平成28年3月11日付朝日新聞西部本社版夕刊

LINEでいじめ、遺族が第三者委要望 熊本・高1自殺

  「LINE」の書き込みなどでいじめを受けていた熊本県立高校1年の女子生徒(当時15)が2013年に自殺した問題で、遺族は11日、学校が設置した調査委員会の委員構成や結論を不服として、「いじめ防止対策推進法」に基づく第三者委員会の設置を求める意見書を知事宛てに送った。

 遺族は意見書で、加害生徒と学校を相手取り、損害賠償を求めて近く提訴する意向も明らかにした。

 学校の調査委(委員長=園部博範崇城大准教授)は今年2月、女子生徒へのいじめがあったことを認定したうえで、「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」との報告書をまとめ、公表した。

 意見書では、学校調査委のメンバーに校長ら調査対象者が含まれていたことから「公平中立な調査が行われたと捉えることはできない」と批判。遺族が希望した友人への聞き取りが行われないなど関係者への調査も不十分で「何があったか知りたいという遺族の思いに応えていない」とした。

 さらに「調査で明らかになった各いじめ行為や学校の対応の不適切さ、寮でのいじめを誘発する環境を作っていた事実を総合評価すれば、これら複数の要因が相まって自死するに至ったと評価すべきだ」と指摘。「いじめと自死との因果関係を否定する根拠は見いだせない」とした。

 調査委は、女子生徒がいじめを含む寮生活を通じて「『うつの状態』に陥り、何らかの理由で自殺した可能性が高い」と判断。両親が寮生活をやめさせなかったことも「うつの状態」の一因とした。これに対し、女子生徒の母親(48)は「遺族からすれば傷つけられるような内容だった。第三者委には公正な調査をしてもらいたい」と話した。

 県は今後、第三者委設置について判断する見通しだ。必要と判断された場合は、いじめ防止対策推進法に基づく県条例に沿って、大学教授や弁護士ら5人で構成される調査委員会が設けられる。

(籏智広太)

 

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3月11日中国新聞社より

府中町中3自殺
生徒指導 内規沿わず
別人の詳細確認・面談なし

 

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒(15)が 昨年12月、2年前の誤った万引記録に基づく進路指導 の後に自殺した問題で、当時実際に万引した別の生徒への対応を、生徒指導上の内規通りしていなかったことが10日までに分かった。発生翌日に教諭間で口頭の報告をノートなどに書かないままパソコンで入力した
ことが誤認につながり、誤認に気付いた後も元データは修正されなかった。
(長久豪佑、根石大輔)

同中の調査報告書によると、2013年10月6日の日曜日、コンビニエンスストアから、当時1年の生徒2人が万引したとの通報が学校にあった。出勤していた教諭が店に行き、2人が事実を認めたため、保護者と一緒に謝罪した。
このため、教諭は「すでに解決している」という認識を持ち、(詳細な)事実確認▽生徒指導主事、生徒、保護者、担任、学年主任を交えた5者面談▽奉仕活動1など内規に定められている対応をしなかった。翌7日に生徒指導担当と担任教諭に口頭で報告。生徒指導担当は生徒指導ノートなどに記録しないまま事実関係
をパソコンに入力し、名前を取り違えた。生徒指導担当は、7日に発生した教師への校内暴力の対応を優先し、万引への指導を怠った。 さらに8日、週1回の生徒指導会議でパソコンのデータを基に作った資料を配布。出席した教諭から名前が誤っているとの指摘があった。しかし、生徒指導記録の整理・`保管の在り方に
関する明確な取り決めはなく、誤ったデータは修正されなかった。資料は会議のたびに記録を追加し、配布。
12月3日までの約2ヵ月間、誤った名前のまま配られ続けた。
同中では生徒指導の会議は校長や教頭、生徒指導主事、学年主任たちが参加するよう定められている。しかし、校長と当時の教頭は13年度、一度も参加しなかった。調査報告書は「管理職が関与しない状況だったため、個人の判断で対応や指導をしなければならなかった」とまとめている。

自殺生徒実名
掲載資料配布
黒塗り忘れ報道陣に

広島県府中町の府中緑ヶ丘中3年の男子生徒が昨年12月、進路指導後に自殺した問題で、同中が10日、亡くなった男子生徒の実名が載ったままの資料を報道陣に配布した。報道陣からの但旧一で気付いたという。町教委は報道各社に連絡を取り、資料を破棄するか、実名を伏せて報道するよう要請した。
資料は再発防止を目的に同日、全校生徒に配布したアンケート用紙や依頼文などA4用紙4枚。報道陣に配る際、男子生徒の実名が記された部分を黒塗りにしたが、計12力所のうち1ヵ所を塗り忘れていた。資料は報道陣の求めに応じて配布された。

 

文科省月内に中間報告
検証へ特別チーム初会合

広島県府中町の中学3年の男子生徒が自殺した問題で、文部科学省は10日、原因究明や再発防止策を考える特別チームを省内に設け、初会合を開いた。事実関係の検証や進路指導の在り方を盛り込んだ中間報告を今月中にまとめることを確認した。
馳浩文科相は、会合の冒頭で「当事者意識を持ち、事実関係を徹底的に調査する。背景を分析し、再発防止策に生かす」と強調した。
ことし半ばまでに、最終的な報告を取りまとめる方向性も示した。
チームは義家弘介副大臣をはじめとする7人で構成。学校や町教委の対応を検証し、情報管理の在り方などを議論する。義家氏は、誤った万引記録に基づく進路指導について「(学校側に)なれ合いや認識の甘さがあったのではないか」と指摘した。
また同省は現地への職員の駐在を当面続け、第三者委員会の委員の人選などを支援する。
(山本和明)

調査報告「事実か疑問」
遺族側弁護士両親意向反映されず

自殺した男子生徒の遺族の代理人を務める武井直宏弁護士は10日、学校が2月末にまとめた調査報告の内容の一部について「事実関係が本当かどうか疑念があ
る。両親の意向が反映されたものではない」との見解を示した。
広島市中区で報道陣に語つた。調査報告には、担任教諭と万引歴があると誤認された生徒が教室前の廊下で5回の「面談」をしたことや、会話の内容が記され
ている。武井弁護士は、やりとりについて「事実かどうか疑問を持っている。担任は万引という言葉自体、本当に使ったのか。仮に事実でも表情や全体の流れが
明らかでない」と指摘。「そもそも廊下でのやりとり。本当の意味での進路面談と言えるのか」と学校側の指導の在り方を批判した。
さらに「両親は万引について心当たりすらない。学校と生徒が知っていて、親が知らない万引なんてあるのか。なぜ生徒は『僕は違います』と言えなかったのか。両親はそれら一つ一つを疑問に思い、悩んでいる」と述べた。両親は生徒の死後、同級生の受験への影響を考え、親しい友人にも真実を伏せていたという。
また学校側の調査能力に限界があるとして、公正中立な第三者奢貝会で調査するよう重ねて要請。町教委や学校に対し「生徒の名誉と尊厳を回復する措置を取
ってほしい」と求めた。゛
(長久豪佑)

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平成28年3月10日河北新報

<仙台いじめ自殺>生徒間のからかい常態化

  仙台市泉区の館中1年の男子生徒=当時(12)=が2014年9月、いじめを苦に自殺した問題で、市教委第三者委員会のいじめ問題専門委員会が月内にもまとめる答申案の概要が9日、判明した。男子生徒のクラスで生徒同士のからかいが常態化し、次第に男子生徒が精神的に追い込まれる雰囲気があった可能性を指摘している。
 答申案は市教委と学校の対応の問題点も指摘。全校生徒への事実説明が自殺から1年以上が
過ぎた15年10月となったことなどを挙げ、関係機関が連携して再発防止に取り組むよう求める提言を盛り込んだ。
 第三者委は9日夜に市役所上杉分庁舎で非公開の会合を開き、答申案を協議。近く市教委に答申
する方針を確認した。会合後、委員長の本図愛実・宮城教育大教職大学院教授は「方向性としては(当初実施した調査と)大きく変わらない。本年度内に答申を出したい」と話した。
 第三者委は市教委の諮問を受け追加調査に着手し、15年11~12月に当時の在校生を対象に
アンケートを実施。ことし2月に生徒と教員計18人への聞き取りを終え、調査結果の取りまとめと答申案の検討を進めていた。
 追加調査は、市教委が男子生徒の校名を15年10月に公表し、全校生徒と保護者に初めて説明
したことを踏まえて行った。
 当初の調査はいじめに関わった生徒を対象に聞き取りし、15年6月にいじめと自殺の関連性を
認める答申を出した。

 

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平成28年3月10日 中国新聞社朝刊
自殺後 元の推薦基準に
府中町中3男子 町教委が指摘
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生徒の自殺をめぐる保護者説明会から一夜明け、登校する生徒たち(撮影・今田豊)
広島県府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒(15)が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、学校側が同11月に厳格化した私立高受験の推薦基準を、自殺後に町教委の指摘もあり元に戻していたことが9日、分かった。厳しい基準で認められていなかった19人のうち15人が一転して推薦されていた=31面に関連記事。(田中伸武)
推薦の判断基準で、それまで3年生時の非行歴を対象にしていたが、「1~3年時」に拡大。担任が1、2年生時の非行歴を把握する必要に迫られ、生徒指導で誤った記録を使う一因になったとみられ、学校側の判断が問われそうだ。
町教委や学校によると、基準の厳格化は、最終的に坂元弘校長の裁量で決定した。教諭の間で異論があってまとまらず、決定は11月にずれ込んだ。坂元校長は8日夜の記者会見で「問題行動が多発し、そうでない生徒を推薦したいとの思いがあった」と説明した。
一方、町教委の高杉良知教育長は「基準は各校の判断」としながら、同中の厳格化は「行きすぎだ」と指摘する。同町の別の中学校では1、2年時の非行歴は問わないとしている。
学校は自殺後、元に戻した基準で15人の推薦を決定。各高に校長が出向いて推薦許可を得たという。学校は、誤った万引記録を推薦の可否判断に使っていなければ亡くなった生徒は推薦されていた、としている。

府中緑ケ丘中は9日朝、臨時の全校集会を開いた。坂元校長は、当初は病死と説明していた生徒が自殺していたことや進路指導をめぐる経緯を報告し、謝罪した。
生徒約600人が出席。
終了後、坂元校長は「子どもたちに申し訳なかったという話をした。先生も学校再生のために一生懸命やるから一緒にやってもらえないか、と伝えた」と語った。
学校は全校を対象に、自殺した生徒に変わったことがなかったかアンケートする。町教委は心のケアのため、同中に置くカウンセラーを増やした。
事実関係を調査 文科相
広島県府中町の中学3年の男子生徒が進路指導後に自殺した問題を受け、馳浩文部科学相は9日の記者会見で「省として重大な事案との認識で対処する」と述べ、事実関係の調査を急ぐ考えを示した。
馳氏は、義家弘介副大臣を現地に派遣したことに触れ「事実関係を直接確認し、結果は遺族にできる限り報告する。その上で再発防止に向けて取り組む」と強調
した。
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府中町中3自殺 町教委など会見やりとり

広島県府中町の府中緑ケ丘中3年の男子生徒(15)の自殺を受け、同中と町教委が8日に開いた
記者会見の主なやりとりは次の通り。(33面関連)

-面談の場所や時間は。
昨年‥11月以降に全部で5回あった。場所は全て教室前の廊下。時間は最長で5分程度。担任教諭が男子生
徒と一対一で話した。
-詳しいやりとりは。
担任の「万引がありますね」との質問に男子生徒は「えっ」と言った。「3年でなく1年の時だよ」と聞
くと、男子生徒は間を置いて「あっ、はい」と答えた。担任は否定したとは感じなかったため、万引があった
と思った。

-デリケートな話をなぜ廊下でやるのか疑問だ。
準備室などでゆっくりと子どもの心に届くように話をするべきだった。新年度から必ずそうする。
1万引したのが別の生徒だと分かったのはなぜか。
12月8日に男子生徒の自殺があった後、指導記録を再確認した。校内の記録と町教委への報告資料に記載
された名前に矛盾があった。聞き取り調査をした結果、10日に間違いと分かった。
-なぜそんなことが起きたのか。
2013年に教諭同士が口頭で、万引した生徒の名前の引き継ぎをした。ノー卜などの記録に取らなかっ
た。電子記録に残す際に誤った名前を入力した。会議で気付いた後も元の記録を直さなかった。
-学校推薦の基準を変更したのはいつか。
非常に遅く、昨年11月です。
-なぜ急に変えたのか。
年度当初から非行歴についてどうするかと検討していたがまとまらなかった。
-ハードルを上げた意図は何か。
今の3年生は1年時に問題行動が多発していた。周囲が問題行動をしていても流されず正しい行動をとっ
た生徒を推薦したいという思いがあった。
-生徒の将来に関わることを入試前に変更したことについて今、どう思うか。
非常に甘い判断だった。-変更を生徒や保護者に知らせたか。
知らせなかった。推薦基準はこれまでも学年については書いてなかった。問題ないという意識があった。
-もっと早く公表できたのではないか。
遺族が他の3年生に不安な思いをさせてはいけないと強く思っていると感じたから(公表を控えた)。
-遺族が今日まで公表を控えてほしいと自発的に言ったのか。
はっきりとは言われていない。
-学校や町教委から公表日の具体的な提案をしたことはあるのか。
この日はどうですかということを言ったことはない。
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社説 2016・3・10
その学校の対応に疑問募る
中3男子自殺

 どれほど思い悩んだことだろう。広島県府中町の府中緑ヶ丘中の3年男子生徒が昨年12月、進路指導を受けた後、自ら命を絶った。
学校側が別の生徒の非行事実と取り違え、それを理由に高校受験で学校推薦を出せないと伝えていた。町教委も「誤った記録に基づく指導が原因にあるのは間違いない」と認めた。人を育てる学校が将来ある少年を追い詰めたことになる。
しかも担任教諭が指摘した万引歴は別人のものだった。1年生当時の生徒指導会議で別の教諭が名前を聞き違えて資料を作っていたという。出席者の誰もが誤記と気付いたのに元の電子データを修正する担当が決まっておらず、誤った資料がそのまま引き継がれた。
コメントを出した遺族が「ずさんなデータ管理、間違った進路指導がなければ、わが子が命を絶つことは決してなかった」と憤ったのは当然である。
誰かが電子データを修正してくれるだろうという他人任せな考えが、教員同士や校内になかったか。実際に万引をした生徒の記録についても学校は残していなかった。チェック体制の欠陥は明らかだ。
担任は学校側に「生徒から否定するような発言はなかったので、確認が取れたと思った」と説明しているという。だが亡くなるまで5回にわたる生徒と担任の面談はいずれも廊下で立ち話だったらしい。これでまともな進路指導といえるのか。
周りの目が気になる年代でもある。生徒の物言いや表情から真実を感じ取ることはできなかったのだろうか。今となっては残念でならない。
そもそも学校推薦において非行歴をどう取り扱うべきか。文部科学省は「推薦書類に書くべきか国として基準は示していない」と説明しており、実際は現場任せになっている。
その中で、府中緑ヶ丘中は独自の判断で踏み込んでいた。もともと対象期間は3年時に限っていたが、昨年11月に突然、在校時全体に広げたというのだ。生徒が亡くなった後、元のルールに戻したのも解せない。
その経緯とともに少年少女の立ち直りを学校がどう考えていたかも知りたい。
生徒が亡くなってから3ヵ月もたっている。公立高入試を終わるのを待っての公表となっためは確かだろう。ただ本当に遺族側の求めだったかどうかは必ずしも判然としない。
保護者全体の不安も仕方あるまい。説明会も要領を得ずに紛糾した。設置される第三者委員会での徹底した原因究明と、再発防止策が求められている。
昔に比べ、入試の選択肢は広がっているとはいえ、この年代の多くにとって高校受験は一大事であることは変わりない。人生を左右するとまで深く考える生徒も確かにいる。
だからこそ身近な教員や学校が不安な心に寄り添い、生徒の味方にならねばならない。
子どもが学校の問題で命を絶つニュースに触れるたびに胸が締め付けられる。いじめのほかにクラブ活動などでの行きすぎた指導による「指導死」も相次ぎ表面化している。子どもたちと教師がコミュニケーションを重ね、どう信頼関係を築いていくか。今回の検証から導き出される教訓は重いはずだ。
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平成28年3月10日中国新聞社
緊急連載
府中町中3自殺
<上>

面談5回廊下で立ち話

渦巻く不信

「推薦できないと言われた時、どんな気持ちだったか。(学校側の)間違いで
認められなかったと知ったら本人はどんなに残念か」 広島県府中町の府中緑ケ
丘中3年の男子生徒(15)が昨年12月に、自ら命を絶ってから3ヵ月後の8日夜。
非公開であった保護者説明会で、遺族の悲痛な叫びが響いた。
死後、学校側の明らかなミスが判明する。生徒は別人の万引歴を基に、志願高
校への校長推薦を不許可とされていたのだ。
生徒は公立高を第1志望にし、私立高を第2志望にしていた。私立高は「専願」
推薦という形式で、公立高に落ちた場合、進学すると約束することで受験が有利
になる。推薦には校長の許可を必要としていた。
なぜ生徒に万引歴があると誤認してしまったのか-。学校が説明会や記者会
見で明らかにした、担任教諭と生徒の「面談」は計5回あった。

万引思い込み

1回目の「面談」は昨年11月16日ごろ。担任が「万引がありますね」と伝える
と、生徒は「えっ」と回答。 「1年の時だよ」とさらに聞くと、間を置いて「あっ、
はい」と答えたという。担任は否定する発言がなかったことを理由に、万引があ
ったと思い込んだという。
その後4回のやりとりで担任は「専願は難しい」などと伝え、保護者と話し合
うよう求めた。5回目は12月8日朝で、その後、生徒は自殺を図った。
しかし、面談はいずれも教室前の廊下で5分程度の「立ち話」で、文書などの
記録は残っていない。保護者説明会で出席者の不満が爆発した。「人生を左右す
る高校選びと分かっているのか」
しかも学校側は当初、廊下で面談したと明かさなかった。出席者によると、遺
族側の追及を受け「不適切だった」と認めた。出席した保護者の男性(47)は「事
なかれ主義というか、真摯に話す気がないように思えた」と批判をぶちまけた。
学校側のずさんな対応は次々と明らかになる。誤認の発端は2013年10月。
生徒が万引したとの通報を受けて対応した教諭が、当時の担任に口頭で名前を
引き継ぐ際、ミスが発生。関わっていない自殺した生徒の名が生徒指導の会議
資料に記載され、訂正されないまま残っていた資料が今回の進路指導に使われ
た。
体質を疑問視
今回の問題以外についても、中学校の体質を疑問視する声はある。ある保護者
の40代男性は、喫煙を見掛けて学校へ連絡した際、「指導に行ける教員がいませ
ん」と対応されたことがあると言う。「やっぱりこういうことが起きたか」と受
け止めた。
事態を重く見た文部科学省も動いた。9日、町教委と同中を訪れて事情を聴い
た義家弘介副大臣は「衝撃を受けている」と語り、専門スタッフを置いて事実関
係や問題点の究明に当たる考えを示した。
学校が2月末まとめた調査報告には、生徒が親に漏らしたつぷやきが記されて
いた。「どうせ言っても、先生は聞いてくれない」
(長久豪佑、根石大輔)

学校側の進路指導ミスが原因の可能性が高まっている府中緑ケ丘中の生徒の自
殺。なぜ起きたのか、背景や課題を探る。

厳罰主義誤った指導
教育評論家・尾木直樹氏

私自身、中学3年生の担任や指導主任を何度も務めたが、見たことも聞いたこともない事態だ。「生
徒が万引を否定しなかった」などとする学校側の言い分に憤りを感じる。さらに1年生の時の万引が
3年生になって進路に響くのは、厳罰主義のようでおかしい。二度と同じ過ちをさせないことが重要
であり、指導として完全に間違っている。
昨年11月中旬から12月8日まで5回の進路指導を重ねたとされるが、この短期間では多すぎる。さ
は言わない。多くの人の目に触れる可能性のある場所で、一万引や学校推薦の可否について話すな
ど、生徒のプライドを踏みにじるのも甚だしい行為だ。
第2志望で推薦を受けられないとなると、第1志望の選択にも影響する。受験を控え、ただでさえ
不安な気持ちに襲われるのが中学3年生。その心に寄り添えていないとすれば、非常に問題だ。亡く
なった生徒は志望校をめぐり「親に合わせる顔がない」と追い詰められたのではないか。
第三者委員会の設置に当たっては、遺族の意向をきちんと聞き取ることが最も大事だ。保護者たち
の不安も非常に大きい。自殺公表までの3ヵ月間に、事実の隠蔽や口裏合わせはなかったか。第三者
委員会に加え、文部科学省も調査
に力を尽くしてほしい。
(松本恭治)

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 平成28年3月9日 NHK

中3男子生徒自殺 誤り判明後もデータ未修正で残る

 去年12月、広島県府中町の中学3年生の男子生徒が自殺した問題で、学校と町の教育委員会が8日夜、会見し、生徒の指導の際に使った「万引きの非行歴があった」との誤った資料について、誤りが判明したあとも学校のサーバーにデータが未修正のまま残っていたことを明らかにしました。会見で学校側は、情報管理に問題があったと謝罪しました。

去年12月8日、広島県府中町の町立中学校の3年生で15歳の男子生徒が自宅で自殺しました。

学校や町の教育委員会によりますと、自殺当日までに5回行われた進路指導の際、生徒に万引きの非行歴があったとする誤った資料に基づいて、担任の教諭が、志望校への推薦は出せないと伝えていたということで、誤った資料に基づく指導が生徒の自殺につながった原因とみられるとしています。
8日夜の記者会見で、校長は誤った資料の作成について、「データ入力の過程で生徒の名前を誤った
ことが原因と思われる。その後、ミスと判明したが学校のサーバーの電子データは未修正のまま残されてしまった」と述べたうえで、情報管理に問題があったと謝罪しました。また、学校が教育委員会に報告した別の資料では誤りが修正され、この生徒の非行歴は、誤りに気付けた可能性があったということです。
中学校は9日、全校集会を開き、校長が詳しい経緯を生徒に説明することにしています。

自殺した生徒の両親は弁護士を通じて、「ずさんなデータ管理、間違った進路指導がなければ、わが子が命を絶つということは決してなかったと親として断言できます」とするコメントを出しました。

 

記者会見の詳細

広島県府中町の中学3年生が自殺した問題を受けて、男子生徒が通っていた中学校と町の教育委員会は、8日午後10時半ごろから3時間余りにわたって記者会見を開きました。
この中で、自殺した男子生徒が通っていた中学校の校長は「生徒みずからが命を絶つようなことが
起こったことについて、生徒を預かる学校の責任者として深くおわび申し上げます」と述べ、謝罪しました。

そのうえで、公表が男子生徒の自殺から3か月後になったことについて、「亡くなった翌朝に遺族から『みずからの命を絶った事実を知らせると同級生の動揺が大きく進路にも影響があるかもしれないので進路が一段落するまで急性心不全で亡くなったことにしてほしい』と希望が寄せられた。公立高校の入学試験が終わったので公表した」と説明しました。
また、男子生徒に「万引きの非行歴があった」とする誤った資料については、「男子生徒が1年の時の
生徒指導推進委員会の資料で触法行為をした生徒として名前があった。記録上のミスで、会議の席でミスであると確認したものの、サーバー上の電子データは未修正のまま残されてしまった」と説明しました。
誤った資料が作成された理由については、「当時、生徒が万引きをしたと連絡を受けた教諭が、資料を
作成する生徒指導部の教諭に生徒の名前を口頭で連絡した。データの入力の過程で誤ったと思われる」としたうえで、「あくまで会議で使うための資料だったので、その後、ほかのことに活用するということは考えず、データも直されなかった」と述べました。
さらに校長は生徒を高校に推薦する際の基準について、それまで3年生の1年間で非行歴がある場合は
推薦の対象としないとしていたものを、去年11月に1、2年生の時も含めて非行歴がある場合には推薦の対象にしないと改めたことを明らかにしました。そのうえで、こうした考えは生徒の成長を認め、生徒の意欲を高めるという観点に欠けていたと述べました。
一方、担任の教諭と男子生徒のやり取りについては、「担任は去年11月から自殺した日の朝にかけて5回、
男子生徒と面談した。担任は1回目の11月16日の面談で触法行為があったことの確認を取ろうとしたが、具体的な事実を確認せず、生徒本人の不明確なことばで確認が取れたと思い込んでしまった。5回の面談を通しても担任は生徒が触法行為を否定したと感じなかったため、触法行為があったと確認が取れたとしていた」と説明しました。

 

保護者会開催も批判相次ぐ

中学校は8日夕方から緊急の保護者会を開き、これまでの経緯を保護者に説明しました。
緊急の保護者会は8日午後6時半から、およそ3時間半にわたって中学校の体育館で行われました。

出席した複数の保護者によりますと、中学校の校長と町の教育委員会の教育長が、これまでの経緯を説明し、この中で、学校側は自殺した男子生徒に「触法行為」があったとする誤った資料に基づいて、担任の教諭が生徒に「志望校への推薦は出せない」と伝えたことが自殺に直接結びついた可能性が高いことを認め、保護者に謝罪したということです。
一方で詳しい当時の状況や原因の分析などの詳細な説明はなかったということで、保護者からは
「説明が十分されていない」といった意見や批判が相次いだということです。
会には自殺した生徒の両親も出席しましたが、担任の教諭は出席せず、出席した保護者からは
「担任が直接説明しないのはおかしい」とか、自殺の公表が今まで遅れたことに触れ、「なぜもっと早く説明しなかったのか」といった指摘が相次いだということです。出席した保護者の1人は「説明は体裁を整えているだけで、事実を伝えることから逃げているようだった。先生が生徒の味方になれば、自殺は起きなかったはずで納得がいかない」と話していました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160309/k10010436561000.html

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平成28年3月9日朝日新聞

誤った万引き歴、2年前に気づく 学校側修正せず 広島

1豊美

記者の質問を受け、目を閉じる坂元弘・府中緑ケ丘中校長(右)=8日午後10時56分、

広島県府中町、青山芳久撮影

 

 広島県府中町の町立府中緑ケ丘中学校3年の男子生徒(当時15)が昨年12月に自殺した問題で、学校側が「生徒が万引きした」とする誤った記録にもとづき、同11月から5回、生徒への進路指導を繰り返していたことがわかった。学校側は2年前、この記録が誤りだと指摘され、会議用の紙の資料は直したものの、サーバー上の電子データを修正していなかったという。

 町教育委員会の高杉良知(りょうち)教育長、緑ケ丘中の坂元弘校長らは8日夜に会見を開き、本来なら生徒の志望する私立高校に推薦できたが、誤った記録を根拠に「推薦できないと伝え、生徒を苦しませた」と認めた。高杉教育長は「尊い命が失われるという、あってはならないことが起きた。不安や悲しみを感じた生徒や保護者、関係者に深くおわびする」と謝罪した。

 会見の説明によると、2013年10月6日、「万引きをした生徒がいる」と店から連絡を受けた学校職員は、口頭で生徒指導部の教諭に万引きをした生徒の名前を伝えた。しかし、生徒指導部の教諭は生徒指導用の資料を更新する際、フォルダーに別の生徒名を入力した。さらに同8日に教諭が配った会議資料に万引きをしていない自殺した生徒名が記載されていた。職員から誤りの指摘を受け、教諭は配布した紙の資料は直したが、フォルダーはそのままになっていた。伝達の際、教諭は

メモをとっていなかったという。

 学校側は昨年11月中旬と下旬、担任教諭が生徒に進路指導する際、誤った記録をもとに私立高校に推薦を出すことは難しいと告げた。3回目以降の面談では、学校推薦はできないと親に相談するよう求め、最後の指導となった12月8日朝には、万引きのことを親に話したのか確認したという。いずれも個別の部屋ではなく、廊下などで指導していたという。

 8日は三者面談が予定されていたが生徒は現れず、担任教諭と親だけで面談。生徒は自宅で自殺していた。自宅にメモが残されていたが、自殺の理由について具体的な記載はなかったという。翌9日、全校集会で生徒が亡くなったことを伝えた際、死因を「急性心不全」とし、自殺は伏せて説明していた。

 男子生徒は進路として第1に公立高、第2に私立高の「専願」を希望していたという。私立高の専願受験は、1校だけを受験することで一般入試よりも有利になる制度で、出願のために学校長が認める必要がある。

 昨年11月以降、担任教師は5回にわたり、教室前の廊下などで、男子生徒に対して「万引きのことがあるので専願が難しいことが色濃くなった」などと伝えていた。

 生徒の両親は「杜撰なデータ管理、間違った進路指導がなければ、我が子が命を断つということは決してなかったと親として断言できます」とのコメントを発表した。

 

■「学校の情報管理、あまりにも不適切」

 小松郁夫・流通経済大教授(学校経営学)の話 進路に関する記録は、生徒や保護者にとって極めて重要な書類だ。推薦に関する情報は特に影響が大きく、担任だけでなく、管理職や学年主任もチェックすべきものだ。今回、学校側は万引きをしたとする情報が誤りだったと指摘された後も修正しないなど、二重三重にミスを犯している。生徒の担任も、当時のことを知る先生に事情を聴けば間違いに気づけた可能性が高い。学校の情報管理はあまりに不適切で、責任は免れない。学校側と親、親と生徒のやりとりの詳細はわからないが、生徒は夢を絶たれて将来に絶望したのかもしれない。

 

■中学校で保護者説明会

 自殺した男子生徒が通っていた町立府中緑ケ丘中学校の体育館では8日夜、全校生徒の保護者を対象にした臨時の説明会が報道陣に非公開で開かれた。

 午後6時半からの説明会の会場には次々に保護者らが訪れた。町教委や出席者らによると、説明会は午後8時までの予定だったが、質問する保護者の挙手がやまず、大幅に延びた。

 会場から出てきた3年生の男子の父親(47)によると、冒頭に学校と町教委から説明があった。亡くなった生徒の母親も出席し、泣きじゃくっていたという。会場では担任教諭が出席していないことに質問が殺到した。

「体調不良」との説明に、遺族も「なぜ」と怒っていたという。「学校に説明を求めても詳しい説明はなく、ご遺族からの説明でわかることも多かった」と話した。

 息子は亡くなった男子生徒と同じ陸上部で、男子生徒は自宅に遊びに来るほど仲がよかった。「ものすごく活発で、優しい子だった。亡くなったと聞いてうちの子もショックを受けていた。もう少し教師が生徒の言葉に耳を傾けていれば、このようなことは起きなかったのではないか」と話した。

 説明会に出席した中学2年男子の40代の母親は「学校はミスの経緯を説明したが、なぜ起きたかわからず、納得できなかった。会場で何度も『わからない』という声が上がっていた」と話した。

 3年生の子どもがいる50代の男性は「学校を信頼していただけに、あってはならないことが起きて残念だ。

間違った情報に基づいて進路指導が行われた原因を解明し、対策を考えなければならない」と話した。

 府中町の高杉良知教育長はこの日午前、報道陣の取材に「これまで誤認に基づいて『推薦できない』という指導をしたことについて、教育委員会としても、学校としてもご遺族に謝罪した。保護者会でもきちっとおわびする。生徒を預かる責任者である教育長として、生徒が亡くなったということについてまず申しわけなく思う」と話した。

 

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平成28年3月9日 中国新聞社朝刊
中3男子自殺

ずさんな情報管理糾弾
保護者説明会予定大幅に超す

広島県府中町の府中緑ヶ丘中3年の男子生徒(15)が昨年19一月、進路指導後に自殺した問題で、同中は8日夕、校内で保護者説明会を開いた。生徒が過去に万引したとの誤った記録を基に、志望校への学校推薦を出せない旨を生徒に告げた経緯を説明し謝罪した。別人の万引歴と間違えたという学校側の情報管理のずさんさや学校の姿勢に保護者の批判が集中。説明会は予定の1時間半を大きく超える3時間半に及んだ。(田中伸武)
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記者会見で陳謝する坂元校長⑥と
高杉教育長(8日午後10時20分)説明会は非公開。複数の参加者によると、坂元弘校長と町教委の高杉良知教育長、教員たちが出席した。
遺族も参加し「亡くなった後で間違いでしたと言われても取り返しがつかない」などと涙ながらに訴えたという。
町教委などによると、自殺した生徒の誤った万引歴は、1年生当時の生徒指導の会議資料に記載されていた。その場で訂正されていたが、資料の元データは訂正されずに引き継がれ、今回の進路指導の参考になった。また学校推薦の選考基準に1年生当時の非行歴などを含めると決まったのは昨年11月に入ってからだったという。この点についても説明会で「遅すぎる」「保護者への説明がなかった」などの意見が出たという。
中3の長男がいる自営業男性(47)は「亡くなった生徒は先生の誤解に対し、なんらかの意思表示をしていたのではないか。教師がきちんとコミュニケーションをとっていれば自殺は防げた。中2の子どもを持つ母親は「本当のことが分からなかった。納得いかない」と憤った。
説明会後、坂元校長と高杉教育長は同町本町のくすのきプラザで記者会見し経緯を説明。生徒は公立局を第1志望にし、受験するために校長推薦が必要な私立高を第2志望にしていた。担任教諭は昨年11月中旬から同12月8日朝まで5回にわたって生徒と面談し、推薦できない旨を説明した。ただ担任、万引について生徒か明確な言葉で確認していなかったという。
12月8日の三者懇談に生徒は姿を見せず、自宅で自殺しているのを家族が見つけた。
中学2年の次男を教員からの指導後に自殺で失った「指導死」親の会代表世話人の大貫隆志さん(59)=東京都中野区=は「このような『取り違え』による自殺は特異なケースで驚いている。万引の記録が修正されなかったことは、個人的なミスでは済まされない。第三者性を担保した調査で背景を明らかにし、実効性のある再発防止策を打ち出すべきだ」と指摘している。
■非行歴で推薦判断批判
府中緑ヶ丘中の3年男子生徒が自殺した問題は、高校受験の学校推薦をめぐる非行歴の取り扱いのあいまいさが背景にあるとみられる。少年の更生などの観点を踏まえた統一的な基準はなく、各校の判断に委ねられているのが実情。しかし、非行歴を理由に推薦を認めなかった同中の対応には、教育関係者らから批判の声が上かっている。
広島県教委などによると、県内の公立高の推薦入試(選抜I)の場合、願書とともに中学校長名の推薦書と調査書を志望校に提出する。調査書には成績などを記し、「備考」欄に各種大会やコンクールなどの実績のほか、「配慮すべき事項」として非行歴など書くことがある。私立高の場合は各校の様式に従う。
ただ、非行歴を書くかうか、書く場合はいつまでさかのぼるかなど、統一的な基準はない。文部科学は「推薦に非行歴を書くべきかは国として基準は示ていない」と説明。県教委も「県教委としての決まりはなく、どう記載するかは各中学校の判断」とする。私立高を所管する県学事課も「統一基準はない」としている。
生徒は1年生当時の非行歴を理由に志望する私立高への推薦を認められないと学校側から伝えられた後、命を絶った。その後、非行歴は別の生徒のものと判明した。
ある元中学校長(61)は「2年も前の非行歴を推薦の可否を決める基準にすことはない。もし基準にするなら、あらかじめ十分生徒に言い聞かせておく必要がある」と指摘。県内私立高副校長は「非行歴だけを理由に合否を決めることはない。失敗があれば教育指導し、その後の姿を見るのが学校教育。過去に過ちがあれば進学できないのか、ということになる」と話す。
広島大大学院社会科学研究科の吉中信人教授(少年法)は「進学後の適切な指導につなげるため、中学時代の課題を伝える意味はあるが、不利に扱うべきではない。過去の軽微な非行を理由に推薦を断るのは教育の放棄に等しい」と強調。「少年は変化する。失敗を経た成長も含む現在の姿を評価するべきで、行政はそうした考え方を現場に伝えていく必要があるのではないか」としている。(明知隼二)
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平成28年3月9日毎日新聞大阪本社
広島中3自殺
ぬれぎぬで推薦拒絶
学校側別人の万引き記録
広島県府中町で昨年12月、町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒(当時15歳)が自殺した問題で、別生徒の万引き行為を学校が男子生徒 の行為と誤って資料に記録し、この資料に基づく非行行為を理由に 志望校への推薦は認められないと男子生徒に伝えていたことが8 日、分かった。町教育委員会によると、誤った記録は生徒が1年生 だった時、学校が内部の会議用資料として作成し、その後誤りが判明したが、原本記録は訂正されないまま進路指導に使われたという。【石川将来、植田憲尚】
府中1府中2
町教委によると、男子生徒は第1志望の公立高校とともに、第2一志望で校長推薦が必要な専願による私立高校の受験を希望していた。学校は昨年11月中旬の進路指導で、1年の時に万引きしたと記載された誤った記録に基づき、男子生徒に「推薦できない」と説明。その後も、同12月8日まで計4回の進路指導が行われたが、いずれも学校側は同様の説明をしたという。
記録は生徒指導の会議用に教員らが作成し、会議内で誤記載に気付き訂正したという。だが原本となる資料は訂正されていなかつた。
同8日には三者面談による進路指導が予定されていたが男子生徒は現れず、父親が自宅で倒れているのを発見し、その後死亡が確認された。自宅には自殺をほのめかす書き置きがあったという。学校は翌9日に開いた全校集会で「(生徒は)急性心不全で急死した」と説明。遺族には、誤った記録に基づく進路指導の経過を伝えた。
町教委は「学校側のミスがなければ校長推薦は出せていた。自殺との関連について詳しく調査したい」として、第三者委員会を設置する方針を表明した。
町教委は公立高一般入試が終了した8日夜に保護者会を開き、生徒の自殺や学校のミスの経緯などについて説明した。男子生徒の同級生の保護者という男性(47)は「亡くなったことは知っていたが、急死だと聞かされていた。どうして今になって発表するのか」と憤った。
広島県府中町で中学3年の男子生徒が自殺した問題でヽ専門家らは学校の誤った指導が生徒を死に追いやるケースが相次いでいると指摘する。
「指導死」親の会(東京都の代表世話人で、教師の誤った指導で次男が自殺した大貫隆志さん(59)によると、「指導死」とは、教員らによる不適切な言動や暴力行為といったパワーハラスメントで子どもが死に追い詰められるどとを指す。だが、生徒指導で子どもが自殺に至るほど心に深い傷を負うことはあまり知られてぃないという。
教育評論家の武田さち子さんがまとめた統計によると、教員の指導が原因で児童生徒が自殺したとみられる事案(未遂も含む)は1989年以降61件で、うち間違った事実に基づいて生徒を責めるなどした「えん罪型」も10件ある。
札幌市内の道立高校では昨年10月、3年生の男子生徒が同級生の携帯電話を盗んだとの疑いをかけられ、教諭に事情を聴かれるうちに失踪して遺体で見つかった。生徒は「盗んでいない」と同級生にメールをしていたという。
2009年には、福岡市内の中学1年の男子生徒が、同級生の上履きを隠したとして担任から1時間以上問い詰められるなどし、悩んで自殺した。母親には「否定したのに何を言っても信じてもらえない」と話していたという。
大貫さんは「言い分を聞いてもらえず、人格を否定されたり、長時間責められたりするケースが多い。今回は『えん罪型』にあてはまる」といい、府中町教委が設置する第三者委員会「情報管理のあり方だけでなく、進路指導で具体的にどのような対応を取ったか明らかにしてほしい」と求めている【高橋咲子】
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平成28年3月8日 中国新聞朝刊
中3進路指導後に自殺 学校側別人の非行誤認
広島県安芸郡昨年12月

広島県安芸郡内の町立中学校の3年男子生徒(15)が昨年12月、過去の非行歴を理由に志望する私立高への推薦を認められないと学校側から伝えられた後、自殺していたことが7日、分かった。しかし自殺後、その非行歴は別の生徒のものだったことが判明。誤った情報を基にした学校の進路指導が自殺につなかった可能性がある。町教委と同中は遺族に謝罪した。8日、保護者説明会を開く。
関係者によると、生徒は昨年12月8日に進路を話し合う保護者、担任教諭との三者懇談に出席せず、同日夕、自宅で自殺していたのを家族が見つけた。遺書めいたメモがあったが、理由には触れていなかったという。
学校側は、三者懇談前の本人との進路指導で、1年生の時に万引した記録があるため志望校に推薦できない旨を生徒に告げた。だが生徒の自殺後に聞き取り調査した結果、当時万引したのは別人だったことが判明した。いじめなどはなかったという。
記録は、1年生当時の生徒指導の会議資料に記されていた。その場でミスが分かり、訂正された。しかし、資料の元データは訂正されず、そのまま引き継がれていたとみられる。
町教委は「個人情報の管理がずさんだった」としている。学校推薦を受けられないことが自殺の原因になつたかどうかについては「可能性はあるが断定できない」とする。第三者委員会を設けて詳細な調査を進める。
町教委によると、高校受験の推薦に際し、非行歴を判断基準に加えるかどうかは、各中学校長の判断とし安芸郡12月ている。ただ県教委幹部は「1年生の時の軽微な非行歴までさかのぼる必要はないのではないか」と指摘している。
遺族の代理人弁護士は「遺族の悲しみは深い。公正な第三者機関を通じた調査を求めたい」と話している。

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