徒の弟が出廷し、当時の状況などを証言しました。
この事故は、平成21年8月、当時、県立竹田高校の2年生だった工藤剣太さんが剣道の
部活動中に熱中症で倒れ、その後亡くなったものです。
両親が県と顧問の教師ら2人などを訴えた裁判では教師2人が適切な措置を取らなかった
ことが認定され県などに4600万円あまりの賠償を命じる判決が確定しました。
しかし法律の規定から公務員が職務中に与えた損害は県が代わって賠償すべきだとして
2人は賠償責任を問われず、両親は、これを不服として去年12月、大分地方裁判所に訴えを起こしました。
裁判では、教師2人に個人として責任を負わせるだけの重大な過失があったかどうかが争点で
きょうの裁判には当時剣道部で同じ練習に参加していた弟の風音さんの証人尋問が行われました。
この中で風音さんは「兄は、練習中に竹刀を落としたことに気づかないなど異常な状況でしたが、
顧問の教師は『演技をするな』と言って平手打ちをするなど適切な措置をとらなかった」と証言しました。
裁判のあと母親の奈美さんは「悲しい事件をなくすためにも、悪いことをすれば個人で責任を
負わなければならないという前例を作って、全国に広げていきたいです」と話していました。
次回の裁判は来月20日の予定で、顧問の教師への証人尋問が行われる予定です。

http://www3.nhk.or.jp/lnews/oita/5075394861.html?t=1473379397512

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朝日新聞奈良版 平成28年9月6日

部活中の熱中症死亡「不適切指導」 無給水でランニング

 

 奈良県生駒市立大瀬中学校の生徒が部活動中に倒れ、熱中症が原因で亡くなった事故について、市教委は5日、「不適切な指導があった」と発表した。第三者による調査委員会で改めて事故の原因を調べ、再発防止策を検討する方針だ。

 大瀬中で8月16日朝、ハンドボール部の1年の男子生徒(12)が35分のランニング後に倒れ、病院で翌日、熱中症による腎不全で亡くなった。市教委は、大瀬中が26日に出した調査報告書で「ランニング中に水分をとらせなかった」「通常は30分間なのに、5分長く走らせた」指導について不適切と判断したという。

 顧問は3人で、中心になって指導してきた教師が練習試合に同行したため、別の教師と交代。その際、30分走る時は15分で給水という指導方法が引き継がれなかった。また、スタートが通常より5分遅く、生徒らが25分で走るのをやめたのを教師が「ごまかした」と判断。30分走った後、さらに5分走らせたという。

 市教委も不適切と認め、今月初めに遺族に謝罪したという。(筒井次郎)

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朝日新聞デジタル 2016年8月31日08時33分

いじめ訴え悲痛な叫び、スマホに遺書 青森の中2死亡

写真・図版

死亡した女子生徒がスマートフォンに残した「遺書」=遺族提供

青森市に住む中学2年の女子生徒(13)が25日に電車にはねられて死亡した事故で、女子生徒がスマートフォンに「遺書」と題して残していた文書が明らかになった。29日夜、取材に応じた父親(38)と祖父(60)は、女子生徒が周囲から「言葉の暴力」を受けていたと話し、「軽い気持ちでいじめている子たちに、こういう思いをして亡くなると伝えたい」と訴えた。

 「噂流したりそれを信じたりいじめてきたやつら、自分でわかると思います。もう、二度といじめたりしないでください」「悲しむ人も居ないかもしれない」。死亡した女子生徒がスマホに残した文書には、いじめを訴える悲痛な言葉が記されていた。祖父は「(いじめは)いったんは収まったようにみえたが……」と悔しさをにじませた。

 祖父と父親によると、昨年6月ごろ、女子生徒が他の生徒から通信アプリ「LINE」を介して中傷を受けていることがわかり、父親が担任に相談。「その年頃の女子に対して使う言葉としてはきつすぎる」文言を浴びせられていたという。中傷される理由について、女子生徒は「わからない」と話していたという。

 学校が対応し、いったん嫌がらせはなくなった。父親は相手の生徒や親に「もう関わらないようにしてください」と声をかけた。進級時のクラス替えでも配慮がされ、女子生徒は「大丈夫」と話すようになったという。

 ところが、昨秋ごろから朝起きられなくなり、「起立性低血圧」と診断された。ストレスによるものという。

 事故前日の24日、女子生徒は伝統芸能の全国大会に向けて夜9時ごろまで「津軽手踊り」の練習をしていた。三味線を担当する祖父が「頑張れよ」と声をかけると、「うん」という返事があった。翌25日朝、「具合が悪い」と訴え、両親が出勤後も1人自宅に残った。そして、この日午前10時過ぎ、JR奥羽線北常盤駅で女子生徒は電車にはねられた。

 事故後、スマホは遺品として警察から返却された。女子生徒がいつも使っていた自宅ソファには、番号を記した紙が残されていた。この番号を打ち込んでロックを解除すると、メモアプリの中に、「遺書」と記された文書が残っていた。保存された時刻は、25日午前8時34分。事故の1時間半前だった。

 父親は「物理的な暴力でなくても、言葉でも人は殺せる。優しい娘が命を賭けて訴えた」と話した。

(休波希)

     ◇

■「遺書」の抜粋

 遺書

 突然でごめんなさい。ストレスでもう生きていけそうにないです。

 ●が弱いのは自分自身でも分かってるし、●が悪い所もあったのは知ってるけど、流石にもう耐えられません。

 東京いって全国でまた皆で優勝したかったけど、行けなくてごめんなさい。だから7人で、優勝してください。

●も頑張ってね。

 学校生活も散々だし、それでストレスたまって起立性なったのに、仮病とかいう人が沢山いて、説明しても、あまり信じてくれなかった。

 1、2年の時で●の噂流したりそれを信じたりいじめてきたやつら、自分でわかると思います。もう、二度といじめたりしないでください。

(中略)

 家族へ。先立つ不幸を許してください。もう無理です。特別虐待があったわけでもない(中略)

 文章めちゃくちゃでごめんなさい。

 みんなに迷惑かけるし、悲しむ人も居ないかもしれないくらい生きる価値本当にないし、綺麗な死に方すらできないけど、楽しい時もありました。本当に13年間ありがとうございました。いつか、来世ででも●が幸せな生活をおくれる人になれるまで、さようなら。

 また、会おうね。

2016年8月25日木曜日

 ※原文ママ。●は遺族が黒塗りにした部分。

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