平成30年6月8日付毎日新聞

葛飾・中3自殺 区長「いじめに該当」 第三者委報告覆す

 いじめが「自死への衝動に影響、可能性は否定できない」とも

東京都葛飾区立新宿(にいじゅく)中3年の男子生徒(当時)が2014年4月に自殺した問題で、青木克徳区長は7日、区の見解を公表し、ジャージーを下ろそうとされたなどの行為は、いじめ防止対策推進法に定義されたいじめに該当すると結論づけた。「いじめと認められない」とした第三者委員会の報告書を覆した形だ。青木区長はさらに、いじめが「自死への衝動に影響を与えた可能性は否定できない」とも踏み込んだ。【川村咲平、福沢光一】

いじめの定義について、いじめ防止対策推進法は「心理的、物理的な影響を与える行為で、対象となった児童らが心身の苦痛を感じているもの」と定義する。しかし第三者委は、法律ではなく「社会通念上、いじめと評価できる行為」を基に判断。他の生徒が男子生徒に霧吹きで水をかけたり、ジャージーを下ろそうとしたりした行為は「いじめと認められない」と答申した。

青木区長は同日開いた記者会見で、第三者委の報告書を「率直に受け止める」とする一方「区の責任として問題を考えた場合、いじめの定義は法律に照らして広く捉える必要がある」と指摘。「小さなきっかけをいじめと認識し、速やかに発見して適切に対応すべきだ、という区の強い思いを反映した」と説明した。

区によると、3月に報告書が発表された後、内容に関して区に数十件の問い合わせがあり、大部分は「いじめと認定すべきではないか」という意見だったという。

青木区長が公表した見解には、今後の対応策も盛り込まれた。「心身の苦痛を感じる行為はいじめで、重大な結果につながる可能性がある」との認識に立ち、児童や生徒に命の大切さや思いやりについて繰り返し指導することを明記。区長や教育委員会で構成する総合教育会議で、生徒の心身の安全に配慮した指導体制などを検討し、再発防止に取り組むとしている。

男子生徒の自殺をめぐっては、区教委が当初、遺族などに「事故死」との認識を示し、不服申し立てを受けて再調査を始めた経緯がある。青木区長は「初動で十分に対応できなかったことは反省している」と陳謝。「区としての結論(見解)を出したことは前進で、再発防止に努力したい」と述べた。

教育評論家の尾木直樹さんの話 区が「いじめ」と認めたことを評価する。第三者委の「社会通念上、いじめではない」という答申を排除し、いじめ防止対策推進法に基づき認定した。

第三者委は批判されるべきだ。いじめと自殺の因果関係を「可能性は否定できない」と結論付けたのは半歩前進。ただ、いじめと自殺の因果関係を認定することは非常に難しい。

 

葛飾区の中3自殺「いじめ」調査の経緯

2014年 4月 9日 区立新宿中3年の男子生徒が部活動のペア決めがうまくいかず黙り込み、他の部員にジャージーを下ろそうとされたり、霧吹きで水をかけられたりした。

男子生徒は学校を出て自殺した

14年 6月 4日 生徒の両親から、部員らへの聞き取り調査を求める要請文が学校に届く

14年12月 1日 区教委に「学校の調査が不十分」として再調査を求める要請文が両親から届く

14年12月15日 区教委が両親に「再調査の予定はなく、いじめを起因とした事案ではない」とする文書を送付

15年 2月 4日 両親の代理人弁護士が区教委に再調査を求める文書を送付

15年 2月13日 区教委が「いじめ・不登校対策検討委」を設置すると弁護士に返答

15年 3月18日 検討委は「継続的ないじめはなく、遺書等もないため、生徒たちの行為と死亡について因果関係があるかどうかは、ないと言わざるを得ない」と結論

15年 9月16日 弁護士が再調査を求める文書を青木克徳区長に送付

15年11月 6日 区教委が見解を改め「いじめと評価しうる行為」とした文書を弁護士に送付

16年 3月28日 区が第三者委員会を設置

18年 3月28日 第三者委員会は「遊びの範囲内で社会通念上のいじめに当たらない」とする報告書を青木区長に答申

18年 6月 7日 青木区長が答申を覆し、一連の行為を「いじめに該当する」とした区の見解を公表。自殺への衝動に影響を与えた可能性も「否定できない」とした

 

「いじめに該当、正しい判断」自殺男子生徒の遺族がコメント

自殺した男子生徒の遺族は7日、コメント文を発表した。他の生徒から受けた一連の行為を、区が「いじめに該当する」と結論づけたことに「正しい判断をしていただけた」と一定の評価を示した。

一方で、いじめが自殺に影響を与えたかどうかについて、区が「可能性は否定できない」と判断したことに、「影響があったと明確に判断されなかった点は、大変残念に思う。

大きく影響したと考えている」という思いを表した。

第三者委員会が3月「いじめによる自死とは認められない」とする報告書を答申した際、遺族は「思いもよらない内容で、到底納得することができない」として、報告書の再考を求めていた。

この日取材に応じた遺族側代理人の弁護士は、遺族が現在、第三者委がどのような検討を重ねたのかを検証していると明らかにした。ただ、遺族はコメント文の中で「いまだはっきりしないことも多々あるが、長い時間の経過を考えると、これ以上の調査は難しいものと受け止めている」とも記している。

弁護士は「静かな生活を送りたいと望む一方で、何があったのか知りたいとも考え、葛藤し続けてきた」と遺族の心境を代弁し、法的措置を含む今後の対応について「具体的に考えていることはない」と述べた。

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平成30年7月24日神戸新聞

宝塚・女子中生転落死 いじめ防止対策委が市に答申

宝塚市中2女子

宝塚市役所=宝塚市東洋町

兵庫県宝塚市内のマンションで2016年12月、市立中学校2年の女子生徒=当時(14)=が転落死した事案を調査してきた第三者委員会「市いじめ防止対策委員会」(会長=石田真美弁護士)は23日、調査結果報告書を森恵実子教育長に答申した。同市教育委員会は今後、遺族に内容を説明した上で「公表するかどうかを総合的に判断する」とした。

弁護士や臨床心理士、大学教授らで構成する第三者委は16年12月から事実関係などを調査し、計44回の審議を重ねた。当初は昨年11月をめどに結果を示すとしたが、大幅にずれ込んだ。

答申までに約1年7カ月を要した理由について、石田会長は「委員にそれぞれ専門分野があり、かなり議論があった」と委員間で意見の相違があったことをにじませた。

答申を受けた森教育長は「痛ましい出来事を二度と繰り返さないよう、学校現場、教育委員会一丸となって再発防止に取り組む」とコメントした。市教委は今後、文部科学省のガイドラインに沿って遺族との協議や市長への報告などを行う。(中島摩子)

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平成30年7月20日神戸新聞

神戸・中3自殺 市教委、隠蔽を中学の保護者会で謝罪

垂水中2自殺

神戸市垂水区で2016年10月、中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らへの聞き取りメモが隠蔽された問題で、女子生徒が通っていた市立中学校で19日、保護者説明会が開かれた。市教育委員会が設置した第三者委員会の調査結果などが報告され、参加者からは「なぜ女子生徒が亡くなったのか釈然としない。学校で何があったのか、きちんと明らかにしてほしい」などの声が上がった。(井上 駿、広畑千春)

保護者向けの説明会は、女子生徒が亡くなった約10日後に行われた後はなかったといい、PTA会長らが市教委に要望し、この日の開催に至った。非公開で約1時間半あり、卒業生・在校生の保護者ら約250人が参加した。

冒頭、後藤徹也教育次長が、保護者への説明が遅れ、さらにこの問題で学校教育への信頼を損ねたことに対し謝罪。市教委によると、いじめを含む複合要因により女子生徒が自殺したという第三者委の見解▽市教委の首席指導主事によるメモ隠蔽の指示▽市こども家庭局の再調査への移行-などを説明したという。

第三者委の報告書は信頼性が失われ、再調査も決まっているため詳細は明らかにしなかった。保護者からは「再調査の結果を報告してほしい」という要望や、うわさの流布などによる生徒への負担を懸念する声もあったという。子どもが女子生徒と同学年だったという母親は「隠蔽問題の話が多く、2年近くたっているのにいじめについてほとんど説明がなかった。

処分を含め、市教委や学校は誠実に対応してほしい」と話した。

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平成30年7月19日毎日新聞

救急要請遅れか マニュアル具体的指示なし

梅坪小1熱中症1

梅坪小1年男児の死亡について会見する豊田市教委の鈴木直樹・学校教育課長(左)と藪下隆・梅坪坪小校長=豊田市役所で2018年7月18日午後5時25分、中島幸男撮影

梅坪小1熱中症2

ほとんど日陰のない和合公園=愛知県豊田市京町で2018年7月18日午後1時29分、中島幸男撮影

梅坪小1熱中症3

愛知県豊田市立梅坪小1年生の男児(6)が17日に校外学習後、熱射病で死亡した。同市では18日も最高気温39.7度と連日の猛暑が続く。授業中の痛ましい事故はなぜ防げなかったのか、再び悲劇を繰り返さないための対策は。【中島幸男、岡村恵子、三浦研吾】

「大事な命を守れず本当に申し訳ありません」。一夜明けた18日朝、体育館で全校児童約730人を前に籔下隆校長が謝罪した。

男児は学校へ戻ると風通しの良い教室の一角で休んだが、体調が急速に悪化、20分後に意識を失った。119番し病院へ向かったのはその20分後だった。市教委は「養護教諭を教室に呼んで対処したり、AED(自動体外式除細動器)で救命措置をしたりしており、搬送までにロスした時間はない」と説明する。

しかし、日本救急医学会の対処法では、軽症の「1度」でも改善しなければすぐ病院へ搬送を求める。一方、市教委が5月に各校に配布したマニュアルには「適切な処理を行う」とあるだけで、どんな症状なら急いで119番すべきかなど具体的な指示はない。県教委によると、初任者研修のほか熱中症を扱う教員研修はないという。

熱中症に詳しい三宅康史・帝京大病院高度救命救急センター長は「そもそも帰り道で男児が『疲れた』と言った段階で歩かせるのをやめるべきだった」と指摘。「子どもは暑い場所に長くいるのはよくない。単に日陰でなく冷房のきいた場所で『質のいい休憩』が必要で、車を同伴し体調が悪くなったら乗せるなど安全への工夫が不可欠だ」と求めた。

県内の小中学校のエアコン設置率(昨年4月)は27.8%と、香川県92.3%や東京都84.5%より少ない。太田稔彦市長は2021年までにエアコンを全校に新設する計画の前倒しを表明した。

 

市長「対策不十分だった」

校外学習をした和合公園は約1万1000平方メートルと広く、あずまや2棟のほか強い日差しを遮る樹木はほとんどない。18日昼も耐えがたい暑さで人影はなかった。

太田市長は18日の定例会見で「対策が不十分だった。中止の判断もあり得た」と陳謝した。県教委も同日、県内の公立校に対し「熱中症が危惧される場合は行事の縮小・中止も検討を」と再発防止策の徹底を通知したが、中止の判断基準は示していない。

熱中症の研究に取り組む国立環境研究所の小野雅司・客員研究員(環境疫学)は事故の当時、5日連続で愛知県内に高温注意情報が出ていたことに注目。「暑い日が続くことで体に疲れが蓄積しており、明らかに危険な状況だ」と指摘する。さらに、今の生活様式が続く限り、地球温暖化で熱中症の患者は今後増えると強調。学校や公共機関などは天気予報だけでなく、熱中症の危険度を知るため、環境省が明後日までの各地の予測値を公表している「暑さ指数」を見て、指針に従うことが必要だと訴えた。

 

暑い中なぜ…保護者説明会

豊田市立梅坪小では18日夜、保護者への説明会が開かれた。約400人が参加して2時間続き、十数人から発言があったという。6年生の父親は「校長は判断ミスだと謝罪した。

泣いている保護者も多く、私はただ悔しい気持ち」と話した。

後半は保護者から今後の対策や対応についての質問が集中したといい、別の児童の父親は「なぜこんな暑いのに外に出したのかという厳しい意見も出て、私も同じ気持ちだ。しかし、学校が今後、親から集めた意見を取り入れて対策を取ると示したので期待したい」と苦渋の胸の内を明かした。

終了後、籔下校長は報道陣を前に今後の対策を説明した。学校としての熱中症マニュアル作成▽「暑さ指数」に基づく「熱中症メーター」を校内6カ所に設置▽授業中に水分補給の時間を設ける▽塩分補給タブレットや保冷剤入りのクーラーボックスを用意する--などの内容。学校行事の中止や延期などの見直しも進めるとし、まずは来週開かれる予定だった市内6小学校の合同スポーツ大会が中止になったと話した。籔下校長は事故当日の対応について「別のやり方があったはずだ」と述べ、学校の責任に言及した。【黒尾透】

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平成30年7月19日付神戸新聞

神戸・中3自殺 生徒アンケに「いじめ」文言なし

神戸市垂水区で2016年10月、市立中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らの聞き取りメモが隠蔽された問題で、学校側が生徒に実施したアンケート調査の質問に「いじめ」という文言が入っていなかったことが18日、同市教育委員会などへの取材で分かった。遺族の代理人弁護士は「いじめの情報を把握しながら、それを前提としないアンケートで不十分」と指摘している。

アンケートは、同級生らへの聞き取りの約1週間後に文部科学省の指針に基づき、在校生に実施した。市教委は女子生徒がいじめを受けていた可能性を明示せず、女子生徒の様子を尋ねたという。一方、同時期に発足した加古川市の第三者委では、第三者委がアンケートを作成し、いじめの有無を明確に尋ねる内容になっていた。

神戸市教委によると、アンケートでは、いじめられていたことを示す回答が含まれていたが、代理人は質問の趣旨にいじめが明示されていれば、より具体的な情報が多く得られたなどとしている。

市教委は「アンケートは文科省の指針にのっとり、有識者にも意見を聞いて実施した。対応が適切だったかどうかは、市の再調査委員会の判断に委ねたい」としている。(井上 駿)

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平成30年7月19日東京新聞

愛知小1男児熱射病死 校長「判断甘かった」

愛知小1男子熱

校外学習から帰った児童が熱射病で死亡し、謝罪する梅坪小の籔下隆校長(手前)ら=愛知県豊田市役所で

市立小の一年男児(6つ)が校外学習後に熱射病で死亡した愛知県豊田市の太田稔彦市長は十八日の記者会見で「異常気象を踏まえた対策としては不十分だった」と校外学習を中止しなかった学校の判断の誤りを認め陳謝した。市教育委員会は市立学校百四校に、高温下での活動の中止や延期を検討するよう通知。男児が通っていた梅坪小は再発防止に取り組むが、専門家は「猛暑が続く中、全国どこの学校でも起こり得る」と警鐘を鳴らす。

市は、来年度から三年間で市立学校の全教室にエアコンを設置する計画を前倒しする検討を始めた。梅坪小は同日、全校集会を開き、籔下隆校長が児童に「大事な命を守れず、本当に申し訳ない。校外学習を中止できず、判断が甘かった」と謝罪した。

校外学習は、学校から約一キロ離れた公園で遊ぶことを目的としていた。徒歩で移動中、男児は列から遅れ担任に「疲れた」と訴えたが、そのまま公園に向かった。

名古屋大の内田良准教授(教育社会学)は「炎天下であえて行く必要があったのか。途中で連れ帰る判断もできたはず」と指摘する。内田氏は約百十人を各担任四人で引率したことも問題視。校外では養護教諭も同伴するなど、教員を増やす必要があったという。

同小は再発防止のため、児童にスポーツドリンクの持参や保冷剤を包んだタオルなどで首を冷やすよう呼び掛けた。内田氏は「部活動は当然、エアコンのない屋内でも注意が必要」と訴えた。

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平成30年7月19日NHK首都圏ニュース

高校生自殺でいじめ有無を再調査

3年前、都立高校の男子生徒が自殺した問題で、東京都は、いじめがあったかどうかを調べた東京都教育委員会の調査が十分に尽くされていないとして、再調査を行うことを決めました。 3年前、都立高校の1年生の男子生徒が、山梨県内の駅で線路に飛び降りて自殺した問題では、生徒の母親がLINEなどにいじめが疑われる記述があったとして調査を求めましたが、東京都教育委員会の調査部会は去年9月、「いじめがあったと判断することは極めて困難」と結論づけました。 遺族からの再調査の求めを受けて、東京都が設置した専門家による検証チームは、教育委員会の調査は遺族との信頼関係を築けていなかったため、十分に尽くされてないという結論を19日までにまとめました。 これを受けて、都はいじめがあったかどうかを再調査することを決め、新たな調査委員会を設置することになりました。 この中では、遺族の同意が得られず、調査が行われていなかった、自殺した生徒のスマートフォンの解析や、遺族に対していじめがあったと証言したとされる人への聞き取り調査を行うということです。 再調査について、男子生徒の母親は「息子の無念の思いを真摯に受け止めて、きちんと再調査を行い、息子の人権と名誉が回復されることを望んでいる」と話しています。

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20180719/0015018.html

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平成30年7月18日中日新聞

熱射病、豊田の小1死亡 校外活動後、教室で悪化

17日正午ごろ、愛知県豊田市の市立梅坪小学校の教室で、小学1年生の男子児童(6つ)が意識不明で倒れ、病院に運ばれたが約1時間後に死亡した。死因は熱中症の中でも重症な「熱射病」とみられる。男児は、学校近くの公園で午前中にあった校外活動で疲れを訴え、教室に戻った後に容体が悪化した。

市教委学校教育課の鈴木直樹課長は「学校の教育活動の中で、児童の命がなくなるという重大な事態が発生した。亡くなられた男児と保護者に深くおわびする」と陳謝した。県警も、学校関係者から事情を聴くなどして、死亡に至った経緯を調べる。

市教委や学校によると、1年生4クラスの計112人は担任教員4人と午前10時ごろ、学校から約1キロ離れた和合公園に向けて歩いて出発した。約20分かけて到着したが、男児は途中で「疲れた」と話し、他の児童から遅れることもあり担任の女性教員が励ましたという。公園で児童たちは虫捕りやすべり台などの遊具で30分ほど遊び、徒歩で学校に戻った。

帰り道でも男児は「疲れた」と訴えた。午前11時半ごろに学校に戻ってからは、教室で担任教員が付き添って様子を見ていたが、唇が紫色に変色し、次第に意識が遠のいたため119番した。

亡くなった男児を含め、児童たちは熱中症対策のため帽子をかぶり、水筒を持参していた。担任らも小まめに水分補給するよう指示していたという。

男児のほかに女児3人が学校に戻ってから「頭が痛い」などと体調不良を訴え、うち1人は嘔吐し保護者が学校に迎えに来た。

この日早朝、気象庁は県内全域に「高温注意情報」を発表していた。名古屋地方気象台によると、豊田市の気温は午前9時には30・4度を記録。午後2時すぎには37・3度まで上がった。

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平成30年7月16日18:35 神戸新聞NEXT

神戸・中3自殺 再調査委で遺族が意見陳述/全文

垂水中3遺族意見陳述

再調査委員会の委員長に就任し、あいさつする吉田圭吾神戸大大学院教授(中央)=16日午前、神戸市役所

2016年10月、神戸市垂水区で市立中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らの聞き取りメモが隠蔽(いんぺい)された問題で、16日に発足した神戸市の再調査委員会で、女子生徒の母親が意見陳述した。全文は次の通り。

「まず、各方面においてご活躍中でご多忙の皆さま方が再調査委員会の委員としてご就任をご承諾いただき、心から感謝を申し上げます。また、神戸市長さまにおかれましては再調査の決断をしていただいたこと、こども家庭局や弁護士の先生方には、再調査開始にむけての段取りにおいて遺族の意見に耳を傾け、丁寧な協議を積み重ねていただき、感謝しております。皆さま本当にありがとうございます。

私の娘は、動物や絵を描くことや手芸が大好きな、素直で穏やかな心の優しい子でした。また優しさだけではなく、人に流されない自分の考えをしっかりもっていた強さもありました。

そんな娘が一昨年の10月6日の朝、いつものように『行ってきます』と家を出たまま、登校途中に自宅近くを流れる小川で自らの命を絶ってしまいました。私たちは、学校から、娘が登校していないとの連絡を受け必死に探しましたが、自宅のすぐそばである現場の近くまで行きながら見つけてあげることはできませんでした。

娘に対しては本当に申し訳なく思っております。

娘の死後、どうしてこんなことになってしまったか訳がわからず、現実のこととして受け止めきれず涙もでなかったのですが、娘の同級生たちからいじめがあったことを聞いた時は本当に驚きました。

たくさんの聞いたこともない生徒の名前、男子生徒の名前、担任の先生のパワハラ、学校におけるスクールカーストの話。

娘が生きている時に気付いてあげることができなくて本当に娘には申し訳なかったです。

それから私はいろいろな立場の生徒から、高校受験を控える中何度も足を運んでもらい、たくさん話を聞かせてもらいました。

娘がつらかった様子、いじめの話を聞くことは親として本当に言葉では言い表すことができないくらい、悲しく、悔しく、つらいことでしたが、それでも私は『娘に何があったかを知りたい』一心で聞き取りをしました。

その一方で第三者委員会も立ち上がり、私も当初はきちんと調査をしてくれるものと期待しておりました。

しかし、第三者委員会とさまざまなやりとりを重ねるうちにだんだんと不信感に変わっていきました。それでも私が聞き取ったようないじめに関することは第三者委員会も把握できているはずとの思いで昨年8月に受け取った報告書は、いじめの事実をいくつかは認めているものの、いじめの背景もわからない、いじめの広がりについてもふれられていない、自殺といじめの関係も明らかにしない、などいろいろな点において納得できるものではありませんでした。

また、その後の追加調査に応じないという第三者委員会の消極的な対応や、教育委員会によるメモの隠蔽など信じられないこともたくさんありましたが、今回、再調査という機会を与えていただきました。

新しい調査委員会の方々にお願いがあります。

娘の同級生によると、娘へのいじめは仲間はずれや陰口など陰湿でわかりにくく、周りの雰囲気や態度によるいじめと言っていました。分かりやすい暴力とかではないので、娘に対するいじめは、なかなか分かりにくいかもしれませんが、陰口や仲間はずれなどの陰湿ないじめによって精神的に追い詰められるつらさをいじめられる子の立場になって考えていただきたい、また親が思うように『何があったのか知りたい』という思いで調査をしていただきたいと願っております。

また、2年生の時の仲間はずれ・悪口・陰口といういじめは既に他の同級生・部活・男子生徒にまで広がっていたのではないか、それが3年生になった後にも継続し、さらに広がっていったのではないか、そして容姿中傷発言や身体的攻撃にまでつながっていったのではないか、を深く調査してほしいと思います。

2年次のいじめの一部は当時学校の知るところとなっていましたが、特定の生徒とのクラス分けで対応が終わってしまっています。この時に、いじめの広がりを学校がきちんと把握していれば、3年次にいじめが継続し、娘を苦しめ、絶望に追いやることはなかったのではないか、と悔やまれてなりません。2年次から、いじめ防止対策推進法や神戸市・学校のいじめ対策の指針に基づいた対策が取られていなかったことが、3年次のいじめの継続・広がりを招き、娘の自殺につながっていったのではないか、学校の対応の問題点も明らかにしていただきたいと思います。

私も娘の自死に対しては反省や後悔はたくさんあり、娘には申し訳ない思いでいっぱいです。しかしどんなに考えても、いじめがなかったらこんなことにはならなかったという考えにたどり着きます。

早いものでもう娘の死から1年9カ月が過ぎ、関係者はそれぞれの道を歩んでいる中で再調査の運びとなり、また事情を知っている生徒の記憶もあいまいになってきたりして、難しい面もあると思います。

しかし私は、もう二度と娘のようないじめに苦しむ子をだしてほしくはないです。

本件の再調査の事例が全国で同じようないじめで苦しんでいる人たちへのいじめ対策の一考となり、いじめの解決に少しでも寄与できればと願っております。

再発防止策につながる報告書となるよう、委員会におかれましては、娘に対して、どのようないじめがなぜ行われたのか、その背景を含めて、明確にしていただくとともに、娘がなぜ自ら命を絶つことになったのかを明らかにしていただくように切にお願い申し上げます。

以上よろしくお願い申し上げます」

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平成30年7月16日18:35神戸新聞NEXT

神戸・中3自殺 市設置の再調査委が発足、初会合

垂水中3遺族意見陳述

再調査委員会の委員長に就任し、あいさつする吉田圭吾神戸大大学院教授(中央)=16日午前、神戸市役所

2016年10月、神戸市垂水区で市立中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らの聞き取りメモが隠蔽された問題で、市が設置した再調査委員会の初会合が16日、同市役所であった。黙とうの後、意見陳述した女子生徒の母親は「娘に対してどのようないじめが行われたのか、なぜ娘が命を絶つことになったのかを明らかにしてほしい」と訴えた。

いじめ防止対策推進法に基づく再調査で、市教育委員会の設置した第三者委員会は昨年8月、容姿中傷発言などをいじめと認定する調査報告書をまとめたが、今年4月、遺族は自殺との関連など調査が不十分として久元喜造市長に再調査を申し入れた。その後、第三者委が「破棄」と扱っていた聞き取りメモの隠蔽が発覚。久元市長が再調査を決め、弁護士、精神科医ら委員5人を選任した。

会合では、久元市長が「いじめへの学校の対応や、事案発生後の学校・教育委員会の対応の問題点を明らかにし、具体的な再発防止策を提言してほしい」とあいさつ。委員長には吉田圭吾・神戸大大学院教授(臨床心理学)が選ばれた。

生徒の母親は意見陳述で悪口や仲間外れなど第三者委が認定したいじめについて、関連性や広がりを生徒間の関係や学校の対応など背景を含めて調べるよう求めた。

吉田委員長は会見で「遺族の気持ちに寄り添いつつ、公平中立な調査を進めたい」と述べた。今後、弁護士ら数人を補助委員に任命し、関係者への聞き取り調査などを行い、年内にも報告書をまとめる。(井上 駿、広畑千春)

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