【10月10日付 京都新聞】

息子の自殺から間もなく4年を迎えるにあたり心境を語る父親(大津市役所)

いじめを苦に2011年に自殺した大津市の中学2年の男子生徒=当時(13)=の父親(50)が9日、大津市役所で会見した。男子生徒の死を受け、国はいじめ防止に向け法整備もしたが、依然としていじめが原因とみられる自殺が全国で相次ぐ。父親は「息子が亡くなった時と変わらない現状が今なお存在している」と、やりきれない胸の内を明かした。11日には、男子生徒の4回目の命日を迎える。
大津市の事件以降、国は13年にいじめ防止対策推進法を施行し、全国の自治体や教育委員会にいじめ防止基本方針の策定など対策を求めてきた。しかし、今年7月に男子中学生が自殺した岩手県矢巾町では、町教委が基本方針を策定したのに生かされないなど、いじめを防げず生徒が命を落としたとみられるケースが繰り返されている。
父親は同町をはじめ、事件の起きた各地の教育委員会と事件を防ぐため話し合いを続けている。
その中で「なぜかどこでも教師は事案を認識していたのに抱え込んでいたり、学校長や教育委員会の責任が問われないことが多い」と指摘。問題点として「いじめは発生してはならないという上からの圧力があるように強く感じた」という。そのうえで「いくら法整備が行われても、教育従事者の意識が変わらなければ生徒の命を救うことはできない」と訴えた。
会見には越直美市長らも出席。来年9月の同法見直し時期を見据え、遺族、市、市教委が連携し、国に対策の実効性を高めるため法改正などを求める方針も表明した。
事件をめぐっては、大津家裁が14年3月、いじめたとされる同級生3人のうち、2人を保護観察処分、
1人を不処分とした。民事裁判で損害賠償を求めた遺族は今年3月に市と和解したが、同級生側との訴訟は続いている。
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【朝日新聞滋賀版】

「法が形骸化」遺族が会見 いじめ自殺から4年

会見で心境を語る男子生徒の父親=大津市役所

いじめを受けた大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が自殺して11日で4年になる。生徒の父親(50)が9日、越直美市長らと大津市役所で会見し、「いじめが原因で命を落とす子どもは後を絶たない。息子が亡くなった時と変わらない現状が今なお存在している」と思いを語った。
父親は、全国で起きるいじめ問題の現場に足を運び、遺族らと連携して教育委員会との交渉にあたるなどしている。
会見では生徒の自殺などを受けて2013年に成立した「いじめ防止対策推進法」に言及。今年7月、岩手県矢巾町でいじめを受けた中学2年の男子生徒が自殺した問題を挙げ、「法が命を守ってあげられなかった」「法と施策は簡単に形骸化することが明らかになった」と述べた。
また山形県天童市でいじめを受けた中学1年の女子生徒が14年1月に自殺した問題で、今月5日に第三者委員会の報告書がまとまったことに触れ、「第三者委が調査を終えるのは1年を超えるケースがほとんど」と指摘。国に対し、重大事案が起きたときの第三者委のすみやかな設置を求めていく方針を明らかにした。
「息子に背中を押されるように真相究明を求め、国への法整備を求めてきた」と4年を振り返り、「なぜ息子を救えなかったのか」と涙をぬぐう場面もあった。

■「徹底して子の声聞く」越市長
「組織や制度は変わったが、まだまだ、教員一人一人の意識が変わるまで徹底して子どもの声を聞く」。
越市長は会見で、引き続きいじめ対策を重要課題として取り組む決意を述べた。
市教委はいじめにつながる子どもの小さな変化を見落とさないように、13年度から市立小中学55校に
「いじめ対策担当教員」を配置した。忙しい学級担任をさせず、相談内容を市教委に伝えて助言を仰いだり、協議のまとめ役をしたりする。各校ではいじめ対策委員会を常設し、教員間で子どもの情報を共有している。
また、いじめ問題で市教委の事実究明が後手に回り批判を受けたことから、市長部局に「いじめ対策推進室」を設置。弁護士や臨床心理士ら5人が電話や手紙などによる相談にあたる。
市教委によると、市内の市立小中学校のいじめ認知件数は11年度からの4年で、60件から423件と増えた。
市と市教委は、教員の問題意識が高まったことや、子どもが相談しやすい環境になったことが増加の要因と
みている。会見に同席した市教委の桶谷守・教育委員長は「まだ道半ば。いじめ問題に組織で対応できる態勢をつくっていく」と述べた。(奥令)

〈大津いじめ問題〉
男子生徒の自殺から9カ月後の12年7月、中学が実施した全校生徒へのアンケートに「自殺の練習をさせられていた」との記述があったことが発覚。市の第三者調査委員会は13年1月、「いじめが自殺の直接的要因」とする報告書をまとめた。今年3月、遺族が市や元同級生側に損害賠償を求めた訴訟で、遺族側と市が和解。元同級生を相手取った裁判は現在も続いている。
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【読売新聞滋賀版】

大津中2自殺4年 いじめ、教育者が意識を ◇父親が会見「現状変わらず」

いじめを受けていた大津市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺し、11日で4年となるのを前に、男子生徒の父親(50)が越直美市長らと9日、市役所で記者会見し、再発防止に向けて教育現場の
意識強化と法制度の見直しを求めた。(池内亜希)
会見の冒頭、父親は「息子が亡くなってから『いじめで命を落とすのは僕を最後にしてほしい』と言われているような気がして、いじめの真相究明や国への働きかけをしてきた」と振り返った。
大津市の事件後も、いじめによる自殺は後を絶たず、父親は各地で遺族を支援してきた。いじめを訴えていた中学生が7月に自殺した岩手県矢巾町に赴いた際は、息子の死がきっかけで2013年9月に施行された「いじめ防止対策推進法」に基づく基本方針が、町や学校で作られていたにもかかわらず、悲劇が防げなかった現状を目の当たりにした。
会見では、「息子が亡くなった時と変わらない現状が今なお存在している。いくら法整備が行われ、素晴らしいマニュアルが作られても、教育者の意識が変わらなければ命は救えない」と強調。
文部科学省が結果を公表しているいじめに関する調査についても、「学校が『問題は解決した』と判断すれば、被害に遭っている子どもが『解決していない』と思っていても問題としてカウントされない」と指摘し、子どもたちのサインを見逃さず、校内や関係者間で問題を共有するよう求めた。
重大事案発生時、外部有識者らでつくる「第三者調査委員会」が、各地でスムーズに設置されていないことにも
言及。同法の見直しに向け、設置要綱のモデルを大津市と検討し、年内にも国へ示していく決意も語った。
市教委関係者らと会見に同席した越市長は「法整備後も、大津市の反省、教訓が生かされていない実態がある。
法改正の必要性を共に訴えていきたい」と述べた。
◇認知、最多1331件 「教員が発見」3割未満
文部科学省の児童生徒の問題行動調査(2013年12月現在)によると、県内の国公私立小中高、特別支援学校のいじめ認知件数は、過去最多の1331件(前年893件)、1000人あたりで7・8人(同5・3人)となっている。
調査では認知件数の95%で「問題が解消している」と報告されているが、認知されないまま深刻化する事態も考えられ、引き続き教委や学校、家庭などが連携した対応が必要だ。常に子どもたちが相談しやすい環境を整えることも重要になる。
県内では、いじめ発見のきっかけで、「教職員らが発見」が28・2%(全国68・1%)と低く、県教委は「早期にいじめの芽を摘むため、家庭などと連携し、更に子どもたちとの信頼関係を築いていきたい」としている。(猪股和也)
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【NHK大津放送局】

いじめ自殺4年で遺族が会見

大津市でいじめを受けた中学2年の男子生徒が自殺してから11日で、4年になります。
これを前に男子生徒の父親が会見し、全国でいじめが原因で子どもが亡くなる事案が絶えないことについて、「子どもの命を救うはずの法律や施策ができても、簡単に形骸化している」として、今後、大津市などとともに国に法律の見直しを要望していくことを明らかにしました。
いじめを受けた中学2年の男子生徒が自殺してから4年になるのを前に、9日、男子生徒の父親が、大津市
役所で会見を開きました。
この中で父親は、「4年がたちましたが、なぜ救えなかったのか、先生が伝えてくれていたら救えていたのではないかと今でも思い出します」と述べました。
また、おととし「いじめ防止対策推進法」が成立したにもかかわらず、いじめを受けた子どもの自殺が相次いでいることについて触れ、「息子が作った法律だと思いたいが、同じような状況は変わらずにあり、亡くなった子どもや遺族に申し訳ない気持ちです。同時に法律や施策が簡単に形骸化することが明らかになりました」と述べました。
その上で、「すばらしい方針が作られても教育従事者の意識の変化がなければ命を救うことはできず、命の
守られ方が地域によって違うのが実情です」と法律を生かせていない教育現場を批判し、市や市の教育委員会とともに、実効性のある法律への見直しや具体的なガイドラインを、国に提言していくことを明らかにしました。
http://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/2065384311.html?t=1444429653297

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【10月8日付 河北新報】

天童市は7日、河北新報社の情報公開請求に対し、天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題について、「いじめが自殺の主要な原因」と明記した第三者調査委員会の報告書を開示した。市個人情報保護条例に基づき、氏名などの個人情報、教育的配慮からいじめの具体的行為は黒塗りにして伏せて公開した。
報告書はA4判134ページ。実質的に(1)いじめと自殺との因果関係(2)学校の対応(3)再発防止の提言(4)自殺後の学校と市教委の対応-で構成されている。
報告書は、いじめは身体的攻撃を伴わない集団での悪口や嫌がらせ、無視、仲間はずれなどで、多大な心理的苦痛が女子生徒を自殺に追い詰めたと認定した。
いじめはクラスと部活動で継続してあったが、教師は連携を怠り、部活動で対策を取る義務の認識が欠如していたと指摘。いじめに対する教師の理解と意欲を欠き、場当たり的対応にとどまったと強調した。
個々の教員が兆候となる情報を得ながら、学校で組織的に共有する意識にも欠け、対応する組織も機能しなかったと批判した。
事実認定を踏まえ、提言は8項目に及んだ。第三者委の野村武司委員長は5日、報告書提出後の記者会見で「二度といじめにより子どもの命が失われないように、検証内容と提言を防止対策に役立ててもらいたい」と述べた。
第三者委(委員6人)は昨年11月末の発足以降、28回の部門別会議、13回の委員会を開催して報告書をまとめた。

<天童いじめ自殺>第三者委報告書要旨
報告書の内容の要旨は次の通り。黒塗りされた部分を含め、文脈から判断して補った箇所はかっこ内で示した。

【いじめと自殺との因果関係】
(女子生徒)は2013年4月、当該中学に入学した。(女子生徒の)クラスでは(加害生徒らが)女子最大グループを形成。遠慮なく大声でしゃべるグループで、(加害生徒は)人の悪口を言うことで話題の中心になろうとした。(女子生徒は)クラスではおとなしく、1人でいたり小説を読んだりすることが多かった。
グループには異質な雰囲気に思え、気に食わなかった。反応が大人っぽくクールに見え、親しく話しかけても流される感じがあり、いら立ちを覚えたと見る生徒もいる。
(女子生徒の)ちょっとしたことを捉え、悪口もあった。発言に対し、あまり表情を変えなかったが、7月上旬ごろ「私何か言われている?」と尋ねたことがあり、気付いていたと思われる。対象は(女子生徒)だけでなかったが(女子生徒)への悪口が一番ひどくなり、週2~3回はあるようになった。担任は(女子生徒)への悪口を気に掛けており、信頼できる生徒に、悪口を見掛けたら「やめた方がいいと言ってくれ」と頼んだ。担任は「(加害生徒は)問いただすと言い訳する生徒で、確証が取れないことは指導できなかった」などと述べている。夏休みが明けて悪口は継続し、11月になると常態化。黒板に書くこともあり、嫌がらせは無視する働き掛けに変わっていった。
(女子生徒)が入部した(ソフトボール部)は、1年生が三つのグループに分かれた。部活動の雰囲気に影響力を持つグループが、(女子生徒に)悪口とともに対立的な態度を取るようになった。1年生の人数が奇数で、ペアで行う(キャッチボールなど)の練習時には1人になることが多かった。(女子生徒は)6月ごろ母親に「いじめ」という言葉を漏らし、母親は担任に相談した。
7月1日の部活動中に(女子生徒)の頭部に(バット)が当たる事故があった際、両親は部活動を辞めるよう提案したが、「内申書に響くから」と退部には至らなかった。7月24日の(担任との)2者面談で、母親は部活動やクラスでの様子が心配だと伝えたが、孤立した状況の改善は見られなかった。
部活動の顧問は、特定の部員に悪口を言い、部内の雰囲気が悪くなっているとして、9月に1年生だけのミーティングを開いた。顧問は思っていることを陰口でなくみんなの前で言うよう指示した。(加害生徒を含む部員が女子生徒に)不満を述べたり、自分を変えるよう発言。(女子生徒は)「仲間外れにしないでください」「明るくなります」と泣きながら話した。
3学期始業式当日の(14年)1月7日、(友人)と一緒に登校した(女子生徒)は途中で様子が変わり、線路の方に向かった。「学校に行きたくない」「死にたい」「学校・部活・嫌だ」と言いだし、(友人に)「先に行ってていいよ」「早く電車来ないかな」と発言、「バイバイ」と手を振った。その後、午前7時55分ごろ、(JR山形新幹線にひかれ)自殺した。
本事案のいじめは「身体的攻撃」はほとんど認められず、悪口や陰口といった「言語的攻撃」と集団からの排斥といった「社会的攻撃」を中心とした「集団いじめ」と判断できる。いじめは(加害生徒)のみで行われたものでは決してなく、いじめ行為を同調・助長・加担していった周囲の加害生徒、暴走を傍観した多数の生徒や教職員がいることを忘れてはならない。
「いじめ」の傍観者のみならず、直接の加害生徒ですら「いじめ」に対する当事者意識や内省が明らかに不足していることも特徴である。学校におけるいじめが続いていなければ、(女子生徒の)自殺が生じていた可能性は非常に低いと判断でき、いじめ被害を受けたことが自殺の主要な原因であると判断できる。

【学校の対応】
本事案は、クラスと部活動の両者にまたがり起こった。当該中学は部活動を重視し、全員加入が原則で、3年間続けることを念頭に部活動を選択させる。学校生活で部活動が占める割合は大きい。部活動にもいじめ防止対策を含む安全義務がある。当該中学は、危険防止という意味の安全義務への配慮はあったが、生徒間の人間関係に起因するいじめ防止等対策義務が、意識されていたとはいえない。技術面のスキルを重視する一方、人間関係の問題は無方針で、当該中学のいじめ防止等対策の仕組みとの接合もなかった。
担任はクラスでの悪口が、部活動を含め(女子生徒に)及んでいることは容易に想像できたはずだが、相対的に情報を小さく評価し、顧問と連携したり中学全体の問題として共有したりしていない。6月中旬ごろ(女子生徒の)母親が、部活動でいじめられている、少なくとも孤立しているとの相談を担任にした。これは部活動の顧問に伝えられ、校内の教育相談・特別支援教育推進委員会に報告されたが、わずかな取り扱いだった。(母親は)7月24日の担任との2者面談で再度相談したが、担任と顧問が同委員会に報告した形跡はない。顧問らは(女子生徒が部活動で)1人になっている事実を把握しつつも大きなこととは考えず、有効な手だてを講じないまま、中途半端な指導をするだけだった。
9月の「こころの点検票」で(女子生徒は)「友達」について不安に思っているレベルを3から4に変更した。
「部活動で不安レベルが増し、友人関係で少し頑張れなくなり、とても不安」と自己評価したとうかがえる。担任は「4と出ているけど、何かあるのか」と聞いた。(女子生徒は)笑いながら「いや、大丈夫ですよ、先生」としたので、「何かあったら先生に言うように」「デイリーノートにも書いていいよ」と伝えたが、それ以上、具体的な対応は取らなかった。点検票は、問題を把握するせっかくの機会だったが、学年の教育相談主任、学年会で問題にされた形跡はない。レベルの程度に個人差があるとしても、変化には重要な情報が含まれていることは明らかで、問題を看過した理由にはなり得ない。一般に、いじめなど困難を抱えている生徒に対し「大丈夫です」との答えを引き出す問い掛けの問題点は指摘されている。「大丈夫か」と問い掛ければ、大丈夫でない場合でもあっても「大丈夫」と答えることは、今や常識。(女子生徒が)「大丈夫」と答えたことに対し、注意を要すると考えるべきだった。
【まとめ】 担任や顧問はいじめ等のリスクを評価し、起こりうる可能性等に注意を向ける必要があったが、表出した問題行動への場当たり的な対応にとどまり、その注意に欠けた。担任や顧問が(問題を)抱え込むのではなく、学校全体で共有し取り組む認識が各教員に浸透していなかった。顧問は結局、競技成績の向上を重視し、人間関係の問題に配慮せず、いじめ防止等対策が部活動でも主要課題との認識を欠いた。
(女子生徒は)謙虚に頑張るタイプで、頑張っている姿も、悩んでいる姿も表現するのが得手でなく、周囲に相談することも少なかった。それでも気になる兆候や様子など(学校が)対応をするに十分な情報が、保護者や他の生徒からの相談を含め担任、顧問、周囲の生徒等により把握されていた。しかし、情報は生かされることなく、結果的に見落とされ、いじめに対し有効な対応はなされなかった。

【提言】
(1)学校のいじめ防止等対策組織は名目的設置では足りず、防止対策などを学校全体の組織として情報を兆候事実を含めて集約し、実効性のある対応と措置ができる実質的内容を有するものでなければならない。
(2)部活動でもいじめは発生し温床となりやすいことを認識して、部活動を含む学校活動全体に対して組織的に防止対策を実施することが求められる。
(3)暴力を伴わないいじめ(心理的な嫌がらせなど)を過小評価せず、いじめが集団構造とその力関係の中で行われるものであり、日常的な悪口や嫌がらせでも被害生徒にとってはダメージが大きく深刻な事態を発生することを正しく認識した対応と措置を実践する必要がある。
(4)個別のいじめへの対応に際して、いじめの事実と兆候事実を認知した個々の教師が自分だけで情報価値の重みを判断し、取捨選択することなく全ての情報を共有すべきである。
(5)いじめを受けている子どもの中には周囲に相談せず、苦痛を表せず大丈夫だと振る舞う子どもがいること、人に伝えたときはいじめが進行していることを踏まえ、ささいな変化に留意し、子どもを守るための適切な対応を取ることが必要である。
(6)加害生徒への指導に当たっては、いじめであるかどうかに固執して認めさせ、単に叱責したり謝罪させたりするのではなく、自己の行為が相手に与える傷付きや苦しみを真に実感できるような認識に至るべく働き掛けることが重要。
(7)いじめについての相談、対応などを記録し、対策組織で共有し、対応が検証可能となるよう、記録を保管整理すべきだ。
(8)いじめの対応と解決を図る際には、いじめられた子どもの主体性と参加を重視し、適切な情報提供に努め、その意向を踏まえた対応が必要である。

【女子生徒自殺後の学校と市教委の対応】
市教委と学校は遺族から求められて情報開示と説明を行う受動的な対応が多く、遺族への情報提供の重要性に対する認識不足が感じられる。遺族に対し早期の段階で、いじめの調査や生徒アンケートの実施方針や結果報告の方法を示すべきだった。
市教委と学校は(自殺2日後の1月9日)、いじめの可能性が見えたら第三者委員会を設置する意識があり、原因を決めつけず対応したのは適切だった。いじめの存在を疑わせる警察情報や、いじめが記載されたノートの存在が指摘され、1月15日に第三者委設置に向けて具体的に動きだした対応は問題ない。
設置の際は遺族の意向を反映させる必要があるが、意見聴取の時間的余裕が与えられていたかは疑問が残る。
市教委は第三者委の要綱、委員の人選について、遺族が意見を1回でまとめて提案できるよう詳細に説明するなど、遺族とともに調査を進める姿勢を鮮明にすべきだった。結果的に遺族から要綱改定の要求が複数回出され、委員会活動が開始されるまで(自殺から)11カ月を要した。

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【10月7日付 河北新報】

天童市教委(山形県)は6日、天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題に関する第三者調査委員会の報告書について、第三者委の要請を受けて個人情報に加え、いじめの具体的な行為を記載した部分を黒塗りにした状態で、7日に公開する方針を明らかにした。
天童市内の16の小中学校にも配布する。
第三者委の野村武司委員長は5日の記者会見で(加害生徒の中には)今でもあまり重大ないじめを行っていたわけではないという認識の生徒もいるかもしれない」と指摘。具体的な事実は先生から直接話をすべきで「報道を通じて内容が伝わることは、ふさわしいとは思わない」と述べ、生徒への指導を優先させる重要性を強調した。
野村委員長は加害生徒が本年度で卒業することを踏まえ、在学中の指導に役立てるため、報告書の提出時期を決めたことも明らかにしていた。
市教委は提案に沿って、報告書134ページのうち黒塗りする部分を決めた。市学校教育課の長岡佳孝課長は「いじめがあった流れは理解できるようにする。具体的な行為を示すことが再発防止につながるとの観点から、時期をみて黒塗りを外す部分も考える」と述べた。
指導のタイミングについて、市教委は5日の記者会見で「遅くとも11月末までにはいじめに関係した生徒、保護者への指導を終えたい」と説明していた。

<天童いじめ自殺>情報共有の徹底指示

情報共有の徹底などを指示した水戸部天童市教育長

天童一中(山形県天童市)1年の女子生徒の自殺はいじめが主要な原因と認定した第三者調査委員会の報告書提出を受け、天童市教委は6日、臨時の小中学校校長会議を開き、いじめの未然防止や教員同士での情報共有の徹底を指示した。
水戸部知之教育長は16校の校長に対し「各校で認知したいじめ行為をする児童生徒に対しては、継続して十分な注意を払い指導をしてほしい。未然防止、早期発見に向けて組織体制の充実を図る必要がある」と強調した。
市教委が報告書に基づいて、いじめの事実関係や自殺との因果関係を説明した。冒頭、出席者は亡くなった女子生徒に黙とうした。

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【10月7日付 朝日新聞宮城版】

仙台市泉区の市立館中学校1年の男子生徒が昨秋、いじめを受けて自殺した問題で、中学校は6日、全校集会を開き、在校生に初めて事実を説明した。「男子生徒は転校した」と事実と異なる説明をしていたことなどについて謝罪した。
全校集会は午前9時前から、体育館で非公開で開かれた。集会後に記者会見した菅原光博校長によると、
校長が男子生徒の名前を明らかにしたうえで、亡くなった経緯を説明し、「本人が苦しく心を痛めていたことに、学校が十分に対応できず申し訳なかった」と話したという。
遺族の要望で、これまで事実を伏せていたことや、「転校した」と伝えたことについても謝罪。生徒たちは静かに聞き、涙ぐむ子や「具合が悪い」と訴える子もいたという。
館中では今後、校舎の一角に献花台を設け、生徒や保護者が手を合わせられる場所にする。道徳の授業やスクールカウンセラーを交えた取り組みの内容をこれまで以上に深め、生徒会でもいじめ問題に取り組むという。
ただ、今回の事案を授業などでどうとり上げるかについては、「検討中」と述べるにとどめた。
集会に参加した3年の女子生徒(15)は、自分たちの学校だといううわさが広がっても、説明しない学校に不信感があった。「もう少し早ければよかったけど、遺族の意向なら仕方ない」別の3年の女子生徒(15)も「遺族の人が嫌と言っているものを無理やり公開できない」と学校に理解を示した。
「学校全体が二度とこんなことを起こしてはいけないという空気になれた」と話す3年の男子生徒(15)もいた。
一方、2年の男子生徒(14)は、用意した紙を読み上げる校長の姿に違和感を覚えたという。「本当に反省していたら覚えてくるはず。『遺族の意向』と連発するのも、責任逃れのように感じた」と納得できない様子だった。
2年の女子生徒(14)のクラスでは、「隠していた学校はおかしい」と担任に問いただす生徒もいたという。女子生徒の母親は「うそをついても謝ればいいという態度は、子どもがまねをする。今さら受け入れられない」と憤った。

■いじめ自殺と公表をめぐる動き
<2014年>
5月 いじめを受けた男子生徒が休みがちになる
9月 男子生徒が自殺
11月 第三者委員会が調査を開始
<2015年>
6月 第三者委が仙台市教育委員会に調査結果を答申
8月21日 市教委が記者会見し、男子生徒の自殺を公表。その後、学校が同級生に「転校した」と説明していた
ことが判明
9月 市議会で、学校内での公表を求める声が相次ぐ。遺族も校長に公表を要望。
10月3日 教育長や校長が遺族と会い、公表で同意
6日 全校集会で生徒に説明

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【10月6日付 山形新聞】

学校でのいじめに悩んでいた天童市の女子中学生が自殺した問題で、第三者委員会は5日、いじめが自殺の主要因との内容を柱とした報告書を市教育委員会に提出した。報告書では、いじめにより女子生徒は「多大な心理的苦痛を受けた」と認定。女子生徒の様子がおかしいとの情報を教諭は把握していたにもかかわらず「いじめとして認知できず、適切な対応もできなかった」と、学校側の落ち度を認定した。
市教委と学校側は指摘を認め、遺族宅を訪問し「尊い命を救えず申し訳ありませんでした」と直接、謝罪した。
報告書によると、女子生徒は「物静かだが、謙虚に頑張るタイプ」とし、加えて、頑張っている姿や悩んでいる姿を表現するのが得意でなく、周囲に相談することも少なかったとの人物像を示した。
こうした状況ながら、担任や部活動を指導する教諭は学校でのアンケートなどで女子生徒がいじめに遭っていることを疑わせる兆候など、「対応に乗り出すのに十分な情報を得ていた」と指摘した。
情報を得ていながら適切な対応ができなかった背景について報告書は、教諭のいじめに対する理解と重大な事態を引き起こす可能性があるとの認識が「十分でなかった」と強調。結果、「場当たり的な対応にとどまった」と結論付けた。ほかの教諭も、生徒の中でいじめに遭っていることを疑わせる兆候を把握しても「組織的に共有する意識に欠けていた」と、学校全体がいじめに対し機能不全に陥っていたと指摘した。
また、女子生徒に対するいじめはクラス、部活動の同じ生徒で、「悪口や仲間外れなどの嫌がらせだった」と認定し、「多大な心理的苦痛を与えるいじめだった」と述べている。
再発防止策として、心理的な嫌がらせなど暴力を伴わないいじめを過小評価しないように求めた。
日常的な悪口や嫌がらせでも、受けた生徒にとってはダメージが大きく、深刻な事態を引き起こす可能性があることを認識するよう、訴えている。

報告書の概要は次の通り。
http://yamagata-p.jp/news/201510/05/pdf_2015100500001.pdf
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【河北新報】
<天童いじめ自殺>報告書、学校の対応批判

いじめを受けていた天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題で、第三者調査委員会は5日、「いじめが自殺の主要な要因」と明記した報告書を天童市教委に提出した。
いじめと自殺の因果関係を認め、学校の対応を「情報が共有されず組織として機能しなかった」と厳しく指摘した。
市教委は報告書を受け、遺族宅を訪問して初めて遺族に謝罪した。記者会見した佐藤通隆市教育委員長は「将来ある尊い命を救うことができず、おわびする」と述べた。
野村武司委員長(埼玉弁護士会)が会見で明らかにした報告書の概要によると、クラスと部活動で悪口や嫌がらせがあり、多大な心理的苦痛を与えるいじめがあったと認定した。自殺は衝動的ではなかったとの認識を示し「人間関係の輪に入っていけず、そこから逃れたい気持ちがあった」と、追い詰められて決意したと説明した。
調査では、女子生徒の人物像について、物静かで謙虚に頑張るタイプだったと分析。悩んでいる姿などの表現が得意でなく、友人らに相談することが少なかったとする一方で「関係する教師は気になる兆候や様子に対応する十分な情報を持っていた」と指摘した。
その上で学校、教師の対応については、部活動でいじめ防止の対策を取る義務の認識が欠け、クラスを含む学校生活全体で教師の理解不足からいじめを認識できず、場当たり的な対応にとどまったと批判。
「個々の教員に兆候の情報を組織的に共有する意識が欠け、機能を果たしていなかった」と断じた。
当初、市教委が第三者調査委の設置要綱について遺族に意見や要望を聴取しなかった問題点も指摘。
「網羅的に協議を重ねて、設置すべきであった」と対応を疑問視した。
女子生徒の母親は「いじめた側や、いじめをやめさせられなかった担任や部活動顧問の責任は重い。
学校が対応できなかったことにも、あらためて憤りを感じた」との談話を発表した。

[天童いじめ自殺]天童一中1年の女子生徒が3学期が始まる2014年1月7日午前8時ごろ、登校途中に山形新幹線にはねられて死亡した。自宅からは「陰湿な『イジメ』にあっていた」「ダレカ、タスけテよぅ」などと書かれたノートが見つかった。学校は1月15日、全校生徒約530人を対象にアンケートを実施、13人が女子生徒へのいじめを直接見聞きし、100人以上がいじめに関して記述した。第三者調査委員会は設置要綱と委員の人選などで市教委と遺族側が対立、発足は女子生徒の死から約11カ月後の14年11月末となった。13回の協議を重ね報告書をまとめた。

◎天童いじめ自殺第三者調査委員会の報告書骨子
・多大な心理的苦痛を与えるいじめが継続的にあった
・いじめが自殺の主要な原因となった
・学校はいじめの認識、理解に欠け、情報も共有されず組織として機能しなかった
・学校、市教委に抜本的対策提言

<天童いじめ自殺>相次ぐ悲劇阻止へ重い提言

【解説】天童市の中1女子自殺で第三者調査委員会が5日にまとめた報告書は、関係教師がいじめの情報を得ていたにもかかわらずいじめへの理解不足で認知できず、情報の共有と対応ができなかった実態を、学校が組織的に機能しなかったとして指弾した。
大津市の中2男子自殺事件を受けおととし9月にいじめ防止対策推進法が施行された後も、天童市を含めた東北、全国で、いじめの要因が指摘される子どもたちの自殺が相次いでいる。報告書は1事案にとどまらず、全ての学校、行政、保護者らに向けた検証、提言として重く受け止めたい。
いじめに気付いた母親は2度にわたって担任に相談し、女子生徒も校内調査で友人関係に不安を訴えて
いた。しかし強いSOSのシグナルは届かなかった。報告書はこの点を「いじめへの理解が十分でなく、
対策を取る義務の認識、情報を共有する意識に欠けていた」と厳しく指摘し、学校と教師に猛省を促した。
女子生徒の死から、第三者委発足は11カ月後、報告書提出は1年9カ月後となった。背景には当時の
校長が自殺後の記者会見で「いじめはなかったと思っている」と断定的に発言、学校は遺族から強く要求
されるまで積極的に調査に動かなかった経緯がある。
遺族は「事実が隠蔽される恐れがある」として、第三者調査委に中立、公平性の確保を強く求め、設置要綱と委員の人選をめぐって市教委との交渉が長引いた。学校と市教委には、遺族らとより真摯に向き合う姿勢が求められた。
「二度と同じ悲劇を繰り返してほしくない」。女子生徒の遺族らは訴え続けてきた。いじめ自殺が起きる度に繰り返される願いを、今度こそ無にしてはならない。(山形総局・伊藤卓哉)

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【10月6日付 河北新報】

報告書について説明する第三者調査委の野村委員長(左)

天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題で5日、いじめが主要な原因と認定した報告書をまとめた第三者調査委員会や、市教委、遺族の代理人が相次いで記者会見した。
調査委の野村武司委員長は「いじめの兆候となる情報を取捨選択せず、組織的に共有すべきだ」と指摘。市教委は遺族に初めて謝罪するとともに会見で「将来ある尊い命を救うことができなかった」と頭を下げた。遺族の代理人は、市教委から報告を受けた母親の様子を「学校や教育委員会の責任を追及する場面があった」と述べ、意見書を提出する方針を明らかにした。
「いじめへの理解が十分でなく、場当たり的な対応にとどまった」。134ページに及ぶ報告書を提出した野村委員長は記者会見で、担任教諭や部活動顧問を含む学校側の対応を「暴力を伴わない心理的ないじめも過小評価せず、微細な事実を重大な事実と受け止めるべきだった」と厳しく断じた。
女子生徒の母親は担任に2度も相談し、女子生徒自身も学校の調査に友達関係の不安を訴えたが、女子生徒の自殺後、学校側はいじめを認識した教職員が一人もいなかったと説明した。
「教師が知らず知らず情報の重要性を選別し、(いじめの)兆候となる情報を組織的に共有する意識に欠けていた。情報の価値、重みを選別せず全ての情報を共有すべきだった」と不備を追及した。
調査委は生徒や教職員、遺族らへの聴取から断片的な事実を把握し、いじめの全体像をあぶり出した。
暴力行為は認められなかったものの、「日常的な悪口や嫌がらせ」があったと断定。2014年1月7日、女子生徒は「死を決意して自宅を出たと考えられる。人間関係から逃れたい思いだったのだろう。決して、衝動的に死を選んだわけではない」と推し量った。
野村委員長は会見中、「ひょっとしたら、加害生徒は今も重大ないじめと思っていないかもしれない」と再三、懸念を口にした。報告書を加害生徒への指導に生かすことを強く求め、「亡くなった女子生徒がどんな思いだったか、よく考えてほしい」と強調した。
報告書には、再発防止に向けた八つの提言を盛り込んだ。子どものSOSを見逃さない対策と心構えを
具体的に記した。
「いじめを受けている子どもは『大丈夫か』と聞かれ『大丈夫』を装うのが普通。だから、いじめがあると言った時は事態は相当に深刻。わずかな変化に留意し、子どもを守るため適切な対応を取る必要がある」と指摘した。

<天童いじめ自殺>市教委が謝罪

報告書を受け、記者会見で謝罪する天童市の佐藤教育委員長(中央)ら 「将来ある尊い命を救えなかったことを衷心よりおわびする」。市教委の佐藤通隆教育委員長、水戸部知之教育長、相沢一彦天童一中校長は記者会見で頭を下げた。「報告書の指摘や提言は厳粛かつ謙虚に受け止め、いじめのない学校づくりに取り組む」と語った。
今春に定年退職した石沢照夫前校長の後を継いだ相沢校長は「学校が生徒の(SOSの)サインを受け止めた時、見過ごして良いものかどうかの見極めが十分でなかった。(いじめの)迅速な把握、対応にも課題があった」と釈明した。
水戸部教育長は「子どもの痛みを感じ取ることが基本だったろう。温かい人間関係ができているのかどうか、見極める力が私たちには求められる。あらためて、これでいいのかと問い直したい」と神妙に話した。
報告書の内容は遅くとも11月末までに、加害生徒を含む在校生に伝え、「いじめを強く認識させる指導」(相沢校長)を行う。加害生徒と保護者、関係教職員には遺族に謝罪するようあらためて指導する。
水戸部教育長は女子生徒の自殺後、市議会答弁などで「重い責任を感じる」と語っていた。記者会見では「責任の全うは辞めることではない」と強調し、佐藤委員長とともに引責辞任しない考えを明らかにした。

<天童いじめ自殺>遺族代理人「評価できる」

遺族代理人の安孫子英彦弁護士は5日、天童市内で記者会見し、報告書でいじめの事実といじめが自殺の主要な要因であることが認められた点に関し「評価できる内容だ」と話した。
市教委から報告と、初めて謝罪を受けた遺族の様子について「あらためて娘さんが亡くなったことに感情がこみ上げ、学校や教育委員会の責任を言葉にして追及するような場面があった」と明かした。
遺族は今後、報告書の内容を精査し意見書の提出を予定しているという。損害賠償請求など訴訟の提起は「選択肢として否定するわけではないが全く未定」と説明した。

<天童いじめ自殺>遺族がコメント発表

第三者調査委員会の報告書提出を受けて、遺族はコメントを発表した。全文は次の通り。

今回の報告書では娘がいじめられていたことが認められ、娘の残したノートに書き記したことが真実であったことが明らかになりました。いじめた側の責任や、いじめをやめさせられなかった担任や(部活動)顧問の責任は重いと思います。学校側が対応できなかったことについても、あらためて憤りを感じます。本日教育委員会から、謝罪を受けましたが、対応が遅く、父親に報告できなかったことは残念でなりません。もっと遺族に寄り添った対応があったら、こんなに時間が掛からなかったと思うと、返す返すも残念です。

<天童いじめ自殺>闘病の父、報告待たず死去

「娘はなぜ死を選ばなければならなかったのか」
女子生徒の死後、問い続けてきた父親が9月9日、第三者調査委員会の報告を受ける直前にがんのため
亡くなった。45歳だった。
自殺直後、娘の部屋からいじめを記したノートを見つけた。
「陰湿な『イジメ』にあっていた」「ダレカ、タスけテよぅ。私ヲ、『生』かしテヨゥ」 命を救えなかった自責の念にも駆られながら、事実関係の把握に動かない学校に対し、ノートの存在を伝えて徹底した調査を求めた。全校生徒に対するアンケート前には全校集会に出席し「本当のことを答えてほしい」と強く訴えた。
真実を知りたいという思いは、学校、市教委側との衝突につながった。第三者委に中立、公平性を求め、設置要綱と委員の人選に妥協はしなかった。
父親は取材の度にうつむきながら話した。「娘のことを考えない日はない。喪失感はいくら時がたっても消えない」。いじめの実態が「闇へ葬り去られるのではないか」と恐怖感も吐露していた。
いつも手には資料をまとめた膨大なファイル、幾度も読み返し無数の赤線が引かれたいじめ防止対策推進法の解説本があった。
ことし春から病状が悪化し、痛みに顔をゆがめる瞬間も多かった。初夏に会った際には「納得のいく調査結果を見るため、頑張りたい」と気丈に話していた。
第三者委が9月28日、いじめが自殺の主な要因と認定した報告書の概要を母親に説明した時、共に闘ってきた父親の姿はなかった。(山形総局・伊藤卓哉)

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【10月4日付 朝日新聞宮城版】

献花台があった場所には今も花束などが供えられている。よく訪れる近所の男性は、「生徒が死を選んだことを学校や地域は重く受け止めて、みんなで黙禱を捧げるべきだ」と花束に水をあげていた=3日、仙台市内の公園

仙台市立中学1年の男子生徒が昨秋、いじめを受けて自殺したことが公表されてから、1カ月以上が経った。生徒が通った中学校では「遺族の意向」として、自殺の事実は説明されていない。朝日新聞の電話取材に応じた生徒の父親は、「学校での説明は必要と思うようになった」と心境の変化を記者に語った。

■「生徒や保護者への説明、必要だと思うようになった」息子が亡くなってから、1年が過ぎました。区切りになるかとも思ったけれど、やっぱりそんなことはありません。むしろ、今になって、学校などに新たな怒りもわいてきています。ただ、息子が通った中学校で、生徒や保護者に対して事実が明らかにされることについては、いまでは必要だと思っています。考えが変わりました。
直後から、このことは「墓まで持って行こう」と思っていました。いじめの加害者もわからず、怖い思いをしている状況で、他人やマスコミから探られて、中傷され、これ以上傷つくのは絶対に嫌でした。残された家族や生活を守るためには、公表はできない、と。報告書がまとまり、学校側からすべてを伏せ続けることはできないと説得されて、泣く泣く、8月の公表にいたりました。
しかし、最近は「このまま隠そうともがいていても仕方ないんじゃないか」と思い始めました。学校内で事実を伏せていることで、動揺している人、悩んでいる人もいると報道などで知って、そのままにしていいのだろうかと思いました。
学校側とは、「二度とこんなことは起こさない」と約束してもらっていました。加害者の生徒たちも反省し、具体的ないじめ対策もとられると期待しました。でも、1年経ったいま、私から見ると、何が変わったのかわからない。再発防止ができないのであれば、しっかり事実を出して、生徒や学校に向き合ってもらう必要があるのでしょう。今後、学校側から生徒らへの説明についてはっきりと提案があれば、断るつもりはありません。
しかし、そもそも、こんな最悪な出来事が起こらないと、騒ぎにならないと、学校全体が動かないというのは本当におかしい。何をしても、死んでからでは遅いんです。悔しい。
息子がまだ生きていた当時、いじめをやめるよう指導する内容の学年集会が開かれていました。それでも、いじめはなくならなかった。それを考えると、事実を明らかにしても何も変わらないのではないか、という思いは残ります。
そんな中、学校そばの献花台の設置は、とてもありがたかった。どなたが行動を起こしてくれたのかはわからないけれど、私も直接手を合わせに行きました。息子も、少しは浮かばれたかな。少しずつ、前を向いて行動していかないといけないと思えるようになりました。(聞き手・船崎桜)

〈仙台のいじめ自殺問題〉仙台市立中学1年の男子生徒が入学直後の昨年5月から、仲間外れにされるなどのいじめを受け、昨秋に自殺した。市教育委員会は今年8月21日、具体名は伏せたまま、いじめが関連する自殺があったことを公表し、対応の問題を認めて謝罪した。
市教委は「遺族の強い希望」を理由に、自殺の事実をそれまで明らかにしていなかった。中学校側も、加害者を除く同級生らには「男子生徒は転校した」と事実と異なる説明をしていた。

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【9月29日付 京都新聞】

滋賀県高島市内の中学校で昨年5月、当時中学2年の男子生徒が同級生によるいじめが原因で校舎3階の窓から転落し重傷を負った事故で、同市議会は28日開いた9月定例会本会議で、市がいじめを防ぐ措置を怠ったことを認め、400万円の損害賠償を生徒側に支払う議案を可決した。市教委によると、生徒側も同条件で和解することですでに合意しており、和解が正式に決まった。
学校が昨年11月にまとめた調査報告書などを踏まえ、市は男子生徒が複数の生徒から継続的にいじめを受けていた上、事故当日のいじめをきっかけに転落したと判断し、生徒側への賠償を決めた。

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【10月1日 読売新聞滋賀版】

いじめを受けていた大津市立中の男子生徒が自殺した事件から4年となるのを前に、市は県内外の自治体が取り組みを報告する「いじめ防止サミット」を3日に初めて開催する。悲劇を繰り返さないため、行政や学校、地域、家庭で何ができるかを考え、社会全体で子どもを守り、育てる機運を高める。(池内亜希)
同市では2011年10月11日、中学2年の男子生徒(当時13歳)がいじめを苦に自殺。市教委や学校は当時、「いじめと自殺の因果関係は不明」としたが、生徒へのアンケートで「自殺の練習をさせられていた」との回答があったことなどが判明し、後手に回った対応に批判が集まった。
13年1月には有識者らでつくる第三者調査委員会が「いじめが自殺の直接的要因」とする報告書を提出。
今年3月には両親が市に損害賠償を求めた訴訟で、いじめ自殺を防げなかった学校側の責任が認定され、和解が成立している。
サミットは、事件を反省として市が講じてきた▽いじめ防止条例施行▽市教委とは別に、子どもたちの相談を受け付ける「いじめ対策推進室」を市長部局に設置▽問題解決を図る第三者機関の常設▽インターネットによるいじめに対応するアドバイザーの配置――といった取り組みを知ってもらい、再発防止を図ろうと企画した。
当日は、第三者調査委で委員長を務めた横山巌弁護士が「いじめと向き合う」をテーマに講演。社会全体で意識を高めることの大切さを訴える。
その後、「子どもにやさしいまちづくり」をテーマに、越直美市長と桶谷守・市教育委員長のほか、全国に先駆けていじめ防止の条例を制定した岐阜県可児市、いじめや虐待などを防止する条例を持つ兵庫県小野市の関係者が、取り組みを紹介しながら意見交換する。
大津市本丸町の市生涯学習センターで午後1時30分から開催。入場無料で、当日誰でも参加できる。

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【10月1日付 河北新報】

[こいずみ・しょういち]九州大大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。15年3月まで東北大大学院教育学研究科教授。同4月から現職。仙台市の生徒指導問題等懇談会委員長なども務めた。滋賀県出身。

◎悲劇をなくすには(下)白鴎大教授 小泉祥一さん(65)

-仙台市立中1年の男子生徒=当時(12)=が自殺した学校の対応をどうみる。
「2013年施行のいじめ防止対策推進法で、学校はいじめが疑われた段階で早期に幅広く捉え、組織的に
対応する義務が課された。今回、学校は加害生徒をいったん指導したが、その後に激化したいじめをいじめと捉えなかった。この点は法令違反とも言える」
-仙台市教委は遺族の意向で学校名を伏せている。

<現実と向き合え>
「意向を隠れみのにして、『いじめは人権侵害行為で犯罪性がある』ということを加害生徒が認識できないような環境をつくっていないか懸念する。遺族は、問題をうやむやにし、いじめの温床を残したいわけではないはずだ」 「根本的な解決は学校全体で男子生徒の死を悼み、つらい現実と向き合うことが出発点になる。校名を公表する必要性は遺族も理解してくれるのではないか」-市教委の第三者委員会による調査結果の評価は。
「ごく限られた生徒や教師からの聞き取りで、事実や問題の断片にすぎない。報告書は男子生徒を『当該生徒』、いじめた側を『関係生徒』と表現し、被害と加害を曖昧にしている。加害側の家庭環境、放課後や地域の人間関係が影響している可能性もある。効果的な対策には原因と背景の構造的な分析が必要だ」 -事実関係の再調査は必要か。

<追加調査要求を>
「教委の独立性は尊重されるべきだが、4月の教委制度改革で首長が総合教育会議を招集できるようになるなど、教育行政に関与できる余地が広がった。奥山恵美子市長は追加調査を求めるべきだ。そうしないと文部科学相の指示や是正要求が発動される可能性がある」-教師の多忙さが、いじめへの対応を妨げているとの声がある。
「いじめを受けている生徒が明確なサインを出しても対応しないなら、教師としての良心や人権感覚、教育専門性が問われる。生徒にしっかり向き合える労働環境の改善を管理職や教委に求めるべきだ。いじめを認知し、適切に対応した教師を加点する教員評価制度も必要だ」

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