平成30年7月16日18:35 神戸新聞NEXT
神戸・中3自殺 再調査委で遺族が意見陳述/全文
再調査委員会の委員長に就任し、あいさつする吉田圭吾神戸大大学院教授(中央)=16日午前、神戸市役所
2016年10月、神戸市垂水区で市立中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らの聞き取りメモが隠蔽(いんぺい)された問題で、16日に発足した神戸市の再調査委員会で、女子生徒の母親が意見陳述した。全文は次の通り。
「まず、各方面においてご活躍中でご多忙の皆さま方が再調査委員会の委員としてご就任をご承諾いただき、心から感謝を申し上げます。また、神戸市長さまにおかれましては再調査の決断をしていただいたこと、こども家庭局や弁護士の先生方には、再調査開始にむけての段取りにおいて遺族の意見に耳を傾け、丁寧な協議を積み重ねていただき、感謝しております。皆さま本当にありがとうございます。
私の娘は、動物や絵を描くことや手芸が大好きな、素直で穏やかな心の優しい子でした。また優しさだけではなく、人に流されない自分の考えをしっかりもっていた強さもありました。
そんな娘が一昨年の10月6日の朝、いつものように『行ってきます』と家を出たまま、登校途中に自宅近くを流れる小川で自らの命を絶ってしまいました。私たちは、学校から、娘が登校していないとの連絡を受け必死に探しましたが、自宅のすぐそばである現場の近くまで行きながら見つけてあげることはできませんでした。
娘に対しては本当に申し訳なく思っております。
娘の死後、どうしてこんなことになってしまったか訳がわからず、現実のこととして受け止めきれず涙もでなかったのですが、娘の同級生たちからいじめがあったことを聞いた時は本当に驚きました。
たくさんの聞いたこともない生徒の名前、男子生徒の名前、担任の先生のパワハラ、学校におけるスクールカーストの話。
娘が生きている時に気付いてあげることができなくて本当に娘には申し訳なかったです。
それから私はいろいろな立場の生徒から、高校受験を控える中何度も足を運んでもらい、たくさん話を聞かせてもらいました。
娘がつらかった様子、いじめの話を聞くことは親として本当に言葉では言い表すことができないくらい、悲しく、悔しく、つらいことでしたが、それでも私は『娘に何があったかを知りたい』一心で聞き取りをしました。
その一方で第三者委員会も立ち上がり、私も当初はきちんと調査をしてくれるものと期待しておりました。
しかし、第三者委員会とさまざまなやりとりを重ねるうちにだんだんと不信感に変わっていきました。それでも私が聞き取ったようないじめに関することは第三者委員会も把握できているはずとの思いで昨年8月に受け取った報告書は、いじめの事実をいくつかは認めているものの、いじめの背景もわからない、いじめの広がりについてもふれられていない、自殺といじめの関係も明らかにしない、などいろいろな点において納得できるものではありませんでした。
また、その後の追加調査に応じないという第三者委員会の消極的な対応や、教育委員会によるメモの隠蔽など信じられないこともたくさんありましたが、今回、再調査という機会を与えていただきました。
新しい調査委員会の方々にお願いがあります。
娘の同級生によると、娘へのいじめは仲間はずれや陰口など陰湿でわかりにくく、周りの雰囲気や態度によるいじめと言っていました。分かりやすい暴力とかではないので、娘に対するいじめは、なかなか分かりにくいかもしれませんが、陰口や仲間はずれなどの陰湿ないじめによって精神的に追い詰められるつらさをいじめられる子の立場になって考えていただきたい、また親が思うように『何があったのか知りたい』という思いで調査をしていただきたいと願っております。
また、2年生の時の仲間はずれ・悪口・陰口といういじめは既に他の同級生・部活・男子生徒にまで広がっていたのではないか、それが3年生になった後にも継続し、さらに広がっていったのではないか、そして容姿中傷発言や身体的攻撃にまでつながっていったのではないか、を深く調査してほしいと思います。
2年次のいじめの一部は当時学校の知るところとなっていましたが、特定の生徒とのクラス分けで対応が終わってしまっています。この時に、いじめの広がりを学校がきちんと把握していれば、3年次にいじめが継続し、娘を苦しめ、絶望に追いやることはなかったのではないか、と悔やまれてなりません。2年次から、いじめ防止対策推進法や神戸市・学校のいじめ対策の指針に基づいた対策が取られていなかったことが、3年次のいじめの継続・広がりを招き、娘の自殺につながっていったのではないか、学校の対応の問題点も明らかにしていただきたいと思います。
私も娘の自死に対しては反省や後悔はたくさんあり、娘には申し訳ない思いでいっぱいです。しかしどんなに考えても、いじめがなかったらこんなことにはならなかったという考えにたどり着きます。
早いものでもう娘の死から1年9カ月が過ぎ、関係者はそれぞれの道を歩んでいる中で再調査の運びとなり、また事情を知っている生徒の記憶もあいまいになってきたりして、難しい面もあると思います。
しかし私は、もう二度と娘のようないじめに苦しむ子をだしてほしくはないです。
本件の再調査の事例が全国で同じようないじめで苦しんでいる人たちへのいじめ対策の一考となり、いじめの解決に少しでも寄与できればと願っております。
再発防止策につながる報告書となるよう、委員会におかれましては、娘に対して、どのようないじめがなぜ行われたのか、その背景を含めて、明確にしていただくとともに、娘がなぜ自ら命を絶つことになったのかを明らかにしていただくように切にお願い申し上げます。
以上よろしくお願い申し上げます」