平成28年3月16中国新聞

第三者委の選任停滞
府中町中3自殺依頼文送らず

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、町教委が設ける第三者委員会の委員の選任手続きが滞っていたことが15日、分かった。委員―人を出してもらうよう想定していた広島弁護士会に町教委が依頼文書を送っていなかったため。
町教委は本年度内をめどに、早期に第三者委を設置する意向を示してきた。ただ「依頼した団体から推薦された委員がまだそろっていない」とし、設置時期は不明と説明していた。
町教委などによると、問題を正式公表する前の3、4日、弁護士会など4団体に電話で委員の推薦を依頼。8日に再び電話した際、弁護士会事務局から「文書で依頼を」と言われたが、送っていなかった。
文部科学省から問い合わせを受け、町教委が委員の選定状況を担当者に確認した14日、書類を送付していないことが判明。すぐに郵送し、弁護士会に届いたのは15日午前。それまで弁護士会役員は町教委の依頼を把握していなかった。
町教委は「担当者が、依頼は電話で受諾されたと思い込み、文書は後日送ればいいと思っていた。ミスで手続きが遅れ、申し訳ない」と説明。弁護士会は「速やかに人選し回答する」としている。
(府中町進路指導問題取材班)

人選を支援へ 文科省チ-ム
広島県府中町の中学3年の男子生徒が進路指導後に自殺した問題で、文部科学省は15日、原因究明や再発防止策を考える特別チームの第2回会合を開いた。町教委が設置する第三者委員会の早期発足に向け、人選面など必要な支援を進める方針を確認した。
義家弘介副大臣たちメンバー7人が出席。第三者委員会が問題を検証するには関係者の協力が不可欠として、遺族や保護者の意向も踏まえて委員の人選を助言する方向性を示した。18日に予定する2回目の保護者説明会や25日の終業式に向けては、学校や町教委が丁寧な対応を進めるためのフォローの仕方などを議論した。
非公開の会合後、義家氏は「第三者安員会は、速やかに設置する方向で協力しようと議論したが、遺族の意向と全く違うものであってはいけない」と強調。次回の保護責罰明会については「((覆の進路指導などの)しっかりした方針を出さなければ、保護者が納得しない」と指摘した。(府中町進路指導問題取材班)

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平成28年3月15日秋田魁新報

深刻ないじめか、第三者委が初調査 県北の高校、重大事態と判断

  秋田県北部の高校で深刻ないじめがあったのではないかとして、県教育委員会が弁護士らでつくる第三者委員会「県いじめ問題調査委員会」に調査を依頼していることが14日、分かった。いじめ防止対策推進法の重大事態に該当すると判断した。2013年の同法施行以来、重大事態の判断と、調査委による調査は県内で初めて。調査委は早ければ月内にも報告書をまとめる。
 いじめを受けたと訴えている女子生徒と保護者によると、女子生徒は14年夏ごろから、所属する
運動部の部員ににらまれたり暴言を吐かれたりするようになった。学校に相談したが改善されず、部員以外の生徒からも無視されるなどしたという。女子生徒は昨年4月に医療機関で「うつ状態」と診断され部活動に参加していない。今年1月からは学校を休んでいる。
 高校によると、昨年3月、女子生徒と保護者から「いじめられている」と訴えがあった。校内で
聞き取り調査などを行ったが、校長は取材に「いじめの事実を確認できなかった。(生徒たちの)意見が食い違い対応に苦慮している」と話している。
 同じころ、県教委にも「いじめがある」との情報提供があり、高校に事実確認を指示。高校からは
「生徒同士の意見の食い違い」との報告を受けた。ところが、9月に県教委に保護者から直接相談があり、その内容から重大事態と判断した。
 県教委は、初期対応が不十分だったとして校長を厳重に注意する一方、外部専門家の視点が
必要として、昨年12月に調査委に検証を依頼した。

 

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平成28年3月15日中国新聞

重なったずさん対応
府中町の中3自殺問題発覚1週間

資料の訂正報告されず

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題は14日、学校側の公表から1週間がたった。学校のミスや配慮を欠いた指導、組織運営のずさんさが次々と判明。それらが複合的に重なり自殺につながったとの見方が強まっている。取材や学校の調査報告書で明らかになった問題点をまとめた=30面関連。                (府中町進路指導問題取材班)

 

誤記録

2013年10月6日の日曜日、学校に生徒2人が万引したと連絡があった。出勤していた教諭が対応し翌7日、生徒指導担当たちに口頭で引き継いだ。生徒指導担当はノートに残しておらず、生徒指導用の資料作成時、自殺した生徒の名を誤ってパソコン入力。この生徒は、万引現場に行ってさえいない。
7日に別の生徒が教諭に暴力を振るう事案が発生。対応に追われた生徒指導担当は万引した2人に対し、事実確認や反省文を書かせるなど内規に基づく対応を怠っていた。
8日、生徒指導会議で白殺した生徒の名が記された資料が配られ、出席者が誤りに気付いた。しかし元データは訂正されず、サーバーに残った。誤った資料はその後も6回、会議で配られたが誰も指摘しなかった。校長は内規に反し会議に出席せず、その後、資料に訂正があったとの報告も受けていなかった。

 

生徒・保護者に変更知らせず

学校は15年5月ごろ、私立高の『専願』推薦の判断基準にする非行歴を「3年時のみ」から「1~3年時」に広げる検討を始めた。背景には学校の「荒れ」があ
ったとする。
変更をめぐっては3年生の担当教諭だけで協議。3人が拡大に賛成、男子生徒の担任を含む別の3人が反対した。最終的に11月、「経験豊富な職員が強引に押し
切る形」(町教委幹部)で拡大に傾き、校長が追認した。
学校側は基準を変更したことを、生徒や保護者に知らせなかった。変更の議論に時間がかかったのに加え、教諭間の引き継ぎ不足が重なり、推薦校を決定する面談などの期間は例年より短い約1ヵ月間になてた。3年生の担任は、生徒の過去の非行歴を早急に確認する必要に迫られ、それまで進路指導一で使っていなかった生徒指導会議の資料を参考にした。

「面談」の大半廊下で立ち話

「万引がありますね」。自殺した生徒の担任は昨年11月、2年前の誤ったデータを参考に生徒との「面談」でそう切り出した。生徒は 「えっ」。担任が「1年の時だよ」と聞くと、間を置いて「あっ、はい」と答えたという。これらの会話で担任は万引があったと思い込んだ。
計5回の面談の大半は廊下での立ち話。担任は、いつ、どこで万引したのか詳しく聞いていない。「『専願』は受けられない」とも伝えた。内容は学年主任に報告したが、主任は校長に報告していなかった。
最後の面談は12月8日朝。午後に三者懇談を控え、担任は「保護者と一緒に考えましょう」と伝えた。しかし懇談に生徒は現れず自宅で自殺。学校は2日後の10日、万引が誤記録であることが明確になったとしている。

≪明らかになった学校側の主なミスや問題点≫

◆誤記録
・2013年10月、万引が発生。口頭で報告を受けた生徒指導担当がパソコンで資料作成時、誤って自殺した生徒の名を入力
・万引があった日の2日後の生徒指導会議で資料のミスが指摘されたが、元データは訂正されなかった
・一連の会議には内規に反し、校長、教頭は出席しなかった
・実際に万引をした生徒への詳しい事実確認を怠った
◆推薦基準
・15年11月、推薦の判断基準とする非行歴を「3年時のみ」から「1~3年時」に拡大。
賛否が分かれたが「経験豊富な職員が強引に押し切った」(町教委)
・推薦基準の変更を生徒、保護者に周知しなかった
・基準変更の検討に時間がかかり、受験校や推薦の可否を判断する面談期間を約1ヵ月間と例年より短縮
◆進路指導
・担任は誤ったデータを参考に亡くなった生徒と15年11~12月、5回にわたって「面談」。
いずれも廊下で、立ち話だったケースも
・担任は万引の有無を尋ね、明確な否定の言葉がなかったため確認が取れたと思い込む
・担任は「面談」内容を学年主任に報告したが、主任は校長に報告していなかった

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府中町中3自殺

第三者委 人選決まらず

調査前に薄れる記憶

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、2年前の誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、原因究明の作業が進んでいない。町教委は外部有識者による第三者委員会の設置を急ぐが、メンバーは14日時点で固まっていない。新たな証言を得るための全校アンケート
も、記憶が薄れる中での困難な調査になりそうだ=23・29面に関連記事。
(府中町進路指導問題取材班)
町教委は、8日に正式公表する前に第三者委を設けることを決め、遺族にもその意向を伝えていた。設置要綱は2月9日付で定めている。公表前の3月上旬、県臨床心理士会▽広島弁護士会▽日本生徒指導学会▽広島大-の4組織に委員の推薦を依頼。今も返答待ちの組織があり、「年度内をめどに早急に立ち上げた
い」としている。
設置時期について町教委は「確かに遅い」と認める。遺族の意向や受験生への影響を踏まえ、公立高の一般入試(選抜H)の終了まで正式公表を控えたことが要因とする。
文部科学省は、児童、生徒が主にいじめで自殺した際の対応指針で「発生から日にちがたつほど、子どもたちが何を見聞きしたかあいまいになる」と、早期調査の重要性を指摘している。町教委は今回、この指針を参考にしている。
ただ全校生徒へのアンケートの配布は公表後の10日にずれ込んだ。同級生の3年生は、卒業式前日の翌11日が一応の提出期限となった。アンケートは現在、全校生徒の約8割から回収。今後、学校から提出を受け町教委が分析に当たる。
一方、町教委は14日、2回目の保護者説明会を18日に開くことを明らかにした。8日夜の説明会では学校の対応に批判が集中していた。

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私立校「専願」とは
進学約束選考で優遇

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広島県府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒が進路指導後に自殺した問題は、背景に「専願」と呼ばれる私立高の受験方式があった。受験生にも私立高にも利点がある仕組みとして続いているとみられる。ただ、文部科学省は「広島に特徴的な制度」とする。今回の問題を受け、在り方を議論する必要があるとの指摘も出ている。
専願は、校長推薦を受けて、第1志望の公立高以外の受験校を私立高1校に絞る方式。私立、公立ともに学力試験を受け、公立高が不合格の場合、受験した私立局に進学すると約束する。私立高は一般入試の受験昔より選考で優遇する。
私立高を所管する県学事課は、導入された時期や採用校数を把握していない。
県内の複数の私立高教諭によると、私立高と中学の進路担当者が事前に会議を重ね、高校側が求める成績などの基準と中学側の校長推薦などを踏まえ、専願する生徒を決定する。「専願の受験者はよほどの低得点や試験会場でトラブルがない限り合格はほぼ確実」という。
専願で受験した中学3年の一人は「公立高の試験に安心して臨めた」と振り返る。私立高側も生徒保護のメリットがある。私立高教諭の一人は「中学の教諭が、専願で推薦できない生徒の公立高合格をより確かにするため、公立の志望ランクを下げるよう提案することもある」と明かす。
自ら命を絶った府中緑ケ丘中の男子生徒は、誤った万引歴を理由に専願の推薦はできないと告げられていた。文科省で10日にあった調査特別チームの初会合後、義家弘介副大臣は「広島の入試制度は独自のもの。在り方を議論していく必要がある」と述べている。

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高校推薦基準把握せず
広島県14市町教委各校長に委ねる
府中町中3自殺

 

広島県内の23市町のうち14市町の各教委が、所管する中学校の高校受験の推薦基準を把握していなかったことが分かった。校長の裁量に委ねているケースが多く、学校によって異なるのが実情だ。府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒=当時(15)=が昨年12月に自殺した問題では、学校が2年前の誤った万引記録に基づき、推薦できないと進路指導していた。この問題を受け、14市町のうち8市町教委が既に学校から基準を聞き取ったり、ふフ後確認したりする予定でいる=30面関連。
(府中町進路指導問題取材班)
推薦基準について、府中緑ヶ丘中では従来、3年時の非行歴を判断材料の一つとしていた。しかし町教委や保護者に伝えないまま、昨年11月に1、2年時の非行歴も考慮することに変更した。命を絶った生徒の誤った万引歴は1年時のものだった。
中国新聞の取材に「各校の推薦基準を把握していなかった」と答えたのは府中町のほか、広島、呉、三原、尾道、福山、三次、庄原、廿日市、安芸高田、江田島
の10市教委と、安芸太田、北広島、神石高原の3町教委。学校の規模や状況が異なるため、「推薦するかどうかは、各校が判断するのが適当だから」とする意見
が多い。
府中町の問題発覚後、所管する中学校の推薦基準を確認したのは同町教委のほか、呉、三原、庄原、安芸高田の4市教委。呉市教委は「大半の学校が非行歴を
基準として扱い、内規に明文化している」と明かした上で、実際の運用は非行歴を単純に当てはめず、現在の子どもの状況を見て判断することにしているため問
題はないとする。
尾道、廿日市、江田島の3市教委は今後、各校への聞き取りなどを通じ、基準を把握する考え。今のところ、基準や運用面の改善を求める市町教委はない。
一方、広島市教委は「推薦基準は、1年生時から生徒や保護者に伝えるよう校長会などで指示してきた」と説明。安芸太田町教委は「学校ごとに単純な基準は
なく、それぞれ進路判定するようにしている」とする。両市町のほか、福山、三次両市と神石高原、北広島両町は基準を確認する予定はないとしている。
県教委の下崎邦明教育長は14日の記者会見で、1年時の非行歴による推薦の可否判断について「普通はあり得ない。聞いたことがない」と述べる一方、県内の
他の中学校の基準については「現時点で確認するつもりはない」とした。

組織的な学校運営できず/報告書不十分

県教育長会見

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府中緑ヶ丘中3年の男子生徒の自殺問題について見解を述べる下崎教育長

府中緑ケ丘中3年の男子生徒が誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、広島県教委の下崎邦明教育長は14日の記者会見で、同校は組織的に運営できておらず、調査報告書も「問題の背景の分析が十分でない」との認識を示した。県教委は同校の報告書作成を指導しており、不十分な内容のまま同校が遺族に渡したことについて「結果的に指導が行き届いていなかった」と述べた。
下崎教育長は、高校受験の推薦基準に一貫性がないことなどを挙げ、同校の運営について「管理職が関わつて方向性を出していなか った」と分析。「組織の体晏なしておらず、パラパラだ」とした。調査報告書については「事実関係を並べるだけでは再発防止につながらない」との見解を示した。
下崎教育長によると、生徒が亡くなった直後から職員を同校に派遣し、調査報告について指導したり不十しかし、同校は2月末に報告書をまとめ、遺族に渡したという。
下崎教育長は冒頭に「子どもが自ら命を絶つことはあってはならない。大変厳しく受け止めている」と述べた。今後、組織的な学校運営の重要性について校長会や管理職の研修で伝えるという。
(根石大輔)

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平成28年3月14日中国新聞社

府中町中3自殺
説明会時期見解に相違
両親調査報告に不信も

広島県府中町立府中緑ヶ丘中3年の男子生徒=当時(15)=が昨年12月、2年前の誤った万引記録に基づく進路指導の後に自殺した問題で、保護者説明会が3ヵ
月後の3月8日に開かれた経緯などをめぐり、学校側の説明と、生徒の両親や代理人弁護士の見解が食い違っている。両親は、学校側による調査報告への不信も
抱いており、第三者委員会での公正な調査を望んでいる。
保護者説明会は、公立高の一般入試(選抜H)が終了した8日の夕方に町教委と学校が開いた。学校側は開催の時期について「同級生の入試が終わるまでは公
表しないでほしいという両親の強い意向があったため」と説明した。
しかし、両親が同11日に中国新聞に寄せた手記や代理人弁護士によると、両親は当初、「入試を控えた同級生を動揺させたくない」との思いから、自殺だった
ことなどは伏せた上で、進路指導の問題を保護者に説明してほしいと願った。しかし、町教委から「生徒の耳に入るリスクが高い」と言われ、入試後に説明会を
開くことをいったん了承したという。
ただ、四十九日の法要後。「やはり、説明会は早くいてほしい」と町教委側に複数回伝えた。学校側はそのたびに「別の方法を提案したり渋ったり」し、「説
明会を行うことすらよろしくない」と受け取れる回答をしたという。
また、調査報告書の作成過程についても認識の差がある。学校側は、作成途中の報告書の内容を両親に旦3回読み上げたとし、意見を踏まえて完成させたとの
見解を示す。
一方、両親は手記に「時間をかけて読みたい要望は聞き入れて貰えず」 「都合のよい言葉を並べて教育委員会が持ち帰ることを3度も繰り返し、やっと持って
きた銀暑は学校が言う事実と称するもののみ」などと記す。弁護士は、学校側が報告書を読み上げたことについて「両親の了解を得たとの担保を取りたかった
のでは」としている。
第三者委は、弁護士や学校経営の専門家たちで構成される見通し。町教委が人選を急いでいる。(府中町進路指導問題取材班)

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平成28年3月13日中国新聞社より

自殺生徒に卒業証書
校長式辞「痛恨の極み」
府中町の中学

昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導の後に自殺した中学3年男子生徒=当時(15)=が通っていた広島県府中町立府中緑ヶ丘中で12日、卒業式が開かれ
た。生徒の遺族も出席した。学校側が用意した卒業証書を受け取った。坂元弘校長は式辞で「(生徒が)帰らぬ人となってしまったことは痛恨の極み。彼は今もここに
いて一緒に卒業していくと考える」と述べた。  (府中町進路指導問題取材班)

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生徒の番クラス全員「はい」

卒業式に出席するため、府中緑ヶ丘中に向かう保護者たち 式には卒業生約220人と在校生、保護者たち計約750人が出席。学校側に
よると、同級生が遺影を持って入場し、全員が黙とう。生徒が座るはずだった席には遺影と制服が置かれた。
担任教諭は体調不良で欠席した。
卒業生は一人一人、名前を読み上げられ、生徒の順番では同じクラス全員が声をそろえ「はい」と返事した。クラスメートが無料通信アプリLINE(ライン)で意見を出し合い、全員での返事を決めたという。
両親は式後のホームルームに出席し父親が副担任から卒業証書を受け取った。
式後に記者会見した坂元校長は声を詰まらせて 「誠に申し訳ない。学校がきちんとしておけばこうならなかった」と謝罪。「原因をつくったのは学校。子どもたちが誇れる学校にする義務が職員にある」と語つた。
学校側が自殺を公表して以降、町教委や学校に対て抗議や批判の電話が損いだ。「式を妨害するとの趣旨の電話もあったため警祭官たち約40人が学校周辺を警戒した。

一緒に卒業したかった/彼の分まで頑張る

「一緒に卒業したかった」-。笑顔で巣立つはずだった卒業生たちは悲しみに包まれた。中3の男子生徒が自殺した府中緑ケ丘中であった12日の卒業式。学校への不信感を漏らす同級生もいた。
両親は級友たちに「息子を覚えていてね」と伝え、涙を流したという。
卒業式後、亡くなった生徒のクラスのホームルーム。級友や保護者によると、生徒の机は、級友がペンで直接書いたメッセージで埋まった。黒板の前ではクラス写真を撮影。その中心には笑顔の遺影があった。級友たちは両親に千羽鶴や寄せ書きを渡した。
同じクラスの男子生徒は「これまでありがとう。彼の思いを受け継ぎ、頑張るという気持ちで千羽鶴を折った。変わった様子はなかった。いなくてすごく寂しい」と語った。
別の男子生徒は「頭が良く、学で分からない部分を教えてもらったことがある。陸上部で部活も熱心だった」としのんだ。
別のクラスの3年男子生徒は「本当に彼は(担任との会話で)万引を否定しなかったのか。もっとやりとりがあったのではないか」と学校の調査への不信感を口にした。3年女子生徒は「ちゃんと確認してほしかったけど、先生たちも後悔していると思う」と複雑な表情で語った。

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平成28年3月13日 中国新聞社朝刊より

緊急連載
府中町中3自殺

解明と心のケア両輪に

再生への道
<下>
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文科省の特別チーム初会合で、徹底的な調査
と再発防止策の検討を求める馳氏(中)(10日)
 広島県府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒=当時(15)=の自殺を受け10日、文部科学省であった同省特別チームの初会合。「本来は希望に満ちたものである進路指導を受けて生徒が自殺するという最悪の事態に陥った」。馳浩文科相は厳しい口調で語り、原因究明と再発防止策の検討を指示した。
生徒は担任から、1年生の時に万引したという誤った記録に基づく進路指導を受け、志望高への推薦を得られないと告げられた後、死を選んだ。学校がまとめた調査報告書は、指導用資料のずさんなデータ管理や配慮を欠いた指導などが重なり「学校としての責任があった」と結論付けた。
指導死-。教員の指導をきっかけに自殺に至るケースをこう呼び、問題提起する動きが広がっている。
「指導死」親の会代表世話人の大貫隆志さん(59)=恵只都中野区=は2000年に中学2年の次男を失った。「周りが取るに足らないと思うことでも、子どもにとっては重大なことがある。個人の性格に原因を求めるのは間違いだ」

乏しい手掛かり

「なぜこのようなことが起き、何が原因なのか」。11日、亡くなった生徒の両親は、中国新聞に寄せた手記でそう問うた。そして、当事者である学校がまとめた調査報告書に強い疑念を示した。
府中町教委は近く、原因究明のため外部の有識者でっくる第三者委員会を設ける。しかし、どこまで正確に事実関係に迫れるかは未知数だ。
焦点になる面談時のやりとりは、学校調査では担任からの聞き取りで、メモなどの記録はない。誤った万引記録の記された資料が使われた生徒指導推進委員会には会議録もない。
このため学校は全校生徒約630人にアンケートを実施。自殺した生徒に何らかの変わった点がなかったか調べる。

3ヵ月経て調査

ただ受験生への影響を考え、公立高入試の終了を待 つて事態を正式に公表した経緯もあり、アンケート配布は10日付。自殺から約3ヵ月。「時間の壁」が立ちはだかる。12日の卒業式後、坂元弘校長は3年生の約8割から回答があったと公表。卒業後も受け付けるという。
今後の調査過程は、子どもたちに「死」を突き付けもする。町教委は学校にスクールカウンセラーを常駐させた。だが特に心のケアが必要な卒業生たちへの対応は明確に決まっていない。事態におののき、後手に回る学校側の対応のまずさばかりが目立つ。
真相究明と心のケア。学校側はこの二つの重い責務を負う。再発を防ぐ手だての検討はこれからだ。国を含め、全ての学校関係者が当事者意識を持たねばならない。(明知隼二、山本和明)

組織的な再発防止策を
学校事件・事故被害者全国弁護団
定者吉人副代表(広島弁護士会)

 担任教諭だけを責めても、根本的な問題は解決しない。学校が、組織として過ちを起こさないシステムをつくり、共有していくことが求められる。
そのため、原因を究明し、再発防止策を探る第三者委員会が近く設置される客観性を担保するために、学校や町教委は運営に直接関与しない立場を貫く必要がある。一方で、学校は亡くなった生徒をよく知る同級生たちへのアンケートの結果を提供するなど、全面的に協力するべきだ。
責任の所在を明らかにするには、どこに問題があったのか、調査ではっきりさせないといけない。遺族の目線に立って真実に迫るため、遺族や代理人の弁護士が調査委員会に参加することも検討してほしい。
成長することは子どもの人権だ。中学校が過去の非行歴を高校に推薦するかどうかの判断材料とするのは、その成長を認めない考え方だ。教育の意義を自ら否定している。
学校で、しかも教員による誤った指導の結果、。生徒は自殺した。子どもは簡単に死を選ばない。何度も迷い、追い込まれていったのだろう。学校側は子どもの言い分をしっかり聞けていたのだろうか。教諭は、ふさわしい場所で時間をかけて面談していたのか。大きな疑問が残る。第三者委で解明してほしい。(根石大輔)
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3月12日付朝日新聞西部本社版

熊本の高1自殺、遺族提訴へ「調査委の結論に傷ついた」

 2013年に「LINE(ライン)」の書き込みなどでいじめを受けていた熊本県立高校1年の女子生徒(当時15)が自殺した問題で、遺族は11日、学校や加害生徒に損害賠償を求め、近く提訴する意向を明らかにした。学校の調査委員会がいじめと自殺の因果関係を認めない判断をしたことに反発。再調査を求める知事宛ての意見書を同日送った。

 学校の調査委は2月、女子生徒へのいじめを認定したうえで「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」との報告書をまとめ、公表した。意見書では、学校の調査委に校長ら調査の対象者が含まれていたことなどから公平性などを問題視し、第三者委員会による再調査を求めた。

 学校の調査委は、女子生徒がいじめを含む寮生活を通じ、「『うつの状態』に陥り、何らかの理由で自殺した可能性が高い」と判断。両親が寮生活をやめさせなかったことも「うつの状態」の一因とした。

 調査委の判断について意見書は「明らかになったいじめ行為や学校の不適切な対応などの事実を総合評価すれば、複数の要因が相まって自死するに至ったと評価すべきだ」と指摘。意見書で、学校や設置者の県、加害生徒に損害賠償を求めて提訴する意向を示した。

 女子生徒の母親は「学校の調査委の結論は遺族を傷つけるような内容だった。第三者委には公正な調査をしてほしい」と話した。(籏智広太)

 

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「息子の死納得できず」
「間違えたで許されぬ」

府中町中3自殺両親が手記

広島県府中町立府中緑ヶ丘中3年の男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導の後に自殺した問題で、生徒の両親が11日、中国新聞
に心境をつづった手記を寄せた。「なぜ一生懸命頑張ってきた息子がこんなことになるのか。未だに納得できません」と学校への不信感を吐露している。
(31面に手記全文)
両親は手記で、息子が万引したと誤認されたことについて「五回を間違えたなどで許されるものではありません」とし、学校のずさんな情報管理について「信
じがたい」とした。

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両親の代理人弁護士によると、学校は2月末、調査報告書を完成させ、両親に届けた。その前に複数回、未完成の報告書を両親の前で読み上げるなどしていたという。
両親は手記で、調査報告書について「持ってきてはその場で目を通し意見を求められ、時間をかけて読みたい要望は聞き入れて貰えず≒何度も催促しても今一
生懸命作っていますと答えるばかりで、息子の件に関して、どのくらいの重要性を感じているのか疑いたくなりました」と記している。
「誠実な報道に期待して、地元の方々にも、どうしたら大切な子供を守れるか。
学校という組織の実態が伝わることによって、改善され、生徒が内申点にとらわれ過ぎない、弱い立場の者が守られる社会になってほしい」との願いをつづって
いる。両親は、代理人弁護士を通じ、中国新聞の依頼に応じた。
町教委などによると、生徒は昨年12月8日に進路を話し合う保護者、担任教諭との三者懇談に出席せず、同日夕、自宅で自殺していたのを家族が見つけた。担
任教諭は、11月中旬から懇談当日の朝までに、教室前の廊下で本人と5回にわたって進路について「面談」し、1年時の万引記録を理由に志望校に推薦できない旨を
告げていた。
しかし、生徒の自殺後、当時万引したのは別人と判明。学校側の情報管理のずさんさが浮き彫りとなった。原因究明のための第三者委員会が近く設置される
予定。(府中町進路指導問題取材班)

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町議会で陳謝教育長

広島県府中町教委の高杉良知教育長は11日、町議会本会議開始前の議場で、府中緑ケ丘中3年の男子生徒の自殺について「生徒とご遺族に哀悼の意を表し、生徒や保護者、全ての関係者におわび申し上げます」と重ねて陳謝した。
高杉教育長は、調査のため外部の専門家で構成する第三者委員会を早急に設ける意向を強調した。中井元信議長は「第三者委による調査はもちろん、保護者、職員のケアにも万全を期してほしい」と町側に求めた。
高杉教育長はこの後、生徒が親に「どうせ言っても(担任の)先生は聞いてくれない」と相談体制の不満を漏らしていたことに「教員と子ども、保護者の信頼関係で学校は成り立つ。生徒がそう感じていたことは真摯に受け止める」と述べた。

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府中町中3自殺
生徒の両親の手記全文

広島県府中町の中3男子生徒自殺問題で、両親が11日に中国新聞に寄せた手記の全文は次の通り=原文のまま。
(33面関連)

中国新聞社   様
お手紙拝見いたしました。
このような目まぐるしい環境の変化に戸惑いを感じております。
私たちにも様々な思いがありますが、直接の取材に対して私たちは慣れておりませんので、書面にてお答えさせてください。
お手紙のとおり、誠実な報道に期待して、地元の方々にも、どうしたら大切な子供を生徒の両親の手記全文守れるか。学校という組織の実態が伝わることによって、改善され、生徒が内申点にとらわれ過ぎない、弱い立場の者が守られる社会になってほしいと願っています。
私たち家族は息子が亡くなったことを受け入れなければならない現実と今も戦っています。
なぜ一生懸命頑張ってきた息子がこんなことになるのか。未だに納得できません。
何度も「学校のミスでした。」 「申し訳ありませんでした。」と軽々しく謝られても心には響いてこないのです。
人の命はそんなものではない。名前を間違えたなどで許されるものではありません。
たとえ息子が生きていたとしても許されない事です。あまりにもふざけているので、本気であのような管理体制が日常化していたことが信じがたいです。
何も解決していないのにもかかわらず、あの報告書を基に教職員でどのような学校にしたらよいかを考え、実現に向けて希望が見えてきたと校長から言われ言葉を失いました。
何の希望なのか。この時点では学校はこのことについて何かいけないのか、なぜこのようなことが起きたのか明確に示してこないまま前に進もうと言うのは順番が違います。
調査報告書が実際私たちの手元に届いたのは四十九日の法要直前でした。
持ってきてはその場で目を通し意見を求められ、時間をかけて読みたい要望は聞き入れて貰えず、お渡しするには不十分なのでと、都合の良い言葉を並べて教育委員会が持ち帰ることを3度も繰り返し、やっと持ってきた報告書は学校が言う事実と称するもののみ。なぜこのようなことが起き、何か原因なのかには触れておらずお粗末なものでした。
何度も催促しても今一生懸命作っていますと答えるばかりでヽ息子の件に関して、どのくらいの重要性を感じているのか疑いたくなりました。
保護者への説明については、入試を控えた同級生に動揺させたくない思いから、死因は入試が終わるまで伏せてほしいが保護者には進路指導に事案について説明してほしいと願っていました。教育委員会から生徒の耳に入るリスクが高いと聞き、保護者への説明会も入試が終わった日にと私たちで話し合いました。
私たちは何度も悩み、やはり説明会は早く行ってほしい旨を教育委員長に伝えても理由をつけて私たちを不安にさせ別の方法を提案してきたり渋ったり保護者へ説明する気がうかがえなく、保護者説明会を行うことすらよろしくないようにとれる言い方をし、2ヵ月以上も振り回され、私たちの不安や不満は募り、疲労感が限界に達していました。それでも強い思いを持って必ず3月8日には実行し同級生が試験会場へ到着するまでは生徒に知らせないでほしいという願いは7日の夜に教育委員会自ら記者会見を行う意向を公表したことにより、入試があと1日を残して情報が広まると言う最悪の展開に私たちの願いが簡単に砕かれ、今まで耐えてきた事が意味をなさない状況になってし琵いました。苦しかったあの時間はなんだったのかと思います。
保護者・生徒・私たち何より息子に対して、何の配慮も心く申し訳なさもなく、自分たちの体裁ばかり考えている。それでなにが教育委員長なのでしょう。学校、教育の現場のずれた感覚を改善するすべがあるのか分からないほど、根が深いものだと痛感しました。

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平成28年3月11日 中国新聞社朝刊より
緊急連載
府中町中3自殺
<中>
過ちの背景

学校運営機能不全に

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府中町教委が開示した府中緑ヶ丘中の調査報告書
(画像の一部を修整しています)
「学校運営に大きな問題があり、責任があったと反省している」
広島県府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒(15)の自殺を受けた8日夜の記者会見。坂元弘校長はそう自らの責任を認めた。なぜ間違った万引記録を基に進路指導するミスが起きたのか。取材や学校の調査報告書から、機能不全に陥っていた学校運営の状況が浮かび上がる。
問題の発端となる2013年10月の万引事案。この時の対応から、既に学校の規定を逸脱していた。生徒の問題行動が起きた場合、事実確認や保護者連絡、面談や別室での指導などを順次行うよう定めていた。
「基本を外れる」
しかし、’教員の対応は保護者への連絡や店舗への謝罪だけにとどまる。事実確認の一環として定める生徒自身による「事実確認票」の記入など、規定通りの対応を取っていなかった。
県教委は04年に文書で示した生徒指導の「留意点」、細部にわたる事実確認の重要性を繰り返し強調している。豊かな心育成課は 「繰り返し指導してきた基本から外れていたと言わざるを得ない」と指摘する。
これだけではない。生徒指導会議への校長たち管理職の不参加、休日に起きた生徒の問題行動に対する連絡体制がないなど、さまざまな不備が重複していた。
管理も明確なルールはなかった。進路指導でも必要な資料作成について前任者から引き継ぎがなかったという。調査報告書には「進路指導主事がどうしてよいか分からないという状況もあった」と記す。
 

「荒れ」で指定校
こうした状況に陥った要さらに、生徒指導の情報因の一つに学校側は「荒れ」を挙げる。同中は13~15年度、県教委の生徒指導集中対策プロジェクト事業の指定校になっている。
生徒の自殺を引き起こした遠因となった、受験で校長推薦を出す基準の厳格化も荒れを理由とした。校長推薦を得て高校に入学した生徒が問題行動を起こした翌年、高校から推薦枠を取り消された事例があったためとした。
それでも広島県教職員組合の石岡修執行委員長は指摘する。「確かに現場の教員は多忙で情報共有しにくい現状はあるが、生徒指導や進路指導は組織でするものだ。通常の運営であれば今回のミスを防ぐ関門はいくつかあったはずだ」 亡くなった生徒の両親は代理人弁護士を通じてこうコメントする。「ずさんなデータ管理ヽ間違った進路一指導がなければ、わが子が命を絶つということは決し
てなかったと親として断言できます」。機能不全に至つた経緯にまず向き合うことが学校再生の出発点になる。  (田中伸武、明知隼二)

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