学校事件の報道

2021年3月25日付朝日新聞

3自殺、厳しい練習は「部活動の意義を逸脱」第三者委

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公表された第三者委員会の調査報告書

茨城県高萩市で2019年4月に市立中学3年の女子生徒(当時15)が自殺した問題で、市が設けた第三者委員会は報告書をまとめ、25日に公表した。部活動の顧問が威圧的な指導を繰り返していたことが発覚していたが、第三者委は自殺の原因は複合的で「単純明快な説明は困難」とした。一方で、試合に勝つための厳しい練習を肯定する見解が、威圧的な指導を助長したとして、運動部の改革を提言した。

女子生徒は19年4月30日に自宅で死亡した。市教委によると、遺族から提供された紙に、生徒の手書きで、部活顧問の男性教諭が部員たちに「殺すぞ」「殴るぞ」などと暴言を吐いたり、肩を小突いたりしたことなどが記されていた。市教委の調査に教諭はそうした言動を認め、「叱咤(しった)激励のためだったが、行きすぎだった」と話していた。

今回の報告書は、非公開を望む遺族の意向に配慮して、自殺に至った理由など具体的な記述部分は黒塗りで公表された。

ただ、再発防止策の提言で、学校や自治体の自殺予防対策の不十分さとともに、部活動の問題点についても言及。「勝利経験が生徒の成長を促すとの考えから、試合に勝つための厳しい練習を肯定する見解は、生徒の自主的・自発的な参加という部活動の本来の意義を逸脱している」と指摘した。部活動の参加が事実上義務化されている点は改める必要性があるとした。

報告を受けて、遺族は「先生方が出してくださった結果が、各部署で共有され、いかされることで、同じような悲しい事件が二度と繰り返されることがありませんように心から願います」とのコメントを出した。(片田貴也)

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2019年3月23日北海道新聞

登別の中1、いじめが自殺の一因 市教委の第三者委認定武田博教育長(右)に報告書を手渡す第三者委員会の竹内亮平会長

武田博教育長(右)に報告書を手渡す第三者委員会の竹内亮平会長登別の中1、いじめが自殺の一因 市教委の第三者委認定

 【登別】登別市内で昨年6月、中学1年の男子生徒が死亡し、自殺とみられている問題で、いじめの有無などを調べていた登別市教委の第三者委員会は22日、報告書を市教委に答申した。第三者委は、生徒が自殺したとの見解を示した上で、運動の部活動で受けたからかいなどをいじめと認定。いじめに加え、コロナ禍での生活などによる不安な心理などの内的要因が影響して自殺に至ったとした。

 男子生徒は昨年6月22日、自宅があった道営住宅敷地内で倒れているのが見つかり、死亡が確認された。4階付近から転落したとみられ、警察の捜査では自殺と断定されなかったが、第三者委は22日、取材に対して「自ら死を選んだと認定した」と説明した。

 第三者委の報告書は計101ページでいじめ調査の内容のほか、再発防止策などで構成。22日に公表された報告書概要によると、男子生徒は部活動内で、「太っている」などと言葉で体形をからかわれていたことや、胸を触られるなどの行為のほか、「へたくそ」などと運動の技量をからかわれていたことを「いじめ」と認定した。

 一方、生徒の心理状態など内的要因として、新型コロナウイルスに対する不安や、コロナによる学校の休校によって外出できないストレス、将来への不安などに苦しんでいたと指摘。第三者委は、自殺に関して「『いじめ』を中心とした『外的な』要因と生徒自身の『内的な』問題の両者が関与した」と結論づけた。

 第三者委の竹内亮平会長=北海道精神保健福祉士協会理事=は「(からかいについて)部活動の顧問が認識していた部分もあった」とした上で、指導体制を見直す必要性を指摘した。

 市教委は昨年6月、いじめの疑いがあるとして、2013年施行のいじめ防止対策推進法が定める重大事態にあたると判断。弁護士や大学教員ら5人で構成する第三者委を設置し、調査を諮問していた。武田博教育長は「しっかり精査をして再発防止に取り組んでいきたい」と話した。

 道教委などによると、道内で重大事態とされたのは今回を含め計34件で、被害を受けた児童生徒が死亡したのは今回が初めて。(今関茉莉)

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2021年3月23日付NHK

橿原 中学生自殺裁判 いじめ認定せず 遺族の訴え退ける

 8年前、橿原市で自殺した中学1年の女子生徒の遺族が、いじめが原因だったとして当時の同級生らを訴えていた裁判で、奈良地方裁判所はいじめ行為自体を認定せず、遺族の訴えを退けました。
平成25年3月、橿原市で中学1年の女子生徒が飛び降り自殺したことをめぐって、母親や姉が、同級生から仲間外れにされたり、「LINE」に悪口を書き込まれたりするなどいじめを受けたことが原因だったと主張して、当時の同級生らと学校を運営する橿原市に対し、あわせて9700万円余りの賠償を求めていました。
これに対し、同級生らや市は、「いじめはなかった」などと裁判で主張していました。
23日の判決で、奈良地方裁判所の島岡大雄 裁判長は、「クラスメートの証言や調査委員会の報告書などからも仲間外しや無視があったとは認められない」として、いじめ行為自体を認定しませんでした。
また、市の責任について、「自殺の要因は複数存在しており、自殺直前のサインを把握することができたとは言い切れない」などと判断し、遺族の訴えを退けました。

【弁護士“不当な判決”】
原告側の代理人を務めた佐藤真理弁護士は23日の判決について、「予想外の極めて不当な判決がなされ、残念だ。控訴審でひっくり返すことが必要だ」と述べました。

【遺族“ただただ残念”】
判決のあと、自殺した女子生徒の母親が会見を開きました。
この中で母親は23日の判決について、「裁判では、教師や学校組織が娘のいじめ被害を把握していたにもかかわらず、被害に対して無為無策だったことが自死につながったという不作為不法行為を問うてきたが、判決はこれらを棄却し、安全配慮義務違反を認めず、ただただ残念だ」と評価しました。
そのうえで、「児童生徒は長時間学校で集団生活をしていて、学校は自死防止に真剣に取り組まなければならない。今回の裁判所はこのような深刻な問題に警鐘を鳴らしてくれず、これでは子どもの命がどんどん失われていく。この判決を受け止めることはできないので、今後の対応を弁護団と協議していきたい」と話していました。

【橿原市のコメント】
判決を受け、橿原市の亀田忠彦市長は、「当時、中学1年生の生徒が亡くなったことについて、市として重く受け止めている。今後、このようなことが起こらないよう、橿原市として努めていきたい」とコメントを発表しました。
また、橿原市教育委員会の深田展巧教育長は、「将来ある若い命が失われたことに対し、大変残念に思う。二度とこのようなことが起こらないように、子どもたち一人ひとりとしっかりと向き合い、心に寄り添った教育となるように努めたい」とコメントを発表しました。

【調査委員会と裁判の経緯】
平成25年3月28日、橿原市で中学1年生の女子生徒が自宅近くのマンションから飛び降りて自殺しました。
女子生徒の両親は原因究明に向けた第3者委員会を求めましたが、委員の選定をめぐって紛糾します。
市の教育委員会は、委員の1人に市の元顧問弁護士を選定しましたが、女子生徒の両親は、中立・公平ではないと主張。
結局、委員は選び直しとなりました。
女子生徒の自殺から2年たち、ようやく調査報告書がまとまります。
報告書では、女子生徒が同級生から仲間外れにされたり通信アプリ「LINE」で悪口を書き込まれたりするなどのいじめがあったとしました。
そのうえで、親に対する不満や思春期で情緒不安定な状態にあったことなど複数の要因が重なり衝動的に自殺にいたったと結論づけました。
この報告書を受け、遺族は、平成25年9月、女子生徒が自殺したのは同級生らのいじめが原因だったとして、同級生4人と橿原市に対し賠償を求める訴えを起こしました。

【橿原市のいじめ対策は】
女子生徒の自殺をきっかけに、橿原市では「いじめ防止基本方針」を策定し、対策を進めてきました。この中では、小中学校に教職員でつくる「いじめ問題対策委員会」を設置し、カウンセラーといった外部の専門家の協力なども得ながら、いじめを防ぐための授業計画を作成したり、ふだんから生徒や児童の状況について情報を収集し、いじめの疑いがある場合、速やかに対応をしたりすることなどが定められています。
また、いじめがあったときの相談先を日常的に教室に掲示するなどして子どもに知らせることも対策としてあげています。
橿原市教育委員会は「対策を実行することで子どもをいじめから守り、みんなが安心して学校にこられる環境作りを進めていきたい」と話しています。

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2021年3月22日付朝日新聞

児童に暴行、担任が誘導か 「やっちゃいな」と呼び掛け

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秋田市の小学校で起きた不適切な指導について説明する市教委の担当者ら=2021年3月22日午後4時12分、秋田市役所、高橋杏璃撮影

 秋田市の小学校で今月、3年生の学級担任の50代の女性教諭がクラスの複数の児童に対して、特定の児童をたたくよう誘導する発言をしていたことが22日、市教育委員会への取材で分かった。学校の調査に対し、教諭は事実関係を認めているという。

市教委によると、教諭は今年3月、昼休みの鬼ごっこで児童間のトラブルがあった際、数人の男子児童に「やっちゃいな」などと呼びかけ、トラブルの原因となった男子児童をたたくよう誘導。複数の児童らはこの男子児童の腹部を1回ずつたたいた。また、学校が児童から聞き取った証言では、教諭が「私がたたくと退職になっちゃうから代わりにやれ」と発言したほか、女子児童が暴力に反対した際に、「この子は殴られないと覚えないから」と言ったとされる。教諭はこれらの発言については「覚えていない」と学校に説明しているという。

また、市教委によると、昨年5月ごろ、教諭は児童らに「好きな人や嫌いな人はいるか」と尋ね、嫌いな人として名前があがった2人の児童に「これが現状だ。これからはみんなに好かれるように頑張らないといけないよ」と発言。発達障害が疑われる転校生の児童に対し、「前の学校の子たちもあなたがいなくなって喜んでるでしょうね」と発言したことがあったという。このほか、欠席しがちな児童が映画を見に行った話をした際に、「映画を見に行くよりも、学校に来て勉強したら」と諭したこともあったとされる。

保護者の有志6人が今月15日に来校し、被害を訴えて発覚。16日以降は、教頭など別の教員1人を同席させた上で、担任教諭が授業を続けた。教諭が勤務を続けたことについて、市教委は「こういう事案があったとはいえ、学級担任の仕事があるので優先させた」と説明している。

学校は19日に緊急保護者会を開き、担任教諭と校長が謝罪した。現時点で心身に不調をきたした児童は確認されていないという。教諭の処分は未定で、市教委が事故報告書を提出した後、県教委が決定する。(高橋杏璃、野城千穂)

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2021年3月19日付朝日新聞

いじめ繰り返し訴えた、自殺の中1 学校はないと判断

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自殺を受け、今月16日に生徒や保護者ら向けに配られた資料。亡くなった背景調査を行うことなどが書かれていた=2021年3月17日、野々市市内、堀越理菜撮影

石川県野々市市の市立中学校でいじめを訴えていた1年生の女子生徒が2月に自殺していた問題で、学校が昨年11月や今年1月に行ったアンケートでこの生徒がいじめを訴える回答をしていたことが市教委への取材でわかった。学校は回答後に本人と面談したが、いじめではないと判断。市教委に報告しなかったという。

学校は1、2カ月に1回の頻度で、全校生徒にアンケートを実施し、いじめの有無などを確認している。学校がいじめを最初に把握したのは昨年10月のアンケート。生徒自身がいじめを受けていると回答したことがきっかけだったという。

さらにこの生徒は学校の聞きとり調査に対し、同じ学校の生徒から悪口を言われたり、からかわれたりしたと訴えたという。学校は市教委に状況を報告。解決に向けた対応をし、その後は経過観察としたという。

昨年11月と今年1月のアンケートでも、2回とも生徒がいじめがあったと回答したため、その都度聞き取りをしたが、最終的に学校はいじめではないと判断。市教委への報告を見送ったという。生徒と学校の間でどのようなやりとりがあったかについて、市教委は「個別案件なので、差し控える」としている。

  • いじめられている君へ

その後、学校は2月2日にいじめが解消したと市教委に報告したが、その9日後の11日に生徒は自宅で自殺した。亡くなる前日にもアンケートは行われたが、生徒は「いじめはない」と回答していたという。一連の対応について、市教委は近く設置する第三者委員会で検証に乗り出す。

一方、生徒が自殺した5日後の2月16日に、学校は1年生を集めた朝礼で校長が生徒の死を伝え、18日までスクールカウンセラーを臨時派遣したという。今月16日にも、校内放送で全生徒に自殺を報告し、16、17日もカウンセラーを派遣して生徒のケアにあたったという。

「先生はもっと敏感に察知してほしい」

3月にこの学校を卒業した女子生徒は、学校アンケートは自身や周囲でのいじめの有無を確認するものだったと振り返り、「(いじめが)あると書いたら、後で先生に呼ばれて、それが広まって、自分がいじめられるかもしれない。もしいじめを目撃しても、みんな書かないのではないか」と話した。

娘が同じ中学の1年生だという40代女性は「学校はもう少し何かしてあげられなかったのかなと思う。先生にはいじめなどをもっと敏感に察知してほしい」と話していた。(三井新、堀越理菜)

石川県警によると、昨年県内で自殺した未成年者は男性2人、女性1人の計3人だった。小中高生などの内訳について県警は、個人の特定につながるおそれがあるとして公表していない。

また、県内全体の自殺者数は、男性138人、女性48人の計186人(前年比14人増)だった。そのうち、年齢階級別で最も多いのは70歳以上で49人、次いで40代と50代がそれぞれ35人だった。原因・動機別では、「不詳」が最も多く、遺書などから明らかに推定できるとされたものでは「健康問題」や「経済・生活問題」が多かった。いじめを含む「学校問題」は0人だった。(堀越理菜)

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2021年3月19日琉球新報

2自殺は「部活動のストレス」と報告書 顧問はLINE履歴削除

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 イメージ写真(琉球新報社)
 沖縄県立コザ高校2年の男子生徒が自ら命を絶った事案について、金城弘昌県教育長や東盛敬コザ高校長らは19日会見し、第三者調査チーム報告書を公表した。報告書は、顧問が日常的に精神的負担を与える言葉を用いていた可能性を挙げ、自死の要因について「部活動におけるストレスだったものと推測するのが相当である」と指摘した。
 金城教育長は「防ぐとこができなかったことについて慚愧の念に絶えない。設置者として重い責任を感じている。心よりお詫び申し上げる」と謝罪した。金城教育長は「報告書からは顧問から勝利至上主義に基づき、過度のプレッシャーを与えられ、精神的に負担があった」と述べ、勝利至上主義の弊害についても言及した。
 報告書は「再発防止のためには当該顧問一人の問題ととらえるのは不適切であり、学校および設置者のレベルでの対応を含めた検討が必要」と指摘した。
 報告書によると、生徒は顧問から「キャプテンを辞めろ」など、精神的に負担を与える言葉が用いられた可能性がある。顧問が部活動の「やりがい」や楽しさよりも、勝つことを重視していた可能性も指摘した。顧問は生徒とのやりとりで無料通信アプリ「ライン」を使用し、やりとりは夜中まで続いていた。迅速に対応することも求められ、生徒は多大な精神的疲労を抱えていたと考えられる。顧問のライン履歴から生徒とのやりとりが削除されていることも分かった。
 生徒が特別推薦で入学した際、「活動継続確約書」の提出を求められていたことも分かった。
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2021年3月17日付戸新聞NEXT

尼崎市立尼崎高校のいじめ問題について説明する松本真教育長(右から3人目)ら=17日午後、尼崎市役所(撮影・斎藤雅志)

尼崎市立尼崎高校のいじめ問題について説明する松本真教育長(右から3人目)ら=17日午後、尼崎市役所(撮影・斎藤雅志)

 兵庫県尼崎市立尼崎高校の水泳部で2017年、不登校となった当時1年の女子生徒(既に転校)がいじめ被害を訴えていた問題で、同市教育委員会は17日、当時の男性教頭(60)、男性顧問(48)が生徒や保護者に無断で「転学願」を作っていたことを明らかにした。いじめが理由で転校した事実の隠ぺいを図った可能性が高いとして「極めて不適切な行為」とし、教頭を停職1カ月、顧問を戒告の懲戒処分とした。

問題を巡っては、生徒の保護者がいじめ防止対策推進法の「重大事態」に当たるとして学校に調査を求めたが、2年以上放置されていたことが昨年3月に発覚。市教委が設けた第三者委員会は17日、重大事態と認めた上で顧問の不適切な対応がいじめを深刻化させたとする報告書を公表した。

市教委によると、女子生徒が18年3月に他校へ転校した際、教頭は無断で名前や住所、転校先の欄を記入。さらに担任でもあった顧問に転校理由を「一身上の理由」と書くよう指示し、顧問は従ったという。

昨年3月、第三者委の調査過程で、保護者や生徒の押印がないなど不審な点が判明した。教頭は「生徒側から転学手続きを任されていると認識していた」と隠ぺいの意図を否定しているという。

市教委は「理由の欄に『いじめ』と記入されないよう隠ぺいを図ったとみられても仕方ない」と陳謝。転校の意思そのものをゆがめたわけではないとして、私文書偽造容疑などでの刑事告発は見送るとした。決裁で見落とした当時の校長(62)を訓戒にした。

第三者委は17日、同じく同校水泳部に所属して19年に不登校になった当時2年生の女子生徒についても、部員からのいじめを受けていたと認定した。(山岸洋介)

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2021年3月17日付朝日新聞

学校の説明「納得できない」 名古屋中1自殺で保護者会

 臨時の保護者会に集まる人たち=2021年3月16日午後6時48分、名古屋市、小松万希子撮影

 名古屋市立中学1年の女子生徒(13)が9日に自殺した問題で、女子生徒が通っていた中学校で16日、臨時の保護者会が開かれた。女子生徒はLINEで嫌がらせを受けていると学校に相談していた。同市教育委員会によると、市立中学校の生徒がネットで誹謗(ひぼう)中傷や嫌なことをされる事案は昨年の1、2学期だけでも118件にのぼるという。

中1女子が自殺 「SNSで嫌がらせ」と相談 名古屋

名古屋市教委の昨年11月の調査によると、スマートフォンや携帯電話を利用する児童・生徒の割合は小学5年で52%、中学2年で76%にのぼる。ネットを通じた嫌がらせは「SNS上に『いい子ぶっている』などと悪口を書かれる」「ゲームセンターで遊んでいる様子を無断で撮影して掲載される」「友達同士の会話を無断で録音されて拡散される」などがあったという。

学校側は被害の相談があれば加害側に事実確認し、指導や書き込みを削除させるほか、深刻な場合は警察に相談することもある。だが市教委の担当者は「LINEグループのような閉ざされた世界で、子どもたちがどんなやりとりをしているのかは全く分からない」と把握が難しい面があることを認める。

今月亡くなった女子生徒は昨年11~12月、校内の生徒からLINEグループで誹謗中傷の投稿をされたと学校側に2回相談した。この時、「(当該生徒の)名前は言いたくない」と話したという。学校側は生徒指導担当の教諭らで情報を共有し、12月に学年集会や全校集会でSNSで嫌がらせの書き込みをしないよう指導。女子生徒は今年1月の相談で初めて2人の生徒名を挙げたが「やり返されるのが怖い」と、指導をしないよう頼んだため、学校側は直接的な指導をしなかった。女子生徒はその頃から遅刻や欠席などが目立つようになり、スクールカウンセラーのカウンセリングを受けさせたり、登校しても別室で過ごさせたりする対応をしてきたが、命を守ることができなかった。

この問題は「いじめ防止対策推進法」の「重大事態」として、第三者の有識者による「いじめ対策検討会議」で学校側の対応のあり方についても調査されるとみられる。

16日夜に中学校で開かれた臨時保護者会には約340人が出席。保護者からは、学校が当該生徒の名前を把握しながら直接指導しなかったことについて「もっと踏み込んで対応すべきだったのではないか」などの意見が出たという。保護者会後に報道陣の取材に応じた校長は、「今回のケースについては(踏み込んだ指導を)すすめていくのは適切ではないと判断したが、適切だったかどうか、(検討会議の)調査結果も踏まえて考えたい」と話した。

保護者会に出席した母親の一人は「『報復が怖いから指導しないで』という生徒の意向を受けてこういう形になったという説明は納得できない。そこを乗り越え、守ってこその学校じゃないかと思う。13歳というキラキラした年なのに命を絶つなんて、自分の子だったらと思うとたまらない」と声を詰まらせた。

18歳以下を対象に相談を受ける「チャイルドライン」(0120・99・7777、毎日午後4~9時、HPでのチャットも可)を運営するNPO法人「チャイルドライン支援センター」の高橋弘恵理事によると、いじめがひどくなることを警戒し、相手の名前などを「言いたくない」「言わないで欲しい」などと話す子どもは多いという。しかし「誰にも言わずに解決することは難しい。自分を守るために、SOSを出すことは大切だ」と訴える。

周りの大人には、話したがらない子どもに無理に聞いてはいけないと助言する。「あなたを守りたい」という気持ちを繰り返し伝え、子どもから話してもらうよう努めることが大事だという。(堀川勝元、山本知佳、小松万希子)

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2021年3月9日付朝日新聞

いじめで訴訟、渡されぬ卒業証書 「法廷で渡す」に反発

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市議会事務局の職員に陳情書を手渡す元生徒(右)=2021年3月3日、埼玉県川口市役所

 中学時代に受けたいじめへの対応をめぐって埼玉県川口市(市教委)を相手に損害賠償訴訟を起こしている市立中学校の元男子生徒(18)が13日、高校の卒業式を迎える。だが、元生徒に中学校の卒業証書はいまだ手渡されていない。8日の市議会でこの問題が取り上げられたが、市教委は高校卒業前に手渡す考えはないことを明らかにした。

2018年3月15日、元生徒は中学の卒業式を欠席した。いじめの影響や学校の対応への不信感から不登校を繰り返していたが、式には出るつもりだった。ところが、卒業生は式当日に親への感謝の手紙を渡すことになっていたと前日に知った。事前に連絡がなく「自分は生徒だと思われていなかった」と欠席。式後に当時の校長らが卒業証書を手渡しに来たが、受け取れる精神状況ではなかった。

翌4月に現校長が着任した際、校長室には卒業証書や式で配った菓子がそのままあった。菓子はもう食べられなくなっていた。現校長はすぐに卒業証書と自らが用意した菓子折りを持って元生徒宅を訪問。話し合ったが、「現校長から受け取るのはおかしい」ということになった。

同年9月に開かれた訴訟の第1回口頭弁論。市教委側は法廷で突然、「卒業証書を(この場で)お渡しすることもできる」と持ちかけた。元生徒側の弁護士は「何を言っているのかわからなかった」と驚き、拒否。母親の森田志歩さんも「息子のいない法廷で渡そうとするなんて信じられない」と反発した。その後、卒業証書についての連絡はないという。

今月3日、元生徒は「市教委や当時の校長にきちんと謝罪して欲しい」と2度目の陳情を市議会に提出した。この3年間、市教委は訴訟で第三者委員会の調査報告書を事実上否定し、いじめ防止対策推進法に欠陥があると主張してきた。こうした対応によって、元生徒側は卒業証書への思いより謝罪を求める気持ちの方が強くなったという。

8日の市議会一般質問で碇康雄議員(川口新風会)がこの問題についてただした。森田吉信・市学校教育部長は「裁判で係争中であり、状況を見極めている」と答えるにとどまった。学校現場からは「卒業生に卒業証書を渡すことは訴訟とは別の話。きちんと謝って渡すべきだ」という声が上がっている。(堤恭太)

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2021年3月1日付朝日新聞

重傷負わせ逮捕も ボランティアの部活指導、現場任せ

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茨城県警察本部

  茨城県小美玉市の市立中学校で剣道部の部活指導にあたっていたボランティアの男性(46)が、男子生徒(13)に重傷を負わせた疑いで逮捕された。慢性的に不足する部活指導を地域の有志が担った結果、役割や責任が明確にされていないことが背景にある。

県警石岡署や市教育委員会によると、事件は小美玉市の市立中で昨年9月1日、男性と剣道部員の男子生徒がつばぜり合いをしていて起きた。男性が突然体当たりしたため、生徒は後方に転倒。直後に生徒は「大丈夫です」と話したが、後日、病院で左手関節の骨挫傷や脳振盪(しんとう)など、3カ月の重傷と診断された。

男性は8月下旬から同中へ指導に来ており、当日が3回目。市教委は「顧問も剣道経験者。(男性は)地域の剣道団体でも活動しており、接点があったかもしれない」と説明する。

署は1月20日、男性を傷害容疑で逮捕した。男性は剣道6段で、生徒は昨春に入学して剣道を始めたばかりの初心者。部員の技量を見極められる男性が、経験の浅い生徒に危険な練習をさせてけがを負わせた責任を重くみたとみられる。

市教委によると、男性の立場はボランティアで、校長の面談を経なくても活動できる。顧問は事件当日、練習に同席していたという。
今回の事態を受け、萩生田光一・文部科学相は1月22日、記者会見で「学校の許可を得ずに部活指導にあたるのは適切ではない」と指摘。県教委は「ボランティアも含め、部活の指導には校長との面談が必要」という趣旨の通知を、県内すべての県立学校や市町村教育委員会などに出した。

部活動や授業中の事故でけがを負った場合、保護者と学校側が掛け金を負担する災害共済給付制度で治療費がまかなわれる。今回のケースは「学校管理下の事故」として、この制度で被害生徒側に治療費が給付される見通しだ。狩谷秀一・市教委指導主事は「長年の習慣で、ボランティア参加に校長面談を課してこなかったが、部活動は教育活動の一環。

学校側の監督責任を明確化するため、校長が把握するよう改めた」と説明する。

「保護者が参加すると断りにくい」

部活の指導は教員だけでは手が回らないことから、これまでも保護者や地元住民が様々な形で指導に関わってきた。県教委は「外部指導者」「部活動指導員」「ボランティア」の3種類を想定している。このうち、定義が最もあいまいなのがボランティアだ。

古くからあるのが外部指導者で、25年以上前に導入された。校長の委嘱を経て、顧問の技術指導を補う人材としての役割を期待されている。顧問不在の時は、指導や試合への引率は認められていない。大半が無報酬だ。

近年、部活に携わる教員の負担の重さが問題視されたことから、国が2017年度に導入したのが部活動指導員だ。市町村教委が任用し、顧問教員の負担を減らせるよう、単独で練習の指導や試合の引率ができる。国の基準で、時給1600円の報酬が出る。

外部指導者については県教委のガイドライン、部活動指導員は学校教育法の施行規則にそれぞれ役割が明記されている。だが、ボランティアについては明確なルールがなく、運用は現場に任されている。ある県教委関係者は「保護者が参加すると断りにくく、指導方法などについて、顧問と意識の共有が難しい場合もある」と打ち明ける。

県教委によると、部活動指導員は事故時の対応を求められるなど、責任が重いからか敬遠する人が多く、県内17市町村で79人(2月8日時点)にとどまる。県教委は市町村立の中学校計219校に1校1人配置する目標を掲げるが、現在配置できているのは計46校で、全体の約2割だ。

こうした事情もあり、部活指導の補助は外部指導者とボランティアが現場を支えているのが現状だ。ただ、県教委は両者について、正確な人数などは把握できていない。教員の負担減をめざしている市町村教委には「校長との面談を要件にすれば、簡単なボランティアもお願いしにくくなる」と障壁の高さを危惧する声もある。県教委の担当者は「ボランティアは幅が広い。

整理して自治体と共有したい」と話している。(鹿野幹男、片田貴也)

技術と指導者としての資質は別

日本部活動学会副会長で学習院大学の長沼豊教授(教科外教育)の話 部活動は学習指導要領に明記されている教育活動の一環。責任の所在を明確化するため、校長がボランティアを把握するのは当然だ。技術が優れていることと指導者としての資質は別。研修が不可欠で、サッカー指導者のようなライセンス制度をほかの種目でも導入すべきだ。指導者不足という点については、負担に見合った報酬を支払うことで解消をめざすのが望ましい。

 

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