【10月23日付 河北新報】

一部黒塗りで開示された調査報告書。いじめを傍観した生徒の責任を厳しく指摘する一方、予防や早期発見のキーマンと強調する

◎なぜ起きた集団いじめ(下)足りない当事者意識

「ひょっとしたら今も、重大ないじめだとは思っていないかもしれない」
天童一中1年の女子生徒=当時(12)=がいじめを苦に自殺した問題で、第三者調査委員会が市教委に報告書を提出した今月5日、野村武司委員長(埼玉弁護士会)は記者会見で一抹の不安を口にした。

<印象「良い学級」>
女子生徒へのいじめは悪口などの言語的攻撃、仲間外れといった社会的攻撃が中心。暴力を伴わないため罪悪感を持ちにくく、相手を絶望のふちに追い込んだ認識に欠けるという。
報告書によると、いじめを主導した加害生徒Aは「自己中心的で度が過ぎることが多い」性格。悪口で話題の中心になろうとする傾向があり、担任が注意すると「ごまかすような言い訳」をするタイプだった。
そんなAから見て満足する態度を取らなかった女子生徒への反感が、いじめの発端となった。標的となった女子生徒に対する悪口は、Aが属した女子グループで行動や言動が時として個々の意見より極端な方向に向かう集団極性化し、クラスの雰囲気を支配した。
第三者委はAを含む加害生徒の中で、女子生徒に明確な攻撃意図があったのは少数とみる。それにもかかわらず「集団いじめ」に発展したのは、周囲の傍観が大きかったと強調する。
女子生徒の自殺後、第三者委が同級生に学級の印象を尋ねたところ、多くの生徒が「良いクラスだった」と答えた。自殺は特殊な出来事で、自分たちにはあまり関係ないとの意識を感じるとし、報告者は「当事者意識、内省が足りない」と指摘する。
女子生徒に関わると、自分に矛先が向かう危険があり、傍観的な態度を取った生徒もいた。Aのグループによる悪口は日常的で、クラスの「言葉による傷つきの感度」が鈍くなっていた面もあった。

<発見のキーマン>
報告書は「(いじめは)加害生徒のみで行われたものでは決してなく、暴走を傍観した多数の生徒、教職員がいたことを忘れてはならない」とくぎを刺した。
傍観する生徒は大人への報告が可能だったことも指摘。被害生徒の孤独を救うメッセージを出せる立場として重要視し「いじめ予防・早期発見のキーマン」と位置付けた。
嫌がらせは多くの男子生徒が知っていた。加害生徒の行為に嫌悪感を抱く生徒は男女を問わずいたが、やめるように注意したのは少数で、教職員への報告は皆無だった。
第三者委は、生徒から報告を受ける側の教職員の守秘義務の重要性とともに「何があっても生徒を守る」という強いメッセージの発信を学校側に提言した。

◎報告書の提言

・いじめに対する認識が希薄な加害生徒に教員がいくら「それはいじめだ」と結論的な認識を示しても、表面的な反応と効果しか得られない。加害生徒に対面して事実を一つ一つ丁寧に確認し、責任回避しているかどうか見詰めながら根気強く関わることで、事実から逃れようとしている姿に自ら気付く可能性がある。
・加害生徒の保護者には、つらい記憶に無理にふたをさせ、事件を無かったことのように振る舞わせるのが、子どもにとってのケアにも教育にもならないことを逃げることなく確認し、指導することが求められる。

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【10月20日 河北新報社説】

「いじめは部活動とクラス内で複数の生徒によって行われ、身体的攻撃はほとんど認められない悪口や陰口、集団からの排斥といった集団いじめと判断できる」 「教師はいじめに対する認識、理解、解決への意欲を欠き、情報、兆候を学校全体で共有せず、対応すべき組織も機能しなかった」
天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題で、第三者調査委員会は
「いじめが自殺の主要な原因」と認定した報告書を天童市教委に提出した。
134ページに上る報告書には、いじめの実態とともに、関係する教師をはじめ、学校に対する厳しい指摘、批判が多く盛り込まれた。
大津市の中2男子自殺を受け、一昨年9月にいじめ防止対策推進法が施行された後も、天童市を含めた東北、全国でいじめの存在が疑われる自殺が相次いでいる。
報告書は詳細な事実認定から8項目を提言し「本事案を教訓として二度とこのような事態を繰り返さないことを期待したい」と強調した。重い言葉として胸に刻みたい。
女子生徒は3学期が始まる2014年1月7日午前8時ごろ、登校途中に山形新幹線にはねられて死亡した。
自宅からは「陰湿な『イジメ』にあっていた」などと記したノートが見つかった。全校生徒約530人へのアンケートでは、13人がいじめを見聞きし、00人以上がいじめに関して記述した。母親が2度教師に相談、本人も友達関係で不安を訴えていた。
第三者委は6人で構成し、調査員として弁護士2人を委嘱した。特に重視したのが女子生徒を取り巻く人間関係の把握だった。学校などが集めた断片的な情報、資料を読み解き、生徒、教職員、遺族からの聴取、証言をつなぎ合わせて、自殺に至った状況を浮かび上がらせた。
報告書によると、クラスと部活動が共通する生徒を中心とするグループがいじめを繰り返した。
女子生徒はおとなしく1人でいることが多く、異質に思え、気に食わなかったとみる。周囲の多数の生徒は関わりを避け、あるいは「異を唱えると自分に矛先が向く」と考えて傍観した。
自殺の約3カ月前、部活動のミーティングを機に、いじめは激しさを増した。顧問の意図に反し、部員
から悪口を非難された生徒は、そのことを逆恨みし、グループメンバーが同調、行為がエスカレートしていった。
女子生徒は「一生懸命やってみたが状況は改善せず、追い詰められて自殺を選んだ」と結論付けた。
教師、学校への提言は、対応の問題点から導き出した。身体的暴力を伴わないいじめへの認識、部活動でも対策を取る義務、教師間の連携と情報の共有などを挙げた。
「傍観者のみならず、直接の加害生徒ですら、当事者意識や内省が明らかに不足していることも特徴である」。報告書は繰り返し指摘した。
天童市の事案は決して特異なケースではないだろう。多角的な検証、分析を重ねた報告書を、痛ましい事態の再発防止に生かしたい。

http://yamagata-p.jp/achive_kiji/pdf_2015100500001.pdf

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【10月21日付 河北新報】

女子生徒が山形新幹線にはねられ自殺した現場。死から1年9カ月たっても花などの供え物は絶えない

◎なぜ起きた集団いじめ(上)追い詰められる少女

昨年1月、天童一中(山形県天童市)1年の女子生徒=当時(12)=がいじめを苦に自殺した問題は、第三者調査委員会がまとめた調査報告書で、いじめの詳細な実態が明らかになった。報告書はクラスと部活動で続いた悪口や嫌がらせ、仲間外れを「集団いじめ」と断定し、傍観した多くの生徒、教職員らの責任も問うた。集団いじめはなぜ起きたのか。女子生徒のSOSをなぜ見落としたのか。134ページに及ぶ報告書から検証する。(山形総局・伊藤卓哉、長谷美龍蔵)

いじめが自殺の主要な原因と認定した報告書は、女子生徒を取り巻く人間関係をつぶさに描き出した。
クラスには遠慮なく大声でしゃべり、誰彼構わず悪口を言う女子グループがあり、いじめを主導した加害生徒らが中心にいた。所属したソフトボール部でも、加害生徒ら重複するメンバーがグループを形成。
クラスと部活動で影響力を持った。

<泣きながら訴え>
女子生徒はおとなしく、1人で小説を読むことも多かったが、話せば面白い印象を持たれていた。個性の強いグループには気後れし、嫌悪感もあった。グループはそんな態度が「異質」に思え「気に食わず」「いら立ち」を覚えたとみる。
2013年5月下旬、女子生徒への悪口が始まった。「いじめは部活動とクラスで複数の生徒により行われ、身体的攻撃は認められない悪口や陰口、集団からの排斥といった集団いじめ」があったと判断した。
女子生徒は表情を変えることなく、聞いていない、気にしていない雰囲気を漂わせた。だが、7月上旬、「私何か言われてる?」とクラスメートに尋ね、普段は感情をあらわにしないが、悪口への不満を漏らした。
部活動では、ペアを組む多くの練習でいつも1人余る存在にされ、相手を探し回る姿を嘲笑された。捕球できないボールをわざと投げられる光景も見られた。
2学期になり、女子生徒は誰も名乗りを上げないクラスの役職に立候補し、積極的な様子を見せていた。
ところが、9月10日前後にあった部活動のミーティングをきっかけに、いじめはエスカレートしていく。
顧問は「陰口でなく、みんなの前で」言うよう指導し、女子生徒は「仲間外れをしないでください」と泣きながら訴えた。だが、加害生徒の悪口や問題行動を非難する声が上がり、加害生徒は逆恨みの感情を持って行動を激しくした。

<「校舎に来るな」>
11月になると、悪口は言葉や黒板への書き込みを含め「常態化」した。他の生徒には無視や、仲間外れにするよう働き掛け、話しているだけで干渉した。
女子生徒は授業中までノートに絵や小説を書くことに没頭するようになり、教師に注意されている。友人としゃべらなくなり、「見て分かるくらいの孤立感」があった。悪口は、冬休み前最後の練習まで続いた。
女子生徒は3学期が始まる14年1月7日、山形新幹線にはねられ自殺した。新築した校舎を初めて使う日だった。遺族側は、新校舎に来ないよう言われたことが引き金になったとみる。
報告書は「一生懸命やってみたが状況の改善につながらず、自分を押し殺して心を閉ざしたが、孤立しただけでいじめは収まらず、追い詰められ、自殺を選んだ」と結論付けた。

●報告書の提言
・心理的な嫌がらせなど暴力を伴わないいじめを過小評価してはならない。日常的な悪口や嫌がらせは被害生徒にとってダメージが大きく、深刻な事態を発生することを正しく認識した対応と措置を実践する必要がある。

[天童いじめ自殺問題]天童一中1年の女子生徒が3学期が始まる2014年1月7日午前8時ごろ、登校途中に山形新幹線にはねられ死亡した。自宅からは陰湿な『イジメ』にあっていた」「ダレカ、タスけテよぅ」などと書かれたノートが見つかった。学校は1月15日、全校生徒約530人を対象にアンケートを実施した。
13人が女子生徒へのいじめを直接見聞きし、100人以上がいじめに関して記述した。

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【10月21日 河北新報】

今後の対応などを説明する山本市長(左から2人目)

天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題で、天童市の山本信治市長は20日、いじめが主要な原因と認定した第三者調査委員会の報告書と遺族側の意見書を市教委から受け取った。
「行政の長として本市で起きた悲しい事件には大きな責任がある」と述べ、再発防止に向けて教育の充実を
図る方針を明らかにした。
市役所で記者会見した山本市長は、いじめ対策連絡協議会を新たに設置して、未然防止対策や啓発活動
の充実を図る考えを表明。「関係者と連携し、二度とこういう事態にならないように全力で取り組むことが私の責任だ」と強調した。
遺族は意見書で「学校と教諭の落ち度についてどのように考え、どのような形で遺族に対する責任をとる
つもりなのか、明らかにすること」と要望していた。
いじめによる自殺は、災害共済給付制度を利用した死亡見舞金の支給対象となるが、山本市長は遺族に対する賠償などには言及しなかった。
遺族側が意見書で要望した第三者委の収集した資料の保存については、会見に同席した水戸部知之教育長が「永年保存を考えている」と語った。
第三者委の野村武司委員長も同席し「学校は1回会って反省しなさいというような単純な指導でなく、時間をかけて事件に向き合ってほしい」と話し、あらためて加害生徒らへの指導の徹底を求めた。
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【山形新聞】

天童いじめ問題、市長「大きな責任」 報告書開示受け学校側落ち度指摘

会見で「大きな責任を感じている」と述べる山本信治天童市長(左から2人目)=天童市役所

天童市の中学1年の女子生徒が、学校でいじめを受けて自殺した問題で、いじめが自殺の原因になり、学校が対応を怠ったと指摘した第三者委員会の調査報告書と遺族からの意見書が20日、同市の佐藤通隆教育委員長から山本信治市長に手渡された。山本市長は「大きな責任を感じている」と述べ、学校側の対応
について「大きな欠落があった」との認識を示した。
報告書は市役所で手渡され、第三者委の野村武司委員長らが同席して内容を説明した。その後、記者会見した山本市長は報告書に関し、「大変厳しく、つらい内容だった。痛惜の念を感じている」と語った。
自身の責任については「学校設置者というよりも、行政の長として、本市で起きた悲しい事件の責任は、
わたし自身も大きい」と説明。今月7日には、遺族宅を訪れて謝罪したことも付け加えた。市長としての
責任の果たし方については「再発防止に全力で取り組む」とした。
また、「当時の学校にはいじめに関する連絡体制があったが、機能せず、いじめも認識できず、対応できなかった。大きな欠落があった」と、学校側の落ち度を指摘した。再発防止に向けた対策として、教育、人権擁護、警察、PTAなど13団体の代表で組織する「いじめ問題対策連絡協議会」を(10月30日に)
発足させる方針を示し、「多くの協力を得ながら報告書の提言を丁寧に実行し、毎年チェックを重ね、快適な学校生活を送れるようにしたい」と説明した。
加害生徒への指導に関し、野村委員長は「『駄目じゃないか』『謝りなさい』ではなく、亡くなった生徒がどんな思いだったのか―に考えが至るプロセスを大切にし、時間をかけてこの事件と向き合ってほしい」と話した。報告書が市長に提出されたことで第三者委の任期は終了した。

吉村知事、二度と起こらぬよう地域と防止策を図る
天童市の中学1年女子生徒の自殺問題で、第三者委員会の報告書の開示を受け、吉村美栄子知事は20日、「教育関係者は重く、厳しく受け止めなくてはならない。これまでのいじめ対策が十分だったか、あらためて検討させたい」と述べた。
県教育委員会は、先の県いじめ問題審議会の席上、いじめ防止に向けた検討課題を設けて状況改善に
つなげる方針を示している。これを踏まえ吉村知事は定例会見で、「全ての教育関係者がいじめを見抜く
感度を上げ、被害者の心情を受け止めて対応することが大切だ。痛ましい事案が二度と起こらぬよう、
地域と一丸となっていじめ防止対策を図っていただきたい」と強調。今回の学校関係者の処分については
「県教委が十分に検討し、適切に判断してもらいたい」と述べた。

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【10月20日付 朝日新聞山形版】

◆ 調査報告書に遺族側意見書
天童市の市立中学校1年の女子生徒(当時12)が昨年1月に自殺した問題で、遺族側が19日、第三者委員会の調査報告書に対する意見書を市教育委員会に提出した。「いじめが自殺の主要な原因」とする結論を受け入れる一方、再発防止について、外観を取り繕うのではなく、実効性のある教育の内容・方法を検討して実践することを強く要望する、としている。
◆ 「外観取り繕うのではなく」 意見書は同日午前、遺族側の代理人を務める安孫子英彦弁護士が市教委に手渡した。意見書の中で遺族側は「報告書は、担任や部活動の顧問が(いじめに関する)十分な情報を得ながら過小評価して対応を怠り、学校として有効な対策がなされなかったと認定している」とし、「報告書で明らかにされたこれらの事実を受け入れたい」と記している。
また、学校と市教委に、報告書作成のために収集した資料をすべて開示することや、加害生徒と保護者を
速やかに指導することを求めている。
一方、再発防止策について、「対策を講じているような外観を取り繕うのではなく、本当にいじめを許さないという思いで、提言を実践してほしい」と要望。「教育の内容・方法についての突っ込みが不足している。
真に実効性のある教育の内容・方法を検討して公表し、実践することを強く要望する」と訴えている。
朝日新聞の取材に対し、安孫子弁護士は「報告書作成のために集められた資料が開示されていないため、結論以外に意見を述べることができない」と述べた。また、今回の問題について天童市の山本信治市長の考えを明らかにするよう求めたという。
報告書は今月5日、第三者委員会が市教委に提出。市教委は20日、報告書に遺族側の意見書を添えて山本市長に提出する予定だ。(井上潜)

◆ 小学校でいじめ認知件数 増加
県教育委員会は19日、県内の公立小・中・高校、特別支援学校で今年4~7月に認知したいじめ件数を発表した。小中高、特別支援学校計2629件で、前年度同期の2162件に比べて増加、特に小学校は1・5倍に増えた。
この日開かれた県いじめ問題審議会(会長・河野銀子・山形大教授)で県教委が報告した。
学校別では小学校1654件(前年度4~7月1074件)、中学校644件(同621件)、高校288件(同431件)、特別支援学校23件(同36件)。小学校ではすべての学年が増加し、特に5年生は前年度の117件から278件に増え、2・4倍近くになった。県教委は「全県統一アンケートや個別の面談によって、いじめを発見する学校側の感度が高まった結果」としている。
いじめの態様は、冷やかしやからかい、悪口など言葉によるいじめが6~7割を占め、前年度と同じ傾向だった。
審議会では、天童市の第三者委員会の調査報告書についても意見交換。部活動でのいじめ防止について、委員からは「部活動の目的は人格形成であって競争ではない。その認識を顧問の教員は持つべきだ」などの意見も出た。(米沢信義)

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【10月10日 河北新報】

天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題で、「いじめが主要な原因」と認定した第三者調査委員会の報告書を受け、当時の担任と部活動顧問らが初めて遺族に謝罪していたことが9日、遺族への取材で分かった。
同校の教頭とともに7日に遺族宅を訪問した。担任らは「かけがえのない命を守ることができなかった。
対応に不十分さがあった」と頭を下げたという。
母親は「学校にはいじめについて相談していたのに、なぜ対応してくれなかったのか」と訴えた。
山本信治天童市長もこの日焼香に訪れたが「学校の設置者として責任がある」と述べるにとどまったといい、遺族は「明確な謝罪の言葉がなかった」と疑問視した。山本市長は9日、取材に対し「責任があるという発言に謝罪の意も込めた。言葉足らずであったなら、遺族に大変申し訳ない」と話した。

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【10月8日付 河北新報】

天童市は7日、河北新報社の情報公開請求に対し、天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題について、「いじめが自殺の主要な原因」と明記した第三者調査委員会の報告書を開示した。市個人情報保護条例に基づき、氏名などの個人情報、教育的配慮からいじめの具体的行為は黒塗りにして伏せて公開した。
報告書はA4判134ページ。実質的に(1)いじめと自殺との因果関係(2)学校の対応(3)再発防止の提言(4)自殺後の学校と市教委の対応-で構成されている。
報告書は、いじめは身体的攻撃を伴わない集団での悪口や嫌がらせ、無視、仲間はずれなどで、多大な心理的苦痛が女子生徒を自殺に追い詰めたと認定した。
いじめはクラスと部活動で継続してあったが、教師は連携を怠り、部活動で対策を取る義務の認識が欠如していたと指摘。いじめに対する教師の理解と意欲を欠き、場当たり的対応にとどまったと強調した。
個々の教員が兆候となる情報を得ながら、学校で組織的に共有する意識にも欠け、対応する組織も機能しなかったと批判した。
事実認定を踏まえ、提言は8項目に及んだ。第三者委の野村武司委員長は5日、報告書提出後の記者会見で「二度といじめにより子どもの命が失われないように、検証内容と提言を防止対策に役立ててもらいたい」と述べた。
第三者委(委員6人)は昨年11月末の発足以降、28回の部門別会議、13回の委員会を開催して報告書をまとめた。

<天童いじめ自殺>第三者委報告書要旨
報告書の内容の要旨は次の通り。黒塗りされた部分を含め、文脈から判断して補った箇所はかっこ内で示した。

【いじめと自殺との因果関係】
(女子生徒)は2013年4月、当該中学に入学した。(女子生徒の)クラスでは(加害生徒らが)女子最大グループを形成。遠慮なく大声でしゃべるグループで、(加害生徒は)人の悪口を言うことで話題の中心になろうとした。(女子生徒は)クラスではおとなしく、1人でいたり小説を読んだりすることが多かった。
グループには異質な雰囲気に思え、気に食わなかった。反応が大人っぽくクールに見え、親しく話しかけても流される感じがあり、いら立ちを覚えたと見る生徒もいる。
(女子生徒の)ちょっとしたことを捉え、悪口もあった。発言に対し、あまり表情を変えなかったが、7月上旬ごろ「私何か言われている?」と尋ねたことがあり、気付いていたと思われる。対象は(女子生徒)だけでなかったが(女子生徒)への悪口が一番ひどくなり、週2~3回はあるようになった。担任は(女子生徒)への悪口を気に掛けており、信頼できる生徒に、悪口を見掛けたら「やめた方がいいと言ってくれ」と頼んだ。担任は「(加害生徒は)問いただすと言い訳する生徒で、確証が取れないことは指導できなかった」などと述べている。夏休みが明けて悪口は継続し、11月になると常態化。黒板に書くこともあり、嫌がらせは無視する働き掛けに変わっていった。
(女子生徒)が入部した(ソフトボール部)は、1年生が三つのグループに分かれた。部活動の雰囲気に影響力を持つグループが、(女子生徒に)悪口とともに対立的な態度を取るようになった。1年生の人数が奇数で、ペアで行う(キャッチボールなど)の練習時には1人になることが多かった。(女子生徒は)6月ごろ母親に「いじめ」という言葉を漏らし、母親は担任に相談した。
7月1日の部活動中に(女子生徒)の頭部に(バット)が当たる事故があった際、両親は部活動を辞めるよう提案したが、「内申書に響くから」と退部には至らなかった。7月24日の(担任との)2者面談で、母親は部活動やクラスでの様子が心配だと伝えたが、孤立した状況の改善は見られなかった。
部活動の顧問は、特定の部員に悪口を言い、部内の雰囲気が悪くなっているとして、9月に1年生だけのミーティングを開いた。顧問は思っていることを陰口でなくみんなの前で言うよう指示した。(加害生徒を含む部員が女子生徒に)不満を述べたり、自分を変えるよう発言。(女子生徒は)「仲間外れにしないでください」「明るくなります」と泣きながら話した。
3学期始業式当日の(14年)1月7日、(友人)と一緒に登校した(女子生徒)は途中で様子が変わり、線路の方に向かった。「学校に行きたくない」「死にたい」「学校・部活・嫌だ」と言いだし、(友人に)「先に行ってていいよ」「早く電車来ないかな」と発言、「バイバイ」と手を振った。その後、午前7時55分ごろ、(JR山形新幹線にひかれ)自殺した。
本事案のいじめは「身体的攻撃」はほとんど認められず、悪口や陰口といった「言語的攻撃」と集団からの排斥といった「社会的攻撃」を中心とした「集団いじめ」と判断できる。いじめは(加害生徒)のみで行われたものでは決してなく、いじめ行為を同調・助長・加担していった周囲の加害生徒、暴走を傍観した多数の生徒や教職員がいることを忘れてはならない。
「いじめ」の傍観者のみならず、直接の加害生徒ですら「いじめ」に対する当事者意識や内省が明らかに不足していることも特徴である。学校におけるいじめが続いていなければ、(女子生徒の)自殺が生じていた可能性は非常に低いと判断でき、いじめ被害を受けたことが自殺の主要な原因であると判断できる。

【学校の対応】
本事案は、クラスと部活動の両者にまたがり起こった。当該中学は部活動を重視し、全員加入が原則で、3年間続けることを念頭に部活動を選択させる。学校生活で部活動が占める割合は大きい。部活動にもいじめ防止対策を含む安全義務がある。当該中学は、危険防止という意味の安全義務への配慮はあったが、生徒間の人間関係に起因するいじめ防止等対策義務が、意識されていたとはいえない。技術面のスキルを重視する一方、人間関係の問題は無方針で、当該中学のいじめ防止等対策の仕組みとの接合もなかった。
担任はクラスでの悪口が、部活動を含め(女子生徒に)及んでいることは容易に想像できたはずだが、相対的に情報を小さく評価し、顧問と連携したり中学全体の問題として共有したりしていない。6月中旬ごろ(女子生徒の)母親が、部活動でいじめられている、少なくとも孤立しているとの相談を担任にした。これは部活動の顧問に伝えられ、校内の教育相談・特別支援教育推進委員会に報告されたが、わずかな取り扱いだった。(母親は)7月24日の担任との2者面談で再度相談したが、担任と顧問が同委員会に報告した形跡はない。顧問らは(女子生徒が部活動で)1人になっている事実を把握しつつも大きなこととは考えず、有効な手だてを講じないまま、中途半端な指導をするだけだった。
9月の「こころの点検票」で(女子生徒は)「友達」について不安に思っているレベルを3から4に変更した。
「部活動で不安レベルが増し、友人関係で少し頑張れなくなり、とても不安」と自己評価したとうかがえる。担任は「4と出ているけど、何かあるのか」と聞いた。(女子生徒は)笑いながら「いや、大丈夫ですよ、先生」としたので、「何かあったら先生に言うように」「デイリーノートにも書いていいよ」と伝えたが、それ以上、具体的な対応は取らなかった。点検票は、問題を把握するせっかくの機会だったが、学年の教育相談主任、学年会で問題にされた形跡はない。レベルの程度に個人差があるとしても、変化には重要な情報が含まれていることは明らかで、問題を看過した理由にはなり得ない。一般に、いじめなど困難を抱えている生徒に対し「大丈夫です」との答えを引き出す問い掛けの問題点は指摘されている。「大丈夫か」と問い掛ければ、大丈夫でない場合でもあっても「大丈夫」と答えることは、今や常識。(女子生徒が)「大丈夫」と答えたことに対し、注意を要すると考えるべきだった。
【まとめ】 担任や顧問はいじめ等のリスクを評価し、起こりうる可能性等に注意を向ける必要があったが、表出した問題行動への場当たり的な対応にとどまり、その注意に欠けた。担任や顧問が(問題を)抱え込むのではなく、学校全体で共有し取り組む認識が各教員に浸透していなかった。顧問は結局、競技成績の向上を重視し、人間関係の問題に配慮せず、いじめ防止等対策が部活動でも主要課題との認識を欠いた。
(女子生徒は)謙虚に頑張るタイプで、頑張っている姿も、悩んでいる姿も表現するのが得手でなく、周囲に相談することも少なかった。それでも気になる兆候や様子など(学校が)対応をするに十分な情報が、保護者や他の生徒からの相談を含め担任、顧問、周囲の生徒等により把握されていた。しかし、情報は生かされることなく、結果的に見落とされ、いじめに対し有効な対応はなされなかった。

【提言】
(1)学校のいじめ防止等対策組織は名目的設置では足りず、防止対策などを学校全体の組織として情報を兆候事実を含めて集約し、実効性のある対応と措置ができる実質的内容を有するものでなければならない。
(2)部活動でもいじめは発生し温床となりやすいことを認識して、部活動を含む学校活動全体に対して組織的に防止対策を実施することが求められる。
(3)暴力を伴わないいじめ(心理的な嫌がらせなど)を過小評価せず、いじめが集団構造とその力関係の中で行われるものであり、日常的な悪口や嫌がらせでも被害生徒にとってはダメージが大きく深刻な事態を発生することを正しく認識した対応と措置を実践する必要がある。
(4)個別のいじめへの対応に際して、いじめの事実と兆候事実を認知した個々の教師が自分だけで情報価値の重みを判断し、取捨選択することなく全ての情報を共有すべきである。
(5)いじめを受けている子どもの中には周囲に相談せず、苦痛を表せず大丈夫だと振る舞う子どもがいること、人に伝えたときはいじめが進行していることを踏まえ、ささいな変化に留意し、子どもを守るための適切な対応を取ることが必要である。
(6)加害生徒への指導に当たっては、いじめであるかどうかに固執して認めさせ、単に叱責したり謝罪させたりするのではなく、自己の行為が相手に与える傷付きや苦しみを真に実感できるような認識に至るべく働き掛けることが重要。
(7)いじめについての相談、対応などを記録し、対策組織で共有し、対応が検証可能となるよう、記録を保管整理すべきだ。
(8)いじめの対応と解決を図る際には、いじめられた子どもの主体性と参加を重視し、適切な情報提供に努め、その意向を踏まえた対応が必要である。

【女子生徒自殺後の学校と市教委の対応】
市教委と学校は遺族から求められて情報開示と説明を行う受動的な対応が多く、遺族への情報提供の重要性に対する認識不足が感じられる。遺族に対し早期の段階で、いじめの調査や生徒アンケートの実施方針や結果報告の方法を示すべきだった。
市教委と学校は(自殺2日後の1月9日)、いじめの可能性が見えたら第三者委員会を設置する意識があり、原因を決めつけず対応したのは適切だった。いじめの存在を疑わせる警察情報や、いじめが記載されたノートの存在が指摘され、1月15日に第三者委設置に向けて具体的に動きだした対応は問題ない。
設置の際は遺族の意向を反映させる必要があるが、意見聴取の時間的余裕が与えられていたかは疑問が残る。
市教委は第三者委の要綱、委員の人選について、遺族が意見を1回でまとめて提案できるよう詳細に説明するなど、遺族とともに調査を進める姿勢を鮮明にすべきだった。結果的に遺族から要綱改定の要求が複数回出され、委員会活動が開始されるまで(自殺から)11カ月を要した。

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【10月7日付 河北新報】

天童市教委(山形県)は6日、天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題に関する第三者調査委員会の報告書について、第三者委の要請を受けて個人情報に加え、いじめの具体的な行為を記載した部分を黒塗りにした状態で、7日に公開する方針を明らかにした。
天童市内の16の小中学校にも配布する。
第三者委の野村武司委員長は5日の記者会見で(加害生徒の中には)今でもあまり重大ないじめを行っていたわけではないという認識の生徒もいるかもしれない」と指摘。具体的な事実は先生から直接話をすべきで「報道を通じて内容が伝わることは、ふさわしいとは思わない」と述べ、生徒への指導を優先させる重要性を強調した。
野村委員長は加害生徒が本年度で卒業することを踏まえ、在学中の指導に役立てるため、報告書の提出時期を決めたことも明らかにしていた。
市教委は提案に沿って、報告書134ページのうち黒塗りする部分を決めた。市学校教育課の長岡佳孝課長は「いじめがあった流れは理解できるようにする。具体的な行為を示すことが再発防止につながるとの観点から、時期をみて黒塗りを外す部分も考える」と述べた。
指導のタイミングについて、市教委は5日の記者会見で「遅くとも11月末までにはいじめに関係した生徒、保護者への指導を終えたい」と説明していた。

<天童いじめ自殺>情報共有の徹底指示

情報共有の徹底などを指示した水戸部天童市教育長

天童一中(山形県天童市)1年の女子生徒の自殺はいじめが主要な原因と認定した第三者調査委員会の報告書提出を受け、天童市教委は6日、臨時の小中学校校長会議を開き、いじめの未然防止や教員同士での情報共有の徹底を指示した。
水戸部知之教育長は16校の校長に対し「各校で認知したいじめ行為をする児童生徒に対しては、継続して十分な注意を払い指導をしてほしい。未然防止、早期発見に向けて組織体制の充実を図る必要がある」と強調した。
市教委が報告書に基づいて、いじめの事実関係や自殺との因果関係を説明した。冒頭、出席者は亡くなった女子生徒に黙とうした。

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【10月6日付 山形新聞】

学校でのいじめに悩んでいた天童市の女子中学生が自殺した問題で、第三者委員会は5日、いじめが自殺の主要因との内容を柱とした報告書を市教育委員会に提出した。報告書では、いじめにより女子生徒は「多大な心理的苦痛を受けた」と認定。女子生徒の様子がおかしいとの情報を教諭は把握していたにもかかわらず「いじめとして認知できず、適切な対応もできなかった」と、学校側の落ち度を認定した。
市教委と学校側は指摘を認め、遺族宅を訪問し「尊い命を救えず申し訳ありませんでした」と直接、謝罪した。
報告書によると、女子生徒は「物静かだが、謙虚に頑張るタイプ」とし、加えて、頑張っている姿や悩んでいる姿を表現するのが得意でなく、周囲に相談することも少なかったとの人物像を示した。
こうした状況ながら、担任や部活動を指導する教諭は学校でのアンケートなどで女子生徒がいじめに遭っていることを疑わせる兆候など、「対応に乗り出すのに十分な情報を得ていた」と指摘した。
情報を得ていながら適切な対応ができなかった背景について報告書は、教諭のいじめに対する理解と重大な事態を引き起こす可能性があるとの認識が「十分でなかった」と強調。結果、「場当たり的な対応にとどまった」と結論付けた。ほかの教諭も、生徒の中でいじめに遭っていることを疑わせる兆候を把握しても「組織的に共有する意識に欠けていた」と、学校全体がいじめに対し機能不全に陥っていたと指摘した。
また、女子生徒に対するいじめはクラス、部活動の同じ生徒で、「悪口や仲間外れなどの嫌がらせだった」と認定し、「多大な心理的苦痛を与えるいじめだった」と述べている。
再発防止策として、心理的な嫌がらせなど暴力を伴わないいじめを過小評価しないように求めた。
日常的な悪口や嫌がらせでも、受けた生徒にとってはダメージが大きく、深刻な事態を引き起こす可能性があることを認識するよう、訴えている。

報告書の概要は次の通り。
http://yamagata-p.jp/news/201510/05/pdf_2015100500001.pdf
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【河北新報】
<天童いじめ自殺>報告書、学校の対応批判

いじめを受けていた天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題で、第三者調査委員会は5日、「いじめが自殺の主要な要因」と明記した報告書を天童市教委に提出した。
いじめと自殺の因果関係を認め、学校の対応を「情報が共有されず組織として機能しなかった」と厳しく指摘した。
市教委は報告書を受け、遺族宅を訪問して初めて遺族に謝罪した。記者会見した佐藤通隆市教育委員長は「将来ある尊い命を救うことができず、おわびする」と述べた。
野村武司委員長(埼玉弁護士会)が会見で明らかにした報告書の概要によると、クラスと部活動で悪口や嫌がらせがあり、多大な心理的苦痛を与えるいじめがあったと認定した。自殺は衝動的ではなかったとの認識を示し「人間関係の輪に入っていけず、そこから逃れたい気持ちがあった」と、追い詰められて決意したと説明した。
調査では、女子生徒の人物像について、物静かで謙虚に頑張るタイプだったと分析。悩んでいる姿などの表現が得意でなく、友人らに相談することが少なかったとする一方で「関係する教師は気になる兆候や様子に対応する十分な情報を持っていた」と指摘した。
その上で学校、教師の対応については、部活動でいじめ防止の対策を取る義務の認識が欠け、クラスを含む学校生活全体で教師の理解不足からいじめを認識できず、場当たり的な対応にとどまったと批判。
「個々の教員に兆候の情報を組織的に共有する意識が欠け、機能を果たしていなかった」と断じた。
当初、市教委が第三者調査委の設置要綱について遺族に意見や要望を聴取しなかった問題点も指摘。
「網羅的に協議を重ねて、設置すべきであった」と対応を疑問視した。
女子生徒の母親は「いじめた側や、いじめをやめさせられなかった担任や部活動顧問の責任は重い。
学校が対応できなかったことにも、あらためて憤りを感じた」との談話を発表した。

[天童いじめ自殺]天童一中1年の女子生徒が3学期が始まる2014年1月7日午前8時ごろ、登校途中に山形新幹線にはねられて死亡した。自宅からは「陰湿な『イジメ』にあっていた」「ダレカ、タスけテよぅ」などと書かれたノートが見つかった。学校は1月15日、全校生徒約530人を対象にアンケートを実施、13人が女子生徒へのいじめを直接見聞きし、100人以上がいじめに関して記述した。第三者調査委員会は設置要綱と委員の人選などで市教委と遺族側が対立、発足は女子生徒の死から約11カ月後の14年11月末となった。13回の協議を重ね報告書をまとめた。

◎天童いじめ自殺第三者調査委員会の報告書骨子
・多大な心理的苦痛を与えるいじめが継続的にあった
・いじめが自殺の主要な原因となった
・学校はいじめの認識、理解に欠け、情報も共有されず組織として機能しなかった
・学校、市教委に抜本的対策提言

<天童いじめ自殺>相次ぐ悲劇阻止へ重い提言

【解説】天童市の中1女子自殺で第三者調査委員会が5日にまとめた報告書は、関係教師がいじめの情報を得ていたにもかかわらずいじめへの理解不足で認知できず、情報の共有と対応ができなかった実態を、学校が組織的に機能しなかったとして指弾した。
大津市の中2男子自殺事件を受けおととし9月にいじめ防止対策推進法が施行された後も、天童市を含めた東北、全国で、いじめの要因が指摘される子どもたちの自殺が相次いでいる。報告書は1事案にとどまらず、全ての学校、行政、保護者らに向けた検証、提言として重く受け止めたい。
いじめに気付いた母親は2度にわたって担任に相談し、女子生徒も校内調査で友人関係に不安を訴えて
いた。しかし強いSOSのシグナルは届かなかった。報告書はこの点を「いじめへの理解が十分でなく、
対策を取る義務の認識、情報を共有する意識に欠けていた」と厳しく指摘し、学校と教師に猛省を促した。
女子生徒の死から、第三者委発足は11カ月後、報告書提出は1年9カ月後となった。背景には当時の
校長が自殺後の記者会見で「いじめはなかったと思っている」と断定的に発言、学校は遺族から強く要求
されるまで積極的に調査に動かなかった経緯がある。
遺族は「事実が隠蔽される恐れがある」として、第三者調査委に中立、公平性の確保を強く求め、設置要綱と委員の人選をめぐって市教委との交渉が長引いた。学校と市教委には、遺族らとより真摯に向き合う姿勢が求められた。
「二度と同じ悲劇を繰り返してほしくない」。女子生徒の遺族らは訴え続けてきた。いじめ自殺が起きる度に繰り返される願いを、今度こそ無にしてはならない。(山形総局・伊藤卓哉)

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【10月6日付 河北新報】

報告書について説明する第三者調査委の野村委員長(左)

天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題で5日、いじめが主要な原因と認定した報告書をまとめた第三者調査委員会や、市教委、遺族の代理人が相次いで記者会見した。
調査委の野村武司委員長は「いじめの兆候となる情報を取捨選択せず、組織的に共有すべきだ」と指摘。市教委は遺族に初めて謝罪するとともに会見で「将来ある尊い命を救うことができなかった」と頭を下げた。遺族の代理人は、市教委から報告を受けた母親の様子を「学校や教育委員会の責任を追及する場面があった」と述べ、意見書を提出する方針を明らかにした。
「いじめへの理解が十分でなく、場当たり的な対応にとどまった」。134ページに及ぶ報告書を提出した野村委員長は記者会見で、担任教諭や部活動顧問を含む学校側の対応を「暴力を伴わない心理的ないじめも過小評価せず、微細な事実を重大な事実と受け止めるべきだった」と厳しく断じた。
女子生徒の母親は担任に2度も相談し、女子生徒自身も学校の調査に友達関係の不安を訴えたが、女子生徒の自殺後、学校側はいじめを認識した教職員が一人もいなかったと説明した。
「教師が知らず知らず情報の重要性を選別し、(いじめの)兆候となる情報を組織的に共有する意識に欠けていた。情報の価値、重みを選別せず全ての情報を共有すべきだった」と不備を追及した。
調査委は生徒や教職員、遺族らへの聴取から断片的な事実を把握し、いじめの全体像をあぶり出した。
暴力行為は認められなかったものの、「日常的な悪口や嫌がらせ」があったと断定。2014年1月7日、女子生徒は「死を決意して自宅を出たと考えられる。人間関係から逃れたい思いだったのだろう。決して、衝動的に死を選んだわけではない」と推し量った。
野村委員長は会見中、「ひょっとしたら、加害生徒は今も重大ないじめと思っていないかもしれない」と再三、懸念を口にした。報告書を加害生徒への指導に生かすことを強く求め、「亡くなった女子生徒がどんな思いだったか、よく考えてほしい」と強調した。
報告書には、再発防止に向けた八つの提言を盛り込んだ。子どものSOSを見逃さない対策と心構えを
具体的に記した。
「いじめを受けている子どもは『大丈夫か』と聞かれ『大丈夫』を装うのが普通。だから、いじめがあると言った時は事態は相当に深刻。わずかな変化に留意し、子どもを守るため適切な対応を取る必要がある」と指摘した。

<天童いじめ自殺>市教委が謝罪

報告書を受け、記者会見で謝罪する天童市の佐藤教育委員長(中央)ら 「将来ある尊い命を救えなかったことを衷心よりおわびする」。市教委の佐藤通隆教育委員長、水戸部知之教育長、相沢一彦天童一中校長は記者会見で頭を下げた。「報告書の指摘や提言は厳粛かつ謙虚に受け止め、いじめのない学校づくりに取り組む」と語った。
今春に定年退職した石沢照夫前校長の後を継いだ相沢校長は「学校が生徒の(SOSの)サインを受け止めた時、見過ごして良いものかどうかの見極めが十分でなかった。(いじめの)迅速な把握、対応にも課題があった」と釈明した。
水戸部教育長は「子どもの痛みを感じ取ることが基本だったろう。温かい人間関係ができているのかどうか、見極める力が私たちには求められる。あらためて、これでいいのかと問い直したい」と神妙に話した。
報告書の内容は遅くとも11月末までに、加害生徒を含む在校生に伝え、「いじめを強く認識させる指導」(相沢校長)を行う。加害生徒と保護者、関係教職員には遺族に謝罪するようあらためて指導する。
水戸部教育長は女子生徒の自殺後、市議会答弁などで「重い責任を感じる」と語っていた。記者会見では「責任の全うは辞めることではない」と強調し、佐藤委員長とともに引責辞任しない考えを明らかにした。

<天童いじめ自殺>遺族代理人「評価できる」

遺族代理人の安孫子英彦弁護士は5日、天童市内で記者会見し、報告書でいじめの事実といじめが自殺の主要な要因であることが認められた点に関し「評価できる内容だ」と話した。
市教委から報告と、初めて謝罪を受けた遺族の様子について「あらためて娘さんが亡くなったことに感情がこみ上げ、学校や教育委員会の責任を言葉にして追及するような場面があった」と明かした。
遺族は今後、報告書の内容を精査し意見書の提出を予定しているという。損害賠償請求など訴訟の提起は「選択肢として否定するわけではないが全く未定」と説明した。

<天童いじめ自殺>遺族がコメント発表

第三者調査委員会の報告書提出を受けて、遺族はコメントを発表した。全文は次の通り。

今回の報告書では娘がいじめられていたことが認められ、娘の残したノートに書き記したことが真実であったことが明らかになりました。いじめた側の責任や、いじめをやめさせられなかった担任や(部活動)顧問の責任は重いと思います。学校側が対応できなかったことについても、あらためて憤りを感じます。本日教育委員会から、謝罪を受けましたが、対応が遅く、父親に報告できなかったことは残念でなりません。もっと遺族に寄り添った対応があったら、こんなに時間が掛からなかったと思うと、返す返すも残念です。

<天童いじめ自殺>闘病の父、報告待たず死去

「娘はなぜ死を選ばなければならなかったのか」
女子生徒の死後、問い続けてきた父親が9月9日、第三者調査委員会の報告を受ける直前にがんのため
亡くなった。45歳だった。
自殺直後、娘の部屋からいじめを記したノートを見つけた。
「陰湿な『イジメ』にあっていた」「ダレカ、タスけテよぅ。私ヲ、『生』かしテヨゥ」 命を救えなかった自責の念にも駆られながら、事実関係の把握に動かない学校に対し、ノートの存在を伝えて徹底した調査を求めた。全校生徒に対するアンケート前には全校集会に出席し「本当のことを答えてほしい」と強く訴えた。
真実を知りたいという思いは、学校、市教委側との衝突につながった。第三者委に中立、公平性を求め、設置要綱と委員の人選に妥協はしなかった。
父親は取材の度にうつむきながら話した。「娘のことを考えない日はない。喪失感はいくら時がたっても消えない」。いじめの実態が「闇へ葬り去られるのではないか」と恐怖感も吐露していた。
いつも手には資料をまとめた膨大なファイル、幾度も読み返し無数の赤線が引かれたいじめ防止対策推進法の解説本があった。
ことし春から病状が悪化し、痛みに顔をゆがめる瞬間も多かった。初夏に会った際には「納得のいく調査結果を見るため、頑張りたい」と気丈に話していた。
第三者委が9月28日、いじめが自殺の主な要因と認定した報告書の概要を母親に説明した時、共に闘ってきた父親の姿はなかった。(山形総局・伊藤卓哉)

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