平成30年4月26日付河北新報

初期対応確立でいじめ再発を防止 市議会議長が報告書を提出

仙台市議会いじめ問題等対策調査特別委員会は25日、再発防止策などを盛り込んだ中間報告書を決定し、斎藤範夫議長が郡和子市長と佐々木洋教育長に報告書を提出した。  初期対応体制の確立や、発達に特性のある児童生徒の支援充実などを求める内容。佐藤正昭委員長は「アンテナを高くし、危機感を持って対応してほしい」と、市の施策に反映させるよう求めた。  委員会でいじめ防止条例の制定に言及した郡市長は委員会後の取材に対し、「条例の対象などを整理している。理念にとどまらない条例を検討している」と制定に改めて意欲を示した。

<仙台・折立中自殺1年>「教師の体罰許されぬ」 小中高調査報告市議会で批判が続出

仙台市立学校で教員の体罰や不適切指導が多発していた問題で、市教委と市は25日、市議会いじめ問題等対策調査特別委員会で、体罰に関するアンケート結果を報告した。青葉区の折立中生徒が教諭から体罰を受け、いじめを訴えて自殺して26日で1年。委員からは「生徒の人権を守る立場の教員が体罰をすることは許されない」と、疑問や批判の声が相次いだ。  結果は19日に公表。体罰や不適切指導が昨年度287件あり、2017年夏の調査後も6件あった。郡和子市長が陳謝し、佐々木洋教育長は「調査後も体罰が繰り返されていた。深刻に受け止めなければならない」と述べた。  「郡市長は『スピード感を持って』と言うが(対策は)進んでいるのか。なかなか見えない」と小田島久美子委員(公明党市議団)は指摘。児童生徒の心のケアを巡り市教委が推測を交えて答えたことに「想定での議論はなかなか対策につながらない。一つ一つの学校現場に対する確認は絶対にやらなければならない」と迫った。  辻隆一委員(社民党市議団)は自殺した生徒が教員から体罰を受けていたことに関連付け、「いじめと体罰の因果関係をきちんと分析すべきだ」と主張した。  菊地崇良委員(自民党)は「調査は(市長部局の)総務局と市教委の共同で行っている。(調査の過程で)発覚した段階で、市長部局にできることはあったのではないか」とただした。

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平成30年4月24日付神戸新聞

神戸・中3女子自殺 教頭の日報も提出せず

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学校側が自殺した女子生徒の友人から聞き取った内容を記したメモの写し。市教委が個人情報を伏せて公開した

2016年10月に起きた神戸市垂水区の女子生徒=当時(14)=の自殺に関し、「破棄された」とされていた他の生徒への聞き取りメモが見つかった問題で、当時の教頭が残した日報が調査を行った第三者委員会に提供されていなかったことが23日、市教育委員会への取材で分かった。日報には教員が生徒から聞き取った生徒間の関係なども記されていた。市教委は近く立ち上げる検証委員会で、日報が提出されなかった経緯についても調べる。

市教委によると、学校からメモが提出された今月12日以降、同様の資料類の有無を確認し、19日、ファイルを記録したCDが校内で見つかった。当時の教頭が定期的に日々の業務について記録したもので、作成日時は不明。女子生徒と他の生徒との間で起きたトラブルの経緯などが記録されているという。

学校から市教委を通じて第三者委に提供された資料にはなかった。市教委は、検証委を数日中にも発足させ、メモが第三者委に提出されず「破棄された」とされた問題とともに、経緯を調べる。

また、報告書で「破棄された」とされた聞き取りメモが見つかったことを受け、久元喜造神戸市長が23日、「報告書の信頼を損ないかねず、あってはならない。

経緯について、独立した外部の弁護士により速やかに調査を行う」などとする談話を出した。遺族が求める再調査について「近いうちに市としての考えを伝える」という。(井上 駿)

神戸中3自殺 神戸市長が遺族と面会へ 再調査説明か

2016年10月に神戸市垂水区の市立中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺した問題で、同市の久元喜造市長は23日、遺族と面会する意向を明らかにした。遺族は、市教育委員会が設置した第三者委員会による調査報告書はずさんとして、市長に再調査を求めている。久元市長は再調査の可否について遺族に直接、考えを伝えるとみられる。

この問題を巡っては、第三者委が「破棄された」としていた他の生徒への聞き取りメモが、実際は存在していたことが22日に判明した。久元市長は23日、メモが見つかったことを受けて発表したコメントの中で、遺族と面会する意向を明らかにした。市によると、既に遺族側と日程を調整している。

久元市長は今月12日の定例会見で、再調査の可否の判断時期を「7月に入るまで」としていたが、遺族との面会時に直接説明する方向で検討しているという。

また遺族側は、22日に市教委が「メモを学校が保管していた」と発表したのを受け、これまでの対応を「隠蔽でしかない」と批判。「メモは破棄された」としてきた経緯について、市教委に質問状を出すという。(井上 駿)

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平成30年4月23日付神戸新聞

神戸・中3女子自殺 破棄メモ発見、遺族「隠蔽」と批判

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学校側が自殺した女子生徒の友人から聞き取った内容を記したメモの写し。市教委が個人情報を伏せて公開した

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2016年10月、神戸市垂水区の市立中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺した問題で、神戸市教育委員会は22日、「見つからない」としていた、自殺から数日後に生徒6人にヒアリングしたメモが学校内で見つかったと発表した。学校は昨年8月下旬にメモがあることを市教委に伝えており、遺族も問い合わせていたが、市教委は学校に確認していなかった。市教委は「職務怠慢が原因」と隠蔽(いんぺい)目的を否定したものの、遺族は「隠蔽でしかない」と批判している。

女子生徒は16年10月6日に自殺を図り、亡くなった。メモは、同月11日に同校の教員が生徒6人から聞き取った内容で、A4判2枚。いじめの内容や生徒間の関係が記されている。

その後設置された第三者委員会は調査報告書で、メモを学校が「破棄した」と結論付ける一方、内容については「一連の聞き取りで復元されている」と記述。

メモそのものは「保管すべきだった」と指摘した。

市教委は会見で「現段階では、第三者委の調査内容に影響はないと捉えている」とする。当時の校長が「紛失した」としていた経緯は「調査中で明らかにできない」と繰り返した。

遺族代理人の弁護士によると、メモの内容はおおむね調査報告書に含まれているが、生徒間の関係が詳しく記されているという。

調査報告書では、他の生徒による容姿中傷などの行為をいじめと認定したものの、自殺との因果関係は明示していない。昨年8月下旬、第三者委がまとめた報告書を見た現校長が、教員が保管していたメモの存在を市教委に連絡。市教委の担当者は「内容は第三者委の調査に反映されている」とし、確認を怠ったという。報告書を読んだ母親も同9月、メモの内容を尋ねる質問書を送付したが、市教委や第三者委から回答はなかったという。

今年3月、母親が第三者委の調査報告書に対し「調査内容が不十分」とする意見を出したのを受け、校長が今月12日にメモを市教委に提出。その後、聞き取り内容について、当時の教頭が残した「日報」も残っていたことが分かった。

市教委は今後、弁護士らによる検証委員会を立ち上げ、経緯を調査。5月中旬にも母親に報告する予定。

女子生徒の母親は神戸新聞社の取材に応じ「隠蔽だ」と厳しく批判。「真実を知りたいという遺族の気持ち踏みにじった」と憤った。(井上 駿)

「報告書信用できず」 遺族は再調査要求 神戸・中3自殺

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市教委の対応を批判し、再調査を訴える母親=神戸市内(撮影・中西大二)

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見つかったメモについて会見する神戸市教育委員会の職員ら=22日午後、神戸市役所(撮影・西竹唯太朗)

「生徒たちの貴重な証言を、なぜ軽く扱ってきたのか」。2016年10月に自殺した神戸市垂水区の市立中学3年の女子生徒=当時(14)=を巡り、学校側

が自殺の5日後に友人らから聞き取った内容を記したメモが見つかった。市教育委員会が「見つからない」とし、女子生徒の母親が何度問い合わせても明らかにされなかった一次資料だ。「調査のおかしさを分かってもらえるはず」。母親は不信感をあらわにし、再調査を求めた。

「動揺して、頭が真っ白になった」。市教委の会見直前、母親は幹部からの謝罪に耳を疑った。

市教委は母親からの問い合わせや、メモを保管していた学校側からの申し出に対応していなかった理由として「職務怠慢」を挙げた。母親は「散々『ない』と言われてきたものが、あった。隠蔽でしかない。全く信用できない」と憤った。

遺族代理人の弁護士によると、残されていたメモに記されていたのは、自殺した女子生徒を巡る人間関係や、いじめの内容。「娘の自殺直後に、生徒たちが勇気を持って学校に証言したもの。メモの情報を基に聞き取りをしてくれていたら、第三者委員会による調査報告書の内容は違う結果になっていたはず」と唇をかんだ。

調査報告書の不十分さを訴え続けてきた母親は、メモの発見を「あったんや、良かった」とも受け止める。「ほかの生徒の聞き取りメモもあるはず。事実を隠すことなく、新たな調査委員会で調べてほしい」と願った。

市教委の対応について、「全国学校事故・事件を語る会」(事務局・たつの市)代表世話人の内海千春さん(59)は「残されていたメモは、自殺直後にヒアリングされた最初の情報で、アンケートを始める前の最も重要な資料。意図的に隠したと指摘されても仕方がない」と批判。「ずさんな情報管理は、調査報告書の信用性に関わり、遺族の不信感もぬぐえない。市教委を事務局としない完全な第三者委を設けて再調査するべきだ」と指摘した。

(段 貴則、阪口真平、若林幹夫)

■市教委「隠蔽ではない」

なぜ自殺直後に生徒にヒアリングしたメモは、1年半も見つからなかったのか。22日会見した神戸市教育委員会幹部は、調査不足の怠慢を認め謝罪した。

ただ「隠蔽ではない」と繰り返し、約2時間に及ぶ会見で頭を下げる場面はなかった。

22日午後3時半から神戸市役所で急きょ開かれた会見には、新聞社やテレビ局約10社が詰めかけた。

昨年8月、調査報告書を見た現在の中学校長が、メモの存在を市教委に伝えたにもかかわらず、市教委は学校に確認しなかった。

会見で後藤徹也教育次長らは、遺族がメモの存在についてたびたび調査を求めていたことに対しては「深く反省している」と淡々と話した。「教育長が指示していたにもかかわらず、メモの存在を確認することができなかった。怠慢だったが、意図的ではない」と謝罪した。

メモの内容については「メモと報告書の内容に食い違いはおおむねない。メモの内容の大半は、既に発生当初の調査で報告されている」などと釈明を繰り返した。メモがなぜ今まで見つからなかったかについて質疑が集中したが、「今後、弁護士らに調査を依頼したい」と述べるにとどまった。(西竹唯太朗)

神戸・中3女子自殺 メモ発見で市教委会見<一問一答>

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「破棄された」としながらも存在していたメモの内容を明かす神戸市教育委員会の後藤徹也教育次長=22日午後、神戸市役所(撮影・西竹唯太朗)

2016年10月に自殺した神戸市垂水区の市立中学3年の女子生徒=(14)=を巡り、学校側が自殺の5日後に友人らから聞き取った内容を記したメモが

見つかった問題で、神戸市教委が開いた会見の一問一答は次の通り。

Q メモが出たことで調査報告書に追加記載があるのか?

A メモの内容は、当時の校長から第三者委員会に報告している。生徒への聞き取りは、全校生徒へのアンケートをしている。それに基づき、口頭による

聞き取り調査を3回にわたって第三者委員会がしている。一連の聞き取りで、メモに書かれていた内容は復元できている。

Q なぜメモを破棄したのか?

A 破棄したという表現は、校長は使っていない。メモと思われるものはあるが、学校としては紛失したと説明している。報告書で破棄になってしまったのは、

第三者委員会の報告を作成する際、少し記述として不正確になってしまった。

Q 紛失したのはどの段階か?

A はっきりしないところがある。

Q 紛失した理由は?

A メモは2016年に作成された。16年と17年の校長は異動で後任に代わっている。後任の校長が3人の教師と8月にできた報告書を見て、メモが破棄

されていると書かれているのを確認。そのうちの1人が校長にメモがあると伝え、発覚した。

Q そのあと、教育委員会として十分な確認がなかったのか?

A 結果として確認が不十分だった。メモの発見に至らなかったのは怠慢。深く反省している。

Q 校長は教育委員会の誰に、メモの存在を報告したのか?

A 当時の総務部長が受け、教育長にも報告した。その後、担当の学校教育部にも調査の指示が伝えられた。

Q 校長がメモがあると言ってたのに、確認しなかったということか?

A そういう事です。メモの内容は16年10月11日の聞き取り内容とほぼ同じ。既に報告していることがメモの内容だと思っていたので、メモまで確認はして

いなかった。

Q 報告書とずれているところはなかったか?

A おおむね入っているということだが、もう一度第三者委員会の確認が必要だと考えている。

Q メモには何が書かれていたのか

A 被害生徒にまつわるトラブルやエピソード、生徒関係などが書かれていた。

Q メモを取った教員は何人?

A 3人

Q 誰が書いたメモなのか?

A 当時、どの教師がどの段階で作ったメモなのかは分かっていない。一次資料でない可能性もある。

Q 遺族からメモを探してくれという申し出はあったのか?

A それは再三あった。見つからなかったということに対して、ちゃんと探してくれという申し出があった。

Q 今回のメモは誰が保管していたのか?

A 3人の教師のうち1人であるということを校長に報告した。その教師が昨年3月に引き継ぎを受けて、メモを机に保管していた。

Q 引き継ぎ元の人は異動しているのか?

A そうです。引き継いだ先生も事件当時いた先生なので、恐らく昨年3月下旬くらいに引き継いだと思う。

Q 前任の校長になぜ紛失したかということは聞いてないのか?

A 前任の校長は紛失した理由をきちんといっているが、複数に確認できないと確証が取れない。

Q メモの発見が遅れたのが意図的でなかったと言い切れる判断は?

A 報告書にもメモの内容が記載はできているので、きちっとした調査ができなかった。職務怠慢であったと事務局では判断している。

Q 前校長がメモはないといったのはいつか?

A 16年10月です。教育委員会に対して口頭で報告している。その時に紛失したと報告があったのかは分からない。

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平成30年4月20日付河北新報

口にテープ貼る 頭を平手打ち 性的な話 仙台市教委アンケート調査後も体罰や不適切指導6件

仙台体罰1

仙台市教委などが全市立学校に対するアンケートを実施した2017年夏以降も、生徒の口にテープを貼ったり、頭をたたいたりするなど教員による体罰や不適切指導が6件行われていたことが19日、分かった。市の第三者機関、いじめ対策等検証専門家会議で市教委が明らかにした。  市教委によると、17年9月~18年2月に小中学校で発生・発覚した。市立中学生の自殺が3件相次ぎ、調査を進める中での事態に、市教委幹部は「非常に重く受け止めている。教員が自覚を持って指導に当たるべきなのに、こういうことが起きてしまった」と反省の弁を述べた。  新たな体罰は3件あった。中学の男性教員が授業中に私語を続ける男子生徒2人の口に養生テープ(マスキングテープ)を貼ったほか、別の中学校では男性教員が教材を投げた男子生徒の頭を平手打ちした。  不適切な指導は3件。小学校の女性教員は17年10月の衆院選で授業中に選挙カーの音がうるさいとして「そのような候補者は好ましくない」と発言した。  別の女性教員は学級で教科と無関係な性的な話をした。中学の男性教員は生徒の自己評価カードの感想欄に「あ」「おー」など意味不明なコメントを書いた。

<仙台市教委>体罰・不適切指導287件 児童生徒が負傷は6件 17年度・小中高調査

 仙台体罰2

教諭の体罰や不適切指導を公表し、陳謝する市教委幹部

仙台市教委と市は19日、昨年度に合同で行った体罰に関する全市立学校のアンケートの最終集計結果を公表し、教員による体罰と不適切な指導計287件を確認したことを明らかにした。このうち、体罰を受けて児童生徒が負傷したケースが6件あった。  体罰は小学校35件、中学校12件、高校2件の計49件あった。関与した教員は46人に上った。  小学校は「手でたたく」(9件)「手で突く、押す」(5件)などの行為を確認。体を引きずって擦り傷を負わせたり、体を床に押し付けて背中を打撲させたりして、児童がけがを負った事例が4件あった。  中学校は「手で突く、押す」(4件)「物でたたく」(3件)「胸ぐらをつかむ」(2件)など。高校は部活動中に教員が男子生徒の頭を平手打ちして髪を引っ張り、鼻血が出るケースがあった。  暴言や無視など不適切な指導は238件。内訳は小学校153件、中学校81件、高校2件、特別支援学校2件。「臭い」「気持ち悪い」「かわいくないから指導しても無駄」といった発言があった。  市の第三者機関「いじめ対策等検証専門家会議」で19日、報告された。最終集計段階で、児童生徒計1659人(回答者の4.7%)が「体罰を受けたり、見聞きしたりした経験がある」と答えたため、市教委と学校が事実を確認した。  市教委は体罰や不適切な指導に関与した教員に対し、5月中旬をめどに処分を含めた指導を行う方針。加藤邦治副教育長は「児童生徒、保護者に迷惑を掛けて申し訳ない」と陳謝した。

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平成30年4月19日東京新聞神奈川版

茅ケ崎 小5いじめ問題 組織の隠蔽体質 浮き彫り

茅ヶ崎いじめ

いじめを受けた男児が思いを綴ったメモ(両親提供)

「面倒になったので見て見ぬふりをした」。いじめが原因で茅ケ崎市立小学校5年の男子児童(10)が2年にわたり不登校になっている問題は、いじめと認識しながら放置した女性担任(当時)の無責任さが事態を悪化させた。加えて浮き彫りになったのは、関係組織の隠蔽体質とずさんな対応ぶり。児童を守る立場にいるはずの学校と市教育委員会に重い課題が突き付けられている。 (布施谷航)

「何度頼んでも学校や市教委は動こうとしなかった。息子は今でも外に出ることさえままならない」。男児は二〇一六年四月から不登校になり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。両親は悔しさをにじませる。

学校と市教委の対応は終始、後手に回った。両親の訴えで学校がいじめを知ったのは同年三月。関係する児童から事情を聴いたが、担任の「遊びの延長と思った」との証言をうのみにして事実上、放置した。

文部科学省のガイドラインにも沿っていなかった。両親の再三の申し入れで学校は同年十一月に第三者委員会を設置したものの、不登校になって既に七カ月が経過。いじめ防止対策推進法は、児童生徒の心身や財産に重大な被害が生じたり、欠席日数が相当期間(おおむね三十日)に及んだりした場合を「いじめ重大事態」と定義し、ガイドラインはその際は第三者委を設けるよう示している。

結局、真相が明らかになったのは、不審に感じた同僚教諭の担任への追及から。「見て見ぬふりをした」との証言を引き出し担任は一七年十二月、両親の前で「自分の非が軽くなると思い、校長にはうそをついた」と打ち明けた。

市教委の認識も甘かった。対応をほぼ学校任せにしただけでなく、「見て見ぬふり」の証言を記した文書の存在を市教育長に報告していなかったことが先月、判明。結果的に第三者委にも提出されなかった。担当者は「重要とは感じたが、報告しなかったのは判断ミス」と不可解な釈明をするにとどまった。

今回のように、学校や教委が事態を矮小化させようとするケースは後を絶たない。関西学院大の貴戸理恵准教授(教育社会学)は「学校評価、教員評価などの競争原理が過度に組み込まれる教育改革が進んできた。自己保身に走り、内向きになっている」とみる。

さらに貴戸准教授は「教師同士で相談し合える風通しの良い環境をつくることが必要」とし、「個人で対抗するのは難しくても、心ある子どもが集団で被害者を守ることはできる。地域の大人も含めて見守ることが、そうした子どもを育てるのにつながる」と話す。

服部信明市長は先月、第三者委が「見て見ぬふり」の文書の存在を知らないまままとめた答申を差し戻した。再調査の結果は夏にも出る見通しだ。

両親は「校長から『情報提供するから、いじめの事実を口外しないように』と言われたこともある。きちんと事実を調べた上で加害者や市教委、学校に謝罪してもらうことが、先に進む最初の一歩になる」と声を絞り出した。

<茅ケ崎市立小のいじめ問題> 2015年5月、当時小学2年の男児が校内のトイレで同級生5人から暴行を受けた。いじめられていた子を助けたのが理由だった。男児へのいじめは同年冬ごろから深刻化し、取り囲まれて殴る蹴るの暴行を受けたり、「おまえはおもちゃだ」と言われて馬乗りになって殴られたりした。

市教委は再発防止検討会議を設置し、これまでの対応を検証する。

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平成30年4月19日付神戸新聞

加古川いじめ自殺 再発防止へチェック機関設置へ

2016年9月、兵庫県の加古川市立中学2年の女子生徒=当時(14)=が、いじめが原因で自殺した問題で、同市教育委員会は18日、市教委などが進める再発防止策の取り組みをチェックするため、外部の専門家による検証機関を設置する方針を明らかにした。市教委は「(女子生徒のいじめを調査した)

第三者委員会の提言を、全て実行する体制が整う」としている。

同日にあった同市議会常任委員会で公表した。5月の市議会定例会で関係する条例の改正案を提案する。

検証機関は「いじめ防止対策評価検証委員会(仮称)」。弁護士や臨床心理士、大学教授ら外部の専門家5人で構成し、議案が可決されれば6月中にも設置される。学期ごとに会合を開いて市教委から報告を受け、進捗状況などを確認。取り組みが不十分な場合に、市教委や学校に指導・勧告する権限も与えられる見通しという。

第三者委は、市長部局に検証機関を置くよう提言で求めていたが、市教委内に設置されることになった。

昨年12月の第三者委による提言を受け、市教委は再発防止に向けた「改善基本5か年計画」を策定。いじめの早期発見のため、全児童・生徒と年2回面談し、いじめの有無を問うアンケートを改良することなどを盛り込んだ。各小中学校は、計画に基づいて改善プログラムをつくり、4月から実施している。

(切貫滋巨)

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平成30年4月17日毎日新聞

岐阜県教委 高校部活コーチが体罰、公表せず

岐阜県立益田清風高校(同県下呂市)で2014年、女子ハンドボール部のコーチだった非常勤講師の60代男性が部員に体罰を行い、依願退職していた。

16日、県教育委員会が明らかにした。県教委は男性を処分せず、体罰があったことも公表していなかった。

県教委によると、男性は14年5月、校内での練習中に部員3人の膝下を蹴り、うち1人に肉離れのけがをさせた。別の教諭が目撃して校長に指摘し、発覚した。男性は事実を認め依願退職した。

元同校教諭の男性は12年に定年退職後も非常勤講師として勤務し、部活動の指導に携わっていた。

非常勤講師退職後も「男性が学校外で部活動指導を続け、体罰があったのではないか」との情報が県教委に寄せられていた。県教委の調査に学校側は「男性は15年5月まで練習会場に姿を見せていた」と回答していた。

県教委はこれらの事実を把握したが、退職したため男性の処分を見送り、「処分しておらず公表基準に該当しない」として体罰行為も公表しなかった。

県教委は「調査の動きが遅いとの指摘は真摯に受け止める」として、当時の県教委や学校の対応も含め調査を進める考えを示した。【岡正勝】

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平成30年4月17日付神戸新聞

いじめの核心黒塗り 中3自殺で報告書開示 神戸市教委

神戸市垂水区の市立中学3年の女子生徒=当時(14)=が2016年10月に自殺した問題で、市教育委員会は16日、市教委が設置した第三者委員会が昨年8月にまとめた調査報告書を市会文教こども委員会の議員に開示した。今後、公文書の公開請求を受ければ、同様に開示するという。市教委によると、関係者のプライバシーなどを考慮し、自殺の経緯やいじめの内容など、核心部分は黒塗りになっている。

遺族側は当初「報告書はいじめの背景や自殺との関連について記述が少ない」と反発し、開示を拒否していた。しかし、第三者委が昨年12月、追加調査を拒否したことを契機に「報告書の不十分さを広く伝えたい」と考えるようになり、先月、市教委に開示の意向を伝えたという。

市教委によると、報告書は165ページあるが、市の情報公開条例により個人の特定につながる情報は全て黒塗り。全5章のうち、自殺の経緯や要因、いじめの内容などを記した第3章(64ページ分)も同様に黒塗りになっているという。

遺族は今月3日、久元喜造市長に新たな調査委員会による再調査を申し入れた。女子生徒の母親は「開示を決めたのは、調査の不十分さを理解してほしいという思いからだったのに、核心部分が黒塗りでは意味がない」としている。(井上 駿)

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平成30年4月7日付朝日新聞茨城版

保護者会開催めど示せず いじめ自殺で新教育長

 取手市長

就任会見する伊藤哲教育長=取手市藤代

取手市立中学校3年の中島菜保子さん(当時15)が自殺した問題で、新たに教育長に就任した伊藤哲(さとし)氏(61)が6日、市内で会見した。市教委がいじめを認めなかった当初の対応を「重大な過失だった」と認める一方、保護者会開催のめどは明言しなかった。

伊藤氏は中島さんの両親に「長年ご心労をおかけしていることを深くおわびする」と頭を下げ、「この事案を改めてとらえ直して誠実に取り組んでいく」との決意を表明。2005年から3年間、市教育長を務めており、「経験を生かしたい」と抱負を述べた。

また、市教委が「いじめによる重大事態に該当しない」と議決したうえで、調査委員会を設置したことについて、「重大事態の認識が欠けていたのが最大の過ち」と改めて認めた。

一方、3月末の保護者会は元担任教諭が体調不良を理由に欠席して混乱。両親は夏までに元担任が出席しての開催を望んでいるが、伊藤氏は「医師の判断もあり、開催時期や方法を含めて探っていきたい」と述べるのにとどまった。両親との信頼回復についても「話し合う機会を何とかつくりたい」と話した。

伊藤氏は県の教育行政に携わり、3月まで県教育財団専務理事を務めた。辞任した矢作進前教育長の後任に1日付で就いた。任期は20年3月までの2年間。(佐藤清孝)

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平成30年4月3日付東京新聞

いじめ自殺で児相通告 埼玉県警 金銭要求の同級生2人

埼玉県鶴ケ島市で昨年十一月、小学六年の女児=当時(11)=が自宅で自殺した問題で、女児に金銭を要求するなどしたとして、県警が同級生だったいずれも十二歳の女子二人を児童相談所に通告していたことが捜査関係者への取材で分かった。通告は三月二十六日付。

市の第三者審議会は、同級生からのいじめがあったと認定し「いじめが自殺の契機と推認できる」との報告書を三月二十七日に答申していた。

捜査関係者によると、女子二人は昨年九月以降、被害女児にカラオケや飲食の代金を度々支払わせたほか、いじめを隠すために「嫌なことは嫌と言う」との趣旨の内容を言わせて、スマートフォンで動画を撮影したとされる。

報告書によると、主に女子二人は被害女児に悪口を言ったほか、亡くなる直前には、無料通信アプリLINE(ライン)で自殺に追い込むようなやりとりをしていた。

報告書は学校について「児童と信頼関係を築けていなかったため、いじめを把握できなかった責任がある」とした。

県警によると、女児は昨年十一月十七日午前、自宅敷地内で死亡しているのが見つかった。二階の窓から飛び降りたとみられる。

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