2022年11月23日付朝日新聞デジタル

先輩からの行きすぎた指導「シメ」の実態調査 熊本工の高1自死問題

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熊本工業高校の生徒の自死について、会見で経緯を説明する県教委の担当者=2022年11月7日午後4時58分、熊本市中央区の熊本県庁、大貫聡子撮影
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第三者委員会の初会合であいさつする白石伸一教育長=2022年11月16日午後6時0分、熊本市中央区、大貫聡子撮影
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熊本工業高校の生徒の自死をめぐり調査方法を話し合う県教育委員会の第三者委員会=2022年11月16日午後6時5分、熊本市中央区、長妻昭明撮影

 熊本県立熊本工業高校1年の生徒(16)が10月に自死した問題で、生徒が部活動の人間関係の悩みを相談していたほか、一部の保護者から「シメ」と呼ばれる先輩から後輩への行きすぎた指導を指摘する声も上がっている。学校が実態を調べている。

 県教育委員会によると、学校は11月8日に保護者説明会を開催。生徒が部活動の人間関係について顧問などに相談していたことなどから、県教委が設置する第三者委員会でいじめの有無や自死との関連などを調べることを報告した。

 その中で、「生徒が所属していた部活動でシメがあった。それが影響したのではないか」と発言した保護者がいたという。学校はこの問題が起きる前から、先輩からの厳しい指導で精神的苦痛を受けている部員が複数いることを把握していたとして「あしき伝統が残っていたら改善しなければならない」と答えたという。

 学校は、シメの実態を把握するため、部員全員にアンケートを実施している。結果はいじめの有無を調べている第三者委員会に報告し、委員会がシメと自死との関連についても調べる方針。

 熊本工の保護者が指摘した部活動での「シメ」は、別の公立高の元生徒が部の先輩から丸刈りを強制されたなどとして県に損害賠償を求めた裁判でも原告側が問題として指摘していた。「シメ」とはどんなものなのか。熊本工で自死した生徒と同じ部に、10年ほど前に所属していた女性が取材に語った。

げた箱前に呼び出され…泣く部員も

女性は、入学前からこの部活動の指導は厳しく、「シメ」もあると聞いていた。しかし、厳しい環境に身を置くことで上達すると考え、入部した。

入ったらすぐに先輩からあいさつの仕方など部のルールを教えられた。ルールを破れば、部活動終了後に昇降口のげた箱前に呼び出され、先輩に一対一で注意された。この注意の口調が厳しく、泣く部員が多くいた。1カ月で複数の新入部員が退部した。

同級生の中には、1人呼び出されて複数の先輩から注意を受けた部員もいた。女性は「根性をたたき直すために、後輩1人に対して先輩が大人数で注意したり、後輩を泣かせたりすることがあった。

これがいわゆるシメだと思う」と話した。

先輩が後輩を個別に呼び出すため、部員間でもどれほど厳しい指導があったかは分からない。

部内にはこの指導を問題視する意見はなく、「むしろ厳しい指導があってこその熊本工業という声が多くあった」と語る。

女性も「私はシメを受けたことがなかったが、当時は部を強くするためには必要な指導だと思っていた」と振り返る。一方「シメに苦しむ部員が多くいるのであれば、今すぐなくして欲しい」と訴えた。(長妻昭明)

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2022年11月22日富山新聞デジタル

富山北部中3女子自殺 遺族「いじめで不登校」 学校側「いじめと捉えず」

説明会に出席するため学校を訪れる保護者

説明会に出席するため学校を訪れる保護者

報道陣の取材に応じる桑嶌校長=富山市北部中

報道陣の取材に応じる桑嶌校長=富山市北部中

富山市北部中

富山市北部中

富山市北部中に通う3年の女子生徒(15)が19日に自殺していたことが21日、市教委への取材で分かった。関係者によると、遺族は生徒が学校でいじめを受けて昨年夏ごろから不登校になったとしている。一方、北部中や市教委は「人間関係のトラブルはあったが、いじめとは捉えていない」と主張。同校では21日夜、保護者向け説明会が開かれ、出席者からはいじめの有無について質問が集中したという。北部中によると、生徒は学校に複数回相談していたといい、市教委が経緯を調べている。

市教委によると、平成に入って以降、市内でいじめを理由に小中学生が自殺した事例はないとみられる。

北部中から市教委への報告では、生徒は1年以上前から不登校だった。不登校の理由については「人間関係のトラブル」としており、いじめに遭っているとは認定していなかった。

学校で定期的に実施しているいじめに関するアンケートや教諭との面談では、この生徒から不登校になるまで「いじめられている」との回答、相談はなかったという。

同校からの報告では、生徒が不登校となってから同校の教頭と生徒本人、保護者らが月2回、面談を続けていた。今月も1度面談していた。市教委は今後、面談での具体的な内容も確認する。

北部中の堀篤史教頭によると、学校は相談を受け、関係した生徒から聞き取りをするなど指導や支援を続けていた。堀教頭は「トラブルに関しては、本人の中で落ち着いていたととらえていた」と述べ、死亡との関連は調査中とした。

生徒の自殺を受け、同校では午後7時40分ごろから体育館で保護者向けの説明会が開催された。非公開で約1時間半で終了した。

出席者の一人によると、学校側は桑嶌一彦校長、堀教頭らが出席。学校側からの経緯説明後、出席者との質疑応答に移った。

学校側からは生徒が1年生の頃に同級生との間でトラブルが起き、不登校になったと説明があった。複数の出席者から「学校はなぜいじめではないと言い張るのか」などと質問が相次いだが、明確な理由は説明されなかった。「学校の責任があると、深く受け止めてほしい」などと厳しい意見が相次いだという。

説明会後、報道陣の取材に応じた桑嶌校長は生徒の問題は「いじめではない」との認識を示した上で、「保護者の方に十分納得してもらうことができず残念。再調査も検討している」と述べた。

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2022年11月21日付朝日新聞

後絶たない、学校の「指導死」 息子亡くした大貫さん「管理職が責任もつ体制ない」

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学校現場での「指導死」をなくすための活動を続けている大貫隆志さん

福岡市の私立博多高校で2020年、当時15歳だった剣道部の女子部員が自殺したことをめぐり、学校側が顧問からの暴言や暴力が原因だったと認め、遺族との和解が成立した。教員の不適切な指導による子どもの自殺が後を絶たないのはなぜか。息子が学校で指導を受けた直後に自殺し、一般社団法人「ここから未来」を立ち上げて学校での体罰やいじめなどについて調査・研究を続ける大貫隆志さん(65)に聞いた。

「また、学校での指導が原因で子どもの命が失われてしまった。悲惨な前例がいくつもあるのに、いまだに自分事としてとらえていない学校が少なくない」 大貫さんは今回の件についての報道を受け、無念さをにじませた。

00年、中学2年生だった大貫さんの次男、陵平さん(当時13)が自殺した。学校でお菓子を食べたことを教師にとがめられ、1時間半にわたって叱られた翌日だった。

亡くなった博多高校の女子生徒は顧問から繰り返し暴言を浴びていたほか、他の部員の前で地面に倒すといった暴力を受けていた。

大貫さんは「明らかに通常の指導を逸脱しており、刑事事件として扱われてもおかしくない」と語る。

教員に叱られたり、体罰を受けたりして子どもが自殺に至る事態は「指導死」とも呼ばれ、全国で繰り返されてきた。

学級内や部活内など状況に違いはあるが、背景にある構造は共通していると大貫さんは指摘する。

「学校の管理職が責任をもって指導死を防ごうという体制になっていない」。悪質な場合には顧問や管理職の刑事責任を問うことも必要だと訴える。

また、管理職は不適切な指導をしている教師に注意したつもりでも、言われた本人は深刻に受け止めていないという例も多いという。

「『今はコンプライアンスが厳しいから、ほどほどに』といった中途半端な注意の仕方では意味が無い。

子どもの命を守るためには、管理職に、より明確に責任を持たせて、暴言や暴力をやめさせる仕組みでなくてはいけない」

博多高校の剣道部では、暴力を振るった顧問以外にも複数の教師が練習に顔を出していたが、自殺を防ぐことはできなかった。

大貫さんは「複数の人の目があっても、不適切な指導をする教師の方が立場が強くて意見できなかったり、同じような意見を持った人の集まりだったりした場合は意味をなさない」と話す。

校外に通報窓口、体罰発覚例も

指導死を防ぐために、どんな対策が考えられるのか。

大貫さんは比較的実現可能性の高い案の一つとして「透明性を高めるため、暴言などの不適切な指導を目撃した人から通報を受ける学校外の窓口を行政が設置し、その存在を周知すること」を挙げる。

既に、体罰を目撃した教師や生徒、保護者からの通報を受ける窓口を設けている自治体もある。

実際に、練習試合を見ていた他校の保護者からの通報で体罰が発覚した事例もあるという。

大貫さんは、こうした窓口を全国的に整備し、体罰だけでなく、学校での不適切な指導全般が問題だと周知すべきだと訴える。

さらに、隠蔽を防ぐため、不適切な指導を学校側が隠そうとした場合には重いペナルティーを科す正直に申告した場合には軽くする――といった仕組みづくりも必要だという。

指導死の撲滅に「特効薬はない」と語る大貫さん。「一部の保護者から、部活動で良い成績を残すために『厳しい指導を』と望む声がある。どうしたらいいか」。自身の講演を聞いた現役の教師から、今でもそんな相談をされることが少なくないという。

大貫さんは言う。

「教育現場の覚悟が問われている。子どもの命と天秤にかけていいものなど、ないはずだ」(武田啓亮) 

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2022年11月17日付熊本日日新聞

元担任の男性教諭、複数児童へ体罰など計42件 熊本市の中1自殺

男性教諭の体罰や暴言、不適切な行為などを説明する熊本市教育委員会の幹部ら=17日、熊本市中央区

2019年に自殺した熊本市立中1年の男子生徒を小学6年時に担任した男性教諭が市の第三者機関から複数児童への不適切指導を指摘された問題で、市体罰等審議会は17日までに、男性教諭の言動2件を「不適切な行為」と認定した。審議会が設置される前に市教委が認定した40件と合わせ、男性教諭の体罰や暴言、不適切な行為などは計42件となった。

市教委が、記者会見で説明した。42件はいずれも、男子生徒が在籍した小学校で1418年度に発生。男性教諭は現在は別の市立校に勤務しているが、市教委は「事態を重く受け止め、現場での勤務は当分の間させない」とした。17日午後には学校を離れ、今後は研修などを受けるという。

市教委は男性教諭の新たな体罰などの情報を集めており、必要な調査をした上で12月の審議会で議論。年内の処分を検討している。

男性教諭を巡っては、市教委が203月、不適切な言動の疑いがある157件のうち40件を体罰などに認定。審議会が残る117件のうち、第三者機関が指摘した2件を新たに不適切な行為とした。

大きな声を出すことが困難な児童に対し、大声を出すよう強く指導した行為などだった。

市教委は、認定した40件には自殺した生徒への行為も含まれると説明。男性教諭については、204月の審議会設置後も2件の相談があり、このうち現在の市立校で216月に起こした1件も不適切な行為に認定されていたことも明かした。授業中に児童の胸元を引っ張ったという。

生徒の自殺を巡っては、市の詳細調査委員会が10月、男性教諭の不適切な指導で抑うつ状態となった可能性が高く、自殺の一因になったとする報告書を公表した。(臼杵大介)

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2022年11月17日熊本日日新聞

いじめ関与の生徒名、熊本地裁が県に開示命令 県央の高3自殺巡る訴訟

県の第三者機関がまとめた調査報告書の黒塗り部分を示す遺族=10月中旬、熊本市中央区

2013年4月にいじめを理由に自殺した県央の県立高3年の女子生徒=当時(17)=の遺族が県と同級生8人に計約8340万円の損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁が県に対し、いじめに関与した同級生らの名前を黒塗りする前の「いじめ調査報告書」の提出を命じたことが16日分かった。県は命令を不服として、福岡高裁に即時抗告している。

女子生徒の自殺を調査した県の第三者機関は15年1月、「いじめが自死の要因の一つ」とする報告書を公表。いじめに関わった生徒の名前が黒塗りだったため、詳しい事実関係は遺族も分からなかった。遺族は21年5月、「真実を知りたい」として提訴した。被告の生徒8人は自ら

調べて特定した。

遺族側は21年8月、生徒の名前が黒塗りされていない調査報告書の開示を求める文書提出命令を地裁に申し立てた。これに対し、県は「公務員の職務上の秘密に関する文書であり、公務の遂行に著しい支障を生じる恐れがある」として申し立ての却下を求めた。

地裁は22年5月、「遺族が事実関係を正確に知りたいと思うのが当然の心情」とし、全てを開示した調査報告書の提出を県に命令。調査対象者の中で、信頼関係を損なう可能性がある証言者の名前は除くとした。「外部の者に開示される場合とは異なり、遺族との関係では秘密性は低い」とも指摘した。

訴状によると、女子生徒は体育大会のダンス練習の際、複数の同級生から「なんで踊れんと」などと中傷され、自殺。遺族は「いじめ行為で死を選んだことは明らか」と主張したほか、学校側もいじめを把握しようとせず、安全配慮義務を怠ったと訴えている。(臼杵大介)

遺族「いじめた側を守るのは納得できない」

いじめに関わった生徒名の開示を巡り、自殺した県立高3年の女子生徒の遺族は「いじめた側を守り、子どもを失った側が守られないのは納得できない」と主張する。一方、県は今後のいじめ調査に影響を及ぼしかねないとして、開示命令を拒んでいる。

県の第三者機関が公表した調査報告書は、いじめに関わった生徒の名前が黒塗り。遺族はほかの生徒らに聞き取るなどして、被告の同級生8人を特定した。住所は同窓会名簿で調べた。

ただ、報告書が黒塗りのため、誰がどんな関与をしたのか分かっていない。

県は熊本地裁に意見書を提出し、名前を開示しない理由を説明。調査報告書が訴訟の証拠になると想定していないことや、今後起き得る同様の事態を十分に調査できなくなる恐れがある

ことなどを挙げた。

これに対し、遺族代理人の阿部広美弁護士は「抽象的な危険を理由に情報が隠蔽されるのは不当。加害者を守るような対応は、いじめ被害の根絶につながらない」と県を批判する。

子どもの自殺を巡る和水町や熊本市の調査に第三者の立場から関わった元教諭の河崎酵二さん(73)=宇城市=は「第三者機関に強い調査権はなく、協力を得るにはプライバシー保護への配慮が必要。個人名を公にするのと遺族に開示するのは別問題だと思うが、簡単に答えは出せない」と説明。「調査の当初段階から遺族に寄り添っていれば、争いにならなかったかもしれない」と、県の調査のあり方に疑問を投げかけている。(臼杵大介)

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|2022年11月14日付熊本日日新聞

中1自殺の元担任、前年に別児童への暴行容疑で起訴猶予 熊本市教委は処分せず

2019年に自殺した熊本市立中1年の男子生徒を小学6年の頃に担任し、市の第三者機関から不適切な指導が指摘された男性教諭が自殺の前年、別の男子児童に対する暴行容疑で書類送検されていたことが14日、分かった。熊本区検は起訴を見送ったものの、犯罪の成立を認める

起訴猶予処分にした。

関係者によると、男性教諭は18年4月、入学式の準備をしていた男子児童の胸ぐらをつかんで用具入れに押しつけた。児童は約1週間の首の打撲と診断されたほか、不安や恐怖を訴える急性ストレス反応が出た。県警に告訴した保護者は熊本区検の不起訴処分(起訴猶予)を不服とし、

検察審査会に申し立てたが、不起訴相当と議決された。

市教育委員会は起訴猶予を把握していたものの処分はせず、「男性教諭が関わったほかの事案を含め、まとめて処分してほしいと保護者側から要望があり、保留にした」と説明。処分は今後検討するという。男性教諭は現在、別の市立校に勤務。校長によると、男性教諭は「取材の目的、内容を事前に通知してもらい、考えを整理した上で話したい」と言っている。

一方、男子児童は学校に居づらくなって転校した。母親は熊日の取材に対して「市教委が適切に男性教諭を処分していたら、息子の友人だった生徒が命を絶つことはなかったかもしれない」と話している。

市の第三者機関・詳細調査委員会は10月、小学6年時に悪化した抑うつ状態が男子生徒の自殺の一因で、複数児童を大声で叱るなどした男性教諭の不適切な指導が強く影響した蓋然性が高いとする調査結果を発表した。(植木泰士、上島諒、臼杵大介)

「助けられた命だった」 悔やむ学校関係者

「児童を立たせて、ほかの児童にその子の悪いところを挙げるよう命じた」「『死ね』などの暴言は当たり前だった」-。2019年に自殺した熊本市立中1年の小学6年時に担任だった男性教諭の暴行容疑が明らかになった。当時を知る学校関係者は、男性教諭の不適切な指導を振り返り、「大人が早く対処していれば助けられた命だった」と悔やんでいる。

関係者によると、男性教諭は児童の椅子を引く音や声の小ささに激高。心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたり、卒業後に中学校へ登校できなくなったりする子どももいた。「ほかの教職員たちは男性教諭の暴力や暴言を知っていた」という。

保護者らは以前から男性教諭の言動を問題視していたが、男性教諭は18年、小学6年になった男子生徒らのクラス担任になった。入学式の準備中、男子児童の胸ぐらをつかんで約1週間の打撲を負わせたのは、その直後だった。

19年3月、保護者の有志は遠藤洋路教育長に再発防止策を求める嘆願書を提出したが、男性教諭の振る舞いは変わらなかった。その1カ月後、中学生になったばかりの男子生徒は自ら命を絶った。

生徒のノートには「死」「絶望」といった文字が残されていた。(植木泰士、上島諒)

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2022年11月9日付北海道新聞

倶知安の不登校「担任が体罰、暴言」 訴え3年、結論示さぬ町教委 道開示文書ほぼ黒塗り

情報公開請求で開示された町教委の報告書や、教諭の処分を決める道教委内の審査記録。ほぼ黒塗りで、両親は詳細を把握できない状況が続く
情報公開請求で開示された町教委の報告書や、教諭の処分を決める道教委内の審査記録。ほぼ黒塗りで、両親は詳細を把握できない状況が続く

 2018~19年に町内の小学校に通っていた女児が、担任教諭に無理やり嫌いな給食を食べさせられたり、継続的な体罰や暴言などを受けたりした結果、不登校になり、精神疾患を発症したとして両親が事実関係の確認と説明を求め続けている。町教委は教諭への

聴取で給食を強制的に食べさせた事実を認める一方、体罰や暴言などの有無については、問題発覚から3年以上たっても結論が示されていないといい、両親は憤りと不信感を募らせている。

両親によると、女児は小学2年だった19年9月、嫌いなマヨネーズ入りサラダなどを食べられず、担任教諭から教室前方の席に移され、タイマーで時間を制限され、サラダの完食を強要された。女児は口に入れたが、飲み込めずに吐き出してしまった。女児がマヨネーズが嫌いなことは、入学時の調査票に記していた。

女児はその後、登校できなくなり、病院で不安神経症の診断を受け、服薬治療が必要になった。不登校は、教諭が翌春に別の学校に移るまで約半年間続いた。

この間、両親は女児から、授業に臨む態度などを理由に教室後方に一定時間立たされる、教諭の近くの席に1人で座らされる、「頭が良いからっていいと思うな」「泣いても無駄」

と言われるなどの行為を小1の時から繰り返し受けたと明かされた。両親は「不登校や精神疾患は継続的な体罰、暴言が原因」とみて町教委に調査と説明を求めた。

町教委は教諭への聞き取りで給食を強制的に食べさせた件は認め、両親に謝罪。

20年3月、道教委に報告書を提出し教諭は同10月、懲戒処分未満の文書訓告の措置を受けた。だが、継続的な体罰や暴言などの有無は両親が町教委に要望書を出すなど再三確認を求めたが、いまだに説明がないという。道に報告書などの情報公開請求もしたが、21年

3月の開示はほぼ黒塗りで具体的内容や教諭への措置の根拠は分からなかった。

町教委の村井満教育長は北海道新聞の取材に、教諭への聞き取りや学校が児童を対象に行ったアンケートの結果として、教諭が女児を含む複数の児童を一定時間立たせる指導や、女児を教諭の近くに座らせる指導をしたことを認めた。教諭は暴言については「記憶にない」と話しているという。報告書の詳細は「開示する権限がない」とした。

村井教育長は、両親にまだ総括的な説明をしていない理由として、21年3月、道教委に報告書を再提出したことを挙げた。両親の要望を受け、両親の事実認識などを追記したといい、「教諭の処分が変わるかどうかなど、道教委の結論を待って対応したい」と話す。

これに対し、道教委は報告書への対応について「個別の案件には答えられない」(総務課)としている。

現在、女児は小5で別の学校に通うが、自身の証言が認められないままで、精神的なつらさを抱え続けているという。両親は、教諭による児童への暴言を保護者の指摘から3カ月未満の9月に公表、謝罪した滋賀県野洲市教委の対応との違いも踏まえ「なぜ3年以上たっても説明

がないのか。この問題で結論が出ないと家族は前に進めない」と訴えている。(須藤真哉)

早期の説明 町教委の責任

千葉大の大野英彦教授(教育実践)の話 市町村立学校の教員の服務監督権は市町村教育委員会にあり、児童に対する教員の指導に問題があれば、当事者である保護者に説明する責任がある。教員の処分をどうするかは任命権者の道教委が判断することであり、それとは別に調べた事実を保護者に説明することは、町教委として対応があってしかるべきだ。今回の事案では時間がかかりすぎている感は否めず、できる限り早期に結論を示すことが望ましい。

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|2022年11月7日熊本日日新聞

熊本工高の1年生、10月に自殺 いじめ疑い排除できず 県教委が第三者委調査へ

熊本工高生の自殺を調べる第三者委員会の設置について記者会見する県教育委員会の幹部ら=7日、県庁

熊本県教育委員会は7日、熊本工高(熊本市中央区)1年の生徒(16)が10月23日に自殺したと発表した。県教委は学校の報告から、生徒が、所属する部活動の部員によるいじめを苦にしていた疑いがあると判断。第三者委員会でいじめの有無や自殺の原因を調べる。

県教委によると、高校は亡くなったことを翌24日に知り、教職員への聞き取りを始めた。調査の中で、いじめという言葉は出なかったが、部活動で人間関係を含む悩みを抱えていた可能性が高く、いじめの疑いを排除できないと判断した。遺書があったかどうかは把握していないという。

高校の調査では、生徒が8月ごろから、部活動の悩みを担任や顧問に相談していたことが判明。亡くなる直前の10月21日にも相談していた。部員らと話し合う機会もあったが、最近は体調不良で休むこともあったという。部員による暴力や無視は確認していない。

高校は、いじめ防止対策推進法上の「重大事態」の疑いがあると判断。県教委は、この判断と遺族の「真相を知りたい」との意向を踏まえ、7日に開いた臨時会で、常設の第三者委「いじめ防止対策審議会」が調査することを決めた。医師や弁護士ら有識者6人が生徒への聞き取りなどを進める。開始時期は未定。

同日の会見では、生徒が死亡した状況や性別、居住地、所属する部は「遺族が望んでいない」などとして公表しなかった。白石伸一県教育長は「尊い命が失われ、心からご冥福をお祈りする。

ご遺族のお気持ちに寄り添いながら、学校とともに丁寧に調査を進める」とのコメントを出した。

高校は、生徒が急死したことを10月24日に学級と部活動の部員に説明した。今後、保護者説明会を開く予定。県教委はスクールカウンセラーを派遣し、生徒のケアに当たっている。(臼杵大介)

県教委2例目、第三者委の自殺調査

県教育委員会は、熊本工高の生徒の自殺を受け、いじめ防止対策推進法に基づき、第三者委員会による調査を始めることを決めた。県教委が、生徒の自殺に関して第三者委を設置するのは2例目。

1例目の女子生徒のケースでは、調査結果がまとまるまで約9カ月を要した。

女子生徒は県北の県立高3年だった2018年5月17日に自殺を図り、翌18日に亡くなった。県教委はその10日後、第三者委でいじめの有無などを調べる方針を発表した。第三者委は高校の校内調査が終わった後の6月下旬、詳細な調査に着手。計24回の会合を重ね、全校アンケートや生徒、教職員の聞き取りなどを行った。

第三者委は19年3月に報告書を公表し、複数の級友による「死ねばいい」といった発言など5件をいじめと認定。自殺との因果関係も認めた。ただ遺族が調査結果の一部を不服としたため、県教委とは別に県が設置した第三者機関が改めて調べた。

いじめに関する調査では、結果に納得しない遺族が再調査を求めることが少なくない。県教委は「遺族の意向を丁寧に確認しながら進めたい」としている。(臼杵大介)

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2022年11月4日毎日新聞

海星高いじめ自殺 学校側は第三者委報告書を拒否 遺族が提訴

提訴後に男子生徒の遺影を置いて記者会見する両親ら=長崎市の県庁で2022年11月4日午後2時27分、中山敦貴撮影
提訴後に男子生徒の遺影を置いて記者会見する両親ら=長崎市の県庁で2022年11月4日午後2時27分、中山敦貴撮影
 長崎市の私立海星高2年の男子生徒(当時16歳)が2017年4月に自殺したのは、学校側がいじめ防止対策推進法に基づく対策を怠ったのが原因などとして、遺族が4日、高校を運営する学校法人に約3200万円の損害賠償を求め長崎地裁に提訴した。

訴状などによると、生徒が中高一貫の中学3年時から、生徒のおなかが鳴ってしまうことを同級生にからかわれるいじめが始まった。おなかの音がしないよう間食を取るため入った掃除用具置き場を無理やりこじ開けようとするなどのいじめも受けた。高校進学後も同様のいじめが続き、生徒は孤立を深めていった。

遺族側は、学校側はいじめ防止対策推進法に基づき、いじめを早期発見する体制をつくり適正に対処する義務を負っていたのに、それを怠ったと主張している。

生徒の自殺を巡っては、学校法人が設置した第三者委員会が「同級生によるいじめが主要因」とする報告書を18年にまとめたが、学校側は受け入れを拒否した。こうした対応についても遺族側は「法の趣旨や法が規定するいじめ防止制度を否定するもので許されない」と指摘した。

学校側は「訴状を受け取っておらず、コメントは差し控える」としている。【中山敦貴】

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2022年11月4日毎日新聞

剣道部顧問、不適切な指導で女子高生自殺 学校側「異例」の謝罪

亡くなった侑夏さんの写真を手に、記者会見した母親=福岡市中央区の福岡県弁護士会館で2022年11月4日午前10時32分、平塚雄太撮影(画像の一部を加工しています)
亡くなった侑夏さんの写真を手に、記者会見した母親=福岡市中央区の福岡県弁護士会館で2022年11月4日午前10時32分、平塚雄太撮影(画像の一部を加工しています)
2020年8月に私立博多高(福岡市東区)の1年生だった侑夏(ゆうな)さん(当時15歳、名字は非公表)が自殺したのは、部活動での不適切な指導が原因だったとして学校側が責任を認め、遺族に謝罪したことが判明した。侑夏さんの母親(41)と遺族の代理人弁護士が4日、同市内で記者会見を開き、裁判を経ずに学校側と和解したと明らかにした。

和解は10月25日付。遺族の代理人を務めた迫田登紀子弁護士(福岡県弁護士会)によると、いじめや校内での事故は学校が情報を出さなかったり、責任を認めなかったりすることが多く、学校側が自らの非を全面的に受け入れるのは非常に珍しいという。

  遺族側によると、侑夏さんは中学時代から剣道部で活躍し、剣道二段の資格を有していた。博多高の剣道部で顧問を務めていた男性教諭の誘いを受け、204月に剣道の特待生として博多高に入学した。 部の練習は新型コロナウイルスの影響で6月から始まり、3キロのランニング後、素振り1840回、前後に動きながらの跳躍素振り800回などを1時間以内でする内容だった。過酷な練習で侑夏さんは右腕と左足首を痛め、練習についていくのが難しくなった。

これに対し、別の顧問の男性教諭は侑夏さんに「貴様やる気あるのか」などと暴言を吐くようになった。

他にも、必要以上に竹刀で突く部員の前で突き倒して転倒させる「この野郎」などと怒鳴り声や罵声を30分以上浴びせる――などを続けた。侑夏さんは、男性教諭に足を踏まれて小指の爪がはがれ、両手首には暴行によるものとみられるアザができていた。

829日、侑夏さんは「死ぬために部活休んだ」と自身のツイッターに投稿した後、自ら命を絶った。

学校側は9月、校長と顧問の男性教諭2人が遺族と面会し謝罪。217月には、学校内での災害に見舞金を支給する独立行政法人「日本スポーツ振興センター」が、自殺の原因は「教員による不適切な指導によるもの」と認定し、遺族への見舞金支給を決定した。

遺族側は223月、学校側に損害賠償を求めて提訴する方針を伝えると、学校側は不適切な指導を認め、遺族に改めて謝罪。訴訟外での和解に至った。

双方の合意内容によると、学校側は男性顧問による不適切な指導が自殺の原因と認め、真摯に謝罪。再発防止策として、全教職員を対象にした年1回の研修などを実施する。

記者会見で母親は侑夏さんについて、手伝いを頼んでも断ることはなく、誕生日にチーズケーキを焼いてくれるなど「優しく温かい子だった」と振り返った。学校側の対応には「今後、しっかりと果たされるか見守っていきたい」とし「教師も親もまさか子どもが自死するなんてと考えがちだが、より身近な問題と受け止めてほしい」と訴えた。

一方、博多高の肥後忠俊教頭は毎日新聞の取材に「教育機関としてあってはならないことで、二度と起こらないよう全職員一丸となって再発防止に取り組む」とコメントした。男性顧問2人は侑夏さんの自殺後、すぐに顧問から外れ、21年度以降は同高にいないという。2人への処分については「個人情報で答えられない」としている。

識者「非常に珍しい例」

学校事故に詳しい名古屋大大学院の内田良教授(教育社会学)は「非常に悪質な事案だが、生徒の死亡後に学校が問題を受け止めており、その対応の限りでは評価できる」と述べた。類似のケースでは「子どものための指導」として、学校が非を認めないことも多いといい「学校と遺族が訴訟などで対立することがほとんどで、今回は非常に珍しい例では。学校は再発防止を形骸化させず、実施してほしい」と注文を付けた。

内田氏によると、部活動における顧問の問題行動は、子どもや保護者が言いにくい状況にあるという。

「顧問には子どもを試合に出す権限などがあるほか、問題が公になった場合にチームメートに迷惑がかかることを考え、当事者は声を上げにくい。周囲の教職員が問題提起できるよう、風通しの良い職場環境が重要だ」と指摘した。【平塚雄太】

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