平成28年3月26日中国新聞

情報管理の不備指摘

 府中町中3自殺で文科省

広島県府中町立府中緑ヶ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年り一月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、再発防止策を探る文部科学省の特別チームは25日、会合を開き、中間報告をまとめた。
情報管理が不徹底だった点など改善事項を明記した。
全国の教育委員会などに対し、同様の実態がないか確認を求める文書も出した。
中間報告は同校に対し、万引記録で名前の取り違えが起きた点を踏まえ「進路指導の記録の作成、保存が不適切」と指摘。さらに「1年生時の触法行為のみをもって機械的に判断が行われたことが課題」とした。
町教委に対しても、推薦基準の状況や不適切な進路指導の実態を十分把握していなかったとし、「校長や教職員と連携して情報共有し、速やかに指導できる体制の構築が必要」と求めた。
各教委などに出した文書では、進路指導などの記録の管理に加え、生徒や保護者に対する進路指導方針の変更の説明が徹底しているかどうか確認し、問題があれば指導するよう求めた。
会合後、義家弘介副大臣は「悲劇を繰り返さないため、子どもを守る態勢を再構築する」と述べた。義家氏は26日、町教委を訪れて中間報告を説明し、改善を求める。(府中町進路指導問題取材班)

給与一部返納
校長が申し出

広島県府中町立府中緑ヶ丘中3年の男子生徒が自殺した問題で、町教委は25日、同中の坂元弘校長(60)が「責任を取る」として給与の一部返納を申し出たと明らかにした。
町教委によると、坂元校長は24日夕、町教委事務局で高杉良知教育長に伝えた。返納額などの具体的な説明はなかったという。町教委は県教委に連絡した。
坂元校長は3月末で定年温`する。同中では25日、修了式と教員離退任式があった。

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平成28年3月25日中国新聞より

府中町中3自殺

第三者委、31日会合

広島大教授ら委嘱へ

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、町教委は24日、原因究明のために設ける第三者委員会の初会合を31日に開くと明らかにした。委嘱する委員5人も
決定した。(府中町進路指導問題取材班)
委員は、古賀一博・広島大大学院教授=同大推薦▽阿形恒秀・鳴門教育大教職大学院教授=日本生徒指導学会推薦▽川崎友嗣・関西一大社会学部教授=日本キャリア教育学会推薦▽村上雅彦・広島ファミリールーム所長=広島県臨床心理士会
推薦▽中田憲悟弁護士=広島弁護士会推薦-の5人。
町教委が各団体から推薦を受け、24日の定例会で承認した。
第三者委の正式名称は「町学校運営等についての調査検討委員会」。町教委は第三者委に対し、自死の背景と原因究明▽学校と町教委の対応検証▽再発防止策-などを諮問する。答申の期限は設けない。
定例会後の記者会見で、高杉良知教育長は「設置が遅くなり、遺族には申し訳ない。これまでの学校と町教委の調査で不十分な面を一掘り下げて原因を究明して’もらい、提言をいただきたい」と述べた。

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平成28年3月24日中国新聞より

第三者委員きょう決定
府中町中3自殺 5人月内初会合へ

 

広島県府中町立府中緑ヶ丘中3年男子生徒=当時(15)が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、町教委が24日、原因究明などのため設ける第三者委員会の委員5人を決定することが、23日分かった。初会合
は月内に開く予定でいる。
町教委は、県臨床心理士会▽広島弁護士会▽日本生徒指導学会▽広島大▽日本キャリア教育学会-の5団体に委員の推薦を依頼。24日の町教委定例会で推薦された5人を承認し、委員に委嘱する方針。町教委によるとヽ男子生徒の家族側に
報告しているという。
初会合では委員長を互選。高杉良知教育長が①問題の背景と原因究明②解決のための措置③学校と町教委の対応Iなどを諮問する。第三者委は必要に応じて中聞報告を出し、最終答申をまとめる。同中が今月、全校生徒を対象にしたアン
ヶートなどの資料も提供される。
一連の問題をめぐっては、同中は2月末、指導用資料のずさんなデータ管理や配慮を欠いた指導などが重なり「学校としての責任があった」と結論付ける調査報告書をまとめた。町教委は学校内の調査を先行させたものの、報告書につい
て「不十分な点はある」と指摘。第三者委に真相究明を委ねる考えを示していた。
(府中町進路指導問題取材班)

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平成28年3月19日

推薦基準を見直しへ
府中町中3自殺 保護者に校長説明

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、2年前の誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、同中は18日、2度目の保護者説明会を開いた。坂元弘校長は今後の改善計画を説明し、私立高への推薦基準を全般的に見直すことを報告した。
同中体育館で非公開であうた説明会は約2時間半にわたった。12日に卒業式を迎えた生徒の保護者を含む約240人が出席。男子生徒の遺族も姿を見せた。
複数の参加者によると、坂元校長は推薦基準のほか、進路指導の相談体制の強化、卒業生への心のケアの継続などの方針を説明。前方に並んだ教員約30人は護者から求められ、安心して子どもが通え、保護者が預けられる学校にすることを「お約束します」と口をそろえたという。
説明会後の記者会見で、坂元校長は推薦基準の見直しに関し、触法行為の有無など画一的ではなく「個」を見て判断すると説明。同席した町教委の高杉良知教育長は、近く発足させる第三者委員会の委員について、広島弁護士会などの4団体に加え、日本キャリア教育学会に新たに推薦依頼したことを明らかにし
た。
同校は一連の問題を正式に公表した8日に説明会を1度開いたが、保護者から「質問に答えられていない」 「もっとわれわれの声を聞く場を」などと開催を要求されていた。
(府中町進路指導問題取材班)

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平成28年3月18日付朝日新聞

面談のメモ、存在せず 報告書、担任の記憶頼み 広島・中3自殺

広島県府中町の町立府中緑ケ丘中学校3年の男子生徒(当時15)が自殺した問題で、学校が調査報告書に記した生徒と担任教諭の5回にわたる面談のやりとりは、担任による面談時のメモが根拠とされていたが、メモは存在していなかったことがわかった。17日、坂元弘校長が明らかにした。すべて担任の記憶のみに依拠して作成されたことになり、報告書の信用性が問われそうだ。

担任と男子生徒は、昨年11月中旬から自殺当日の12月8日まで5回、進路について面談。学校が今年2月にまとめた報告書は、1回目の面談で担任が「万引きがありますね」「3年ではなく、1年の時だよ」と問うと、男子生徒は「あっ、はい」と答えたと記す。その後の面談も具体的な

会話を交えて記している。

担任は一連のやりとりで万引きを否定する発言がなかったとして、1年時に万引きをしたとする誤った記録の確認ができたと誤認した、としている。

これまで学校や町教育委員会は、報告書に記したやりとりは担任の証言に基づくもので、正式な記録はないが、担任が面談の際に残したメモをもとにした証言と説明していた。

しかし今月16日、同僚が改めて確認したところ、担任は生徒の志望校や合否の可能性など事前に調べた内容はメモにしていたが、面談時の会話の内容は一切残していなかったという。

坂元校長は「私自身、面談の結果は残していたし、メモはあると思っていた。メモがないと聞いて愕然とした。記録を残しておかないと後でいろんな時に困る。今後設置する第三者委員会でも面談のやりとりの調査は難しくなると思う」と話した。(泉田洋平、根津弥)

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平成28年3月18日中国新聞

 

PTA新聞に「ずっと友達」
府中緑ケ丘中自殺の男子生徒

昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導の後に3年の男子生徒(15)が自殺した府中町立府中緑ケ丘中で17日、在校生にPTA新聞が配られた。卒業生特集のページに全員の寄せ書きがあり、男子生徒の部分には「ずっと友達」と記されていた。
新聞はB4判、4ページ。生徒のクラスは、三十数人それぞれの似顔絵、名前とともに手書きで一言ずつ記述。別のページには坂元弘校長や3年生の各担任たちの励ましの言葉が掲載されている。昨年9月の体育祭での3年生全員の集合写真もある。生徒が亡くなったことには触れていない。
新聞は、配布が遅れたため卒業生に届いておらず、同中は配布方法を検討する。ある卒業生の保護者は「記念になる新聞なので読みたい」と話している。

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平成28年3月17日付朝日新聞東京本社版「声」

(声)生徒に寄り添わない指導とは…

 元高校教員 橋本正次(埼玉県 67)

 

 広島県の中学3年生が、万引きしたという誤った非行記録によって志望高校の「専願」受験を認められず、自殺してしまうという痛ましい問題が起きた。この原因として多方面から指摘されたのは、学内における生徒指導のデータ作成や、それらの情報の伝達・共有のあまりにもずさんな態勢である。生徒の死を無駄にしないためには、情報管理について徹底した検討と対策が必要だ。

 しかし、再考されなければならないもっと重要なことは、この問題で明るみに出た学内の指導システムではないのか。万引きなどの過ちは教員が生徒にしっかり寄り添って指導を徹底すれば、反省させることが十分にできるはずだ。

 一度でも万引きなどの過ちを犯してしまうと、学校長の推薦が必要な専願受験を「できない」とするのは、「指導」というより「脅し」であろう。

 生徒にとって受験とは自分の人生がかかっていると思うほどの重大事だ。自殺した男子生徒は「どうせ言っても先生は聞いてくれない」と保護者に話していたという。この学校において最も大事なことは、教員と生徒の十分な信頼関係に基づく本来の生徒指導に立ち返ることではないだろうか。

  

(声)推薦取り消しの私を支えた言葉

 高校生 両角詩穂(愛知県 18)

 広島県の中学3年生が間違った非行記録が原因で自殺した事件は、ひとごとに思えません。

 「学校側のミスであなたの推薦は取り消しになりました」。私は第1志望の推薦入試が2週間後に迫った時、高校からこう言われました。私の希望の専攻コースは推薦入試の指定校の枠を受けていないのに、枠があると勘違いしたというのです。

 ショックは言葉にできません。推薦で次々合格していく級友を見て胃が痛くなる日々。我が校にいるシスターが私を抱きしめ涙してくださいました。「起こってはいけないことが起こりました。

でも、この試練は、あなたに耐えられる力があるから神様がお与えになったのだと思います。

しばらくは頑張らなくてもいい。だけど心を強く持ってね」。この言葉がなければ、私も広島の少年のように自分を追い込んだかもしれません。

 私は第1志望校に合格しました。苦しみ続けた日々には、意味があったと今なら言えます。

 広島の中学生は支えてくれる人が校内にいなかったのでしょうか。こんな事件が二度と起きないよう心から願っています。

 

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平成28年3月16中国新聞

第三者委の選任停滞
府中町中3自殺依頼文送らず

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、町教委が設ける第三者委員会の委員の選任手続きが滞っていたことが15日、分かった。委員―人を出してもらうよう想定していた広島弁護士会に町教委が依頼文書を送っていなかったため。
町教委は本年度内をめどに、早期に第三者委を設置する意向を示してきた。ただ「依頼した団体から推薦された委員がまだそろっていない」とし、設置時期は不明と説明していた。
町教委などによると、問題を正式公表する前の3、4日、弁護士会など4団体に電話で委員の推薦を依頼。8日に再び電話した際、弁護士会事務局から「文書で依頼を」と言われたが、送っていなかった。
文部科学省から問い合わせを受け、町教委が委員の選定状況を担当者に確認した14日、書類を送付していないことが判明。すぐに郵送し、弁護士会に届いたのは15日午前。それまで弁護士会役員は町教委の依頼を把握していなかった。
町教委は「担当者が、依頼は電話で受諾されたと思い込み、文書は後日送ればいいと思っていた。ミスで手続きが遅れ、申し訳ない」と説明。弁護士会は「速やかに人選し回答する」としている。
(府中町進路指導問題取材班)

人選を支援へ 文科省チ-ム
広島県府中町の中学3年の男子生徒が進路指導後に自殺した問題で、文部科学省は15日、原因究明や再発防止策を考える特別チームの第2回会合を開いた。町教委が設置する第三者委員会の早期発足に向け、人選面など必要な支援を進める方針を確認した。
義家弘介副大臣たちメンバー7人が出席。第三者委員会が問題を検証するには関係者の協力が不可欠として、遺族や保護者の意向も踏まえて委員の人選を助言する方向性を示した。18日に予定する2回目の保護者説明会や25日の終業式に向けては、学校や町教委が丁寧な対応を進めるためのフォローの仕方などを議論した。
非公開の会合後、義家氏は「第三者安員会は、速やかに設置する方向で協力しようと議論したが、遺族の意向と全く違うものであってはいけない」と強調。次回の保護責罰明会については「((覆の進路指導などの)しっかりした方針を出さなければ、保護者が納得しない」と指摘した。(府中町進路指導問題取材班)

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平成28年3月15日中国新聞

重なったずさん対応
府中町の中3自殺問題発覚1週間

資料の訂正報告されず

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題は14日、学校側の公表から1週間がたった。学校のミスや配慮を欠いた指導、組織運営のずさんさが次々と判明。それらが複合的に重なり自殺につながったとの見方が強まっている。取材や学校の調査報告書で明らかになった問題点をまとめた=30面関連。                (府中町進路指導問題取材班)

 

誤記録

2013年10月6日の日曜日、学校に生徒2人が万引したと連絡があった。出勤していた教諭が対応し翌7日、生徒指導担当たちに口頭で引き継いだ。生徒指導担当はノートに残しておらず、生徒指導用の資料作成時、自殺した生徒の名を誤ってパソコン入力。この生徒は、万引現場に行ってさえいない。
7日に別の生徒が教諭に暴力を振るう事案が発生。対応に追われた生徒指導担当は万引した2人に対し、事実確認や反省文を書かせるなど内規に基づく対応を怠っていた。
8日、生徒指導会議で白殺した生徒の名が記された資料が配られ、出席者が誤りに気付いた。しかし元データは訂正されず、サーバーに残った。誤った資料はその後も6回、会議で配られたが誰も指摘しなかった。校長は内規に反し会議に出席せず、その後、資料に訂正があったとの報告も受けていなかった。

 

生徒・保護者に変更知らせず

学校は15年5月ごろ、私立高の『専願』推薦の判断基準にする非行歴を「3年時のみ」から「1~3年時」に広げる検討を始めた。背景には学校の「荒れ」があ
ったとする。
変更をめぐっては3年生の担当教諭だけで協議。3人が拡大に賛成、男子生徒の担任を含む別の3人が反対した。最終的に11月、「経験豊富な職員が強引に押し
切る形」(町教委幹部)で拡大に傾き、校長が追認した。
学校側は基準を変更したことを、生徒や保護者に知らせなかった。変更の議論に時間がかかったのに加え、教諭間の引き継ぎ不足が重なり、推薦校を決定する面談などの期間は例年より短い約1ヵ月間になてた。3年生の担任は、生徒の過去の非行歴を早急に確認する必要に迫られ、それまで進路指導一で使っていなかった生徒指導会議の資料を参考にした。

「面談」の大半廊下で立ち話

「万引がありますね」。自殺した生徒の担任は昨年11月、2年前の誤ったデータを参考に生徒との「面談」でそう切り出した。生徒は 「えっ」。担任が「1年の時だよ」と聞くと、間を置いて「あっ、はい」と答えたという。これらの会話で担任は万引があったと思い込んだ。
計5回の面談の大半は廊下での立ち話。担任は、いつ、どこで万引したのか詳しく聞いていない。「『専願』は受けられない」とも伝えた。内容は学年主任に報告したが、主任は校長に報告していなかった。
最後の面談は12月8日朝。午後に三者懇談を控え、担任は「保護者と一緒に考えましょう」と伝えた。しかし懇談に生徒は現れず自宅で自殺。学校は2日後の10日、万引が誤記録であることが明確になったとしている。

≪明らかになった学校側の主なミスや問題点≫

◆誤記録
・2013年10月、万引が発生。口頭で報告を受けた生徒指導担当がパソコンで資料作成時、誤って自殺した生徒の名を入力
・万引があった日の2日後の生徒指導会議で資料のミスが指摘されたが、元データは訂正されなかった
・一連の会議には内規に反し、校長、教頭は出席しなかった
・実際に万引をした生徒への詳しい事実確認を怠った
◆推薦基準
・15年11月、推薦の判断基準とする非行歴を「3年時のみ」から「1~3年時」に拡大。
賛否が分かれたが「経験豊富な職員が強引に押し切った」(町教委)
・推薦基準の変更を生徒、保護者に周知しなかった
・基準変更の検討に時間がかかり、受験校や推薦の可否を判断する面談期間を約1ヵ月間と例年より短縮
◆進路指導
・担任は誤ったデータを参考に亡くなった生徒と15年11~12月、5回にわたって「面談」。
いずれも廊下で、立ち話だったケースも
・担任は万引の有無を尋ね、明確な否定の言葉がなかったため確認が取れたと思い込む
・担任は「面談」内容を学年主任に報告したが、主任は校長に報告していなかった

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府中町中3自殺

第三者委 人選決まらず

調査前に薄れる記憶

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、2年前の誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、原因究明の作業が進んでいない。町教委は外部有識者による第三者委員会の設置を急ぐが、メンバーは14日時点で固まっていない。新たな証言を得るための全校アンケート
も、記憶が薄れる中での困難な調査になりそうだ=23・29面に関連記事。
(府中町進路指導問題取材班)
町教委は、8日に正式公表する前に第三者委を設けることを決め、遺族にもその意向を伝えていた。設置要綱は2月9日付で定めている。公表前の3月上旬、県臨床心理士会▽広島弁護士会▽日本生徒指導学会▽広島大-の4組織に委員の推薦を依頼。今も返答待ちの組織があり、「年度内をめどに早急に立ち上げた
い」としている。
設置時期について町教委は「確かに遅い」と認める。遺族の意向や受験生への影響を踏まえ、公立高の一般入試(選抜H)の終了まで正式公表を控えたことが要因とする。
文部科学省は、児童、生徒が主にいじめで自殺した際の対応指針で「発生から日にちがたつほど、子どもたちが何を見聞きしたかあいまいになる」と、早期調査の重要性を指摘している。町教委は今回、この指針を参考にしている。
ただ全校生徒へのアンケートの配布は公表後の10日にずれ込んだ。同級生の3年生は、卒業式前日の翌11日が一応の提出期限となった。アンケートは現在、全校生徒の約8割から回収。今後、学校から提出を受け町教委が分析に当たる。
一方、町教委は14日、2回目の保護者説明会を18日に開くことを明らかにした。8日夜の説明会では学校の対応に批判が集中していた。

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私立校「専願」とは
進学約束選考で優遇

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広島県府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒が進路指導後に自殺した問題は、背景に「専願」と呼ばれる私立高の受験方式があった。受験生にも私立高にも利点がある仕組みとして続いているとみられる。ただ、文部科学省は「広島に特徴的な制度」とする。今回の問題を受け、在り方を議論する必要があるとの指摘も出ている。
専願は、校長推薦を受けて、第1志望の公立高以外の受験校を私立高1校に絞る方式。私立、公立ともに学力試験を受け、公立高が不合格の場合、受験した私立局に進学すると約束する。私立高は一般入試の受験昔より選考で優遇する。
私立高を所管する県学事課は、導入された時期や採用校数を把握していない。
県内の複数の私立高教諭によると、私立高と中学の進路担当者が事前に会議を重ね、高校側が求める成績などの基準と中学側の校長推薦などを踏まえ、専願する生徒を決定する。「専願の受験者はよほどの低得点や試験会場でトラブルがない限り合格はほぼ確実」という。
専願で受験した中学3年の一人は「公立高の試験に安心して臨めた」と振り返る。私立高側も生徒保護のメリットがある。私立高教諭の一人は「中学の教諭が、専願で推薦できない生徒の公立高合格をより確かにするため、公立の志望ランクを下げるよう提案することもある」と明かす。
自ら命を絶った府中緑ケ丘中の男子生徒は、誤った万引歴を理由に専願の推薦はできないと告げられていた。文科省で10日にあった調査特別チームの初会合後、義家弘介副大臣は「広島の入試制度は独自のもの。在り方を議論していく必要がある」と述べている。

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高校推薦基準把握せず
広島県14市町教委各校長に委ねる
府中町中3自殺

 

広島県内の23市町のうち14市町の各教委が、所管する中学校の高校受験の推薦基準を把握していなかったことが分かった。校長の裁量に委ねているケースが多く、学校によって異なるのが実情だ。府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒=当時(15)=が昨年12月に自殺した問題では、学校が2年前の誤った万引記録に基づき、推薦できないと進路指導していた。この問題を受け、14市町のうち8市町教委が既に学校から基準を聞き取ったり、ふフ後確認したりする予定でいる=30面関連。
(府中町進路指導問題取材班)
推薦基準について、府中緑ヶ丘中では従来、3年時の非行歴を判断材料の一つとしていた。しかし町教委や保護者に伝えないまま、昨年11月に1、2年時の非行歴も考慮することに変更した。命を絶った生徒の誤った万引歴は1年時のものだった。
中国新聞の取材に「各校の推薦基準を把握していなかった」と答えたのは府中町のほか、広島、呉、三原、尾道、福山、三次、庄原、廿日市、安芸高田、江田島
の10市教委と、安芸太田、北広島、神石高原の3町教委。学校の規模や状況が異なるため、「推薦するかどうかは、各校が判断するのが適当だから」とする意見
が多い。
府中町の問題発覚後、所管する中学校の推薦基準を確認したのは同町教委のほか、呉、三原、庄原、安芸高田の4市教委。呉市教委は「大半の学校が非行歴を
基準として扱い、内規に明文化している」と明かした上で、実際の運用は非行歴を単純に当てはめず、現在の子どもの状況を見て判断することにしているため問
題はないとする。
尾道、廿日市、江田島の3市教委は今後、各校への聞き取りなどを通じ、基準を把握する考え。今のところ、基準や運用面の改善を求める市町教委はない。
一方、広島市教委は「推薦基準は、1年生時から生徒や保護者に伝えるよう校長会などで指示してきた」と説明。安芸太田町教委は「学校ごとに単純な基準は
なく、それぞれ進路判定するようにしている」とする。両市町のほか、福山、三次両市と神石高原、北広島両町は基準を確認する予定はないとしている。
県教委の下崎邦明教育長は14日の記者会見で、1年時の非行歴による推薦の可否判断について「普通はあり得ない。聞いたことがない」と述べる一方、県内の
他の中学校の基準については「現時点で確認するつもりはない」とした。

組織的な学校運営できず/報告書不十分

県教育長会見

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府中緑ヶ丘中3年の男子生徒の自殺問題について見解を述べる下崎教育長

府中緑ケ丘中3年の男子生徒が誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、広島県教委の下崎邦明教育長は14日の記者会見で、同校は組織的に運営できておらず、調査報告書も「問題の背景の分析が十分でない」との認識を示した。県教委は同校の報告書作成を指導しており、不十分な内容のまま同校が遺族に渡したことについて「結果的に指導が行き届いていなかった」と述べた。
下崎教育長は、高校受験の推薦基準に一貫性がないことなどを挙げ、同校の運営について「管理職が関わつて方向性を出していなか った」と分析。「組織の体晏なしておらず、パラパラだ」とした。調査報告書については「事実関係を並べるだけでは再発防止につながらない」との見解を示した。
下崎教育長によると、生徒が亡くなった直後から職員を同校に派遣し、調査報告について指導したり不十しかし、同校は2月末に報告書をまとめ、遺族に渡したという。
下崎教育長は冒頭に「子どもが自ら命を絶つことはあってはならない。大変厳しく受け止めている」と述べた。今後、組織的な学校運営の重要性について校長会や管理職の研修で伝えるという。
(根石大輔)

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