【11月14日付 河北新報】

仙台市泉区の館中1年の男子生徒=当時(12)=が昨年9月、いじめを苦に自殺した問題で、市教委の大越裕光教育長は13日、義家弘介文部科学副大臣と5日に会談した内容を定例教育委員会で報告した。
大越教育長は、義家氏から男子生徒の自殺を早期に公表すべきだったと指摘され、遺族への謝罪など加害生徒を指導するよう求められたと説明。「(いじめ自殺は)原則公開だが、遺族の説得が難しい場合は文科省に相談したり、第三者に仲介を依頼したりと工夫や努力の必要があると助言された」と述べた。
委員からは問題発生後の市教委と文科省との連絡状況について質問があり、市教委は「昨年9月の発生後とことし8月の公表時に2回報告したが、特に指導はなかった」と答えた。
公表の判断基準をめぐり、大越教育長は「遺族の考えが大部分を占め、総合的に判断する。
難しい事案は文科省に相談したり教育委員と協議したりし、抱え込まないことが大事だと受け止めた」と語った。

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【11月11日朝日新聞名古屋本社版】

総合教育会議で生徒の死を悼む河村たかし市長(右)や教育委員ら=名古屋市役所

名古屋市西区で市立中学1年の男子生徒(12)が自殺した問題で、担任の教師が今年4月の時点で「いじめにあいやすい」という印象を持っていたことがわかった。心理分析テストでも「支援が必要な生徒」と判定されたが、学校は具体的な支援をしていなかった。市教育委員会が10日、総合教育会議で明らかにした。
市教委によると、生徒が亡くなった後の聞き取りに対し、学級担任が「いじめにあいやすい生徒」という印象を入学直後から持っていたと話した。担任は理由を「心も体も強い方ではないから」と説明したという。
しかし、ほかの教職員に注意を呼びかけるなどはしなかった。
同市では全ての小中学校で子どもの人間関係などを調べる心理テストを実施している。6月のテストでは、男子生徒は学校生活への満足度が低く、「教師に心理的な距離を感じている」という結果だった。生徒は友だちも少なかったという。
テスト結果を受け、担任は「何かあれば一緒に解決しよう」など、この生徒に声をかけるように心がけた。
7月の保護者との面談では「どう接すればいいか」と相談したという。
10月9日にも同じ心理テストがあり、学校生活への満足度が低い上に、声かけや周囲への指導などの「支援が必要」という結果が出た。結果は10月28日に学校に届いた。「要支援」は、男子生徒のクラスに2人いた。
しかし、具体的な支援が検討されないまま、11月1日、男子生徒は地下鉄の駅で電車に飛び込み亡くなった。学校は、テスト結果を受けた会議を5日に予定していたという。市教委は、担任や所属する卓球部の顧問が、テスト結果を把握していたかについて「確認できていない」としている。
市教委はこうした内容を10日の総合教育会議で説明。出席した教育委員からは「結果が届いたら、すぐに対応するべきだった」といった声が相次いだ。
梶田知(さとる)・教育委員長は「対策をとっていれば、こんなことにはならなかったのではないか。
危機感が薄い」と指摘。同市では2年前にも別の市立中学2年の男子生徒が自殺している。心理テストも、子どもの異変を早くつかみ、再発を防止する目的で導入された。「必ずいじめのない名古屋市にするという強い決意で、必死に取り組んでほしい」と話した。
男子生徒が亡くなった直後、市教委は、生徒が9月の学校独自の記名調査に学校生活の満足度として「4段階で上から2番目を選んでいた」と公表。心理テストについても「いじめをうかがわせる内容はなかった」として、いじめの兆候は見られなかったと説明していた。市教委は「心理テストの結果を隠す意図はなかった」と釈明している。
一方、5日に公表された全校生徒へのアンケートでは20人が「直接見た」と答えるなど、のべ80人がいじめを見聞きしたと回答した。
市教委に調査を委託された、精神科医や弁護士らでつくる第三者機関「市いじめ対策検討会議」は18日に初会合を開く。客観的な立場から、自殺に至った経緯や市教委の対応に問題がなかったか検証する。
(小若理恵、岡戸佑樹)

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【11月7日付 中日新聞】

名古屋市西区の市立中学校1年の男子生徒(12)がいじめを訴える遺書を残して自殺した問題で、生徒が通っていた中学校で6日夜、臨時保護者会が開かれた。校長は「尊い命を失ってしまい申し訳ない」と謝罪したが、過去に子どもがいじめに遭ったという保護者からは「改善を誓ったのではないか」と批判も出た。
保護者会は生徒が亡くなってから初めて開催。学校側によると、約550人が出席し、黙とうの後、事実経過を説明。全生徒へのアンケートで、20人がいじめやからかいの現場を「直接見た」と回答した結果などを報告した。
出席した保護者によると「いじめに気付かなかったのか。教諭への聞き取りは」との質問に、校長が(部活の)顧問は、部内で厳しい言葉があったことは把握していたが、それほど重いものではないと思っていた」と答えた。
ほかの保護者からは「子どもが『死ね』『消えろ』『うざい』などの言葉を使うが、学校の指導が甘い」
との声や、「(子どもが)嫌な言葉をかけられたことがある」との訴えも出た。
市教委は同日、同級生ら約30人から聞き取りを続けた。学校は生徒の心のケアに、スクールカウンセラー2人を配置し相談にあたるほか、生徒が保護者とともに心の健康を調べるチェックリストを配布した。
一方、同日夜に訪問先のオーストラリアから帰国した河村たかし市長は「大変申し訳ない。先生は強い使命感と責任感を持ってないと。生徒のご家族に謝りたい」と語った。
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【朝日新聞】

保護者から意見「真剣に向き合って」 名古屋・中1自殺

臨時保護者会に集まる親たち=6日午後7時50分、名古屋市西区、小川智撮影

名古屋市西区の市立中学校1年の男子生徒(12)が自殺した問題で、同校は6日夜、臨時の保護者会を開いた。黙禱した後、自殺の経緯や、のべ80人が「いじめを見聞きした」と答えた全校生徒アンケートの結果を説明した。保護者からは「真剣に子どもと向き合って」などの声があがった。
約550人が参加し、1時間余り続いた。校長や出席者によると、「うちの子も『死ね』『消えろ』『うざい』と言われたが、教師の指導は『まぁまぁ』で終わった。きちんと対応してほしい」と訴える保護者もいた。
「学校はいじめをしっかり把握すべきだ」と声を荒らげる場面もあったという。「いじめはなくせる」「なくならない」と保護者同士が意見を交わす場面もあったという。
終了後、女子生徒の母親(52)は「時間が短かった。もっと詳しく何があったか知りたかった」。
男子生徒の母親は「今回見つからなかったいじめを、どう見つけていくかが課題だと思う」と話した。
4日のアンケートによると、全校生徒約500人のうち20人が「現場を見た」と答えるなど、のべ80人がいじめを見聞きしていた。一方、市教育委員会の聞き取りで、いじめを認識していた教職員はいなかった。
市教委は「いじめがあったことを前提にする」としており、教職員への再度の調査も検討する。
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【NHK】

中学生自殺 保護者説明会で厳しい意見

名古屋市の男子中学生がいじめを受けたとして自殺したことを受けて、6日夜、中学校で保護者に対する初めての説明会が開かれ、保護者からは「甘い対応が見受けられる」などの厳しい意見が相次ぎました。
今月1日、名古屋市の地下鉄の駅で12歳の中学1年の男子生徒がいじめを受けたとする遺書を残し自殺したことを受けて、6日夜、生徒が通っていた中学校で保護者に対する初めての説明会が開かれました。
500人余りが出席した説明会は非公開で1時間ほど行われ、中学校によりますと、冒頭、校長が「尊い命が失われてしまい大変申し訳ない」と陳謝し、学校側と教育委員会がこれまでの経緯などを報告しました。
これに対し、保護者からは、「子どもだからと片づけるのではなく、1人の人間として真剣に向き合って
もらいたい」という指摘や、「教員が日頃から厳しく指導せず、甘い対応が見受けられる」などの厳しい意見が相次いだということです。
説明会のあと、校長は記者会見し、「生徒の命を守れなかったことを重く受け止め、強い決意で原因の究明や生徒の心のケアに取り組みたい」と述べました。
保護者に対する説明会のあと、自殺した男子生徒の同級生の父親は「学校側の説明は淡々としていて、子どもたちのことを本気で考えてくれているのかなと感じ、納得できなかった。学校には今後、ささいな悪口なども見逃さないように努めてもらいたい」と話していました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151107/k10010297301000.html

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【11月5日付 朝日新聞】

名古屋市西区の市立中学校1年の男子生徒(12)が「いじめが多かった」という遺書を残して自殺した問題で、市教育委員会が4日実施した同校の全生徒へのアンケートの結果、複数の生徒が「部活動でこの生徒へのいじめを見た」と回答したことがわかった。
市教委によると、生徒の遺書には「学校や部活でいじめが多かった。部活で『弱いな』と言われていた。もう耐えられない」などと書かれていた。生徒は卓球部に所属していた。
市教委は4日、中学校の全校生徒約500人に、この生徒へのいじめを目撃していないか、生徒から相談されたことがないか、などを尋ねる無記名のアンケートを実施。その結果、複数の生徒から、この生徒が部活でいじめを受けるのを見聞きしたとの回答があったという。
市教委は結果をまとめ、5日に公表する。
また、関係者によると、この生徒は「お前くさい。消臭剤を持ってこい」と暴言を浴びせられたこともあったという。市教委がアンケートとは別に進めている卓球部員や同級生らへの聞き取りでも、複数のいじめが確認されたという。
卓球部員は約80人。実力で8グループに分けられており、男子生徒は下位のグループだった。
部員によると、上級生が特定の下級生にグラウンドを何度も走らせるなど、行きすぎた練習をさせていたという。学校も問題があるとみて、一部の上級生に注意していた。
男子生徒は1日夕方、同区にある市営地下鉄鶴舞線の庄内通駅で、入ってきた電車に飛び込み自殺した。市教委は翌2日の記者会見では、「(男子生徒への)いじめは確認できていない」と述べていた。

■市教委、第三者機関に調査依頼へ
名古屋市教委は、専門家らでつくる第三者機関「市いじめ対策検討会議」にも調査を依頼する方針を固めた。5日に開く教育委員会議で正式に依頼を決める。アンケート結果などを踏まえ、自殺に至った経緯や、学校や市教委の対応に問題がなかったかを調べる。
今回の自殺をいじめ防止対策推進法に定める「重大事態」と位置づけた。検討会議は、いじめの有無などについて客観的な立場から調べ、市教委に提言するため、昨年設けられた。メンバーは精神科医や弁護士、臨床心理士ら6人で、今月中に初回会合を開く予定だという。
また、16の区ごとに小中学校長が参加する定例の校長会が4日あった。市教委の担当者が、この問題について説明し、「児童生徒を見守り、一人ひとりに寄り添った指導に努めてほしい」と呼びかけた。
西区の別の中学校の校長は会合後、取材に「1人の命が失われ、ショックを受けている。二度と同じことが起きないよう、どんなささいなことも相談しやすい学校づくりに取り組みたい」と話した。
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【11月5日付 朝日新聞】
[b]「いじめ直接見た」20人 名古屋中1自殺で全校調査公表[/b]

自殺した中1男子生徒に関するアンケートの結果について会見する名古屋市教委の金田慎也学校教育部長(左)と三浦友久指導室長=5日午前、名古屋市役所で(今泉慶太撮影)

名古屋市西区の市立中学校一年の男子生徒(12)が「いじめが多かった」との遺書を残して自殺した問題で、市教委は五日、生徒が通っていた中学校で実施した緊急アンケートの結果を公表した。男子生徒へのいじめやからかいについて、二十人が「直接現場を見た」と回答した。

◆「本人から聞いた」3人
学校や市教委は、これまで教職員と九人の同級生に聞き取り調査したが、具体的ないじめの事実を確認できていなかった。記者会見した三浦友久・市教委指導室長は「学校側の認識と子どもが見た結果が違っていたことを踏まえ、いじめがあったということを前提に詳細に調査する」と述べた。
アンケートは四日の授業中などに実施し、生徒五百二十八人のうち、欠席者らを除く四百九十四人が回答した。
いじめの内容として「冷やかしや悪口」「仲間はずれ」など七項目を示し、「直接現場を見た」「本人から聞いたり相談を受けたりしていた」などの中から回答を求めた。
二十人が「直接現場を見た」、三人が「本人から聞いたり相談を受けたりしていた」、五十七人が「本人以外の人から聞いた」と回答。「直接現場を見た」という二十人は一年生十四人、二年生四人、三年生二人で、いじめの内容は複数選択で尋ねたところ「冷やかしや悪口」(十三人)、「仲間はずれ」(六人)などの行為を挙げた。目撃した場所は「部活動」が九人、「部活以外の学校生活」が十人だった。
アンケートは無記名の選択式で、具体的な日時や場所は把握できていない。結果は五日午後の市教委定例会で検討する。今後は、同級生や同じ卓球部の生徒を中心に聞き取り調査を続け、弁護士や精神科医らでつくる「市いじめ対策検討会議」が自殺に至った経緯を調べる。
市教委は定例会終了後、梶田知(さとる)委員長が男子生徒宅を弔問する。男子生徒は一日、西区の地下鉄庄内通駅構内で電車にはねられ死亡した。自宅のノートに「学校や部活でいじめが多かった。部活では『弱いな』と言われていた。もう耐えられない」と書き残していた。

◆教頭「ショック」
亡くなった男子生徒が通っていた中学校では五日朝、PTA関係者らが通学路や校門で見守る中、生徒たちが登校した。
市教委が公表したアンケート結果を受け、教頭は「大変ショックを受けている。学校としていじめを把握できていなかった悔しさがある」と声を落とし、「どういう状況だったか子どもや職員から聞き取りしたい」と話した。
男子生徒と同じ卓球部に所属する二年の男子生徒は「アンケートにはいじめの現場は見たことがないと答えた。
部活でも変わった様子はなかったですが…」と困惑した表情を浮かべた。

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【11月4日付 朝日新聞】

男子生徒の出棺を見届ける参列者=3日午後、名古屋市内、細川卓撮影

名古屋市西区の市立中学校1年の男子生徒(12)が「いじめが多かった」という遺書を残し自殺した問題で、市教育委員会は3日、臨時会を開いた。「いじめが大変疑われる」(梶田知委員長)として部活動を中心に調査を徹底する方針を決めた。
生徒は1日午後4時ごろ、同区の地下鉄鶴舞線の庄内通駅でホームから飛び込み、電車にはねられて亡くなった。市教委は、男子生徒が属していた卓球部の顧問や部員、親しい同級生らから聞き取りを始めた。今後、全校生徒を対象に無記名のアンケートも実施する考えだ。
市教委によると、遺書には「学校や部活でいじめが多かった。部活で『弱いな』と言われていた」などと書かれていた。
同校の生徒によると、卓球部では上級生が特定の下級生にグラウンドを何周も走らせることもあった。
学校もこうした問題を把握し、上級生に注意していた。卓球部員は約80人。市教委のこれまでの聞き取りでは、男子生徒へのいじめの事実は確認できていないという。
3日には男子生徒の告別式があり、同級生や保護者らが参列。参列者によると、生徒の幼少時からの写真をまとめた映像が流れ、父親が「優しくまじめな子だった」とあいさつしたという。参列した校長は「できるだけ早く、正確に情報を集めたい」と話した。

■「二度と同じことが起きないように」
「きちょうめんでまじめで優しい、自慢できる息子でした」。男子生徒の父親が3日、朝日新聞の取材に応じた。いじめられている様子には気づかなかったといい、「親として察知してあげなくてはいけなかった」と声を震わせた。
父親の話などによると、男子生徒は自殺した1日昼、両親と3人で外食した。「大盛りのご飯とおかずをぺろりと平らげた」という。帰宅した生徒は、ノートを持って1階と2階を何度も行き来し、祖母に「付箋をちょうだい」と言ったという。
その後、祖母からお小遣いをもらい、「ドーナツを買いに行く」と1人で出かけた。その様子を不審に思った祖母が生徒の自室を調べ、机の引き出しからノートを見つけた。付箋をはったページに遺書が書かれていた。「早く見つけてほしかったんでしょう」 父親が携帯電話のGPS機能で調べると、市営地下鉄の庄内通駅が表示された。父親が電話すると、生徒は「おなかが痛くなって地下鉄のトイレにいる」と答えた。電話からは、ホームに流れるアナウンスが聞こえる。ホームにトイレはないのでおかしいと思い、「どうしたんだ?」と尋ねると、「大丈夫、大丈夫。(遺書は)冗談」と答えたという。
その声はいつもと変わりなく、「演技できるような子ではない。言葉通り大丈夫でいてほしいと思ったのですが……。間に合わなかった」。父親が駅に向かうと、救急車などで周辺は騒然としていた。
父親は「犯人捜しではなく、どういう過程でこうなってしまったのか、突き止めてほしい。二度と同じことが起きないように調べ、役立ててほしい」と語った。(安仁周)
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【NHK】

[b]名古屋 中学生自殺 第三者機関に調査依頼へ[/b]
今月1日、名古屋市の男子中学生がいじめを受けたと書かれた遺書を残して自殺したことを受けて、市の教育委員会は今後、弁護士や有識者などで作る第三者機関にも調査を依頼し、生徒が自殺に至った経緯を解明したいとしています。
今月1日、名古屋市西区の地下鉄の駅で近くに住む12歳の中学1年の男子生徒が電車にはねられて死亡し、生徒の自宅の部屋から「学校や部活でいじめが多かった。もう耐えられない」などと書かれた遺書が見つかったことから、警察や名古屋市教育委員会は生徒が自殺したものとみています。
教育委員会は、これまでのところ自殺につながる兆候は確認できていないとしていて、引き続き教員や生徒から話を聴くなどして、いじめがあったかどうかの調査を進めることにしています。
一方で名古屋市は、おととしのいじめ防止対策推進法の施行に伴って、去年から弁護士や有識者などで作る第三者機関の「いじめ対策検討会議」を設置しています。
この機関は、いじめが疑われるケースが起きた場合、教育委員会からの依頼を受けて、いじめの有無や教育委員会の対応が十分だったかどうかなどを客観的な立場から調べて提言することになっています。
名古屋市教育委員会は今後、この機関にも依頼して、生徒が自殺に至った経緯を解明したいとしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151104/k10010293331000.html
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【読売新聞愛知版】

[b]中1自殺 徹底した調査を指示[/b]

名古屋市西区の市立中学校1年の男子生徒(12)が、いじめられたことをほのめかす遺書を残して自殺した問題を受け、市教育委員会は3日、臨時会を開き、梶田知(さとる)委員長が市教委事務局に対し、できるだけ早く全校生徒に徹底した調査を行うよう指示した。
臨時会は非公開で行われ、市教委事務局によると、委員からは「男子生徒のメモからは、いじめがあったことが強く疑われる」「全生徒に聞き取り調査を行うべきだ」などの意見が出た。また、「他の生徒の心のケアをきちんと行う必要がある」との指摘も出たことから、男子生徒が通っていた中学校に当面、スクールカウンセラーを毎日配置することを決めた。

「優しい息子だった」 自殺中1の父親

名古屋市西区の市立中学校1年の男子生徒(12)がいじめに遭ったことをほのめかす遺書を残して自殺した問題で、男子生徒の父親が3日、読売新聞の取材に応じ、「真面目で優しい自慢の息子だった」と沈痛な表情で語った。その上で、学校側に対しては「どうしてこういう結果になってしまったのか、過程を調べてほしい」と要望した。
「心にたまっていたものが爆発してしまったのか。何も言わなかった。察知できなかったのは、親として
失格なのかなと思う」。父親は、そう心情を吐露した。
男子生徒が亡くなった1日昼は家族で外食したが、その時は食欲もあり、元気な様子だったという。
男子生徒が外出後、遺書が見つかったため、携帯電話で「大丈夫か」と尋ねると、「冗談冗談、うそうそ」という言葉が返ってきた。携帯の全地球測位システム(GPS)で市営地下鉄庄内通駅を特定、妻と車で向かったが、男子生徒は電車にはねられた後だった。
同級生らからはメッセージカードが届き、そこに書かれた「お弁当を忘れた子に、半分分けてあげた」「鼻血を出した子がいたら、ティッシュを渡した」などのエピソードを読んで、「優しい子だったんだ」と改めて実感したという。
「犯人捜しというようなことは望んでいない。息子は戻ってこないので、調査した結果を活用し、また同じような被害が出ないようにしてほしい」。父親は悲しみをこらえながら、丁寧な口調で語った。
告別式同級生ら涙 この日は、男子生徒の告別式が西区内の斎場で営まれ、親族や友人らが早すぎる死を悼んだ。参列者の話によると、式では男子生徒の幼い頃から最近までの映像が流された。父親が「とても真面目で優しくて、家族の中で一番できる子だった」と声を詰まらせながら語ると、すすり泣く声が漏れたという。同級生らは一人ひとり、ひつぎに折り鶴を入れて別れを告げ、出棺の際には手を合わせて見送った。顔を覆って泣く女子生徒の姿も目立った。
同じ中学校の3年女子生徒は「顔を見て、本当に亡くなったんだと思った。悲しくてやりきれない思いでいっぱい」と声を落とした。
一方、男子生徒の中学校の校長は、これまでに同級生や同じ卓球部の計9人から話を聞いたことを明らかにした上で、「今の時点でいじめにつながる話は出てきていない」と述べた。

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【11月3日付 朝日新聞】

名古屋市西区で1日、同区に住む市立中学校1年の男子生徒(12)が地下鉄の駅で電車に飛び込み自殺した問題で、同市教育委員会は2日、生徒がいじめを苦にしていた可能性があるとみて同級生らから聞き取りを始めた。「学校や部活でいじめが多かった。もう耐えられない」と書かれた遺書が自宅から見つかった。学校は「いじめは把握していなかった」としている。
生徒が通っていた中学校は2日朝、全校集会を開いた。校長によると、1年生らは「泣き崩れるほど悲しんでいた」という。校長は取材に、「いじめられていたという遺書があり、これほど悲しいことはない」としつつ、「いじめは確認できていない」と述べた。入学以来、欠席はなく、卓球部に所属していた。
学校は2カ月に1回、本人や周囲の人が嫌な思いをしていないか聞く全校アンケートをしている。
直近は9月。この生徒は、学校生活の満足度を4段階で聞く質問に対し、上から2番目の「3」を選び、理由を「卓球ができるから」と書いていた。他の生徒の回答でも、この生徒がいじめられていたという記載はなかったという。
市教委や愛知県警によると、自室の机の中に、付箋のついたノートがあり、そのページを開くと「部活で『弱いな』と言われていた。もう耐えられない。だから自殺しました」と書かれていた。
いじめた人を特定する記述はなかった。
生徒は1日、家族と昼食をとった後、午後3時過ぎに「ドーナツを買いに行く」と言って1人で外出。
家族が自殺前に遺書を見つけ、携帯電話で「いじめ大丈夫か、お前」と聞くと、「大丈夫、大丈夫。冗談だ」と答えたという。午後4時ごろ、地下鉄鶴舞線の庄内通駅で電車にはねられ、間もなく死亡が確認された。
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【中日新聞】

対策途上の市に戸惑い 名古屋の中1、遺書「いじめ」

名古屋市西区で中学一年の男子生徒(12)が「いじめが多かった」などとの書き置きを残し、電車にはねられ死亡した。自殺に至るまでの詳細は分かっていないが、同市では二年前に中学生がいじめを苦に自殺し、市が再発防止を進めていた最中だった。市教委の関係者からは「どうすれば、子どもの悩みをすくい上げることができるのか」と戸惑いの声が上がる。
文部科学省によると、二〇一四年度に全国の学校が認知したいじめの件数は、前年度比1・2%増の十八万八千五十七件。うち、小学校は3・3%増の十二万二千七百二十一件、中学校は4・1%減の五万二千九百六十九件だった。
名古屋市立の学校では、小学校で前年度比二十八件減の千五十二件、中学校は百六十一件減の五百九十七件と、いずれも減少していた。
市内では一三年七月、南区の市立中学の男子生徒がいじめを苦に自殺。外部の有識者による検証委員会は一四年三月に「学校の組織的対応がなく、いじめに対する理解も不十分」などと、教育現場を厳しく批判した。
これを受け、市はいじめ防止の対策を強化。常勤のスクールカウンセラーらを配置する「なごや子ども応援委員会」を発足させ、拠点となる十一の中学校に設置したほか、非常勤のスクールカウンセラーも拡充した。
一四年度には、非常勤のカウンセラーが、児童生徒や保護者、教員を合わせて一万八千件超の相談に対応。教員向けの講習会なども開き、児童生徒の悩みを受け止めようと模索している。
学校ごとにいじめ防止基本方針も作成し、自殺した生徒が通っていた中学校も、年度当初の四月と夏休み期間中の八月を除き、ほぼ毎月、アンケートなどを実施。生徒の状況を把握するよう努めていた。
市教委の担当者は「しっかりと対策を進めている学校だった。ほかに、どのような方法があるのか、現段階では…」と悲痛な顔で話した。

いじめなどの悩み相談は、県の二十四時間窓口「子どもSOSほっとライン24」=0570078310
▽県警の悩みごと、困りごと相談「ヤングテレホン」=052(951)7867▽県警の犯罪、いじめ、虐待相談=(0120)786770=へ。 (北村剛史)
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【NHK】

中学生自殺 部活動の生徒からも聞き取りへ

1日、名古屋市の男子中学生が、いじめを受けていたことをほのめかす遺書を残して自殺したことを受けて、市の教育委員会は、同じ部活動に所属する生徒からも話を聞いて、いじめがあったかどうかの調査を進めることにしています。
1日名古屋市西区の市営地下鉄の駅で、近くに住む12歳の中学1年生の男子生徒がホームから転落して電車にはねられ死亡しました。警察は男子生徒の部屋から「学校や部活でいじめが多かった。もう耐えられない」などと、いじめを受けていたことをほのめかす遺書が見つかったことなどから自殺とみています。
名古屋市教育委員会は1日と2日、担任の教諭や部活動の顧問から聞き取りをしましたが、これまでのところ、明らかにいじめと判断できるような行為や自殺につながる兆候は確認できていないということです。
このため、教育委員会は、4日以降、聞き取りの対象を同じ部活動に所属する生徒に広げ、男子生徒がいじめと感じるようなトラブルなどがなかったかどうかも調べることにしています。
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【毎日新聞】
名古屋・中1自殺:家族「いじめ」把握せず

名古屋市西区の市営地下鉄庄内通駅で1日、同区の市立中1年の男子生徒が「いじめがあった」との遺書を残して電車にはねられ死亡した問題で、生徒の家族が県警に「いじめについて聞いたことはなく、自殺するそぶりもなかった」との趣旨の話をしていることが捜査関係者への取材で分かった。
市教委はいじめの有無を調査している。

◇同級生ら通夜参列
市教委によると、男子生徒は今春中学に入学。卓球部に所属し、学校にも休まず通学し、いじめの相談も無かった。同校が生徒を対象に2カ月に1回行っているアンケートで、男子生徒は9月、4段階の満足度調査に「3」と回答。その理由として「卓球ができる」と記述していた。自殺の動機について、顧問教諭らは「思い当たる節はない」と話しているという。
同じクラスの男子生徒(12)は「金曜日に会った時に悩んでいる様子はなかった。いろんな子と仲が良く、いじめられている感じはなかった」とショックを受けていた。小学6年で同じクラスだった男子生徒は「楽しそうに部活をしている印象だった」と話した。
2日夜には同区内の斎場で男子生徒の通夜が営まれた。中学の教職員や、保護者に付き添われた同級生らが参列して死を悼んだ。同級生の一人は「いままでありがとうと語りかけた」と涙を流しながら話した。【加藤沙波、谷口拓未、三上剛輝】

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【10月30日付 産経新聞大阪本社版】

奈良県橿原市で2013年3月、市立中1年の女子生徒=当時(13)=が自殺したのはいじめが原因だったとして、遺族が市や加害生徒らに計約9700万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が29日、奈良地裁(木太伸広裁判長)で開かれ、被告側はいずれも請求棄却を求めて争う姿勢を示した。
女子生徒の母親(46)が意見陳述し「学校が何らかの措置を取っていたら自殺は食い止められたと確信している。不適切な対応があったことを明らかにして娘の無念を晴らしたい」と訴えた。
訴状によると、女子生徒は同級生から仲間外れにされたり、無料通信アプリLINE(ライン)上での嫌がらせをされたりするいじめを受けて自殺。学校側は友人グループから離れるなどの異変に気付きながら対応しなかったとしている。
また、市教育委員会がいじめと自殺の因果関係を当初否定し、調査委員会のメンバーに市の顧問弁護士を任命。遺族の反発で委員全員を入れ替え、真相解明を遅らせたと主張している。
新たな調査委は今年4月、同級生によるいじめや中傷が自殺の一因とする報告書を公表した。
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【10月30日 毎日新聞奈良版】
橿原の中1女子自殺:市、棄却求める 地裁第1回口頭弁論

2013年3月に自殺した橿原市立中1年の女子生徒(当時13歳)の遺族が、いじめや自殺の防止を学校側が怠ったなどとして市や同級生らに計約9722万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が29日、奈良地裁(木太伸広裁判長)であった。被告側はいずれも請求棄却を求め、争う姿勢を示した。
訴状で遺族は、女子生徒が同級生らから仲間外れにされ、無料通信アプリ「LINE(ライン)」に悪口を書き込まれるなどして精神的疲労が蓄積したと主張。学校側は女子生徒が友達に「死にたい」などと漏らしていたのに、他生徒への事情聴取を怠って自殺のサインを見過ごしたなどとしている。
女子生徒の母親(46)は意見陳述で「どれだけの子供が自死を重ねれば国、社会、教育者が本気で取り組むのか」などと訴えた。【塩路佳子】

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【10月28日付 東京新聞夕刊】

スイミングスクールで亡くなった国本考太さんの遺影に手を合わせる母親=大阪市都島区で

全国の小学校で二〇一四年度に把握されたいじめの件数が、過去最多になった。教育現場で起きたいじめや事故で亡くなったり、深刻な被害を受けた子どもの親ら二十一人は、手記「問わずにはいられない-学校事故・事件の現場から」を自費出版し、「誰もが被害の当事者になり得る。その時にどうすればいいか、考える手助けになれば」と願う。 (上田千秋)
「学校や教育委員会は批判を恐れて必ず隠蔽に走る。最終的に守ってあげられるのは親しかいない」。
執筆者の一人で、兵庫県在住の男性(52)が話す。
男性の長男は神戸市立小学校の五年生の時、壮絶ないじめを経験した。同級生十三人の標的になり、殴る蹴るの暴行を受けて「死ね」「消えろ」と罵声を浴びせられ続けた。
次第にエスカレートし「金を持ってこい」と脅された長男は、男性が趣味で集めていた旧札の一万円などをこっそりと持ち出すようになった。金額が五十万円を超え、ようやく気が付いた男性が訴え出ても学校は
事実を認めようとせず、転校させるしかなかった。今、長男は立ち直り、大学に通っている。
男性は「全国学校事故・事件を語る会」(兵庫県)のメンバーとして、他の被害者の相談にも応じる。
「いじめでは先生に相談した後に自殺するケースが非常に多い。勇気を振り絞って打ち明けたのに、何もしてもらえず絶望してしまうからだ」と訴える。
「自分の子どもが生きた証しを世に残したい」。そんな親たちの願いをかなえたいと、男性は会の活動などを通じて知り合った遺族らに執筆を呼び掛け出版が実現。手記を寄せたのは、いじめのほか、教員の過剰な指導を苦に自殺したり、部活動中に顧問が適切な対応を取らなかったために熱中症や事故で命を落としたりした子どもの保護者らだ。
一三年八月、発達障害と知的障害があった大阪市都島区の国本考太さん=当時(24)=は、NPO法人が運営する障害者向けのスイミングスクールで水泳中、熱中症のため亡くなった。国本さんの母(56)も手記を寄せた一人。「コーチがハードメニューを課さなければ、考太は突然に命を落とすことはなかった」と無念を記している。
手記を編集した取次代理店「L.C.研究所」(兵庫県尼崎市)代表の田原圭子さん(49)は「子を持つ親だけでなく、教員も手に取って、学校現場と世の中の常識は違うことを知ってほしい」と話している。
二百五十四ページ、定価千二百円(税抜き)。ネット書店のアマゾンで購入できる。問い合わせはL.C.研究所=電06(6430)9306=へ。

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【10月24日 河北新報】

◎山形大 加納寛子准教授に聞く

-報告書は教師の対応を批判しました。

<初期対応に問題>
「初期段階できちっと対処しなかったことが最大の問題といえる。担任は2013年5月中旬、加害生徒を含むグループがクラス内で悪口を言っていることを把握し、指導したが、加害生徒らに『チョロいもんだ』と思わせ、いじめをエスカレートさせた可能性がある。この時点で傍観者を含めた指導を徹底していれば、以後のいじめは防げただろう」
「女子生徒はSOSを十分に発していた。母親が担任に相談した6月には既に解決は手遅れだったと見られる。9月に顧問が開いた部活動のミーティングの対応はひどい。先生公認のいじめの場となってしまった。いじめが進んだ場合、被害者と加害者を対面させること自体不適切で、双方を離す、加害生徒を完全に隔離するしかない」

-報告書をどう読みましたか。

<ストレスを理解>
「加害者教育の視点が決定的に欠けている。これでは何回でもいじめによる自殺が起きる。いじめは基本的に加害者が問題を抱え、繰り返す傾向がある。全く責任がない被害者の成育歴を調べても無意味だ。加害生徒と親について、もっと踏み込む必要があった」

-どう加害生徒を指導していくべきでしょうか。

「いじめを徹底してやめさせることが重要だ。米国の一部小中高では一定期間別室登校させ、一緒に勉強するカウンセラーが加害生徒の内面、ストレスを理解し、自分を見つめ直す指導をしている。被害者がみんなで学ぶ機会を失うことが多い日本とは逆だ。この制度は日本も導入すべきだし、十分できる」(聞き手は山形総局・伊藤卓哉)

かのう・ひろこ 早稲田大大学院国際情報通信研究科博士課程満期退学。04年山形大助教授、
07年准教授。専門は情報教育。宮城県青少年問題協議会委員。44歳。岐阜県出身。

<天童いじめ自殺>自死予防の視点必要

◎宮城教育大 久保順也准教授に聞く

-報告書を読み、どのような印象を持ちましたか。

<軽いノリの感覚>
「亡くなった女子生徒の無念や遺族の意向に応えようと、調査委員会が多岐にわたり調査したことが分かる。明るく真面目で積極性もあった女子生徒が、徐々に追い詰められていく様子が痛々しく、悔やまれる」
「クラスや部活動であった事は、この年代の女子にはよく起こる現象。その意味ではどこの学校でも起こり得る問題で、普遍的な出来事と言えるだろう。いじめに加担した生徒は少数でも、周りが受け流したためにエスカレートする。この構図は1980年代からずっと指摘されている」 「加害生徒からすると、悪口はちゃかす、いじるという感覚だったのかもしれない。軽いノリでやった事が深刻な被害を招く『一見軽微と思われるいじめ』に当たる。傍観した生徒も矛先が向かうのを恐れたというより、ノリを壊したくない感覚に近かったと思う」 -学校の対応はどう評価していますか。
「部活動の顧問が2013年9月に開いたミーティング。陰口の問題を解決しようと企画したと思われるが、意図した流れにならなかった。加害生徒は納得せず、いじめはエスカレートした。加害生徒に謝罪させ、関係をリセットするやり方は常とう手段だが、直後のフォローや継続的なモニタリングこそ重要になる。
事後のフォローが十分だったか振り返る必要がある」
「天童の件はいじめ事案であり、自死事案でもある。報告書からは学校がいじめに対応した形跡は
うかがえるが、自死予防に動いたようには見えない。いじめ対応は加害生徒の指導に主眼が置かれ、被害生徒のケアが二の次にされてしまうことがある。教師は自分の生徒が自殺するとは考えたくないだろうが、自死予防は危機管理上も必要な視点で、いじめ対応と並行して実践されるべきだった」
-加害生徒や傍観した生徒に当事者意識が足りないという指摘があります。

<「一人じゃない」>
「いじめ防止の教育は昔から『いじめは駄目、傍観は駄目』という知識を教える。だから、子どもたちは
良くない事は知っているが、それと自分たちの行為が結び付かず、いじめが繰り返されている。北欧には何がいじめに当たるか、子どもたち自身に考えさせるプログラムがある。当事者意識が自発的に生まれるように工夫する必要がある」
-傍観者をいじめ予防の「キーマン」にするには。
「傍観者の中には、いじめを問題視しながら行動に移せない子どもがいる。そうした子どもに、表立って
何かしなくても裏でできる事があると、日常的に教えることが大事だ。いじめを直接先生に言えないなら、
親を通して匿名で伝える方法がある。いじめを止められなくても、登下校時に声を掛けて一人じゃないと伝えればいい。具体的な選択肢を並べると、傍観者が動いてくれる可能性がある」(聞き手は山形総局・長谷美龍蔵)

くぼ・じゅんや 東北大大学院教育学研究科博士課程満期退学。07年宮城教育大講師、10年准教授。
専門は臨床心理学。仙台市生徒指導問題等懇談会委員長。38歳。釜石市出身。

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【10月23日付 河北新報】

一部黒塗りで開示された調査報告書。いじめを傍観した生徒の責任を厳しく指摘する一方、予防や早期発見のキーマンと強調する

◎なぜ起きた集団いじめ(下)足りない当事者意識

「ひょっとしたら今も、重大ないじめだとは思っていないかもしれない」
天童一中1年の女子生徒=当時(12)=がいじめを苦に自殺した問題で、第三者調査委員会が市教委に報告書を提出した今月5日、野村武司委員長(埼玉弁護士会)は記者会見で一抹の不安を口にした。

<印象「良い学級」>
女子生徒へのいじめは悪口などの言語的攻撃、仲間外れといった社会的攻撃が中心。暴力を伴わないため罪悪感を持ちにくく、相手を絶望のふちに追い込んだ認識に欠けるという。
報告書によると、いじめを主導した加害生徒Aは「自己中心的で度が過ぎることが多い」性格。悪口で話題の中心になろうとする傾向があり、担任が注意すると「ごまかすような言い訳」をするタイプだった。
そんなAから見て満足する態度を取らなかった女子生徒への反感が、いじめの発端となった。標的となった女子生徒に対する悪口は、Aが属した女子グループで行動や言動が時として個々の意見より極端な方向に向かう集団極性化し、クラスの雰囲気を支配した。
第三者委はAを含む加害生徒の中で、女子生徒に明確な攻撃意図があったのは少数とみる。それにもかかわらず「集団いじめ」に発展したのは、周囲の傍観が大きかったと強調する。
女子生徒の自殺後、第三者委が同級生に学級の印象を尋ねたところ、多くの生徒が「良いクラスだった」と答えた。自殺は特殊な出来事で、自分たちにはあまり関係ないとの意識を感じるとし、報告者は「当事者意識、内省が足りない」と指摘する。
女子生徒に関わると、自分に矛先が向かう危険があり、傍観的な態度を取った生徒もいた。Aのグループによる悪口は日常的で、クラスの「言葉による傷つきの感度」が鈍くなっていた面もあった。

<発見のキーマン>
報告書は「(いじめは)加害生徒のみで行われたものでは決してなく、暴走を傍観した多数の生徒、教職員がいたことを忘れてはならない」とくぎを刺した。
傍観する生徒は大人への報告が可能だったことも指摘。被害生徒の孤独を救うメッセージを出せる立場として重要視し「いじめ予防・早期発見のキーマン」と位置付けた。
嫌がらせは多くの男子生徒が知っていた。加害生徒の行為に嫌悪感を抱く生徒は男女を問わずいたが、やめるように注意したのは少数で、教職員への報告は皆無だった。
第三者委は、生徒から報告を受ける側の教職員の守秘義務の重要性とともに「何があっても生徒を守る」という強いメッセージの発信を学校側に提言した。

◎報告書の提言

・いじめに対する認識が希薄な加害生徒に教員がいくら「それはいじめだ」と結論的な認識を示しても、表面的な反応と効果しか得られない。加害生徒に対面して事実を一つ一つ丁寧に確認し、責任回避しているかどうか見詰めながら根気強く関わることで、事実から逃れようとしている姿に自ら気付く可能性がある。
・加害生徒の保護者には、つらい記憶に無理にふたをさせ、事件を無かったことのように振る舞わせるのが、子どもにとってのケアにも教育にもならないことを逃げることなく確認し、指導することが求められる。

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