2020年12月18日付神戸新聞NEXT

容赦ないいじり「怖かった」 神戸・女子中学生自殺、弁護人会見

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自殺した女子生徒が残したメモ。「学校疲れた」「死にたいな」などの文字が並ぶ=神戸市中央区(撮影・村上晃宏)

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自殺した女子生徒が残したメモ。「学校疲れた」「死にたいな」などの文字が並ぶ=神戸市中央区(撮影・村上晃宏)

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9月に亡くなった神戸市垂水区の中学3年生の女性生徒が残したメモを手に、概要を話す野口善國弁護士=18日午後、神戸市中央区(撮影・村上晃宏)

神戸市立中学校の生徒がいじめを苦に自殺した可能性がある問題で、遺族の代理人弁護士が18日、神戸市内で記者会見を開き、いじめの被害をほのめかす手紙を残していたと明らかにした。生徒は同市垂水区の中学3年の女子生徒=当時(14)=で、9月に自宅で自殺したと公表。「学校疲れた」などと書いたメモも残され、遺族は「なぜ娘が死ななければいけなかったのかを知りたい」と話しているという。

弁護士によると、9月5日朝、女子生徒が自宅の自室で亡くなっているのを家族が発見。前夜に自ら命を絶ったとみられる。

自室の机には「学校疲れた」「死にたいな」などと書かれたメモと、同級生の女子生徒6人に宛てた手紙と封筒があったという。

そのうちの1通には「部活でも学校でも容赦なくいじってきますね。まあどちらかと言えば楽しんでいるのでいいけど…部活の時と教室におる時、雰囲気ちがいすぎて怖かった」(原文)と書かれていた。ほかの手紙にも無視されるなどの仲間外れと思われる行為が記されていた。

また、8月中旬には、会員制交流サイト(SNS)でやりとりをする人に「学校始まって欲しくない」「始まったらまたいじめ」などと送っていたという。

代理人弁護士によると、女子生徒は父親の誕生日にケーキを作ってあげる、素直で明るい子だった。自殺を図ったとみられる日も登校し、家族も生前はいじめがあったと認識せず、学校側も弁護士から訴えがあった10月中旬までいじめは把握していなかったという。

一方、同市教育委員会はいじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と認定し、18日に第三者による調査委員会の初会合を開いた。委員長には松本隆行弁護士(兵庫県弁護士会)が選ばれ、「いじめの有無など、中立公正な立場で客観的に調査し、具体的な再発防止の提言につなげたい」と話した。(斉藤絵美)

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2020年12月8日付朝日新聞宮城版

いじめ調査、3校68人分の回答改ざん 講師を懲戒免職

いじめ調査改ざん

記者会見で謝罪する仙台市教育委員会の担当者たち=2020年12月7日、仙台市青葉区、徳島慎也撮影

仙台市が毎年実施しているいじめの実態調査で、いじめを訴える児童の回答を改ざんしたなどとして、市教育委員会は7日、市立七北田小学校(泉区)の荒木武講師(48)を懲戒免職処分にしたと発表した。改ざんは確認できただけで3校ののべ68人分。市教委は私文書偽造の可能性があるとして、警察に相談する。

市教委によると、荒木講師は11月、自分が受け持っている児童33人のいじめ調査の回答のうち、のべ24人分を無断で書き換えたという。

2人については、調査用紙ではいじめられたことが「ある」に丸印があったのに、「ない」に書き換えていた。いじめが「つづいている」や、いじめをしたのは「おなじクラスの人」などとした丸印も消していた。

さらに22人分について、学校がいじめ防止にしっかり取り組んでいるか聞く設問で、「すこしおもう」や「あまりおもわない」の回答を「おもう」にするなど、学校の対応をより高く評価する選択肢に書き換えていたという。

11月中旬、いじめを訴える児童の保護者との面談で、荒木講師が示した回答用紙と食い違っていることが判明。保護者が回答の控えを持っていたことから、改ざんが発覚したという。

市教委の調査に対して、荒木講師は2016、18、19の各年度にも、勤務先のそれぞれの学校で同様の改ざんを認めた。18年度はのべ28人分、19年度はのべ16人分の改ざんが確認されたという。16年度は用紙が破棄され、内容を確認できなかった。

荒木講師は臨時的任用職員で、「常に評価を上げなければ、将来の任用に影響すると考えた」と説明したという。

11年の大津市の中学生の自殺を機に、仙台市も13年にいじめ調査を始めた。子どもたちの声を拾い上げるためで、毎年11月に市内全域の小中高校などを対象に実施している。

市内では14年以降に中学生の自殺が相次いだ。市教委の谷田至史・教育人事部長は記者会見で、「いじめの未然防止と早期対応に努めてきたなか、書き換えが判明した。児童、保護者の皆さまに迷惑をおかけし、不安を生じさせ、心からおわび申しあげます」と謝罪した。

学校への信頼→失望感に

「驚きと戸惑いが一番。裏切られた気持ちです」。7日夕、七北田小に通う娘を持つ40代女性は、ため息をついた。学校からの保護者向けメールで、いじめ調査の改ざんを知ったという。

娘は学校で同級生から言葉の嫌がらせを受け、しばらく悩んでいたことがあった。「先生は味方だ。何かあったら守るからね」。そう言ってくれた担任に打ち明け、担任は何度も話を聞いて見守ってくれていたという。女性よりも先に担任に相談することもあったといい、「身近にいる先生は、子どもが一番最初に頼る存在なんだ」と学校に信頼を寄せていた。親子で感謝している

だけに、今回の件には失望感が募る。

「今後、子どもが先生に話せなくなって、つらいことを抱えてしまわないだろうか」。気がかりなのは子どもの心情だ。まだ娘は、事情を知らない。「親以上にショックを受けるはず。家に帰ったら、娘になんて伝えようか……」。そう声を落とした。

一方、七北田小の菅原邦子校長は取材に対し「信頼を損ねる非常に重大な事案。子どもたちと保護者に、大変申し訳ない」と陳謝した。いじめ問題は「子供の学校生活を守るためにきちんと把握して支援や指導をしていかなければいけないもの」という認識で取り組んできたという。

8日に全校放送で臨時集会を開き、問題の経緯や今後の対応について説明する予定で、後日、臨時の保護者会も開く。「市教委の指導も受けながら、より良い管理方法を考えていきたい。

きちんと説明とおわびを申し上げ、信頼回復に努めたい」と話した。(徳島慎也、大宮慎次朗、近藤咲子)

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2020年12月2日付朝日新聞福島版

いじめ調査結果、会津坂下町に開示命令 賠償訴訟判決

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判決を受けて会見に臨む江川和弥さん=2020年12月1日午後0時56分、県庁、飯島啓史撮影

会津坂下町開示2

判決を受け、会見で涙をぬぐいながら話した江川和弥さん=2020年12月1日午後1時8分、県庁、飯島啓史撮影

会津坂下町の中学校に通っていた長男へのいじめの調査結果が開示されなかったことをめぐり、父親が町に開示と110万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が1日、福島地裁であった。遠藤東路裁判長は町に対し、一部を除いて調査結果を開示し、11万円を支払うよう命じた。

訴状などによると、原告の江川和弥さん(56)の長男綱弘さんは2014年、中学1年の時に学校でいじめを受けて不登校になり、昨年1月に17歳で自ら命を絶った。

町教育委員会は17年、生徒や保護者を対象に、周りにいじめを受けている人がいるかなどを尋ねるアンケートをした。和弥さんは結果の開示を求めたが、回答した生徒らの個人情報への配慮などを理由に断られた。

判決は「調査結果から一部の情報を除けば特定の個人を識別できない」などとして、生徒の氏名や学年、委員会などの情報を除いて開示するよう命じた。

判決後の記者会見で和弥さんは「全面不開示とした町の判断が破棄されたのは当然」と強調。その上でこれまでの調査では事実関係が十分に解明されていないとして、町に再調査を求めていく考えを示した。

町は「判決の内容を確認した後、弁護士とも相談しながら対応を検討していく」としている。(飯島啓史)

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2020年12月2日付東京新聞群馬版

前橋高2いじめ1

亡くなった伊藤有紀さん=遺族提供

 前橋市の群馬県立勢多農林高二年だった伊藤有紀さん=当時(17)=が昨年二月に自殺したとみられる問題で、県いじめ問題等対策委員会が先月三十日夜に公表した調査報告書の概要は、いじめは亡くなった主要因ではないとする結論となった。父親(64)は取材に「亡くなる前に同級生に『死ね』と言われたことや、いじめを訴えるメモも多く残したのに、いずれもいじめと認められず、納得できない。亡くなった原因もいじめときちんと認めず、怒りを感じる」と語気を強めた。 (菅原洋、市川勘太郎)
 この問題では、同高が昨年三月に基本調査結果を公表。同一月にクラス発表の配役を巡り、同級生の言動に有紀さんへのいじめがあったと認定した。
 しかし、いじめの言動があった同じ日の直後に、有紀さんが「死ねと言われた」と訴えたことは証言がないとしていじめと認めなかった。有紀さんはその二週間後に亡くなった。
 さらに、有紀さんは醜いネズミ「ハダカデバネズミ」に似ているという趣旨を言われたことなどを二十七枚のメモに残していたが、いずれも証言がないとしていじめと認めなかった。
 このため遺族がいじめ委の調査を求め、昨年四月から弁護士や大学教授らが出席して二十三回開かれた。
 県教委といじめ委は三十日夜、県庁で記者会見。調査報告書は七十一ページだが、遺族の了承が得られていないとして四ページの概要の公表にとどめた。
 概要によると、基本調査がいじめと認定した配役を巡る同級生の言動は「配役が『何であいつなんだ』など(有紀さんを)非難する悪口を言った事実、苦痛を感じていた事実がある」としていじめと認定した。
 しかし、その直後に有紀さんが「死ねと言われた」と訴えた点は「確認できなかった」とした。
 二十七枚のメモもいじめとは「認定できない」とし、会見でいじめ委の小磯正康委員長(弁護士)は「メモのみでは認定できず、考え過ぎと考えられるものもあった」と説明した。
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記者会見する小磯委員長=いずれも前橋市で

 小磯委員長は亡くなった要因に触れ「いろいろなものが複合的だ。いじめの要因があったとしても主要ではない」と述べたが、詳細は「遺族の了承が得られていない」として繰り返し言及を避けた。
 同席した遺族推薦の臨時委員の池末登志博弁護士は「さまざまな点で委員が同じ方向を向いて議論したことはなく、論点で意見が分かれたこともある。最終的に一致させるようにした」と明かした。
 父親は「報告書はまず送ってもらい読んでから、小磯委員長から説明を受けるかや、公表するかについて判断したい」と考えていた。このため「遺族が報告書を受け取る前に、勝手に概要を公表したのは許せない」と憤った。
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2020年12月1日付朝日新聞

前橋の高校生自殺、いじめ「主要因ではない」 第三者委

前橋高2いじめ

群馬県教育委員会に調査結果を答申する第三者委員会の小磯正康委員長(左)=2020年11月30日午後4時1分、群馬県庁、森岡航平撮影

群馬県立高校2年の女子生徒(当時17)が昨年2月に自殺し、遺族が「学校でのいじめが原因だった」と訴えている問題で、県教育委員会が設置した第三者委員会は30日、調査結果を県教育長に答申した。いじめにあたる言動があったと認める一方、「自死の要因としては主要なものではない」「複合的なもの」とし、自殺との因果関係は認めなかった。

遺族の要望で昨年4月に設置された第三者委は、大学教授や弁護士らが同級生や教職員、両親らへの聞き取りやアンケートをもとに事実関係を検証し、再発防止策を話し合ってきた。

亡くなる直前に学校行事の配役をめぐり、他の生徒の「何であいつなんだ」などの発言に女子生徒が苦痛を感じていたとみられる点を、「いじめ」と認めた。学校の調査もこれをいじめと認定しており、新たないじめは確認されなかった。

第三者委の詳細な報告書は「遺族の了解が得られていない」として30日時点では公表されなかった。答申は、学校で教職員がいじめを正確に認知できる態勢が整っていなかったと指摘し、徹底した研修の実施などを求めた。(森岡航平)

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2020年11月30日付朝日新聞兵庫版

15年前の小5いじめ再調査へ 「隠蔽止める」父の執念

神戸市小5再調査

取材に思いを語った被害者の父親=県内

神戸市立小学校で15年前に当時小学5年の男児が同級生から暴行や金銭の要求を受けたいじめ問題で、神戸市教育委員会が再調査を決め、調査委員会が動き出した。

15年前のいじめの再調査という異例の対応は、父親(57)が市議会に陳情を繰り返してきた結果だ。なぜ父親はこだわるのか。

この問題では、父親らは加害者3人の保護者を相手取って提訴し、神戸地裁と大阪高裁がそれぞれ、金銭要求や暴力行為があったと認め、加害者側に慰謝料の支払いを命じた。

一方、市教委は当時の調査が不十分だったことを理由に、現在まで「いじめの可能性が高いが、断定はできない」との立場を示している。

「陳情が採択されてから調査委設置までにも約1年かかり、ようやく始まったという思い」。今月18日に調査委の初会合が開かれ、父親はそう話した。

神戸地裁の判決によると、いじめは2006年2月、男児が父親の財布から抜き取った1万5千円を同級生に渡すところを父親が目撃して発覚。学校は学年集会で、生徒間で「きもい」など言葉によるいじめや多額の金銭授受があったと説明。校長は市教委に「恐喝1件、いじめ1件」があったと報告していた。

だが裁判で市教委が神戸地裁で提出した回答書に父親は驚いた。「いじめと恐喝があったかなかったかは断定できない」とあったからだ。

回答書には「被害者の保護者の要望で本人に聞き取りができなかった」「被害者が転校し事実確認ができない状態が続いた」などと調査が続けられなかったとする理由が列挙されていた。

だが父親は「担任や生徒指導教諭は何度も自宅まで来て聞き取りをしていた」と話す。

「調査自体を隠蔽しているのでは」。父親はそんな不信感を募らせた。

判決の確定後、父親はいじめや部活動中の事故などの被害者でつくる「全国学校事故・事件を語る会」に入会。他のいじめ被害者の話を聞くうちに、学校や市教委がいじめを隠そうとしたと疑われるケースがあることを知った。

当事者が自殺して語れないことも少なくない。「幸い、息子は生きていて証拠もある。これを突破口にいじめの隠蔽を止めたい」。再調査を求め、11年から市議会に陳情を始めた。

「訴えても無駄か」。諦めかけていたとき、垂水区で16年に自殺した中学3年の女子生徒をめぐり、神戸市教委がいじめ内容を記した調査メモを隠していたことが報道された。

「構造的な問題だ」との思いを強め、市議会への陳情を再開。16回目の陳情が昨年初めて採択された。

父親は「調査してほしいのはいじめではなく隠蔽の有無だ」と言う。「今までやってきたのは他の子どもたちのため。被害者を黙らせることがいじめ解決になっている構造を変えたい」と話す。

市教委の担当者は「当時の担任と教頭が被害者本人から話を聞けたのは1回だけだったと話している上、昨年から被害者本人の思いを聞きたいとお願いしてきたが受け入れてもらえなかった」とする。当時の校長が市教委に提出した報告書については「いじめの疑いがあった時点で出す資料。裁判で主張が一転したわけではない」と話している。(遠藤美波)

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2020年11月25日付神戸新聞

宝塚市立中で体罰の教諭 全国的に異例の懲戒免職

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宝塚の体罰問題で、男性教諭の懲戒免職処分について説明する兵庫県教育委員会の稲次一彦教職員課長(中央)=兵庫県庁

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部活動中に男子生徒2人に柔道技をかけてけがを負わせたとして傷害罪で教諭が起訴された宝塚市立長尾中学校の体育館=宝塚市長尾町

 兵庫県宝塚市立長尾中学校の柔道部顧問が、部活動で生徒2人に背骨を折るなどの重軽傷を負わせた問題で、県教育委員会は24日、傷害罪で起訴された教諭の男(50)について「指導の範疇(ちゅう)をはるかに超えた。体罰とすら呼べない」などとして懲戒免職にしたと発表した。現場にいたにもかかわらず暴行を傍観した副顧問の男性教諭(42)は減給10分の1(3カ月)の懲戒処分とした。

生徒児童への体罰や傷害を理由に、公立学校の教職員が免職となるのは全国的にも異例。県教委は宝塚市教委に体罰防止の研修などを要請した。

起訴状などによると、男は9月25日、柔道部OBが差し入れたアイスキャンディーを勝手に食べられたことに立腹。1年生の男子部員に投げ技や寝技をかけて、背骨を折る全治約3カ月の重傷を負わせたとされる。別の男子部員にもけがをさせた。

男は11~13年にも生徒に体罰を3度繰り返したとして、減給などの懲戒処分を受けていた。男は「最初は厳しめの指導と思っていたが、大変なことをやってしまった」と反省しているという。

副顧問の教諭は「制止できず後悔している」と話し、部活動の指導から外された。県教委は指導監督が不十分だったとして、男性校長も戒告処分とした。

処分を受け、宝塚市の中川智子市長は「一歩間違えば生徒を死に至らしめた事件。厳しい結果は当然」と語った。同市教委が被害者家族に被害届を出す判断を委ねたことに対しては、学校や市教委が体罰事案を警察に報告、告発する制度を検討すると答えた。

(斉藤絵美、名倉あかり)

 

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2020年11月23日付毎日新聞

暴言、暴力、恐喝、エアガンで撃たれ…中学でのいじめ 被害男性が今、伝えたい思い

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いじめを受けていた時期の2012年9月に中学1年だった佐藤さんが担任に提出した作文(コピー)。「いじめをなくしたい」のタイトルで被害をほのめかす内容だったが担任は気付かなかった=2013年4月10日、田中韻撮影

同級生が撃ち続けたエアガンの弾は、やがて痛みすら感じなくなり、体をすり抜けていく感覚だった――。中学時代にいじめを受けた男性が、法廷で語った耐えがたい日々。

男性は、重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しみながら、前を向くため、顔も名前も公表して裁判を続けている。「いじめで苦しむ子が少しでも減るような世の中になれば」。

そう言って18日に福岡高裁の法廷で男性が紡ぎ出した言葉を詳報する。【宗岡敬介】

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福岡高裁での弁論後に記者会見する佐藤和威さん=福岡市中央区の福岡県弁護士会館で2020年11月18日、宗岡敬介撮影

男性は、佐賀県鳥栖市の専門学校生、佐藤和威(かずい)さん(21)。同市の市立中1年だった2012年に同級生から繰り返し暴行や恐喝などのいじめを受けてPTSDになったとして、同級生8人と市などに計約1億2800万円の損害賠償を求めた訴訟を家族とともに闘っている。18日は控訴審の第1回口頭弁論だった。

「この度は、陳述の機会を与えていただき、ありがとうございます」。佐藤さんの意見陳述が始まった。「中学入学直後から、私へのいじめは始まりました。暴言・暴力、金銭の恐喝、エアガンで撃たれるなど、何もない日はありませんでした」。いじめは12年4月から約7カ月間続いたと訴えている。「『学校の先生に助けを求めればよかったのでは?』とも言われますが、担任の先生は私が暴力を受けている時も、見て見ぬふりをしていました。そんな先生に相談することはできませんでした。いじめに苦しむ人は、その場をしのぐことで精いっぱいで、どこに助けを求めてよいのか分かりません」。さらに「『親に相談したり、学校に行かなければよかったのでは?』と言われます。当時母は病気で入院しており、私は医者から『再発する可能性があるから、心配させないように』と言われていました。加害者から『ばれたら、母や妹に危害を加える』と脅され、親に相談することも逃げることもできませんでした」と、誰にも頼れない状況だったことを明かした。

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2012年4月から繰り返し受けた暴行で男性の左膝にできた大きなあざ。同年10月25日に撮影された=家族提供

執拗ないじめは続いた。「周りを取り囲まれ、背後から首を絞められたり、殴られたり、蹴られたりしました。カッターの刃を突き付けられ、目の前でのこぎりを振り回され、恐怖で体が硬直し、頭の中が真っ白になりました。やがて暴行を受けても痛みを感じなくなり、私に向かって撃たれたエアガンの弾が、体をすり抜けていくような感覚になりました。暴力を受けすぎて、もう振り払う手も、逃げる足も、助けを呼ぶ口もなくなっていました。どんどん私が壊され、私が私でなくなっていったのだと思います」

いじめは別の同級生が学校側に訴え、12年10月に発覚した。「発覚直後から今日まで、私は何度も自殺未遂を繰り返したそうです。人ごとのような言い方ですが、決して『死のう』と決意して行ったのではないのです。私の中には別の私がいるみたいです。今話をしている私の他に、いじめられていた当時の私や、自分が誰かも分からない人がいるようです。ある時何の前触れもなく、いきなりいじめられていた当時の状況が目の前に現れます。そして私が私でなくなるのです。そうなると、自分をコントロールすることができなくなってしまいます。自殺未遂はそのような状況で起こったのだと思います」

今なお続くPTSDの症状も明かした。「今も火や刃物が怖く使うことができません。水が怖く、プールやお風呂に入ることもできません。私と年の近い人や学生服の集団とすれ違うと、恐怖で体が硬直します。加害者や当時の同級生に会うかと思うと、一人で電車に乗ることも店に入ることもできません。いくら『大丈夫だ』と言い聞かせても、息苦しくなり体が反応してしまうのです。

知らないうちに記憶が飛んでしまい、夢か現実か、自分がどこにいるかも分からなくなってしまうのです」

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提訴時の記者会見で、佐藤さんが書いた手紙「10年後の自分へ」を読み上げる母親。「死んだりするな」などとつづられていた=佐賀市で2015年2月19日、生野貴紀撮影

理解してくれた家族の助け

長く暗いトンネルの中でも、命を絶たなかったのは家族のおかげだと言う。「死なずに済んだのは、家族の体を張った助けがあったためです。母は『こんな目に遭って、加害者や学校に腹が立たないの?』と聞かれるそうです。母は『息子を生かすのが最優先で、加害者や学校に腹を立てている余裕がない』と答えています。医者は私の症状について『重いPTSDで、治ることは難しい』『これだけ重症で生きている人はいない』と話しています。多くの人は絶望するでしょうが、母は『治らないなら、慣れればよい』という姿勢で、私に関わってきました。

そんな母の関わり方は、周りから見れば突拍子なく見えるでしょうが、その関わりや、それを理解し支え合ってきた家族の協力があったからこそ、生きてこれたのです」

そして、裁判を闘う決意を固めた思いをこう表現した。「私はこれからもPTSDを抱えながら生きていかなければなりません。そのためには『なぜ自分がこのような状況になったか』ということをはっきりさせることがどうしても必要なのです。学校・教育委員会が明らかにしてくれない以上、私にできることは裁判によってはっきりさせることでした」

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佐賀地裁=佐賀市で2020年8月25日、竹林静撮影

15年2月、佐賀地裁に提訴した。しかし、19年12月に言い渡された判決には「正直あぜん」とした。判決は、同級生2人にエアガンで撃たれたことなどでPTSDを発症したと認定。

この2人に計約380万円の賠償を命じた他、同級生8人が佐藤さんから計約30万円を恐喝したとして、8人に連帯して賠償するよう命じた。一方、エアガンを撃った場所や恐喝を受けた場所の多くが校外だったなどとして、市に対する安全配慮義務違反の訴えは退けた。

「判決を受けた日、私は名前も顔も公表しました。事実がねじ曲げられたことへの怒りがありました。『僕は本当のことしか言っていない。やましいことはない』『うそをついて逃げ回る教師や加害者とは違う』ということを明確にしたいという思いがありました。自分に起こったこと、これまでの道のりを振り返った時、不退転の覚悟を持って臨もうと思ったからです」と話した。

苦しみから抜け出すには

そして、佐藤さんは、今もどこかで起きているかもしれないいじめを思い、メッセージを発した。

「いじめは本当に恐ろしいです。いじめた側は何事もなかったように生活していますが、いじめられた側は日々おびえながら生きています。そして、その被害は一生続きます。いじめられた人は誰かに助けてもらわなければ、その苦しみから抜け出せません。それを多くの人に分かってもらいたいと思います。私は、12歳だった当時の僕のため、そして同じようにいじめ被害に苦しむ人のために、もう一度、勇気を振り絞って闘いたいと思います。この裁判を通して、いじめで苦しむ子が少しでも減るような世の中になることを心から願っています」

 

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2020年11月13日付毎日新聞

愛知・中3自殺訴訟 名古屋地裁支部が和解案提示 「一宮市が請求額9割支払う」内容

愛知県一宮市立中学3年の男子生徒(当時14歳)が2017年2月に自殺したのは、担任教諭との関係が悪化したのに学校が適切な対応をしなかったためなどとして、両親が市に損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁一宮支部(坪井宣幸裁判長)は12日、市が請求額の約9割を支払うなどとする和解案を示した。両親の代理人弁護士によると、学校側の安全配慮義務違反や予見可能性など原告の主張をほぼ認める内容。

訴状によると、担任教諭は生徒らにばかりプリント配りをさせたほか、体育祭の組み体操で手を骨折した際も配慮がなかったとしている。進路指導で別の教諭から受験について心ない発言もされ、生徒が強いストレスを抱えたとした。生徒は17年2月6日夜、大阪市の商業施設から飛び降りた。直前に友人に渡したゲーム機に「担任に人生全てを壊された」と記していたという。

和解案では、担任との不和などで強い精神的負担や葛藤を抱えていた生徒に、受験直前の面談で進路指導教諭が「全部落ちたらどうする」と発言したことに、「衝動的に自死を選択することは予見できた。通常の受験生でも強い衝撃を受ける。生徒の心情を理解し寄り添う姿勢が感じられない」と指摘。「無用に強い精神的不安、失望など負荷をかけるもので安全配慮義務違反に当たる」とした。

両親の代理人弁護士は「ほぼ我々の主張を認めている。和解案をしっかり受け止めたい」と話し、生徒の母親は「本人が帰ってくるわけではないが、訴えが裁判所に認められたことはよかった」と語った。

市側は自殺と学校側対応に因果関係はないとして請求棄却を求めてきた。取材に対し担当者は「和解案の内容を確認していきたい」と話した。和解の成立には市議会に諮る必要がある。次回和解協議は12月定例市議会後の同月24日に開かれる。【川瀬慎一朗】

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2020年11月13日付北海道新聞電子版

高1自殺 母親の控訴棄却 札幌高裁 顧問の叱責「不適切」と認定

札幌高1自殺

亡くなった生徒の遺影を手に改憲する生徒の姉(右)と母親

札幌市の道立高1年の男子生徒=当時(16)=が2013年に自殺したのは、所属する吹奏楽部の顧問の男性教諭から叱責されたのが原因として、生徒の母親(53)が道に対し、約8400万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、札幌高裁は13日、母親の控訴を棄却した。長谷川恭弘裁判長は、顧問の叱責を不適切な指導と認めたが、自殺の予測は困難だったとして法的責任を否定。自殺後の高校の対応に限り、道に110万円の賠償を命じた一審札幌地裁判決を支持した。

判決によると、生徒は13年1月、他の部員とメールのやりとりなどでトラブルとなり、同年3月には別の発言を巡って顧問から「俺の子どもが言われたら、おまえの家に怒鳴り込んで名誉毀損で訴える」と叱責された。部活を続ける条件として、部員に一切メールしないことなども要求され、生徒は翌日に自殺した。

判決理由で長谷川裁判長は、自殺前日の顧問の言動について、「丁寧な事実確認がなく、条件を示した理由も判然としない」と述べ、不適切と認めた。「生徒を混乱させ、自殺の契機になった」とも指摘した。

ただ、自殺には他の部員との関係も影響しており、「死を招くほどの心理的負荷を伴う指導とまでは言えない」とした。自殺の兆候が多く見られたともいえず、叱責叱責後に防ぐのは困難だったとして、一審に続いて顧問の責任を認めなかった。

一方、高校が自殺原因の調査のため、在校生にアンケートを行ったが、道教委が規定する5年間の保管期限に違反し、回答文書を廃棄したと認定した。「母親が自殺原因を調べる資料に利用できなくなり、保護者の利益が侵害された」と判断し、高校を設置する道に賠償を命じた一審判決を支持した。

判決を受け、道教委は「主張が認められたと考えるが、厳粛に受け止める」とコメントした。(中秋良太)

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