平成30年7月16日付朝日新聞青森版

自殺原因はいじめ 報告書案、遺族「納得できる」

 青森市中2いじめ

会見で時折言葉を詰まらせながら話す葛西りまさんの父、剛さん=2018年7月15日午後5時4分、青森市、中野浩至撮影

青森市立中学2年の葛西りまさん(当時13)が2016年8月に自殺した問題で、市いじめ防止対策審議会は15日、遺族に報告書の原案を示し、意見を聴取した。父の剛さん(40)は終了後会見し、思春期うつを自殺の背景に挙げた前審議委の報告と異なり、いじめが自殺につながったと認められたとして「しっかり調査され、おおむね納得できるものだった」と述べた。

聴取は非公開で、対策審委員6人全員、剛さんと担当弁護士が約180ページの原案について約3時間にわたって協議した。剛さんは会見で「驚いた。前回とは全く別物」と切り出した。

前回報告で4件とされたいじめの認定数は、「うざい」といった悪口やLINE上で仲間はずれにする行為など20件以上に上り、剛さんが初めて知るものもあったという。

自殺について、前回問題になった思春期うつや家庭環境に起因したとの記述はなく、いじめを根本原因とみなす内容だった。学校側についても、いじめに悩むりまさんのサインを見逃したと指摘されているという。

一方で剛さんは、原案には再発防止のために学校側の体制がどうあるべきかという意見や、報告書作成途中で委員全員が変わった前回審議会についての検証が欠けているとして、修正案に盛り込むよう何度も求めたことも明らかにした。

一連の調査では、審議会の委員が任期満了となったとしてやり直され、調査報告の日程が当初予定から大幅に遅れた。剛さんは「報告が納得できるものだとしても、娘が苦しんで亡くなった事実を再度突きつけられたようで複雑。一回で調査してくれれば苦しまずに済んだ。今までの時間は何だったのか」と述べた。

審議会は原案の修正について協議し、遺族に修正案を再度示した上で8月上旬にも報告書を確定し、市教育長に答申する見通しだ。(土井良典)

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平成30年7月7月14日付京都新聞

「校舎80周走れ」生徒倒れ救急搬送 滋賀・中学部活顧問が指示

大津市の南郷中で、ソフトテニス部2年の男子生徒が部活動中に「校舎周囲を80周走れ」と顧問の教諭から指示され、途中で倒れて救急搬送されていたことが13日、同中や市教委への取材で分かった。生徒は熱中症と診断され、同中は「行き過ぎた指導だった」と謝罪した。

同中と市教委によると、生徒は12日午後の部活動中、練習中にミスが目立ったことなどを理由に、30代の男性顧問から「校舎周囲を80周走ってこい」と命じられた。午後5時10分ごろ、生徒が倒れているのを校内で作業をしていた工事業者が見つけた。生徒は救急搬送され、その日の夜に退院し、13日は学校を休んで静養したという。

生徒が走らされた校舎外周は1周約230メートルで、80周で18キロ超になる。生徒が倒れたのは9周目だったという。気象庁によると、大津市の12日午後5時の気温は30・1度だった。

同中は、13日夜に保護者説明会を開き、経緯を説明した。平松靖之教頭は「行き過ぎた不適切な指導で、保護者におわびする。すでに顧問を指導した。今後は、安心した学校生活が送れるよう努めていく」とコメントした。

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平成30年7月12日 神戸新聞

神戸・中3自殺 いじめ再調査委16日発足

2016年10月、神戸市垂水区で市立中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、同級生らの聞き取りメモが隠蔽された問題で、神戸市は11日、いじめと自殺との関連などを調べる再調査委員会を16日に発足させると発表した。委員には、加古川市のいじめ自殺問題で第三者委員会委員長を務めた吉田圭吾・神戸大大学院教授(臨床心理士)ら5人を選定。初回会合では遺族も意見陳述し、年内の取りまとめを目指す。

再調査は、いじめ防止対策推進法に基づく。市こども家庭局が委員会を設け、吉田教授ら有識者2人、弁護士2人、精神科医1人の計5人で調べる。

神戸の自殺を巡っては、市教育委員会が遺族に非公表で第三者委を開催。第三者委は昨年8月、女子生徒へのいじめを認める報告書をまとめた。しかし遺族は自殺との関連の調査が不十分として今年4月、久元喜造市長に再調査を申し入れた。直後にメモの隠蔽が発覚し、久元市長は再調査を決定。市が遺族の意向を踏まえ人選を進めてきた。

久元市長は、11日の定例会見で「市教委の第三者委は必ずしも遺族の信頼が得られる形ではなかった」と指摘。「いじめへの対応を調べる中で、市教委や学校のあり方も問われるだろう」と述べた。(広畑千春)

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平成30年7月12日付東京新聞神奈川版

鶴見の中学校 跳び箱事故 市教委報告書「指導の手引」とズレ

鶴見中跳び箱事故

び箱事故で、首の後ろに大きな手術のあとが残る男子生徒=県内の病院で

横浜市鶴見区の市立中学校で昨年5月、保健体育の跳び箱の練習中に首を脱臼骨折し、胸から下にまひが残る中学3年の男子生徒(15)が本紙の取材に応じ、「二度と同じようなけががないよう、授業の改善を」と訴えた。市教育委員会が先月末にまとめた事故の報告書では原因があいまいにされており、男子生徒は「しっかり調べてほしい」と求めている。 (梅野光春)

事故当時、体育館ではクラス三十八人が習熟別に四グループに分かれて跳び箱を実施。男子生徒は五段(高さ約九十センチ)の六人グループの一人で、跳び箱の上で前転する「台上前転」の後、次の順番で開脚跳びをした際に事故に遭った。

報告書によると、手をついた時に腰が高くなって体勢を崩し、跳び箱の向こう側に敷かれたマットに首から落ちたという。男子生徒は「右手が滑り、やばいと思った。マットから起きようとしたが、体は全然動かなかった」と振り返る。

市内の病院で手術を受けた際、「この部分を骨折して歩けるようになった人はほぼいない、と説明を受けた」と母親(39)が明かす。手術後しばらくは首も回せず、たんを吸い出すチューブをのどに入れた時期もあった。現在は平たん地なら車いすで自走できるが、胸から下にまひが残り、県内の病院でリハビリ中だ。

事態は深刻なのに、原因究明は不十分なままだ。各校に配られる文部科学省「器械運動 指導の手引」には跳び箱の注意事項を明記している。その中に、台上前転のような「回転系」の後に、開脚跳びなど「切り返し系」をやると「回転感覚が残っていて事故につながる」とある。

男子生徒は「この順番はだめだと、先生は知っていたのか」と疑念を感じている。しかし市教委は「その点は担当教諭に確認していない」と手ぬるい。担当教諭は今年三月に依願退職して海外に赴き、再調査しにくいという。

報告書の論理にもおかしな点がある。事故となった開脚跳びの際「本人がはっきりと切り返し系を意識していた」ため、「技の順番の問題とは言えない」と順番の影響を否定した。

ところが「指導の手引」を所管するスポーツ庁政策課学校体育室は「本人がやろうと思っていても、体の感覚で回転系の動きが残っていると、跳び箱に手をついた時に回ろうとして腰が高くなることがあり、事故につながる、と注意を促している」と解説する。

本人の意識と無関係だからこそ危ない-というポイントを、市教委の報告書は見落とした形だ。その上、事故原因を明示していない。

さらに、報告書を受けた再発防止策も、ちぐはぐさが表れている。跳ぶ順番は今回の事故と無関係としたはずなのに、市教委は対策の一番に「切り返し系の技を回転系より先に取り上げること」を挙げた。「指導の手引が学校現場で読まれていない可能性があるため、強調した」と担当者は説明するが、筋が通らない。

こうした矛盾を感じながら、男子生徒は「跳び箱は不得意だった。保健体育では、苦手な種目は避けられるよう選択肢を示してほしい」と願う。

ロボット製作などにあこがれ、工業高に進学する夢は、手先が動かず細かい作業ができないため、あきらめた。それでも「リハビリの効果で、動く部分も少しずつ出てきた」と前向きだ。

この秋には、中学校に戻りたいという。

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平成30年7月11日 朝日新聞

新潟県立高の男子生徒が自殺 いじめ被害を示すメモ残す

新潟県教育委員会は10日、県内の県立高校3年の男子生徒が自殺したと発表した。県教委によると、男子生徒は6月27日に行方がわからなくなり警察などが行方を捜したところ、28日に遺体で見つかった。いじめを受けたという趣旨のメモを残しており、同校の校長がすでにその旨を生徒らに説明したという。

花角英世知事は「現在、学校が、背景にいじめがあったことを前提に基本調査を継続中」などとするコメントを発表した。県教委は基本調査がまとまり次第、遺族に説明し、第三者委員会を立ち上げて詳細な調査を始めるという。12日にも記者会見を開き、事案の概要や学校の対応などについて説明する方針。花角知事はコメントで「今後調査がまとまり、ご遺族に説明がなされると思う」とし、県教委に遺族の気持ちに寄り添った対応を要請したと説明している。

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平成30年7月11日 河北新報

<仙台市いじめ防止条例>教職員の暴言、威圧的指導禁止 骨子案に盛り込む

仙台市は10日の市議会いじめ問題等対策調査特別委員会で、制定を目指す独自の「いじめの防止等に関する条例」の骨子案を明らかにした。子どもに対する大人の暴言がいじめを誘発する恐れがあるとして、体罰に加え、教職員による暴言や威圧的指導といった不適切な指導の禁止などを明記した。来年の市議会2月定例会での提出を目指す。  昨年4月までの2年7カ月間に市立中生のいじめ自殺が3件相次いで発生。市民全体で認識を共有して再発防止に取り組むため、市は条例を制定し、いじめ防止対策推進法で定めた基本事項を補完する。罰則規定は設けず、学校や教委のほか、家庭や地域に期待される役割や行動を記した。  学校や教職員に対しては、学校教育法に禁止規定がない暴言や威圧的指導など不適切な指導を禁じることを明記。いじめた子どもにも寄り添って背景を探ることや、発達に特性がある児童生徒らへの対応を組織的に行うことも盛り込んだ。  昨年夏の市長選で条例制定を公約に掲げた郡和子市長は特別委で「いま一歩踏み込み、条例が必要だ。教職員への意識の浸透、保護者や地域との連携などについて、独自の取り組み

を盛り込み、明確化することで、いじめ防止対策を効果的に進めたい」と説明した。  市は11日から来月末まで骨子案のパブリックコメント(意見公募)を実施する。児童生徒を含めPTAや町内会関係者の意見も聴く予定。

仙台いじめ防止骨子

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平成30年7月7日 朝日新聞

(私の視点)「指導死」の定義 虐待と使い分け明確化を 喜多明人

最近、子どもの「指導死」という言葉が注目されている。昨春起きた、福井県池田町の中学2年生男子生徒の「自死」事件も、過度の叱責による「指導死」問題として、マスコミで大きく取り上げられてきた。

この言葉は、過剰叱責、暴言や体罰などで自死に追い込まれた生徒の保護者、被害者家族の間で使われ始めた。「生徒指導をきっかけ、あるいは原因とした子どもの自殺」という定義のもと、教師個人の生徒指導上の過失責任を追及してきた言葉である。

「指導」という名における教師との抗しがたい権力関係の中で、自死へと追い詰められる生徒の悲劇をなんとか社会問題化したいとの被害者の切実な思いを受け、法曹界やマスコミ、学会や市民団体などが使ってきた。

被害者家族が使うのは当然としても、十分な吟味もせずに今後も使い続けてよいのか、疑問が残る。

まず、対象範囲が広すぎる。そのため、問題行為を逆に見えにくくしている。問われるべきは、教師が「あらゆる形態の身体的または精神的な暴力、侵害または虐待」(子どもの権利条約19条)に相当する行為をした場合だ。

体罰やセクハラはもちろん、子どもが傷つく言葉の暴力などはすべて、虐待である。大勢の前で見せしめのように叱ることや、反論する権利を奪うこともあってはならない。社会問題として強く打ち出すためにも、言葉の使い方を分けたほうがいい。福井のケースも「学校内虐待死」と言うべきではないか。

もう一つ考えるべきことは、指導全体が教師の個人責任追及の対象とみなされてしまえば、萎縮をまねく恐れがあることだ。

個人の過失責任ばかりが問われると、教師は子どもを叱れなくなる。ただでさえ学生が教師をめざさなくなるなか、優秀な人材の確保はますます困難になりかねない。

あくまでも「子どもの最善の利益」(子どもの権利条約3条)を考えなければならない。

今日、被害者救済が進展してきたことは喜ばしいことだ。しかし、子どもの主体性を尊重し、子ども自身がどこに問題があるかに気づき、自省し、成長していく過程を支える指導も戒めるかのような言葉の使い方は、するべきではない。

いじめという問題が起きれば、まず、子どもたち自身で抑制のしくみを考えていく。こうしたケースは、子どもの成長を支える指導のひとつだろう。問題行動への対応方法を確立しているNPOもあるので、そのような団体に学んでもいい。子どもの尊厳を大切にした指導を共有し、いい教師を育てていくことこそ、遺族、被害者の思い、訴えを受けとめ直していくことだと考える。

(きたあきと 早稲田大学教授)

◆投稿はsiten@asahi.comか、〒104・8011(住所不要)朝日新聞オピニオン面「私の視点」係へ。電子メディアにも掲載します。

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平成30年7月5日 朝日新聞岩手版

父親「胸中で忘れないで」 矢巾中2自殺から3年

岩手県矢巾町で中学2年の村松亮さん(当時13)がいじめを苦に自ら命を絶ってから5日で3年。我が子を失った父親は、家族と一緒に少しずつ前を向こうとしている。対策の不備を指摘された学校現場では、悲劇を繰り返さないよう、対策を進めている。

村松さんが亡くなったJR矢幅駅。矢巾町は毎年命日になると献花台を設けてきたが、今年は遺族の意向で設置を見送ることにした。「本当に思ってくれる人が、胸の中で忘れないでくれればいい」。村松さんの父親はそう話す。

2015年7月5日夜、村松さんはこの駅で電車に飛び込み死亡した。村松さんが担任とやりとりしていた生活記録ノートには、悪口や暴力などのいじめを訴える記述が複数あった。

「もう生きるのにつかれてきたような気がします。氏(死)んでいいですか?」。自殺をほのめかす記述も残していた。

学校は村松さんが1年生の時から継続的にいじめを受けていたと認定。父親は同級生4人を県警に告訴した。

盛岡地検は当時14歳の少年について暴行の非行内容で送検したが、盛岡家裁は16年12月、「証拠が足りず非行事実は認定できない」として不処分とする決定を出した。それから約1年半。父親は「報道されたことで、地域の人は誰がやったのかわかっている。社会が罰してくれた」と話す。

損害賠償請求権は3年で時効を迎える。父親は家族とも相談し、民事提訴はしないことにした。「(提訴して)子どもの足を引っ張りたくない。被害者が加害者より不幸になるのはおかしいと思う」。提訴すれば長期戦になる可能性が高く、それだけ負担も増す。「家族はいま、笑って生活しようとしている」。父親はかみ締めるように話した。(御船紗子)

 

学校、予防へ集会・相談員

村松さんが通っていた矢巾町の中学校。2日、「生命・安全・安心を考える集会」があった。いじめ自殺問題をきっかけに毎年7月、外部講師を招いている。今年は東日本大震災を経験した中学校長が全力で生きる大切さを訴えた。3年生の女子生徒は「いじめを止める勇気を持ちたい」と話した。

いじめ問題を調査していた第三者委員会は16年12月、報告書で「学校内の情報共有が不十分」と指摘。これに先だち町教委は「いじめ問題相談員」を新設した。相談員は各校のいじめ対策会議に出席して問題を共有。各校の相談にも電話で応じ、気になる生徒がいれば学校を訪問している。

町教委によると、17年度のいじめ認知件数は506件で15年度から5倍以上に増えた。これまで問題視されていなかったいじめが顕在化したことが主な原因で、現場の教員からの連絡も多くなったという。和田修教育長は「子どもたちの命を守るため、大人たちが常に連携していくことが大切」との談話を出した。

いじめ問題を巡っては、13年にいじめ防止対策推進法が成立。いじめの定義を「児童・生徒が心身の苦痛を感じているもの」と明確にした。これにより県教委の認知件数も増えている。県教委は今年度から、いじめへの理解を深めるために研修講座を実施。いじめを予防する学級集団づくりを模索している。(井上啓太、大西英正)

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平成30年7月4日 6:00神戸新聞NEXT

教諭の体罰で3人不登校 神戸の中学柔道部員ら平手打ち

神戸体罰不登校

神戸市教委が入る神戸市役所3号館=神戸市中央区加納町6

神戸市西区の市立中学校に勤める30代男性教諭が、昨年4月以降、顧問を務める柔道部や担任をするクラスの複数の男子生徒に対し、頭をたたくなどの体罰を十数回加えていたことが3日、市教育委員会などへの取材で分かった。保護者によると、同部に所属していた3人が不登校になっているという。市教委は、体罰を含む不適切な指導があったことを認めており、教諭の処分を検討している。

市教委によると、教諭は昨年4~9月、部活動で指導中、部員数人に対し、平手で顔や頭をたたく体罰を計7回加えた。また、担任をするクラスでも同5月~12月、生徒数人の頭を7回程度たたき、今年4月にも生徒の尻を蹴ったことがあったという。

被害を受けた生徒の保護者によると、部活動で技をかけるのに失敗したり、練習に遅れたりした生徒の頭やほおをたたいたという。

柔道部に所属し、不登校になった生徒の保護者が市教委に連絡して発覚。この保護者は「先生を信頼して子どもを預けていたのに、こんな事態になるなんて」と声を落とした。生徒は精神的に追い詰められている様子で「先生が怖くて学校に行けない」と話しているという。他にも、教諭から厳しい口調で問い詰められ、萎縮して何も答えられないと「記憶障害ではないか」ととがめられ、学校に通えなくなった生徒もいるという。

6月末に同校で開かれた保護者会では、校長は「教諭の行動に気づかず、指導が不十分だった」と陳謝。教諭は「体罰をし、自分の考えを一方的に押しつけてしまった」と保護者に謝罪したという。

不登校生徒の中には「もう一度学校に行きたい」と話す生徒もいるといい、学校は教諭を担任や顧問から外し、被害生徒の心のケアなどについて保護者と話し合っているという。市教委は「部活動で過度な指導をしないよう徹底してきたが、このような事態が起こり、申し訳ない。被害生徒のケアを第一に考える」としている。(井上 駿)

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平成30年7月3日 神戸新聞

多可町・小5女児自殺 いじめSOS、学校見逃す

多可町小5女児自殺1

第三者委員会の会見には多くの報道関係者が詰め掛けた=2日午後、兵庫県多可町中区中村町(撮影・笠原次郎)

多可町小5女児自殺2

昨年5月に自殺した兵庫県多可町の小学5年の女子児童=当時(10)=は、いじめに苦しんでいることに、いくつかのサインを出していた。第三者委員会は、女児が「いびつな社会関係」の女子グループで仲間外れや蹴られるなど継続的な心身の嫌がらせを受けていたにもかかわらず、学校はSOSを見逃し、積極的な関与ができなかったと問題視。自殺の予見は難しかったとしながら、組織的な対応の重要性を強調した。

自殺した直後、学校側は「女児からいじめの訴えはなかった」との見方を示していたが、ほかの児童から指摘があったほか、女児が4年時のアンケートで3回、いじめの有無を問われ、「はい」に○を付けてから消し、「いいえ」に○を付けた形跡があった。ストレス状態を測る年2回の「ストレスチェック」でも高いストレスへの移行がみられていた。

第三者委は、学校がアンケート結果などを生かせず、担任がほかの児童のケアに気を取られるなど表面的な対応にとどまったため、女児の苦痛をキャッチできなかったと指摘。見逃しの要因として、いじめの組織的対応が未整備▽前思春期の発達段階にある女子グループの理解不足▽学校の統廃合による教職員の多忙-の3点を挙げた。

亡くなる直前、自殺を引き留める内容のサイトを検索したり、時期は不明ながら「死にたい、でもこわいの苦しい」と書き残したりしていた。臨床心理士は年齢や読んでいた本などから「死を現実的なものとして捉えなかった可能性もある」などと言及。精神科医は「心理的に追い詰められたのだろうが、うつ病の傾向もなく、自殺行動の直接的な原因は明確でない」とした。

調査報告を受け、岸原章教育長は「どういう思いで疲弊していったかが分かった。第三者委の提言に応えるよう努力する」と発言。国の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」に沿って対応してきたものの、遺族が再調査を求めたことには「一定の理解をいただいたと思っていた。ご家族の連絡を待って対応を考えたい」とした。(長嶺麻子)

◇学校の責任大きい

【全国学校事故・事件を語る会(事務局・たつの市)の内海千春代表世話人の話】いじめを個別のエピソードではなく、児童間の関係性に着目した点は評価できる。一方で、遺族が再調査を要望しており、どれだけ『事実を知りたい』との願いを踏まえた調査ができていたのか疑問が残る。教員間の引き継ぎや校内の体制も大きな課題。小学4年時にいじめのサインがありながら組織的な対応ができず、5年時も見逃した学校側の責任は大きい。いじめに向き合う姿勢が足りていないと言わざるを得ない。

【いじめの重大事態の調査に関するガイドライン】いじめによる重大事態への対応で、被害者や保護者らの意向を全く反映しない調査の進行や、調査結果が提供されないケースがあったことから、2017年3月に文部科学省が策定。自殺事案では遺族に寄り添って調査を進めるなど、学校や設置者の基本姿勢を示しているほか、第三者による調査の進め方や、調査結果の説明、被害児童生徒の支援、加害児童生徒への指導など、対応法を指南する。

兵庫県多可町で小学5年の女子児童=当時(10)=が自殺した問題で、同町教育委員会が設置した第三者委員会は2日、いじめを自殺の要因と認めた。報告書で「表面的な対応にとどまっていた」と指摘された町教委は同日の会見で、第三者委の提言を受け、小中学校にソーシャルワーカーを導入するなど再発防止に取り組む姿勢を示した。

会見の冒頭、頭を下げて謝罪した岸原章教育長ら町教委の4人。再発防止策について岸原教育長は「学校に専門的な人に入ってもらい、チームでやることが必要」と述べ、小中学校にスクールソーシャルワーカーを配置する方針を示した。

学校は、女児の異変について情報を組織で共有せず、学年をまたいだ引き継ぎもできていなかった。今後は引き継ぎの様式や内容などの基準を定める。

報告書は町教委が遺族の了解を得た上で町ホームページで概要版を公表する。

女児のSOSを学校が把握できなかったことについて、報告書は小学校の統廃合に伴う教職員の多忙も指摘した。岸原教育長は「統合前の交流学習や教員の負担軽減もしてきたが、もっと配慮すべきことがあったと思う」とした。

1日夜には全校児童の保護者会が開かれ、104人が集まった。参加者からは「学校で子どもが加害したことは知らせてほしい」との意見があったという。

第三者委の報告を受け、女児が通っていた小学校の校長は報道陣の取材に「ご遺族に本当に申し訳ない。もっと早くSOSをキャッチし、適切な対応をすれば命を守れたのでは」とうなだれた。

吉田一四町長は「二度と痛ましい事案が起こることがないよう教育委員会と連携し、再発防止に全力で取り組む」とのコメントを発表した。(森 信弘)

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