平成30年6月29日 朝日新聞東京本社版

「サッカー部で暴行常態化」 国士舘高校側に賠償命令

国士舘高校(東京都世田谷区)のサッカー部で集団暴行を受けて退学を余儀なくされたとして、元部員の男性(21)と両親が学校法人の国士舘に約900万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁立川支部は28日、同法人に33万円の支払いを命じる判決を言い渡した。見米正裁判長は「部内で下級生に対する暴行が常態化していた」と認定し、学校側が注意義務を怠ったと判断した。

判決によると、男性は入学直後の2013年5月、10人ほどの上級生に取り囲まれ、このうち2人から平手打ちやひざ蹴りなどの暴行を受けた。2カ月後に急性難聴と診断されて不登校になり、同年12月に退学した。判決は、教職員が暴力行為を容易に認識できたのに実態を把握していなかったと指摘。「注意義務を尽くしていなかった」と学校側の賠償責任を認めた。元部員は暴行を加えた2人の上級生も訴えたが、原告側代理人によると今年3月に和解が成立したという。

判決後、会見した男性の父親(62)は「学校の対処の悪さが認められてほっとしている。暴行が二度と起こらないよう真剣に取り組んでもらい、深く反省して欲しい」と述べた。

学校法人国士舘は「現段階で判決文を見ておらず、コメントできない」と話した。(金山隆之介)

 

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平成30年6月29日朝日新聞福岡版

第三者委、いじめ認定 高2自殺との因果関係は否定

北九州市の私立高校2年の女子生徒(当時16)が昨年4月、登校中に首つり自殺をした問題で、いじめの有無などを調べるため同校側から委嘱された第三者委員会は28日、同市で調査報告書の内容を公表した。女子生徒の友人の行為の一部をいじめと認定したが、自殺との因果関係は否定した。

同委は、女子生徒と友人とのLINE(ライン)上のやりとりを調べるなどして、自殺約1カ月前の終業式の日、友人4人が女子生徒を外して記念撮影したことなどをいじめと認定。その上で「いじめが自殺を生じさせた高度な蓋然性までは認められない」とした。

高校側はこの日、「報告書を真摯に受け止め、再発防止に努めたい」とコメント。昨年5月には、緊急保護者会などで「いじめはなかった」との認識を示していた。

女子生徒の両親も会見し、父親(41)は「疑問が解けたわけではない。事実を追及したい」と話した。代理人弁護士も「いじめが認定されたことは大きな一歩」としつつ、重要な人物への聞き取りが不十分などとして、福岡県に再調査を求める方針という。(村上英樹、新屋絵理)

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平成30年6月29日 朝日新聞山口版

2年前の学生自殺を新任校長が再調査「いじめの可能性」

山口県周防大島町の大島商船高専で2016年5月、1年生の男子学生(当時15)が校舎から飛び降りて自殺した問題で、同校の福田勝哉校長は28日会見し、男子学生がいじめられていた可能性があるとの認識を示した。

同校は男子学生の自殺後、同級生らへの聞き取りやアンケートから、17年6月に「いじめはなく、自殺の原因は不明」と結論付けた。遺族は第三者委員会による調査を要求。弁護士や大学院教授による第三者委が6月に調査を始めた。

これに合わせ、4月に赴任した福田校長らが学校の調査結果を調べ直したところ、男子学生が校内で複数回「殺人鬼」と呼ばれていたとの記述に行き当たり、「いじめに該当する可能性がある」と判断を改めた。福田校長はいじめと自殺との因果関係について、第三者委の調査に判断を委ねるとの考えも示した。(藤牧幸一)

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平成30年6月25日付朝日新聞鹿児島版

高1自殺の再調査、県第三者委が初会合

鹿児島市の県立高校1年の田中拓海さん(当時15)が2014年8月に自殺した問題で、いじめの有無などを再調査する県の第三者委員会の初会合が24日、県庁であった。

遺族らが意見陳述し、委員は今後の具体的な調査内容について意見を交わしたという。

会は非公開。終了後、委員長に選ばれた福岡県弁護士会の甲木真哉弁護士が記者会見した。

委員会はいじめ調査の知見や調査経験がある弁護士や識者ら計5人で構成。会合では約3時間かけて、各委員が前回の調査報告書に対する感想や、今後の調査の方法や対象についてそれぞれ意見を述べたという。甲木委員長は会見で「ご遺族の気持ちに寄り添いながら、いじめの有無と自死との関連について公正中立に判断したい」と述べた。

会合では拓海さんの母親と兄弟、代理人が意見陳述。陳述後、母親は再調査について「私たちに寄り添い、きちんと話を聞いて欲しい。その上で整理して、前の調査に足りない部分を補って欲しい」と語った。

拓海さんの自殺について、県教委は遺族の申し立てを受けていじめ調査委員会を開き、昨年3月に「いじめがあったとは断定できない」と判断した。これに対して遺族は「調査は不十分」と意見書を提出、今年1月に三反園訓知事が知事部局で再調査に取り組むことを決めた。

委員はほかに、熊本県弁護士会の板井俊介弁護士、福岡教育大教育学部准教授の河内祥子氏、くまもと親と子の教職員の教育相談室代表の河崎酵二氏、鹿児島純心女子大国際人間学部准教授の福田みのり氏。

次回の会合は7月1日の予定。(加藤美帆)

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平成30年6月25日 神戸新聞

神戸・中3自殺 隠蔽メモを「破棄」とした経緯など確認

垂水メモ隠蔽

神戸市教育委員会のメモ隠蔽問題を受けて開催された第三者委員会=24日午前、神戸市中央区

神戸市垂水区の市立中学3年の女子生徒が自殺し、同級生らの聞き取りメモが隠蔽された問題で、市教育委員会が設置し、いじめの有無などを調べる第三者委員会の会合が24日、同市中央区であった。隠蔽されていたメモを「破棄」と扱った経緯などを確認し、内容が調査報告書に反映されているか最終的な判断を話し合った。

市教委が委託した弁護士による調査でメモの隠蔽が明らかになってから初の会合で、委員7人中5人が出席。この問題を調査した弁護士2人も出席した。

第三者委の報告書では、市教委が前校長に隠蔽を指示したメモを「破棄された」と扱っていた。この日の会合では、第三者委としてのメモに関する経緯の確認▽メモの内容をどこまで把握できていたか▽報告書に修正を加えるか-の3点を中心に話し合ったという。最終的な判断はまとまったが、「欠席した委員や遺族への報告ができていない」として公表は見送られた。

第三者委は月内にも市教委を通じて遺族に報告し、その後公表する方針。(井上 駿)

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平成30年6月18日付朝日新聞社説

自殺調査メモ 隠蔽の罪深さ自覚せよ

わが子が自ら命を絶った無念と疑問、真相を知りたいという遺族の思いに向き合うことが出発点なのに、調査メモを隠蔽するとは言語道断だ。自殺した生徒の尊厳も傷つける背信行為である。

再調査を徹底し、その結果を遺族に包み隠さず説明する。一連の取り組みを通じて、学校や行政への信頼を取り戻していかねばならない。

2016年秋、神戸市の市立中学校に通う3年の女子生徒が自殺した問題で、神戸市が再調査に乗り出す。自殺直後に中学校の教員らが生徒6人と面談し、いじめをうかがわせる聞き取りのメモを作っていたのに、市教育委員会の担当者が主導してメモを隠していた。

遺族がメモの開示を求めていたが、市教委の担当者は「情報開示は終わっており、今さら出せない」と隠蔽を指示し、当時の校長も従った。自殺を受けて設置された外部有識者による調査委員会は昨年夏の報告書で「メモは破棄された」としたが、後任の現校長がメモの存在を把握し、市教委に報告。今年春に隠蔽が発覚した。

自殺直後の聞き取りメモは、中学校の複数の教員らが共有していたという。現校長からの指摘を受けた市教委の当時の教育長も、調査を指示しながら報告を求めず、事態を放置した。

隠蔽について調べた弁護士は、市教委の担当者と当時の校長によってメモは存在しないことにされたと結論づけたが、学校ぐるみ、市教委ぐるみだったと言われても仕方がないのではないか。

神戸市は、これまでの調査は不十分と判断し、市長部局で再調査を進める。昨年夏の報告書は、いじめがあったことを認定しつつ自殺の原因は特定しなかったが、改めていじめと自殺の因果関係を調べる。報告書の作成過程でメモの隠蔽が行われ、調査への信頼が損なわれただけに、当然の対応だろう。

まず問われるのは、市が新たに置く調査委員会のあり方だ。委員の人選を通じて「第三者」の目を徹底し、多角的、専門的に情報を精査する。市議会も当時の教育長らの参考人招致を検討しており、連携しながら真相を解明してほしい。

文科省のいじめ調査に関するガイドラインは、事実関係を明らかにしたいという保護者の切実な思いを理解し、対応することを基本姿勢に掲げている。

丁寧に事実を積み上げ、事実に真摯に向き合う。それが遺族の求めることであり、失った信頼を回復する道である。

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平成30年6月14日付朝日新聞兵庫版

いじめ調査メモの隠ぺい、識者はこうみる

  神戸市垂水区で市立中学3年の女子生徒が自殺し、いじめをうかがわせる他の生徒からの聞き取りメモが神戸市教委首席指導主事の指示で隠蔽された問題が、波紋を広げている。

この件から見えてくるものは何か。子どもを自死で亡くした母親、情報公開に詳しい弁護士、教育行政の研究者の3人に話を聞いた。(聞き手・西見誠一)

 遺族の立場から 小森 美登里さん

小森

神戸市教委の首席指導主事らによる隠蔽行為は二重、三重の意味で罪深い。まず再発防止のためには真実に向き合い、何がいけなかったのかの検証が不可欠なのに、ふたをしてしまったこと。第二に、真実を知りたいと願う遺族の思いを踏みにじったこと。第三に、いじめの加害者の更生の機会を奪ったことだ。

私は1998年に高校1年生だった一人娘を自殺で失った。娘は吹奏楽部でいじめを受けていたが、学校が部内で聞き取りをした調査結果を、「個人情報だから」との理由で見せてもらえなかった。

昨年、「保護者の切実な思いを理解し、対応に当たること」をうたった文部科学省のいじめ調査のガイドラインができたのに、いつまでこんなことを繰り返すのか。行政がガイドラインを平気で無視するのなら、いじめ防止対策推進法に罰則規定を盛り込むことも検討すべきだと思う。

 オンブズマンの立場から 新海 聡さん

新海

行政が集めた情報は誰のものか。政策遂行には正確な情報が欠かせないから、行政自身のものではある。同時に市民のものだ。たとえいま公開できなくても、将来的に市民が行政の

判断をチェックできるようにしておく必要があるからだ。

だが国、地方を問わず、事実の軽視が進んでいる。

今回の問題は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の日報を、「廃棄した」としながら実際は保存していた陸上自衛隊の問題と似ている。公開しない理由を説明できないから、

ないものにしてしまおうという構図だ。だが、事実をもとにしなければ議論もできないし、検証もできない。これでは行政判断の正当性が担保できない。

証拠保全を決定した裁判所を欺いたことにも驚かされる。ほかの情報公開でも、神戸市教委は同じことをしているのではないかとの疑念すら浮かぶ。

 教育学者の立場から 山下 晃一さん

山下

いじめ防止対策推進法は、被害者や保護者に対して必要な情報を適切に提供するよう定めている。首席指導主事なら専門性をもって実務にあたらなければならないのに、法の趣旨

への理解が不足している。

そもそも聞き取りメモが「存在しない」と言う選択肢はありえない。見せられない正当な理由があるのなら、説明を尽くした上で非開示にする方法もあったはずだ。その場合、当然、

組織内で多角的に検討しなければならない。そういう意味でも、首席指導主事の独断を許していた神戸市教委の責任は重い。「縦割り」や「他人任せ」の文化があったのではないか。

教育委員会制度は、市民の信託の上に成り立っている。様々な専門的判断も、市民に成り代わって行っているという自覚が必要だ。神戸市教委は、この原点に立ち返って組織文化を

変えてもらいたい。

こもり・みどり NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事。各地でいじめ防止の講演を続ける。

しんかい・さとし 弁護士。全国市民オンブズマン連絡会議事務局長。

やました・こういち 神戸大学准教授。専門は教育制度論。

〈いじめ調査メモ隠蔽問題〉 2016年、神戸市立中学校の3年の女子生徒が自殺した。いじめをうかがわせる他生徒からの聞き取りメモがあったが、市教委の首席指導主事が当時の

校長に指示し、遺族に対しメモを隠蔽。遺族側の申し立てによる裁判所の証拠保全の手続きでもメモを提出しなかった。市教委は関係者の処分を検討しており、久元喜造市長は新たな

調査委員会を立ち上げる方針を明らかにしている。

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平成30年6月14日付神戸新聞NEXT

「遺族、市民への背信行為」神戸中3自殺メモ隠蔽で市長

神戸市垂水区で市立中学3年の女子生徒が自殺し、同級生らへの聞き取りメモが隠蔽されていた問題で、久元喜造市長は14日の定例会見で、長田淳教育長に対し、背景の徹底究明や

組織風土の改革などを求める要請書を出したことを明らかにした。こうした措置は異例という。

要請書は13日付。再発防止に向けた組織風土の改革や人事を含む組織体制の見直し▽適切な情報共有・公開、意識改革の徹底▽その取り組み状況を、市長もメンバーである総合教育

会議に報告すること-などを求めている。

久元市長は会見で「(隠蔽は)言語道断で、遺族や市民への背信行為」と非難。市こども家庭局の下で新たに設置する再調査委員会は弁護士2人と学識経験者2人、精神科医1人で構成

する方針を明らかにし、「ご遺族と相談しながら人選を進めたい」とした。

市教育委員会によると、13日には臨時の教育委員会も開かれ、委員から抜本的な組織改革を求める意見が出たという。(広畑千春)

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平成30年6月11日付朝日新聞山口版

第三者委が初会合 大島商船の「いじめ自殺」問題

 大島商船調査委

会合終了後、報道陣の取材に応じる平谷優子委員長(中央)ら第三者委のメンバー=10日午後6時0分、大島商船高専

大島商船高専(周防大島町)で2016年、1年生の男子学生(当時15)が自殺した問題で、いじめの有無などを調べる第三者委員会の初会合が10日、同校であった。

委員長に就いた平谷優子弁護士は「ご遺族に考え方を説明しながら、調査を進めていきたい」と話した。第三者委は計3人で、ほかに委員を務めるのは、内田喜久弁護士、西山久子・福岡教育大大学院教授。

男子学生の自殺について、同校は同級生らに聞き取り調査などをした結果、「いじめはなく、自殺の原因は不明」と結論づけて、昨年3月に遺族に報告。しかし、遺族は学校側の調査が不十分だったとして、第三者委の設置を求めていた。

初会合では、これまでの学校側の調査結果を確認し、今後の調査方法を検討した。今後はいじめの有無や自殺の背景を調べるほか、学校の対応についても評価や提言をするという。

男子学生の自殺から2年。平谷委員長は会合後、「どこまで事実に迫れるか、悩みもある。時間をかけてでも、きちんと調査すべきものはしないといけない」と話した。同校には、別の男子学生に対するいじめを調査する第三者委も設置されている。どう連携するのかについて、「時期や生活環境が似ていることから、関わりを持つことはある」

と語った。(藤牧幸一)

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平成30年6月11日付神戸新聞

市教委、首席指導主事任せ 対応の異様さ次々に 神戸・中3自殺メモ隠蔽

垂水中3女子2

垂水中3女子3

 

メモの隠蔽を認めた神戸市教育委員会の記者会見で、質問に答える長田淳教育長(右から2人目)ら=3日、神戸市役所

神戸市垂水区の市立中学3年の女子生徒の自殺を巡り、同級生らの聞き取りメモの存在が隠蔽された問題では、市教育委員会側の対応の異様さが次々に浮かび上がっている。

遺族が聞き取りの情報提供を求めて雪村新之助前教育長宛てに出した質問書に、なぜか前校長名で回答。また、隠蔽を指示した首席指導主事はこの件について、上司らに相談や報告を一切していなかった。市教委が「隠蔽」を認めて10日で1週間となるが、背景の全容はまだ見えていない。(広畑千春、井上 駿、石川 翠)

メモについて調査した弁護士の報告書によると、遺族は2017年1月、学校が市教委に提出した自殺に関する調査資料の開示を請求。同級生らの聞き取り内容が含まれていなかったため同2月、教育長宛てで市教委に質問書を送った。一方、首席指導主事は前校長に聞き取りメモを出さないよう指示。3月6日、前校長名で「記録として残していない」と回答した。

これについて、首席指導主事の当時の所属長は神戸新聞社の取材に「いつの段階かは不明だが、質問書の文面を見た覚えはある」としつつ「教育長宛てとは気付かず、何らかの対応を指示した記憶もない」とする。

通常、遺族への対応については報告や決裁が行われていたが、この件では一切なかったといい、所属長は「異様な(独断の)対応」とした。首席指導主事は重大事態での対応を統括する課長級ポストで校長経験もあり、「信用して任せきっていた。内容も学校が答える話だった」とし、3月中旬に遺族に回答したことを知った後も、理由などを問うことはなかったという。

17年8月8日、いじめなどを調べた第三者委員会の報告書がまとまり、メモは「破棄された」とされた。

報告書を見た現校長は教員にメモの存在を教えられ、前校長に経緯を確認。同23日、首席指導主事が所属する課の課長に「メモは市教委の指示で廃棄されたことになっているが、一部が学校に保管されている」と連絡した。同月下旬、別の部長にも同様の話をし、報告を受けた雪村前教育長が調査を指示した。

課長は連絡の内容を文書にし、上司の部長に報告したが、一連の経緯について市会の委員会で「意味が分からなかった」と答えた。報告を受けた部長も神戸新聞社の取材に「何について言っているのか分からず、まず時系列の整理をさせた」とし、別の部長は首席指導主事に経緯を聞いた際に「メモはあるはずない」と返答されたという。

市教委は前校長にも聴取をしたが、その内容が雪村前教育長らに報告されることはなく、放置された。

こうした対応に対し、文部科学省は組織体制の改善を指示。市教委は今後、前教育長を含めた処分や、組織の抜本的改革などを検討する。遺族は「市教委は『職務怠慢』としたが、黙認ではないのか。最初からいじめでなく個人間トラブルにしようとしていたのでは」と疑念を呈している。

【神戸中3自殺問題】 2016年10月、神戸市垂水区内で市立中学3年の女子生徒が自殺し、市教育委員会は非公表でいじめの有無などを調べる第三者委員会を設置。17年8月、生徒への容姿中傷発言などをいじめと認定する一方、自殺の直接原因とは認めない形で報告書をまとめた。遺族は再調査を求め、久元喜造市長が今年4月、市こども家庭局が新たな調査組織で再調査することを決めた。

【再調査委で隠蔽背景も検証を】 京都精華大・住友剛教授(教育学)の話 これほどの事案で首席指導主事が独断で対応するのは理解しがたい。それが本当なら、複雑な対応を1人に任せてしまった市教委の側にも問題がある。そもそもの背景には、初期対応の段階で、市教委が自殺といじめの関係をどう捉えたかがあり、再調査委員会ではメモ隠蔽問題を含む経緯の検証も必要になる。

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