平成29年12月28日共同通信

山口の高2男子自殺、再調査決定 県知事が遺族に伝達

山口県周南市で昨年7月、県立高2年の男子生徒が自殺した問題で、村岡嗣政知事は27日、いじめが原因だったかどうかの再調査を実施する方針を決め、両親に伝えたと明らかにした。県庁で両親と面会後、記者団に語った。

県教育委員会は11月、他の生徒からのいじめがあったと認めたが「いじめのみを自殺の要因と考えることはできない」とする第三者委員会の調査報告書を公表。遺族側はいじめが原因として今月12日、知事宛ての再調査の要望書を送付した。要望書では第三者委の調査は不十分で、委員の人選も問題などと指摘している。

 自殺した男子生徒の両親から要望書を受け取る山口県の村岡嗣政知事=27日午前、山口県庁
 周南知事再調査
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平成29年11月22日毎日新聞
周南いじめ自殺 部活指導の適否、第三者委が判断放棄

周南いじめ
高校2年生の自殺事案を検証した最終報告書について記者会見する第三者委の委員長、田辺山口大教授(左から2人目)ら
=山口市の県庁で2017年11月21日午後1時2分、土田暁彦撮影

 山口県周南市で昨年7月、県立高校2年の男子生徒(当時17歳)が自殺した問題で、県教委設置の第三者委員会(委員長、田辺敏明山口大教育学部教授)は21日、記者会見し、生徒が自殺の8日前から参加していた野球部の練習で、顧問の指導が適切だったかについて、県教委に判断を委ねる方針を示した。遺族らは「第三者委の責務を放棄している」などと反発している。
 第三者委は記者会見で最終報告書の概要版(21ページ)のみを公表。本体の報告書(183ページ)は「生徒への聞き取りが、公表を前提にしたものでなかった」として非公表とした。
 毎日新聞が独自に入手した最終報告書は、学校生活で一部にいじめがあったと認定し、野球部での練習もストレス要因に
なったとした。一方、野球部の詳しい練習内容には踏み込まないまま「練習メニューに加減がなされていた」などの顧問の
主張を載せ、顧問の指導について「練習における配慮が十分だったか検討の余地がある」と記載するにとどめている。
 会見で、顧問の指導の適切さを判断しなかったことについて田辺委員長は「運動部の練習が適切なのか客観的な基準が分からない」と述べ、県教委に判断を任せる意向を示した。
 遺族は「顧問の指導を含む教員の対応について第三者委の調査が不十分」として、村岡嗣政知事に第三者委の構成員を代えるなどして再調査するよう要望する意向だ。
 いじめ調査に詳しい野口善國弁護士(兵庫県弁護士会)は「第三者委は顧問の言い分をうのみにせず、別の教員や生徒の
証言に照らして事実認定すべきだ」と指摘。また、「学校事故事件遺族連絡会」世話人の山田優美子さん(48)は「そもそも身内の県教委では信頼できないから第三者委を設置したはずだ。あくまで県教委は調査される側であり、県教委に判断を
委ねるのは見当違いで、第三者委の責務を放棄している」と話している。【土田暁彦、祝部幹雄】
 ◆最終報告書の骨子
・男子生徒は学校生活で日常的にからかわれるなど“いじり”を受け、一部はいじめに該当する。
・生徒は野球部の顧問に頼まれ、練習に参加。元々所属していたテニス部員から無料通信アプリ「LINE(ライン)」に
「部室の荷物を捨てる」などと書き込まれたのは、いじめに該当し、両部の顧問らは連携不足があった。
・個々のいじめや“いじり”は、多数あるストレス要因の一つで、一つ一つの影響は少ない。いじめのみを自殺の原因と
考えることはできない。

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平成29年11月12日毎日新聞
山口高2自殺 学校責任触れず いじめ一部認定 最終報告

山口県周南市で昨年7月、県立高校2年の男子生徒(当時17歳)が自殺した問題で、県教委設置の第三者委員会がまとめた最終報告書を、毎日新聞が独自に入手した。生徒が学校生活で日常的に“いじり”を受けるなどしていたとし、一部にいじめもあったと認定。テニス部員なのに頼まれて参加した野球部での無理な練習もストレス要因になったとしたが、教諭の配慮不足など学校側の責任に触れておらず、遺族側は再調査を求めることも検討する。
第三者委の委員長、田辺敏明・山口大教育学部教授ら委員2人と県教委の担当者2人が11日、遺族宅を訪問。今月2日に手渡している最終報告書について説明したが、遺族によると生徒の自殺に対して県教委からの謝罪はなかった。報告書を巡っては、県教委が「報道機関などに提供しない」とする「誓約書」の署名を求め、遺族側が反発していたが、県教委はこの日、改めて署名を求めた。遺族側は応じなかった。
報告書によると、生徒は教室や部活動で日常的にやゆされるなどし、生徒を「いじられキャラ」と見ていた教諭もいた。
ところが教諭らは「それで人間関係が保たれている」などと問題視せず、中には「私もいじっていたが寄ってきた」と話す教諭もいた。しかし、生徒は「とても恥ずかしい」とソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に書き込んでいた。
部員数が少ない野球部の顧問教諭から「助っ人」を頼まれ練習に参加すると、テニス部員から一方的に無料通信アプリ「LINE(ライン)」のグループを退会させられ、部室の荷物を「早く持ってけ」などと伝えられた。これらはいじめに当たると認定された。しかし、報告書は「友人関係が壊れたわけでなく、ほころびた」とし、両部の顧問の対応についても、他の部員に転部のいきさつを説明しないなど連携不足があったと指摘するにとどめた。
生徒は野球部の練習についても悩み、SNSに手の指の皮がむけた写真とともに野球部の練習がつらいことを書き込んでいた。
生徒が顧問とは別の教諭らに手のまめを見せ「眠れない」などと訴えたが、教諭らは「自分で決めたことだ、頑張れ」徐々に慣れる」と応じただけだった。
報告書はこれら複数のストレス要因を指摘した上で「いじめのみを自殺の要因と考えることはできない」と結論づけ、自殺の原因を特定しなかった。また、生徒の訴えなどを見過ごした教諭や学校の責任についても言及しなかった。
遺族は説明に訪れた第三者委の委員に対し「自死は教諭の配慮不足といじめが原因と考えている。報告書に記載してほしい」と求めたが、委員は「それはできない」とした。遺族は生徒の死後、「1日200~300本バットを振らせた」と語った野球部顧問の指導についても調査するよう要望していたが、委員は「いじめ問題調査委員会だから記載は控えた。別の部署が検討する」と答えたという。【土田暁彦】

顧問らの不手際で居場所なくしたのでは
元教師で「全国学校事故・事件を語る会」代表世話人の内海千春さんの話 転部を巡る顧問らの不手際で生徒は居場所を
なくしたのではないか。いじめがエスカレートする潜在的な状況を教諭らが放置した問題があり、顧問の指導や生徒との
関わり方も調べなければ、生徒が亡くなった理由をゆがめる。

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平成29年7月6日毎日新聞
山口・高2自殺 「知らぬ間に調査委」遺族、公平性に疑念

山口県周南市で昨年7月26日、県立高2年の男子生徒(当時17歳)が自ら命を絶った。生徒は「助っ人」として参加した野球部の練習のつらさを訴えていたほか、スマートフォンには元々の部の生徒からのいじめとみられるメッセージが残っていた。自殺の背景に学校の対応不足を疑う遺族は、県教委が遺族と詳しい協議をしないまま調査を進めたことにも不信感を抱いており、命日を前に「公正に調査してほしい」と訴えた。【樋口岳大、土田暁彦】
生徒は昨年7月26日午前1時10分ごろ、同市のJR駅構内で列車にはねられて死亡した。スマートフォンに遺書のような書き込みがあり自殺とみられる。
遺族によると、生徒は元々テニス部に所属していた。野球経験はなかったが、部員が少ない野球部顧問の男性教諭に「助っ人」を頼まれ、死の8日前から練習に参加し始めた。だが生徒は、初日から家族に「きつい。やめたい」とこぼし、顧問から命じられていた丸刈りも嫌がっていた。
死後、遺族は、生徒がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に手の指の皮がむけた写真とともに「部活頑張ったよ……野球をニートがやると死ぬんだよ」などと書き込んでいたことを知った。顧問からは「1日200~300回バットを振っていた」と聞かされたが、顧問は「嫌がっているとは思わなかった」と釈明したという。
一方、テニス部の練習に出られなくなった生徒は、部員からSNSで「部室にあるお前の荷物全部池にすてる」などのメッセージを受け取っていた。
こうした経緯を知った遺族は、部活動での指導やいじめが自殺の原因ではないかと疑い、学校側に真相解明を要望。
昨年8月、県教委に常設しているいじめ問題調査委員会が調査部会を設置したが、遺族は「事前に知らされておらず、(調査部会の設置を報じた)テレビのニュースで初めて知った」という。校長経験者や弁護士ら調査部会のメンバーも遺族と協議することなく決められており、遺族は「公平性や中立性に疑問がある」と訴えている。
県教委学校安全・体育課は取材に「(メンバーの選定について)遺族と協議はしていないが、どういった職能団体から入ってもらうかについて説明した」と話した。
国「人選、要望に配慮を」「息子がなぜ自死の道を選ばなくてはならなかったのか。原因が分かるまでは一歩も引けない」。生徒の母親(40)は6月、山口県教委が設置したいじめ問題調査委員会に宛てた手紙にこう記した。
いじめ防止対策推進法に基づく国の基本方針は、調査組織の構成や方法などについて「できる限り、遺族と合意して
おくことが必要」と規定している。県教委は自分たちが事務局を務める調査委に調査を依頼した上、実際に調査を担う部会のメンバーも遺族と協議することなく決められており、遺族は「一方的だ」と反発する。
いじめ自殺を巡る調査委のメンバー選定で遺族が不満を持つケースは少なくない。2013年に奈良県橿原市の中1女子生徒が自殺した事案では、市教委が設置した第三者委の委員に市の元顧問弁護士が就いていたことが分かり、中立性を問題視した遺族の訴えで委員が選び直された。
こうした実態を受け文部科学省は今年3月、いじめ重大事態調査のガイドラインを作成。「被害生徒や保護者の「『何があったのか知りたい』という切実な思いを理解し、対応に当たること」と明記し、メンバー選定でも「被害生徒・保護者からの要望」に配慮するよう改めて求めた。
今回の山口県教委の対応について、いじめ調査に詳しい渡部吉泰弁護士(兵庫県弁護士会)は「法やガイドラインの趣旨に反している。被害者の権利がどのように侵害されたのかを明らかにするのが調査委の職責であり、遺族の意向を踏まえるのは大原則だ」と指摘した。

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