2022年12月9日毎日新聞

「いじめの詳細、学校から知らされず」 遺族側憤り 神戸中3自殺

 

第三者委員会の調査報告書を受けて記者会見する遺族代理人の野口善国弁護士(左)ら=神戸市中央区で2022129日午後5時、中田敦子撮影

「『なぜ』『なぜ』という疑問を打ち消すことができない」――。神戸市立中学3年の女子生徒(当時14歳)が自殺した問題で、第三者委員会は生徒に対する複数のいじめを認定し、学校側の情報共有不足など対応の不備を指摘した。9日記者会見した遺族側の弁護士は「(いじめは)予想もしていなかった悲惨な内容だ。なぜ学校がもっと早く教えてくれなかったのか」と憤った。

遺族代理人の野口善国弁護士(兵庫県弁護士会)によると、女子生徒の両親は、小学5年から続いていたいじめの詳細を学校側から知らされていなかった。自傷行為について「いじめが原因でない」との説明を受けた時も「そうかな」と疑問に思っていたという。

両親はいじめに気付いてあげられなかったことについて自責の念を抱いているという。

野口弁護士は「ショックを受け、コメントを発表できる状態ではない」とおもんぱかった。

その上で学校の対応について「最初の集団いじめが見つかった時に断固たる指導をして解消すべきなのに、中学校で加害生徒を同じクラスにした。こんなことがあるのか」と非難した。

市教育委員会もこの日記者会見を開き、河野剛至(たけし)・児童生徒担当部長が「SOSを周囲の大人が受け止められなかった。重く受け止めている」と話した。両親にいじめの深刻さが伝わっていなかった点については「十分に伝えきれていなかった」と釈明した。【山本真也、中田敦子】

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2022年12月9日朝日新聞

いじめ・自傷見逃し 第三者委「学校の致命的誤り」 神戸・中3自殺

いじめを認定した調査報告書について、記者会見で説明する第三者委員会のメンバー=神戸市中央区の市教育委員会で2022129日午前1146分、山本真也撮影

神戸市垂水区で2020年、市立中学3年の女子生徒(当時14歳)が自殺した問題で、市教育委員会が設置した第三者委員会は9日、「いじめが自死に強く影響した」とする調査報告書を市教育長に提出した。いじめや生徒の自傷行為がエスカレートしていたのに、学校側はその兆候を見逃し、「いじめは解消した」と判断していた。報告書は学校が組織的な対応を怠り、家族との情報共有も不十分だったと指摘。「致命的な誤りで、自死は防げた」と厳しく批判した。

20年9月5日朝、生徒が自宅で死亡しているのを父親が発見。机には「学校疲れた」「死にたいな」とのメモが残されていた。市教委は同年12月、いじめ防止対策推進法に基づき、弁護士や精神科医らによる第三者委を設置。同級生や教諭らに聞き取り調査した。

 

報告書によると、生徒は小学5年の時、触った物を汚物扱いされるなど、同じクラスの7割が関与する集団いじめを受けた。中学に入学後も他の女子生徒から嫌がらせを受けたり、男子生徒5人からばい菌扱いされたりした。

学校はこの5人を1回指導しただけで、組織的・継続的な指導をしなかった。生徒は193月に自傷行為を始めたが、学校は母親に「いじめは解消している」と説明し、いじめの深刻さを伝えていなかった。

生徒へのいじめはその後も続き、他の女子生徒からLINE(ライン)で「殺すぞ」「はやくしねや」とメッセージを送られることもあった。

中学3年の時、加害生徒5人のうち3人と同じクラスになり、精神的な負担が増加。担任に「席を近くしないで」と席替えを再三訴えた。自殺の1カ月前にはSNS(ネット交流サービス)に「死にたいってなんなんだろう」「誰か助けて」と投稿。しかし、死の直前まで友人らのLINEグループから削除されるなどのいじめが続いた。

報告書はいじめがトラウマになり、生徒の自己肯定感が著しく損なわれていたと指摘。

進学への不安も重なって精神的に追い込まれていたが、周囲がそれを理解せず、適切な支援ができなかったと結論づけた。

第三者委のメンバーで、精神科医の山下仰(こう)・武庫川女子大教授は記者会見で

「学校は早々にいじめが解消したと判断し、被害生徒に寄り添った対応ができず、責任は重い」と述べた。【山本真也】

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2020年12月18日付神戸新聞NEXT

容赦ないいじり「怖かった」 神戸・女子中学生自殺、弁護人会見

神戸中3自殺1

自殺した女子生徒が残したメモ。「学校疲れた」「死にたいな」などの文字が並ぶ=神戸市中央区(撮影・村上晃宏)

神戸中3自殺2

自殺した女子生徒が残したメモ。「学校疲れた」「死にたいな」などの文字が並ぶ=神戸市中央区(撮影・村上晃宏)

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9月に亡くなった神戸市垂水区の中学3年生の女性生徒が残したメモを手に、概要を話す野口善國弁護士=18日午後、神戸市中央区(撮影・村上晃宏)

神戸市立中学校の生徒がいじめを苦に自殺した可能性がある問題で、遺族の代理人弁護士が18日、神戸市内で記者会見を開き、いじめの被害をほのめかす手紙を残していたと明らかにした。生徒は同市垂水区の中学3年の女子生徒=当時(14)=で、9月に自宅で自殺したと公表。「学校疲れた」などと書いたメモも残され、遺族は「なぜ娘が死ななければいけなかったのかを知りたい」と話しているという。

弁護士によると、9月5日朝、女子生徒が自宅の自室で亡くなっているのを家族が発見。前夜に自ら命を絶ったとみられる。

自室の机には「学校疲れた」「死にたいな」などと書かれたメモと、同級生の女子生徒6人に宛てた手紙と封筒があったという。

そのうちの1通には「部活でも学校でも容赦なくいじってきますね。まあどちらかと言えば楽しんでいるのでいいけど…部活の時と教室におる時、雰囲気ちがいすぎて怖かった」(原文)と書かれていた。ほかの手紙にも無視されるなどの仲間外れと思われる行為が記されていた。

また、8月中旬には、会員制交流サイト(SNS)でやりとりをする人に「学校始まって欲しくない」「始まったらまたいじめ」などと送っていたという。

代理人弁護士によると、女子生徒は父親の誕生日にケーキを作ってあげる、素直で明るい子だった。自殺を図ったとみられる日も登校し、家族も生前はいじめがあったと認識せず、学校側も弁護士から訴えがあった10月中旬までいじめは把握していなかったという。

一方、同市教育委員会はいじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と認定し、18日に第三者による調査委員会の初会合を開いた。委員長には松本隆行弁護士(兵庫県弁護士会)が選ばれ、「いじめの有無など、中立公正な立場で客観的に調査し、具体的な再発防止の提言につなげたい」と話した。(斉藤絵美)

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平成31年4月16日神戸新聞NEXT

神戸・垂水中3女子自殺、いじめ行為を認定 再調査委

垂水いじめ認定

市立中学3年の女子生徒が自殺した問題で、報告書について会見する再調査委員会の吉田圭吾委員長(中央)=16日午前、神戸市役所(撮影・辰巳直之)

神戸市垂水区で2016年10月、市立中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺した問題で、同市がいじめと自殺の関係を明らかにするために設置した市いじめ問題再調査委員会は16日、いじめ行為が自殺の大きな要因とする調査結果を発表した。学級内での仲間外れや、インターネット上でのいじめ行為などを認定。学校内に居場所を失い、孤立化する中で足を引っ掛けられるなどして追い込まれ、自殺したと結論付けた。(井上 駿)

女子生徒の自殺を巡っては、市教育委員会がその直後、いじめ対策を考える付属機関の委員を横滑りさせ、非公表で第三者委員会を設置。第三者委の調査では、いじめ行為を認定したものの、要因の一つという評価だった。さらに、いじめ問題担当の首席指導主事が、いじめを証言した生徒らの聞き取りメモについて、提供を求めた遺族に対し、前校長に隠蔽(いんぺい)するよう指示した問題が発覚した。

遺族側は「事実関係が不明確で調査が不十分」とし、昨年4月に久元喜造市長に再調査を要望。久元市長は「『破棄された』とされていたメモが発見され、調査報告書の信頼を損なう結果となった」などとして再調査を決めた。

再調査委は、弁護士や学識経験者ら5人で構成。昨年7月から会合を重ね、第三者委が収集した資料の読み込みや生徒、教員らへの聞き取りを実施した。

その結果、ネット上の掲示板で女子生徒を中傷するいじめを認定。2年時に学級内でからかわれたり、無視や陰口を言われたりして孤立化した。3年時は担任の不適切な学級運営から生徒間の序列が生まれ、2学期に足を引っ掛けられたり、体育祭の練習中にからかわれたりするいじめを誘発。心理的にも追い込まれ、自殺したと結論付けた。

報告書では「いじめとして捉えていた教師は一人も存在しなかった。生徒に寄り添える教師が一人でもいれば、自死は防げた」と指摘。吉田圭吾委員長は「第三者委員会の調査はいじめを認定する力が弱く、自殺への影響も低く見積もっていた」と述べた。

報告書を受けた久元市長は「教育委員会の対応に大きな問題があったことが明らかになった。遺族と市民におわびする」とした。

【いじめ防止対策推進法に基づく再調査】子どもの生命や心身、財産に重大な被害が及ぶいじめ行為があった場合を「重大事態」と規定。教育委員会や学校に事実関係の調査や再発防止の提言を義務付け、弁護士や学識経験者らで構成する第三者委員会も設置できる。被害児童・生徒の保護者らは、第三者委の調査結果が地方公共団体の首長に報告される際、調査への不満などを意見書にして提出できる。首長が第三者委の調査が不十分と判断すれば、新たな調査組織を設置して再調査が実施できる。

■報告書のポイント

・自殺の大きな要因は中1から中3までのいじめ

・中1の時、インターネット上で中傷されるいじめを受けた

・中2では無視や陰口を受け完全に孤立し、絶望感を抱いていた

・中3では担任教諭の統制的な学級運営から生徒間の序列が生まれ、いじめが誘発された

・家庭には特段の問題点は見いだせなかった

・同級生らの証言メモが隠蔽され、遺族や生徒、保護者が深く傷ついた

・今回の提言を受けた対策が市教委と小中学校で講じられているか、市長部局に検証機関を設置すべきだ

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平成31年2月5日付神戸新聞

神戸中3自殺 メモ隠蔽で有識者会議が報告書提出

メモ隠蔽有識者

長田教育長

不祥事防止策をまとめた報告書を長田教育長(右)に手渡す山下座長=神戸市役所

 

神戸市垂水区で2016年10月、中学3年生の女子生徒=当時(14)=が自殺し、同級生らがいじめを証言したメモが隠蔽された問題で、神戸市教育委員会が設置した「組織風土改革のための有識者会議」が4日、不祥事防止の取りまとめを長田淳教育長に提出した。背景に教職員の多忙化やいびつな年代構成などが影響していると指摘し、研修の充実や働き方改革の推進などを求めた。(井上 駿)

メモ隠蔽問題と、後を絶たない不祥事の背景が共通しているとし、対策をまとめた。座長の山下晃一神戸大准教授から取りまとめを受け取った長田教育長は「アクションプランを策定し実行していく」と述べた。

取りまとめでは、14~18年度、教員の懲戒処分(66件)の約半数を50代が占め、節目の年次で定期的に総合的な研修をすることを提案。学校への啓発も事例の紹介や資料配布にとどまっているため現場の意識や理解が不十分とし、研修の充実や強化が必要とした。

また、不祥事の遠因になっている多忙化については、若手が多く、中堅が少ない年代構成も影響しており、管理職によるマネジメント強化など働き方改革を挙げた。ほかにも、風通しの良い職場環境づくり▽弁護士ら外部専門家の活用▽教職員の相談・通報窓口の充実-などを盛り込んだ。

また、校長間で教員の異動の調整をする市の人事慣行について山下座長は「異動希望が通りやすい側面もあるが、学校の伝統にとらわれて法令順守の意識が薄れやすい」と指摘した。

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平成31年1月12日付神戸新聞

神戸・中3自殺 市教委、調査メモ隠蔽で幹部5人を懲戒

メモ隠蔽

メモ隠蔽で幹部の処分を発表し、謝罪する神戸市教委幹部=11日夜、同市役所

2016年10月、神戸市垂水区の中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らのメモが隠蔽された問題で、同市教育委員会は11日、遺族からの質問書にメモの存在を否定するよう前校長に指示したなどとして、首席指導主事=休職中=を停職3カ月にしたほか、当時の幹部4人を減給や戒告などの懲戒処分にした。

他の処分は、総務部担当部長(前学校教育部長)=減給10分の1(1カ月)▽教育次長、総務部長、総合教育センター担当課長(前学校教育課長)=戒告。保健福祉部担当部長(前学校教育課担当課長)は、懲戒には当たらない文書訓戒の処分とした。また、雪村新之助前教育長は調査を徹底しなかったとして、在職時の報酬月額の10分の1(3カ月)を自主返納。

前校長も同様の相当額を自主返納する意向という。

市教委は教職員26人を聴取。メモは公文書に当たらないとして、隠蔽は「不適切な事務処理」とした。17年2月の遺族の質問書は部署内で共有したが、メモの存在を認識しながら「ない」と回答したことを把握していたのは首席指導主事と前校長だけで、組織的関与はなかったと結論付けた。

同年8月、メモの存在が伝えられた教育次長や総務部長らは、その存在を積極的に確認しなかったが「メモへの具体的な認識がなく、組織的に隠蔽したとは認められなかった」とした。

女子生徒の遺族は「これまでの市教委の立場を踏襲したもので、組織的な隠蔽についての全容解明にはほど遠い」などとコメントした。(井上 駿、広畑千春)

2016年10月、神戸市垂水区の中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らのメモが隠蔽された問題で、同市教育委員会が11日、幹部職員を懲戒処分したことなどに対し、女子生徒の遺族が文書でコメントした。全文は次の通り。

本日、神戸市教育委員会より、いわゆる「メモの隠蔽」問題などに関して6人の教職員に対する懲戒処分などについてご説明を受けました。

懲戒処分そのものについては教育委員会内部の人事に関する問題であり、その軽重を含めたコメントは差し控えたいと思います。

もっとも、メモの隠蔽に至る経緯については、首席指導主事が当時の校長に指示をしたというこれまでの教育委員会の立場を踏襲したものであり、組織的な隠蔽についての全容解明にはほど遠いものと言わざるを得ません。

事件直後にいじめの事実を勇気を持って告発した同級生の証言を記載したメモは大変貴重な資料であるはずですが、今なお、これを軽いものと扱っているように感じられて残念でなりません。

現在、神戸市長のもとで再調査が行われておりますが、時間の経過もあり、真実解明が困難になっているのではないかと大変心配をしております。事件発生直後の神戸市教育委員会のもとでの調査の段階で、積極的ないじめの事実調査と遺族に寄り添った情報公開がなされなかったことが悔やまれてなりません。

今回の処分を契機に、神戸市教育委員会や学校現場において、いじめ予防に対しても、いじめ発覚後の事実調査においても、いじめ防止対策推進法に基づいて、被害生徒やその保護者に寄り添った積極的な対応がなされる組織風土に変わることを願ってやみません。

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平成30年9月25日朝日新聞兵庫版

調査不足指摘 いじめメモ隠蔽問題

神戸市垂水区で2016年に市立中学3年の女子生徒が自殺し、いじめをうかがわせる他の生徒からの聞き取りメモが隠蔽された問題が、混迷の度を深めている。

「首席指導主事が指示し、前校長が了承した」とされるが、他の市教委幹部も昨夏の段階で隠蔽を認識していた疑いが浮上。有識者からも調査不足との指摘が相次いでいるためだ。だが、市教委は早くも幕引きの構えを見せている。

「事実関係がちゃんとしていないのに早すぎる」「なぜこんなに急ぐのか」 19日、神戸市議会文教こども委員会。居並ぶ市教委幹部を前に、複数の市議から厳しい質問が噴出した。

市議たちが問題にしたのは、市教委が設置した「組織風土改革のための有識者会議」の「中間とりまとめ」と市教委の対応だ。

有識者会議は「メモを巡る対応は首席指導主事と前校長の2人のみで行われ、他の職員からのチェックが働かなかった」との前提で3回議論し、「指揮命令系統の明確化」などを今月11日に提言した。

そのわずか3日後、市教委は生徒指導を専門に担う「児童生徒課」の新設を柱とする10月1日付の組織改革概要を発表した。「素早く組織をいじることで幕引きを狙っているように見える」(市立中学校のある校長)との声が上がるほどの手際の良さだった。

だが当の有識者会議でさえ、中間とりまとめの冒頭で「(隠蔽の)動機や経緯が非常に不合理で、詳細に解明されることが望ましい点が多く残されている」と釘を刺し、課題が山積していることを強調する。

「隠蔽は首席指導主事が指示し、前校長が従った」と認定したのは、市教委が委託した弁護士2人による6月1日付の調査報告書だ。だが、報告書の内容を否定したり、報告書に反映されていなかったりした新たな文書が最近、相次いで出てきた。

一つは、前校長が7月13日付で提出した陳述書だ。

調査報告書は、前校長が首席指導主事の指示に従った理由を「できればメモがないことにしてやり過ごしたいという思いを有していた模様である」とした。だが、前校長は「そんな発言はしていないし、そう思ったことも一度もない」と反論。「一にも二にも教育委員会から指示があったからだ」と主張した。

二つ目は、共産党の味口俊之市議の情報公開請求で開示された、現校長と学校教育課長との昨年8月23日の電話対応記録だ。

記録によれば、現校長は(1)メモは市教委の指示で廃棄されたと前校長から聞いた(2)メモは学校に残っている――の2点を伝え、メモが破棄されたと記された第三者委員会の報告書の訂正を求めた。だが、同課長は「遺族説明は終わっている」などとして拒否した。

記録は学校教育部長と総務部長にも共有されていた。つまり、複数の市教委幹部が昨年8月の時点で隠蔽が行われたとの認識を持ちながら、真相にふたをしようとしていたのではないか、との疑惑だ。

未解明の点はほかにもある。なぜ首席指導主事は上司に相談することなく独断で隠蔽をはかったのか。昨年8月にメモが学校にあることが分かり、教育長(当時)が調査を指示したのに、なぜ現物を確認することなく調査は立ち消えになったのか――などだ。

全容解明にほど遠い段階で組織改革を始めた市教委の姿勢に、遺族側は不信感を募らせる。今月18日、「仮に時間がかかったとしても徹底的な原因解明をまずは行うこと、その上で組織風土改革を検討することを求めたい」とする所感を有識者会議と市教委に出した。

だが、市教委は新たに調査するつもりはないという。後藤徹也・教育次長は取材に「我々に強制調査権がない中で、これ以上調べても事実解明には限界がある。

弁護士による調査報告書をもって区切りとしたい」と話した。(野平悠一、西見誠一)

 

  • 学校教育課長と現校長の昨年8月23日の電話対応記録(抜粋)

校長:具体的には、メモの廃棄についてである。これについて前校長は、委員会の指示であったといっている。(中略)実際にメモの一部は学校に存在している。

学校教育課長:第三者委員会の聞き取りからできた報告書であり、第三者委員会に意見をすることは難しい。

校長:第三者委員会の報告でも、誤った情報については訂正する必要があるだろう。また、事前に学校とのすり合わせがなされていない。杜撰である。

学校教育課長:すでに、遺族説明も終わっており報告書は固まっている。

※開示記録には伏せ字がありますが、一部を取材で補いました。

 

◇神戸の中3自殺問題

神戸市垂水区の市立中学生3年生自殺問題 市教委が設置した第三者委員会の調査報告書はいじめがあったと認定したが、自殺の原因は特定しなかった。

いじめメモ隠蔽問題を受け、久元喜造市長は今夏、市長部局に新たな調査委を立ち上げて自殺の経緯を調べている。

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平成30年9月20日朝日新聞

いじめメモの隠蔽、複数の市教委幹部が認識か 中3自殺

神戸市垂水区で2016年に市立中学3年の女子生徒が自殺し、いじめをうかがわせる他の生徒からの聞き取りメモが隠蔽された問題で、昨年8月、現校長が市教委の学校教育課長に「メモは学校にある」と電話で伝え、メモが破棄されたと記された第三者委員会の報告書の訂正を求めたのに、同課長が「遺族説明は終わっている」などと拒否していたことがわかった。

メモ隠蔽問題を調査した弁護士の報告書は、隠蔽は首席指導主事の指示だったと認定したが、他の市教委幹部も真相にふたをしようとした疑いが強まった。

昨年8月23日に現校長と学校教育課長が話した内容を一問一答形式で文書にした記録が市教委にあり、共産党の味口俊之市議が情報公開請求して開示された。

記録によると、現校長は①メモは市教委の指示で廃棄されたと前校長から聞いた②メモは学校に残っている――の2点を伝え、第三者委の報告書の訂正を求めた。

だが、同課長は「第三者委の聞き取りからできた報告書であり、意見することは難しい」「すでに、遺族説明も終わっており報告書は固まっている」と述べ、訂正を拒んだ。

この記録は上司の学校教育部長と総務部長にも共有された。

現校長とのやりとりについて、今年6月の市議会で問われた同課長は「どのような話をしたか覚えていない」などと答弁。学校教育部長も「報告を受けたが、何の話か分からなかった」と述べた後、「聞いたかどうかあいまい」と修正し、市教委が組織ぐるみで隠蔽した疑いを否定していた。

19日の市議会で、「現校長とのやりとりを文書で共有しながらなぜ『覚えていない』と答弁したのか」などと追及した味口市議に対し、同課長は「着任したばかりで事情が分からなかった」と釈明した。

市教委が設置した第三者委の調査報告書はいじめがあったと認定したが、自殺の原因は特定しなかった。メモの隠蔽問題を受け、久元喜造市長は今夏、市長部局に新たな調査委を立ち上げて自殺の経緯を調べている。(野平悠一、西見誠一)

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平成30年7月20日神戸新聞

神戸・中3自殺 市教委、隠蔽を中学の保護者会で謝罪

垂水中2自殺

神戸市垂水区で2016年10月、中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らへの聞き取りメモが隠蔽された問題で、女子生徒が通っていた市立中学校で19日、保護者説明会が開かれた。市教育委員会が設置した第三者委員会の調査結果などが報告され、参加者からは「なぜ女子生徒が亡くなったのか釈然としない。学校で何があったのか、きちんと明らかにしてほしい」などの声が上がった。(井上 駿、広畑千春)

保護者向けの説明会は、女子生徒が亡くなった約10日後に行われた後はなかったといい、PTA会長らが市教委に要望し、この日の開催に至った。非公開で約1時間半あり、卒業生・在校生の保護者ら約250人が参加した。

冒頭、後藤徹也教育次長が、保護者への説明が遅れ、さらにこの問題で学校教育への信頼を損ねたことに対し謝罪。市教委によると、いじめを含む複合要因により女子生徒が自殺したという第三者委の見解▽市教委の首席指導主事によるメモ隠蔽の指示▽市こども家庭局の再調査への移行-などを説明したという。

第三者委の報告書は信頼性が失われ、再調査も決まっているため詳細は明らかにしなかった。保護者からは「再調査の結果を報告してほしい」という要望や、うわさの流布などによる生徒への負担を懸念する声もあったという。子どもが女子生徒と同学年だったという母親は「隠蔽問題の話が多く、2年近くたっているのにいじめについてほとんど説明がなかった。

処分を含め、市教委や学校は誠実に対応してほしい」と話した。

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平成30年7月19日付神戸新聞

神戸・中3自殺 生徒アンケに「いじめ」文言なし

神戸市垂水区で2016年10月、市立中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らの聞き取りメモが隠蔽された問題で、学校側が生徒に実施したアンケート調査の質問に「いじめ」という文言が入っていなかったことが18日、同市教育委員会などへの取材で分かった。遺族の代理人弁護士は「いじめの情報を把握しながら、それを前提としないアンケートで不十分」と指摘している。

アンケートは、同級生らへの聞き取りの約1週間後に文部科学省の指針に基づき、在校生に実施した。市教委は女子生徒がいじめを受けていた可能性を明示せず、女子生徒の様子を尋ねたという。一方、同時期に発足した加古川市の第三者委では、第三者委がアンケートを作成し、いじめの有無を明確に尋ねる内容になっていた。

神戸市教委によると、アンケートでは、いじめられていたことを示す回答が含まれていたが、代理人は質問の趣旨にいじめが明示されていれば、より具体的な情報が多く得られたなどとしている。

市教委は「アンケートは文科省の指針にのっとり、有識者にも意見を聞いて実施した。対応が適切だったかどうかは、市の再調査委員会の判断に委ねたい」としている。(井上 駿)

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