平成28年3月9日 中国新聞社朝刊
中3男子自殺

ずさんな情報管理糾弾
保護者説明会予定大幅に超す

広島県府中町の府中緑ヶ丘中3年の男子生徒(15)が昨年19一月、進路指導後に自殺した問題で、同中は8日夕、校内で保護者説明会を開いた。生徒が過去に万引したとの誤った記録を基に、志望校への学校推薦を出せない旨を生徒に告げた経緯を説明し謝罪した。別人の万引歴と間違えたという学校側の情報管理のずさんさや学校の姿勢に保護者の批判が集中。説明会は予定の1時間半を大きく超える3時間半に及んだ。(田中伸武)
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記者会見で陳謝する坂元校長⑥と
高杉教育長(8日午後10時20分)説明会は非公開。複数の参加者によると、坂元弘校長と町教委の高杉良知教育長、教員たちが出席した。
遺族も参加し「亡くなった後で間違いでしたと言われても取り返しがつかない」などと涙ながらに訴えたという。
町教委などによると、自殺した生徒の誤った万引歴は、1年生当時の生徒指導の会議資料に記載されていた。その場で訂正されていたが、資料の元データは訂正されずに引き継がれ、今回の進路指導の参考になった。また学校推薦の選考基準に1年生当時の非行歴などを含めると決まったのは昨年11月に入ってからだったという。この点についても説明会で「遅すぎる」「保護者への説明がなかった」などの意見が出たという。
中3の長男がいる自営業男性(47)は「亡くなった生徒は先生の誤解に対し、なんらかの意思表示をしていたのではないか。教師がきちんとコミュニケーションをとっていれば自殺は防げた。中2の子どもを持つ母親は「本当のことが分からなかった。納得いかない」と憤った。
説明会後、坂元校長と高杉教育長は同町本町のくすのきプラザで記者会見し経緯を説明。生徒は公立局を第1志望にし、受験するために校長推薦が必要な私立高を第2志望にしていた。担任教諭は昨年11月中旬から同12月8日朝まで5回にわたって生徒と面談し、推薦できない旨を説明した。ただ担任、万引について生徒か明確な言葉で確認していなかったという。
12月8日の三者懇談に生徒は姿を見せず、自宅で自殺しているのを家族が見つけた。
中学2年の次男を教員からの指導後に自殺で失った「指導死」親の会代表世話人の大貫隆志さん(59)=東京都中野区=は「このような『取り違え』による自殺は特異なケースで驚いている。万引の記録が修正されなかったことは、個人的なミスでは済まされない。第三者性を担保した調査で背景を明らかにし、実効性のある再発防止策を打ち出すべきだ」と指摘している。
■非行歴で推薦判断批判
府中緑ヶ丘中の3年男子生徒が自殺した問題は、高校受験の学校推薦をめぐる非行歴の取り扱いのあいまいさが背景にあるとみられる。少年の更生などの観点を踏まえた統一的な基準はなく、各校の判断に委ねられているのが実情。しかし、非行歴を理由に推薦を認めなかった同中の対応には、教育関係者らから批判の声が上かっている。
広島県教委などによると、県内の公立高の推薦入試(選抜I)の場合、願書とともに中学校長名の推薦書と調査書を志望校に提出する。調査書には成績などを記し、「備考」欄に各種大会やコンクールなどの実績のほか、「配慮すべき事項」として非行歴など書くことがある。私立高の場合は各校の様式に従う。
ただ、非行歴を書くかうか、書く場合はいつまでさかのぼるかなど、統一的な基準はない。文部科学は「推薦に非行歴を書くべきかは国として基準は示ていない」と説明。県教委も「県教委としての決まりはなく、どう記載するかは各中学校の判断」とする。私立高を所管する県学事課も「統一基準はない」としている。
生徒は1年生当時の非行歴を理由に志望する私立高への推薦を認められないと学校側から伝えられた後、命を絶った。その後、非行歴は別の生徒のものと判明した。
ある元中学校長(61)は「2年も前の非行歴を推薦の可否を決める基準にすことはない。もし基準にするなら、あらかじめ十分生徒に言い聞かせておく必要がある」と指摘。県内私立高副校長は「非行歴だけを理由に合否を決めることはない。失敗があれば教育指導し、その後の姿を見るのが学校教育。過去に過ちがあれば進学できないのか、ということになる」と話す。
広島大大学院社会科学研究科の吉中信人教授(少年法)は「進学後の適切な指導につなげるため、中学時代の課題を伝える意味はあるが、不利に扱うべきではない。過去の軽微な非行を理由に推薦を断るのは教育の放棄に等しい」と強調。「少年は変化する。失敗を経た成長も含む現在の姿を評価するべきで、行政はそうした考え方を現場に伝えていく必要があるのではないか」としている。(明知隼二)
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平成28年3月9日毎日新聞大阪本社
広島中3自殺
ぬれぎぬで推薦拒絶
学校側別人の万引き記録
広島県府中町で昨年12月、町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒(当時15歳)が自殺した問題で、別生徒の万引き行為を学校が男子生徒 の行為と誤って資料に記録し、この資料に基づく非行行為を理由に 志望校への推薦は認められないと男子生徒に伝えていたことが8 日、分かった。町教育委員会によると、誤った記録は生徒が1年生 だった時、学校が内部の会議用資料として作成し、その後誤りが判明したが、原本記録は訂正されないまま進路指導に使われたという。【石川将来、植田憲尚】
府中1府中2
町教委によると、男子生徒は第1志望の公立高校とともに、第2一志望で校長推薦が必要な専願による私立高校の受験を希望していた。学校は昨年11月中旬の進路指導で、1年の時に万引きしたと記載された誤った記録に基づき、男子生徒に「推薦できない」と説明。その後も、同12月8日まで計4回の進路指導が行われたが、いずれも学校側は同様の説明をしたという。
記録は生徒指導の会議用に教員らが作成し、会議内で誤記載に気付き訂正したという。だが原本となる資料は訂正されていなかつた。
同8日には三者面談による進路指導が予定されていたが男子生徒は現れず、父親が自宅で倒れているのを発見し、その後死亡が確認された。自宅には自殺をほのめかす書き置きがあったという。学校は翌9日に開いた全校集会で「(生徒は)急性心不全で急死した」と説明。遺族には、誤った記録に基づく進路指導の経過を伝えた。
町教委は「学校側のミスがなければ校長推薦は出せていた。自殺との関連について詳しく調査したい」として、第三者委員会を設置する方針を表明した。
町教委は公立高一般入試が終了した8日夜に保護者会を開き、生徒の自殺や学校のミスの経緯などについて説明した。男子生徒の同級生の保護者という男性(47)は「亡くなったことは知っていたが、急死だと聞かされていた。どうして今になって発表するのか」と憤った。
広島県府中町で中学3年の男子生徒が自殺した問題でヽ専門家らは学校の誤った指導が生徒を死に追いやるケースが相次いでいると指摘する。
「指導死」親の会(東京都の代表世話人で、教師の誤った指導で次男が自殺した大貫隆志さん(59)によると、「指導死」とは、教員らによる不適切な言動や暴力行為といったパワーハラスメントで子どもが死に追い詰められるどとを指す。だが、生徒指導で子どもが自殺に至るほど心に深い傷を負うことはあまり知られてぃないという。
教育評論家の武田さち子さんがまとめた統計によると、教員の指導が原因で児童生徒が自殺したとみられる事案(未遂も含む)は1989年以降61件で、うち間違った事実に基づいて生徒を責めるなどした「えん罪型」も10件ある。
札幌市内の道立高校では昨年10月、3年生の男子生徒が同級生の携帯電話を盗んだとの疑いをかけられ、教諭に事情を聴かれるうちに失踪して遺体で見つかった。生徒は「盗んでいない」と同級生にメールをしていたという。
2009年には、福岡市内の中学1年の男子生徒が、同級生の上履きを隠したとして担任から1時間以上問い詰められるなどし、悩んで自殺した。母親には「否定したのに何を言っても信じてもらえない」と話していたという。
大貫さんは「言い分を聞いてもらえず、人格を否定されたり、長時間責められたりするケースが多い。今回は『えん罪型』にあてはまる」といい、府中町教委が設置する第三者委員会「情報管理のあり方だけでなく、進路指導で具体的にどのような対応を取ったか明らかにしてほしい」と求めている【高橋咲子】
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平成28年3月8日 中国新聞朝刊
中3進路指導後に自殺 学校側別人の非行誤認
広島県安芸郡昨年12月

広島県安芸郡内の町立中学校の3年男子生徒(15)が昨年12月、過去の非行歴を理由に志望する私立高への推薦を認められないと学校側から伝えられた後、自殺していたことが7日、分かった。しかし自殺後、その非行歴は別の生徒のものだったことが判明。誤った情報を基にした学校の進路指導が自殺につなかった可能性がある。町教委と同中は遺族に謝罪した。8日、保護者説明会を開く。
関係者によると、生徒は昨年12月8日に進路を話し合う保護者、担任教諭との三者懇談に出席せず、同日夕、自宅で自殺していたのを家族が見つけた。遺書めいたメモがあったが、理由には触れていなかったという。
学校側は、三者懇談前の本人との進路指導で、1年生の時に万引した記録があるため志望校に推薦できない旨を生徒に告げた。だが生徒の自殺後に聞き取り調査した結果、当時万引したのは別人だったことが判明した。いじめなどはなかったという。
記録は、1年生当時の生徒指導の会議資料に記されていた。その場でミスが分かり、訂正された。しかし、資料の元データは訂正されず、そのまま引き継がれていたとみられる。
町教委は「個人情報の管理がずさんだった」としている。学校推薦を受けられないことが自殺の原因になつたかどうかについては「可能性はあるが断定できない」とする。第三者委員会を設けて詳細な調査を進める。
町教委によると、高校受験の推薦に際し、非行歴を判断基準に加えるかどうかは、各中学校長の判断とし安芸郡12月ている。ただ県教委幹部は「1年生の時の軽微な非行歴までさかのぼる必要はないのではないか」と指摘している。
遺族の代理人弁護士は「遺族の悲しみは深い。公正な第三者機関を通じた調査を求めたい」と話している。

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平成28年3月8日付共同通信

広島で中3自殺、進路指導影響か 3カ月公表せず、原因調査へ 

 広島県府中町教育委員会は7日、町立府中緑ケ丘中の3年男子生徒(15)が昨年12月8日、自宅で自殺していたと発表した。いじめは確認されていないが、進路指導が生徒に影響を与えた可能性があり、第三者委員会を設置して調査を進める。

 町教委は、公立高校の選抜試験が終わった後の8日夜、経緯を説明するため記者会見するとしており、詳細を明らかにしていない。約3カ月間にわたり公表しなかった理由については「同級生の動揺を避けてほしいと遺族から要望があったため」と釈明している。

 

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平成28年3月8日中国新聞社
中3進路指導後に自殺
学校側別人の非行誤認
広島県安芸郡 昨年12月
 広島県安芸郡内の町立中学校の3年男子生徒(15)が昨年12月、過去の非行歴を理由に志望する私立高への推薦を認められないと学校側から伝えられた後、自殺していたことが7日、分かった。しかし自殺後、その非行歴は別の生徒のものだったことが判明。誤った情報を基にした学校の進路指導が自殺につなかった可能性がある。町教委と同中は遺族に謝罪した。8日、保護者説明会を開く。
関係者によると、生徒は昨年12月8日に進路を話し合う保護者、担任教諭との三者懇談に出席せず、同日夕、自宅で自殺していたのを家族が見つけた。遺書めいたメモがあったが、理由には触れていなかったという。
学校側は、三者懇談前の本人との進路指導で、1年生の時に万引した記録があるため志望校に推薦できない旨を生徒に告げた。だが生徒の自殺後に聞き取り調査した結果、当時万引したのは別人だったことが判明した。いじめなどはなかったという。
記録は、1年生当時の生徒指導の会議資料に記されていた。その場でミスが分かり、訂正された。しかし、資料の元データは訂正されず、そのまま引き継がれていたとみられる。
町教委は「個人情報の管理がずさんだった」としている。学校推薦を受けられないことが自殺の原因になつたかどうかについては 「可能性はあるが断定できない」とする。第三者委員会を設けて詳細な調査を進める。町教委によると、高校受
験の推薦に際し、非行歴を判断基準に加えるかどうかは、各中学校長の判断としている。ただ県教委幹部は 「1年生の時の軽微な非行歴までさかのぼる必要はないのではないか」と指摘している。
遺族の代理人弁護士は「遺族の悲しみは深い。公正な第三者機関を通じた調査を求めたい」と話している。
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