平成29年8月25日朝日新聞
中3自殺「学校の対応不十分」 関係悪化でストレス蓄積
中3自殺
記者会見した第三者調査委員会の福田晧一委員長(左から2人目)ら=24日午後、愛知県一宮市役所
 愛知県一宮市立浅井中学校3年の男子生徒(当時14)が2月に大阪市内のビルから飛び降りて自殺した問題で、検証していた第三者調査委員会(福田晧一委員長)は24日、「学校の対応が不十分だった」とする報告書を公表した。
教員との関係悪化でストレスが蓄積したことなどが自殺につながったという。
 男子生徒の自殺をめぐっては、担任への不信感を募らせていたと遺族が主張。昨秋の体育祭で生徒が骨折した際に担任が対応しなかったことや、プリント配布を何度もさせた行為などがあったと訴えていた。また、当時の校長が「教員によるいじめとの認識」と発言したが、後に撤回。市教委が設置した第三者委が検証していた。
 報告書によると、男子生徒は体育祭でけがをした際、担任の対応に不満を持って関係が悪化した。さらに、2月の三者面談で進路指導の教員から「全部落ちたらどうする」と言われたことなどでストレスを増大させたという。
 第三者委は「(男子生徒は)物事を否定的に捉えやすく、白黒はっきりさせたがる性格だったこともあり、自ら命を絶つ方向に進んでいったと考えられる」と推定。支援が必要な生徒なのに、教員間で情報が共有されなかった点などを批判した。一方、遺族が主張した「プリントの配布」や、当時の校長が発言した「教員によるいじめ」は、いずれも「認められなかった」。学校の対応が不適切だったかどうかも言及しなかった。
 報告書を受け取った市教委の中野和雄教育長は記者会見で、「学校として至らぬ点があったのは痛恨の極み。
相手の思いをしっかり理解し、くみ取ることができなかった。再発防止に努めたい」と話した。
 男子生徒の父親(50)は「とても納得いくような報告書ではない。あれだけ調査して、肝心なことが書いていない。
いろいろな要因が取り上げてもらえず、まるでこちら側に非があるかのようだ」と批判している。(中野龍三、浦島千佳)
■これまでの経緯
2017年2月6日 男子生徒が大阪市内のビルから飛び降り自殺
       10日 愛知県一宮市教育委員会が自殺を発表し、「悩んでいたことに気づかなかった」と書面でコメント。
遺族側は「学校に再三相談していた」と抗議
11日 市教委が「不適切だった」とコメントを撤回
  12日 PTA臨時総会で学校側が「教員によるいじめとの認識」と発言
  13日 学校側が会見し、前日の発言は「遺族の意向をくみ取って話した」と説明を一転。いじめの有無は第三者調査委員会で検証するとした。市教委の聞き取りに担任は「いじめはしていない」と説明していることが判明
  17日 市教委が第三者委を設置
  23日 第三者委が初会合
6月2日 遺族側が第三者委に「調査状況を知らせるよう求めたが回答がない」として抗議書を提出
8月24日 第三者委が検証報告書を公表

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平成29年8月21日東京新聞社説
いじめ自殺 遺族に寄り添い調査を

 子どもの自殺といじめの関係が疑われる重大事態に直面したとき、なぜ遺族に寄り添った調査がされないのか。
学校や教育委員会、そして第三者調査機関の振る舞いが不信を招く事案が相次ぐ。
 例えば、二年前、茨城県取手市の女子中学生が「いじめられたくない」と日記に書き残して自殺した事案では、市教委の無知と事なかれ主義が浮き彫りになった。
 市教委は第三者機関を設ける前に、学校はいじめを確認できなかったとして「重大事態ではない」と議決していた。
頭からいじめを否定する姿勢が、遺族の怒りを買ったのは当然だ。
 いじめ防止対策推進法は、いじめが疑われれば重大事態ととらえ、教委や学校の下に組織を設けて調べ、情報を提供するよう定めている。ましてや、遺族は同級生の目撃証言を自力で得てもいた。
 国の指導を受けて、市教委は調査から撤退した。遺族の要望に沿って、県が新たに第三者機関を置く。二度と失敗は許されない。
 誰のために、何のために重大事態を調べるのか。教育行政や第三者機関の側と、遺族ら被害者の側とで、その認識が食い違っていては不毛な結果しか生まない。
 第三者機関の任務は、自殺の背景にいじめがあったとの前提に立ち、事実を解明することだ。「真相を知りたい」と願う遺族の心情に寄り添い、それに誠実に応える調査でなくてはならない。
 そのためにも、遺族が構成員の人選に参加し、加害者側はもとより、教委や学校からの独立性を担保することが重要だ。調査の目的は、あくまで悲劇を繰り返さないための教訓を学ぶことにある。
 自殺に至る過程には、多様な要因が複雑に絡み合っている。だが、家庭環境や個人的発達のありように不用意に踏み込めば、遺族の信頼を失う恐れがある。
 一年前、青森市の女子中学生が自殺した事案では、市教委の第三者機関がまとめかけた結論に遺族が反発し、棚上げ状態に陥った。
 いじめは自殺の直接の引き金とは言い切れず、思春期うつだったとされたからだ。これでは自己責任に帰するに等しい。
 第三者機関には、いじめとは無関係の領域を子細に分析する権限はあるのか。また、なぜその必要性があるのか疑問が拭えない。相手の刑事、民事の責任を追及するための調査ではないはずだ。
 いじめがなければ、死なずにすんだかもしれない。その切実な問いへの答えこそが望まれている。

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平成29年8月17日朝日新聞東京本社版「声」
いじめ自殺、再調査遅すぎる
 高校教員 宍倉潔(千葉県 54)

 茨城県取手市で女子中学生が自殺した問題で、当時の調査の責任者だった市教育委員会の元教育部長らが両親に謝罪した。自殺したのは2年も前の話だ。今ごろ何の意味があるのか。
 日記にはいじめをうかがわせる記述があったが、市教委は両親に「いじめは認められなかった」と報告していた。
しかし文部科学省から調査の見直しの検討を指導され、市に代わり県に新たな調査委員会を設置することになったという。
 市教委が向いているのは生徒ではなく、文科省なのである。ご両親の怒りと嘆きはいかばかりだろうか。
 市教委の報告をおかしいと感じた教師もいたかと思うが、現場の声が聞こえてこないことも気にかかる。県が新たに調査するというが、加害者はすでに中学を卒業しており、詳細に調べるには時間が経ちすぎている。
学校や教育委員会が迅速かつ適正に動いていたならば、いじめも自殺も防げていたかもしれない。そして、加害者への適切な指導もできたかもしれない。
 今回、機能していなかった市教委の罪は極めて重い。何の処分も加えられないのであれば、教育委員会など不要である。

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平成29年8月17日朝日新聞
飛び降り 女子高生2人自殺か パチンコ店屋上から

 16日午前8時40分ごろ、北海道中標津町東5南1のパチンコ店脇の路上に「若い女性2人が倒れている」と通行人から110番があった。救急隊が駆け付けたが、2人とも頭を強く打っており、間もなく死亡が確認された。
道警は、一部3階建てのパチンコ店の屋上から飛び降りた自殺とみて、動機などを調べている。
 道警などによると、2人はそれぞれ中標津町と大阪市内に住む15歳の高校1年生で親友同士。大阪の生徒は中学のころに中標津から大阪に転居し、夏休みで帰省していた。現在のところ、いじめは確認されていないが、2人とも周囲に将来や世の中に対する悲観的なことを口にしていたという。発見時、2人は私服姿だった。
 パチンコ店は外側にらせん階段やはしごが設置され、階段入り口の高さ約1.5メートルの扉には鍵のかかったチェーンが取り付けられているという。道警は、2人が扉を乗り越えて地上から十数メートルある屋上に上がり、飛び降りたとみている。
 現場は中標津町中心部の商店街。パチンコ店の近所に住む男性(63)は「パトカーと救急車が来て気づいた。
びっくりした」と驚いた様子。中標津町の生徒が通っていた高校の関係者は「特に変わったそぶりもなく、動機に思い当たることはない」と語った。【本間浩昭、真貝恒平、日下部元美】

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平成29年8月14日朝日新聞大阪本社版
サッカー部監督の校長、部員への体罰で辞職 奈良育英

 奈良育英中学・高校(奈良市法蓮町)の上間政彦学校長(57)が、自らが監督を務めるサッカー部で生徒に対する体罰があったとして、辞職していたことがわかった。7月31日付で、今月12日に保護者向けの説明会があった。
 説明会に出席した保護者によると、上間学校長らサッカー部の指導者は複数の部員に対し、胸ぐらをつかんで胸やほおを殴ったり、部員を的にしてボールを蹴って当てたりする行為があった、と学校側が説明した。保護者の一人は「上間前学校長の姿はなく、本人の謝罪が欲しかった」と話した。
 説明会後、取材に応じた同校教諭は「個別の取材には対応できません。後日、説明させていただく」と話した。
 同校は学校法人奈良育英学園が運営する中高一貫校。奈良育英中学校は1947年、奈良育英高校は48年にできた。
 サッカー部は全国高校サッカー選手権大会に13度出場。1994年度の第73回大会では、元サッカー日本代表ゴールキーパーの楢崎正剛選手を擁して全国ベスト4に入った。上間前学校長は三十数年間、監督を務めていた。(青山祥子)

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平成29年8月11日付朝日新聞名古屋本社版
「いじめ申告せぬよう教頭が勧告」提訴の高校生側が主張

 同級生から受けたいじめについて学校が指導や対策を怠り、その後、ツイッターなどに「不登校になってくれませんか」などと悪口を書き込まれて被害が拡大したとして、津市の県立高校3年の女子生徒が三重県を相手取り、慰謝料など約170万円の支払いを求める訴訟を先月、津地裁に起こした。
 訴えによると、生徒は1年生だった2015年10月ごろから部活の同級生らに集団で無視されるなどのいじめを受け、不登校になった。父親が翌月、学校に被害を申し出たが、学校側は「いじめではない」と判断していたという。
 また生徒側は、当時の教頭から「いじめ重大事態に認定してもよいが、(同校に在籍する)生徒の姉の大学受験に悪影響が出る」などと、いじめの申告を思いとどまるよう勧告されたとも主張している。
 その後、生徒は2年生に進級して登校を再開したが、悪口の書き込みが原因で再び不登校になった。
 訴えに対し、学校長は10日の会見で、教頭がいじめの申告を思いとどまるよう言ったかどうかについては「調査委員会で確認しているところ」と話した。
 県教育委員会は書き込みが元で不登校になったことについて、いじめの重大事態と認定。いじめ防止対策推進法に基づき、学校が昨年10月、弁護士や教員らでつくる調査委員会を設置した。

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平成29年8月10日中日新聞
三重県立高でSNSいじめ 女子生徒が県を提訴

 高校の同級生からインターネット交流サイト(SNS)に悪口を書き込まれるなどのいじめを受けて不登校になり、その後も学校側が適切に対応しなかったとして、津市の県立高校3年の女子生徒(17)が三重県を相手取り、約170万円の損害賠償を求める訴えを津地裁に起こしていたことが分かった。
 訴状などによると、女子生徒は高校1年生だった一昨年10月ごろ、所属していた部活動の複数の同級生から無視や悪口のいじめを受けて不登校になった。2年生に進級するとSNSのツイッターに「登校していないのにどうして進級できたのか」と投稿され、3年生の現在も登校できない状態が続いており、高校を管理する県に生徒指導を怠るなどの注意義務違反があったとしている。
 女子生徒の父親らによると、両親は娘が不登校になって間もなく学校に対応を求めたが、学校は「いじめではない」などとして応じなかったという。
 両親は昨年末、三重県警に被害届を出し、県警はツイッターに女子生徒を中傷する文言を投稿したなどとして、同級生の女子1人を侮辱容疑で書類送致した。津家裁は今年5月、この生徒を保護処分に付さないとの決定を出している。
 女子生徒は7月、いじめが原因の「心的外傷後ストレス障害」と診断された。父親は「学校側はいじめを隠蔽していたとしか思えない。同じ被害者を出さないためにも対応を改めてもらいたい」と話している。
 校長は取材に「学校として残念。(SNS以外の)いじめの有無については現在も調査中で慎重に確認したい」と説明した。県教委に対しては昨年9月、女子生徒に関するSNSへの投稿について「いじめの重大事態」として報告したという。
 県教委の小林宏行子ども安全対策監は「SNSへの書き込みについては、いじめの重大事態として認定している。
それ以外の事案への対応が適切であったかどうかは、訴訟の内容にかかわるのでコメントできない」としている。

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平成29年8月10日河北新報
<仙台中学生自殺>第三者委開催めど立たず

 仙台市青葉区の折立中2年の男子生徒(13)が教諭から体罰を受けた上、いじめを訴えて4月下旬に自殺した問題で、原因や事実関係などを調査する市教委の第三者機関「いじめ問題専門委員会」が、自殺から3カ月以上を経た現在も開催のめどが立っていないことが9日、分かった。
 大越裕光教育長が同日の市議会いじめ問題対策調査特別委員会で明らかにした。辞任した委員の補充に時間を要していることが理由という。
 市教委によると、専門委は3月以降、委員6人中5人が相次いで辞任。遺族から精神保健福祉などの分野から3人の委員を加えるよう要望があり、関係団体と現在も調整している。
 奥山恵美子市長の任期は21日までだが、大越教育長は「委員全員が確定していない状況で、21日までの開催は困難だ」と明言。開催時期の見通しも示さなかった。市議からは「専門委で検討が始まらないのは異常事態。教委の姿勢が問われる」と苦言が出た。
 体罰の実態などを調査するため、奥山市長が市長部局への新設方針を示した第三者機関についても、加藤俊憲総務局長は「人選が遅れ、21日までの開催は困難な状況」と説明した。
 特別委では、市立五城中の尾形孝徳校長、宮城教育大の久保順也准教授の2氏を参考人として招き、いじめ問題の現状や課題に関する意見を聞いた。

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平成29年8月9日河北新報
<仙台中2自殺>奥山市長「再調査機関」諦めず

 仙台市泉区の南中山中2年の男子生徒=当時(14)=が昨年2月に自殺した問題の再調査機関の設置について、奥山恵美子市長は8日の定例記者会見で「今の時点で困難だとはっきり諦めたということではない」と述べ、21日までの任期中に設置する可能性に言及した。
 奥山氏は再調査機関の構成に当たり、遺族推薦のメンバーを反映させる方針。「最終的な人選は固まりつつある。
あとは書類上の確認作業などだ」とし、発足を急いでいる状況を説明した。
 新機関の初会合時期は次期市長の郡和子氏と週内に会い、意向を確認して判断する考えを示した。これまでの会見では「私の在任中にこだわるのがいいのか、新市長の下で始めるのがいいのか、立ち止まるべきだと思っている」と述べ、郡氏の就任後となる可能性を示唆している。

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平成29年8月8日朝日新聞
いじめ相談、LINEでカウンセラー対応 大津市試行へ
いじめLINE
LINEでのいじめ相談のイメージ(LINE社提供)
いじめ相談、LINEでカウンセラー
 いじめ防止に関する協定を結んだ越直美・大津市長と出沢剛・LINE社長=7日、文部科学省

 2011年にいじめによる中2男子の自殺があった大津市が、LINEでいじめの相談ができる仕組みを試験的に導入することになり、越直美市長とLINEの出沢剛社長が7日、文部科学省で協定を結んだ。11月から来年3月末まで、モデル校の生徒約3千人を対象に相談の投稿を受け付け、カウンセラーが対応。将来の全国展開も想定する。
 大津市はいじめによる自殺を機に、いじめ対策を進めており、LINE側が提案した。モデル校の市立中の生徒に相談用アカウントを登録するためのQRコードを配布。平日の午後5時から午後9時まで、大津市が委託するカウンセラーが生徒からの投稿にメッセージを発信したりして対応する。SNSによるいじめが増えており、その文面の画像を貼り付けて投稿して相談することもできる。
 越市長は「専門家の助言を得ながら結果を検証したい」とし、出沢社長は「今回の取り組みをきっかけに全国に広めていきたい」と語った。
 総務省の16年の調査では、10代は平日1日平均でソーシャルメディアを58・9分利用し、携帯通話時間の2・7分より圧倒的に長い。一方で、いじめの相談窓口は電話が中心のため、子どもたちにより身近なLINEに窓口を設け、いじめの実態把握や防止につなげる狙いがある。文科省も身近なSNSに対応した相談体制を検討している。(水沢健一)

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