2021年4月22日朝日新聞
遺体で発見された中2、旭川市教育委がいじめ有無調査へ
2021年4月22日付朝日新聞
千葉県野田市の市立小学校6年の男児が2019年に自殺した問題で、市は遺族から再調査を求める所見書が出されたことを受け、再調査することを決め、21日発表した。再調査は、調査報告書を出した第三者委員会とは別のメンバーによる第三者委が実施する予定という。
市の第三者委は2月、調査報告書でいじめを認定した一方、自殺の主な要因とは判断しなかった。これに対し、遺族は必要な調査が尽くされていないとして、再調査を求める所見書を市側に提出していた。
市によると、所見書が提出されたことに加え、市が行政法律相談を委託している弁護士から、いじめが自殺の主な要因と判断しなかったことについて「理由が具体的に示されていない」と指摘を受けたという。
鈴木有市長は「改めて専門的な知見から再調査を行い、事実関係を明らかにすることが必要であると判断した」とコメントした。(石原剛文)
2021年4月22日付毎日新聞
「当時15歳であるから、ある程度の危険予見は可能」――。21日名古屋地裁で開かれたチアリーディング部練習中に大けがをしたのは、安全対策が不十分だったなどとして元女子部員(18)が岡崎城西高校(愛知県岡崎市)を運営する学校法人に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論。請求棄却を求めた学校側の主張は、元部員側の責任を追及するものだった。専門家からは、本来、子どもの健康を保証すべき学校側の姿勢に疑問を呈する声も。両親が毎日新聞の取材に応じ「なぜ対策が取られなかったのか。学校側は私たちに向き合って」と涙を浮かべて訴えた。【川瀬慎一朗】
現在、元部員は車椅子で大学に通い、心理学を学ぶ。母親は仕事をやめ、片道1時間、高速道路を使って送迎している。母親は「娘は神経を痛めたため体調を崩しやすく、送った後も毎日心配」と語る。元部員は事故でふさぎ込み、「何もしたくない」と将来を悲観していたころもあったという。今も下肢が動かず感覚がないが、装具をつけて立つ練習をするなど努力を重ねている。
活発だった元部員は小学生の時からチアダンスを始め、アクロバティックな技が加わるチアリーディング部にあこがれた。2018年4月、同部が全国大会の出場経験もある強豪として知られる同校に入学した。
練習はほぼ毎日あり、朝練、昼練、夕練と続く。父親(55)は「帰宅は午後9時を過ぎることもあり、毎日疲れている様子だった」と語る。同部では、当時部員だった姉(19)も事故の数カ月前に脳しんとうで救急搬送されていたという。指導者不在の時間も多く、練習メニューは先輩が作っていた。母親(48)は「先輩が『やるよ』と言えば従わざるを得ない状況だったのだろう」と話す。
2021年4月19日付朝日新聞
岡崎城西高校(愛知県岡崎市)のチアリーディング部の練習中に下半身不随の大けがをしたのは、安全対策が不十分なまま、習熟度に見合わない危険性の高い練習をさせられたためとして、元女子部員(18)が同校を運営する学校法人を相手取り、将来にわたる介護費など約1億8300万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。元女子部員は入部4カ月目で、部の顧問ら監督者の不在中に大技の練習をして事故に遭った。
提訴は2月15日付。訴状によると、元女子部員は1年生だった2018年7月、低い場所での宙返りも完全に習得できていないにもかかわらず、より高度な技術が必要な、2人の先輩に両足を握られて肩の高さまで持ち上げられた状態から前方宙返りをして飛び降りる練習を体育館でした際、前方のマットに首から落ちた。その結果、脊髄(せきずい)損傷などで下半身が動かなくなり、排せつも自力でできなくなるなど後遺症が残ったとしている。
部の男性顧問は部活に姿を見せることは少なく、外部の女性コーチが技術指導をしていたが、事故時は2人とも不在だった。けがを避けるために技の練習で必要な補助者もなく、マットを敷くだけだったという。元女子部員側は「顧問とコーチは、練習による危険から生徒を保護すべき注意義務をおこたり、習熟度に見合わない練習をさせ、事故に至った」などと主張している。
事故後、弁護士や専門家も参加して同校が作成した事故調査報告書では、顧問は安全指導を含む全指導を外部コーチに一任していたとの認識を示す一方、コーチは「自身は責任者ではない」と考えていたとし、「責任者不在状態のもと、安全指導が徹底されず日々の練習をしていた」と指摘している。
2021年4月16日付毎日新聞
15日、兵庫県宝塚市立中学校で2019年6月、吹奏楽部の女子生徒(当時2年)が部活動中に校舎から転落し重傷を負った事故について、弁護士らによる第三者委員会の調査報告書が公表された。顧問の男性教諭(31)による女子生徒への叱責を直接の原因だったと認定した上で、背景に部活内でのコンクールの成績を重視する姿勢や、学校で部活が「ブラックボックス化」し適切に管理できる体制がなかったことなどを指摘、部活のあり方を強く批判した。一方、生徒の母親が代理人弁護士を通じて手記を明らかにし、今も癒えない心情を吐露した。【土居和弘、稲田佳代】
「被害に遭われたお子様、保護者の方には心身ともに大きな苦痛を与え、深くおわびします」。市役所で開かれた記者会見の冒頭、市教委の森恵実子教育長ら幹部は頭を下げた。
報告書では、男性教諭の指導は部員への叱責が大半で、褒めることがほとんどなかった▽強圧的な指導が日常的に部員に大きなストレスを与えていた――など、指導上の問題点を列挙。第三者委は問題の背景にも言及した。当時の吹奏楽部について、コンクールで好成績を上げることに重点が置かれ、練習でもミスを許さない緊張感があったと指摘。学校では部活の活動実態について校長らが把握せず、教員間で情報共有ができていないなどとし、外部から実態が分からない部活の閉鎖性を「ブラックボックス」と批判した。
森教育長は「顧問任せだった部活を、学校で実態を共有する体制に改革する」と強調。市教委は生徒が望む部活動にするため、生徒との対話を重視する指導に改めるよう顧問に促し、実践例を紹介する研修も開く方針だ。また、生徒や顧問教員らを対象とした「部活動アンケート」を毎年実施し実態を把握するほか、専門家や教職員らからなる部活動の運営検討会も設置し、各校の活動を検証するとした。
一方、市教委はこれまでに、顧問の男性教諭が生徒側と謝罪の場を持てていないことを明らかにし、報告書の公表を踏まえ、謝罪の機会を探るとした。
女子生徒の母親は15日、手記を公表した。その中で母親は女子生徒について、「真面目にコツコツ頑張る子」と紹介。「音楽を楽しみたい」と吹奏楽部へ入部したが、時折、顧問の男性教諭が他の部員を厳しく叱責している様子を見て、「あんな風に怒られたくないな」と話していたことを振り返った。
また、転落後に駆けつけた教諭に、一瞬意識が戻った女子生徒が「先生すいませんでした」と謝ったことや、母親が病院で女子生徒と対面した際にも、最初に「ごめんね。ああするしかなかってん」と話し、母親が「ごめんね。生きててくれて良かった」と応じたことも明かした。
手記によると、女子生徒は約4カ月半入院し、計8回の手術を受け、現在もリハビリや治療を続けている。母親は「大きな傷は一生涯消えず、目にするたび事件を思い出してしまうかと考えると、心に治癒することのないつらい後遺症を残してしまった」と心配する。そんな中でも、女子生徒は家族の支えで勉強に励み、今春、志望高校に入学した。
2021年4月15日付神戸新聞NEXT
宝塚市立中学校で2019年、部活動中だった2年生の女子生徒(当時)が校舎から転落した問題で、同市教育委員会は15日、女子生徒が吹奏楽部の顧問だった30代の男性教諭から強く叱責され、恐怖感や絶望から突発的に飛び降りたとする調査報告書を公表した。
問題を巡っては、市が設けた第三者委員会が昨年3月、非公表の報告書を作成。兵庫県教委は顧問を停職1カ月の懲戒処分とした。女子生徒は体の複数箇所を骨折し、手術を受けて現在も通院しており、生徒の母親は「処分が軽すぎる」として公表を求めたという。
報告書によると、女子生徒はコンクールに向け音楽室で練習中、顧問から「トライアングルの音が合っていない。廊下で100回たたいてこい」と厳しい口調で退室を命じられた。廊下で練習したがうまくできる気がせず、戻っても再び叱られると感じ校舎から転落。駆け付けた顧問に「ごめんなさい」と繰り返した。
顧問は機嫌に波があって他の生徒も怖がっており、女子生徒は別の生徒が怒られる様子を見てストレスや恐怖心を感じていたという。第三者委は「顧問の指導が直接原因になったことは否定できない」とした。
一方、市教委は「精神的な体罰」に当たるとして、県教委に男性教諭の懲戒処分を厳しくするよう求めたが見直されなかった。
女子生徒の保護者は15日、手記を公表し「教諭が軽い処分ですぐ復職し、強い憤りを感じた」と説明。「『自分で落ちた』という程度の扱いで、事件が終息してしまったように感じた。理不尽に叱られてどれほどつらかったか」とつづった。(西尾和高)
2021年3月30日付毎日新聞
再発防止策検討会の提言を受けて記者会見する田中さんの母親=鹿児島県庁で2021年3月29日午後1時20分、足立旬子撮影(毎日新聞)
◇母会見「意見反映された」
2014年に鹿児島県立高1年の田中拓海さん(当時15歳)がいじめを受けて自殺した問題で、県の再発防止策検討会は29日、速やかに事実究明しなかった県教育委員会の対応を批判し、児童生徒の自殺が起きた場合に公正・中立に調査する機関の常設などを塩田康一知事に提言した。17回の会議をすべて傍聴するなど再発防止を願ってきた母(58)は「遺族の思いを尊重した提言。今度こそ、県教委は変わってほしい」と語った。【足立旬子】
田中さんは14年8月に命を絶った。県教委が設置した第三者委員会は17年、「いじめの存在を特定できない」と結論づけた。しかし、県の再調査委員会は19年、田中さんがかばんに納豆巻きを入れられるなどのいじめを受けていたと認め、「いじめを中心とする学校での事情が自殺に大きな影響を与えた」と判断した。
この結果を受け、県と県教委で構成する総合教育会議が再発防止策検討会を設置した。検討会は提言で、田中さんが亡くなってから県教委が詳細調査を始めるまでに1年4カ月もかかったのは遅すぎるとして「国の指針にそぐわない」と批判。速やかな調査や再発防止策の履行状況を検証するための機関の設置を求めた。
また、田中さんの死後、事実究明を求めた遺族に特定の若手教員が対応するなど学校が組織的に動いておらず、検討会は「場当たり的だ」と指摘。教員や管理職らが子どもを失った家族の痛みを学ぶため、遺族に思いを聴かせてもらう研修会の実施を提言した。検討会の高谷哲也会長(鹿児島大准教授)は記者会見で「『いじり』や『からかい』でも心の大きな傷となりうる。いじめをどうとらえるのかを、問い直してほしい」とも語った。
提言を受け、田中さんの母は記者会見で「私たちの意見が反映された」と安堵(あんど)しながら、「県教委が実践するのか、心配している」と語った。再調査委が田中さんがいじめを受けていたと認めた調査結果について1月に県教委側から説明を受けたが、教職員の対応に問題がなかったとする従来からの見解が繰り返されるなど、息子の命に真摯(しんし)に向き合っているとは思えなかったからだ。
提言で盛り込まれた遺族による研修について、母は「我が子を失うことがどういうことなのかを知ってほしい。依頼されれば私も語りたい」と話した。いじめで子どもの命が失われない学校現場に変わるのか。自らの目で見届けるつもりだ。
2021年3月30日付朝日新聞
2014年に鹿児島市の県立高1年の田中拓海さん(当時15)が自殺した問題で、再発防止策等検討会(会長=高谷哲也・鹿児島大教育学部准教授)は29日、いじめの事案調査にあたる委員会や、県教委の対策を検証する機関の常設などを求める提言をまとめた。
田中さんの自殺をめぐって県教委のいじめ調査委は17年、「いじめがあったと断定できない」と判断したが、県が設けた再調査委は「いじめが自殺に影響した」とする報告書を19年3月にまとめた。これを受けた遺族の要請で、再発防止策を協議する検討会が、知事と教育委員会で構成する県総合教育会議のもとに設置された。教育の専門家と弁護士の4人が委員を務めて19年11月に始まり、今月11日の会議で提言の素案を示していた。
提言では、自殺直後の学校による基本調査で「学校生活の要素が自殺の背景にあることを否定できない」という内容が指摘されていたにもかかわらず、県教委が詳細調査へ移行しなかったと指摘。田中さんの事案にとどまらず、県教委、学校側が国のガイドラインで示された「自発的・主体的に調査の提案をしていると判断できない」とした。
また、事案が公になることから、詳細な調査をする委員会が新たに立ち上げられることに生徒の家族がためらう例が多いなどとして、調査委の常設化を提案した。県教委のいじめ防止の対策が実効性をもって行われるよう、継続的に検証する常設機関の設置も求めた。
提言の冒頭では、いじめの定義にふれた。再調査委の報告で田中さんへの多くの「からかい」「いじり」があったが、「いじめではなかった」と振り返る元生徒の回答が複数あったことから、「いじめ」を狭くとらえることの危険性に言及。「いじめかどうかは児童らが『苦痛を感じているかどうか』という視点での把握が必要」と指摘した。
田中さんの母親は会見で「検討会が調査してまとめた提言。県教委に今度こそ生かしてもらうよう、強く願っている」と話した。「我が子の死の記憶をたどり、書面で読み返す作業は前に進むためとはいえ、つらかった。提言でやっと区切りが付けられる」と涙ながらに語った。
提言を受け取った塩田康一知事は「いじめ防止の対策について広く共通する内容が含まれている。教師一人ひとりに学んでほしい」と話した。県教委は「提言を真摯(しんし)に受け止め、改めていじめの未然防止策や、重大事態が発生した場合の適切な対応に取り組む」とコメントを出した。(奥村智司)