平成30年2月16日朝日新聞群馬版

ハンマー事故の第三者委員会初会合 事故現場視察

 ハンマー投げ事故

グラウンドのハンマーの投てき場所を視察する検証委員会のメンバーや学校関係者ら=県立藤岡中央高校

昨年12月、県立藤岡中央高校で陸上競技部員が投げた競技用ハンマーがサッカー部員にあたり、死亡した事故を受け、県教育委員会が設置した第三者検証委員会の初会合が15日、同校であった。5人の委員が現場を視察し、当時の陸上競技部やサッカー部の顧問から事故の発生状況などについて聴いた。

検証委は、陸上競技や法学、医学の専門家5人で、委員長には東京学芸大の渡辺正樹教授が選ばれた。会合の途中、検証委や学校関係者ら約20人は、グラウンドに出て、ハンマーの投てき場所を見て回り、投てき場所のネットを揺らすなどして設備の安全性などを調べた。薄暗くなった午後6時過ぎには、事故当時と同様に夜間用の照明をつけて、グラウンドの見え方なども確かめた。

会合終了後、内容について会見した県教委によると、両部は一つのグラウンドを分割して使っていたが、ある委員は、その状況について、特別な状況ではないとの見解を示した。ただ、安全確認について両部でルール化されたものはなかったという。

当時、ハンマーを投げた生徒は声を出して安全確認をしたが、聞き取りの結果では、サッカー部員は誰も声に気づいていなかった。過去にはハンマーがサッカーゴールにぶつかることも何度かあり、部員や顧問も知っていたが、校長ら管理職は知らなかったという。

検証委は今後も会合を開き、半年をめどに報告書をまとめる方針。(山崎輝史)

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平成30年2月15日朝日新聞本社版

「学校しんどい」中2女子が自殺 母親、学校側に不信感

兵庫県尼崎市立中2年の女子生徒(当時13)が昨年12月、「学校がしんどい」などとするメモを残して自殺していたことがわかった。市教委は生徒間のトラブルが背景にあった可能性があるとして、いじめの有無などを調査する学識者らの第三者委員会を立ち上げる方針を固め、準備を進めている。

遺族や市教委によると、女子生徒は昨年12月20日夕方、自宅で首をつった状態で発見され、死亡が確認された。現場には「学校がしんどいです。

もう無理です」などと本人が書いたメモが残されていたという。

学校は全校生徒対象のアンケートや一部生徒への聞き取りを実施。市教委は1月下旬、「長期にわたる暴行などの情報はないが、生徒間でトラブルがあった可能性はある」と判断し、詳細調査のため第三者委設置を遺族に打診したという。

これに対し、女子生徒の母親は14日に会見を開き、「アンケートなどで得られた情報について学校に説明を求めても、ほとんど教えてもらえない」「学校や市教委が十分な調査をしないまま第三者委を立ち上げても、真相解明ができるのか疑問」と不信感を表明。同日、これまでの調査結果の開示などを求める申入書を市長と教育長に提出した。(宮武努)

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平成30年2月15日神戸新聞

学校しんどい」中2自殺 第三者委設置へ

兵庫県尼崎市内の中学2年の女子生徒=当時(13)=が昨年12月に自殺したことを受け、同市教育委員会は14日、有識者らによる第三者委員会を設置する方針を明らかにした。生徒は「学校がしんどい」とのメモを残して亡くなっており、いじめの有無などについて専門家が詳しく調査する。

生徒は12月20日に亡くなった。学校はその後、全校生徒へのアンケートや個別の聴き取りを実施。しかし、学校の調査に限界があるとして、市教委が第三者委の設置方針を決めた。

一方、生徒の母親らが14日、市役所を訪れ、市長と教育長宛てに申入書を提出。学校側が当初承諾したアンケート結果の開示を後に市教委が拒んだことや、調査結果の情報がわずかしか伝えられなかったことなどで不信感を持ったといい、調査結果の速やかな開示▽遺族の意向が確認されないまま生徒の死が報道された経緯の説明▽在校生に対する十分なケア-などを求めた。

会見を開いた母親は「もう無理です」とも書かれていた生徒のメモに触れ、「心がどんどん重くなるような積み重ねがあったのかもしれない」と話した。

(岡西篤志)

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平成30年2月14日付福井新聞

指導死、必要以上に追い詰めないで「指導死」親の会共同代表に聞く

 指導死大貫さん

「子どもを必要以上に追い詰めないでほしい」と訴える大貫さん=昨年12月、東京都内

2000年9月に当時中学2年生の次男陵平さんを、指導をきっかけにした自死で失った「指導死」親の会共同代表の大貫隆志さん(61)=東京都=に、あるべき指導について聞いた。「指導の目的は子どもが行いを振り返り、学んでいくことにあるはず。自分の言葉が子どもの成長の糧になっているか考えながら、必要以上に追い詰めないでほしい」と訴えた。

-「指導死」はどのような場合に起きるのか。

「生徒を複数人で囲んで説教したり、反省文を提出させたり、教師へ謝罪させるときなど。やっていないのに言い分を聞いてもらえない“冤罪”もある。

やったことは小さいことなのに罰則はすごく重い。指導死のうち88%が教師からの暴力ではないことが大きな特徴。暴力を伴わない、特に悪いとは思えない指導を教師が行い、でも子どもが死んでしまう。指導中に1人きりにしてしまい、そのときに命を絶つケースも非常に多い」 「コップに生きる力という水がたまっている。それが『お前はだめだ』と言われるたびに減る。最後の一滴まで絞られ、『生きている価値がないんだ』と思ってしまう。叱責はこの水を減らす行為。君なら分かってもらえる、本来の君だったらこんなことしないと思うから言ったんだよ-といった言葉で水を補わないといけない。適切な指導なら(逆に)水は増えるかもしれない」

-池田中の生徒が自死した事件をどう思う。

「担任の声が大きかったことはもちろん影響しているが、声が大きかったからだけではなくて、生徒の存在を否定するような形で指導がなされた、そのことがつらかったのではないか。『生徒会辞めていいよ』という一言がどれほどつらかったか」

-生徒指導で思うことは。

「教師と生徒は圧倒的に力関係が違う。教師のさりげない一言が響く。にもかかわらず執拗な指導をしてしまう。教師の“業界用語”に『指導が入る』というのがある。指導で子どもがしゅんとする様子を言っているようだ。でも、それは子どもが傷ついているだけ。教師は自分の言葉がその子の学びになっているか、成長の糧に役立っているのか、反応を丁寧に探っていく必要がある」

-子どもの問題行動を見たとき教師はどうすべきか。

「なぜそうしたのかを共感をもって聞く。好きな歌手に憧れてまねをしてみたのかもしれない。親がすごく厳しくて、反発したのかもしれない。何かしら理由があるはず。例えばスカートを長めにしたときは『いつもと違うよね』と声を掛けるチャンス。“変化”という情報を発信しているのになぜ生かさないのだろうか」

-指導死をなくすには。

「今すぐできることがある。全国で73件起きている指導死のうち、指導中にその場所、あるいは抜け出して命を絶ったケースと冤罪型を合わせると24人。

ほんのちょっとの配慮で救える命だった。子どもが教師の振るまいで、いとも簡単に死んでしまうという危機感を持ってほしい」

-親の会の活動を通じて思うことは。

「命を失う子どもを、遺族をこれ以上増やしたくない。会の活動から10年たち、指導をきっかけに子どもが死ぬ可能性があるという認識は広がっているが、件数は減っていない。学んで成長する、いろんな人と出会う場であるはずの学校で子どもが命を奪われることがあってはいけない」

 

■大貫陵平さん(当時13歳)の指導死■

・昼休みに学校で友達からチューイングキャンデーを一つもらって食べる。

・一緒にお菓子を食べた生徒9人と、12人の教師による1時間半の指導を受ける。

・反省文を書くよう指示を受ける。

・翌日の担任からの電話で、「来週の臨時学年集会で全員の前で決意表明してもらう」「親にも学校に来てもらう」ことを告げられる。

・担任からの電話の40分後、自宅マンションから飛び降りる。

・遺書には「死にます ごめんなさい たくさんバカなことして もうたえきれません バカなやつだよ 自爆だよ じゃあね ごめんなさい 陵平」と書かれていた。

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平成30年2月8日朝日新聞

山口・高2自殺 県再調査の人選、遺族が反発

山口県周南市で2016年7月、県立高校2年の男子生徒(当時17歳)が自殺した問題で、再調査をすることになった県の第三者委員会の人選に遺族が反発を強めている。遺族側は県とのしがらみがない委員らによる調査を求めてきたが、県は常設の第三者委で週内にも調査を始める意向だ。いじめが起きた時のために第三者委を常設する自治体は多いが、被害者側が不信感を抱くケースは珍しくなく、専門家は対応の必要性を指摘する。【土田暁彦】

男子生徒の自殺については、県教委の第三者委がいったん調査したが、遺族は、いじめと自殺の因果関係や部活動での顧問の指導に関する調査が不十分だったとして再調査を要請。遺族側は、委員長の大学教授ら複数の委員が県などと雇用関係にあったことなどで不信感を強めていた。

こうした経緯も踏まえ、昨年12月に遺族と面会した村岡嗣政知事は「遺族の気持ちにしっかり寄り添いたい」として、県教委ではなく、県の知事部局に設置する第三者委で再調査することを決めた。

県は「いじめ問題に迅速に対応するため」として、条例で常設の第三者委を設置しており、県内の大学教授や弁護士ら計5人の委員を任命している。

再調査はこの委員会に委ねることにした。

これに対し、遺族側は、遺族が推薦する県外の団体を通じて委員を新たに選ぶよう要望。県は「新たな委員会を設置したり、委員を代えたりするのは迅速な対応という第三者委の趣旨に反する」とし、新たな委員を加えることも、条例で「委員は5人以内」と定めているため「条例改正が必要で時間がかかる」と難色を示している。

男子生徒の同級生の卒業も今春に迫り、生徒の母親は「同級生への聞き取りだけでも早くしてほしいが、常設の第三者委で十分な調査ができるのか不安がある」と話している。

 

福島、奈良では県外委員

いじめ防止対策推進法に基づく国のいじめ重大事態調査ガイドライン(2017年3月)は、調査組織の構成や人選について遺族から要望がある場合、「必要ならば調整を行う」と明記している。山口県のように第三者委を常設しても、「臨時委員」や「専門委員」などを置くことで、遺族の意向を反映させたケースもある。

福島県は条例で「臨時委員を置くことができる」と規定している。15年9月に県立高2年の女子生徒が自殺した問題では、「公平性を担保するため県外の専門家を入れてほしい」との遺族の要望を受け、宮城県の弁護士ら2人を臨時委員に加えて再調査を実施。部活動でのいじめと自殺との因果関係を認め、結論が覆った。

15年12月に奈良県立高1年の男子生徒が校舎から転落死した事案では、大阪府などの弁護士ら3人を条例上の専門委員として加え、「いじめや学校からの指導で受けた心身的苦痛によって自殺した」と認定した。

福島、奈良両県のケースで遺族側代理人を務め、いじめ調査に詳しい石田達也弁護士(滋賀弁護士会)は「臨時委員らの役割は常設の第三者委の調査をチェックすることにある。(臨時委員などの規定がない)山口県の条例は硬直的で、遺族の意向を調整する余地がない」と指摘している。【土田暁彦】

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平成30年2月7日中日新聞

中3自殺、一宮市を提訴 両親「担任のいじめなど原因」

愛知県一宮市立浅井中学校3年の男子生徒=当時(14)=が昨年2月、「担任に人生を壊された」とする遺言を残して飛び降り自殺した問題で、男子生徒の両親が6日、自殺は、当時担任だった男性教諭による「いじめ」などが原因として、一宮市に損害賠償を求める訴えを、名古屋地裁一宮支部に起こした。

訴状によると、両親は男子生徒が担任の男性教諭から頻繁にプリントを配らされたり、他の生徒より頻繁に叱るなどの「いじめ」を受けていたと主張。一昨年9月の体育祭で両手親指を骨折し、筆記ができないのに体育祭の感想文を書くよう指示し、代筆も認めなかったなどと訴えた。

進路指導の際には、別の教諭が受験の6日前の面談で志望校について「全部落ちたらどうする」と配慮のない言葉を投げかけることもあったという。

これら複数の教職員による行為によって男子生徒が「自死を選択するまで追いつめられた」としている。

市教委が設置した第三者委は昨年8月、担任との関係悪化が自殺の一因とする検証結果をまとめ、「学校の対応は不十分」とする報告書を公表。

ただ、この中では、担任の「いじめ」と取れる内容を認めるのは困難との見解を示している。

6日に市役所で会見した男子生徒の父親(50)は「第三者委の報告書は、事実と違うところが多い。学校、市教委全体に怒りがある」と語った。

母親は「息子が命をかけて訴えた真実が知りたい」と話した。

中野和雄教育長は「お亡くなりになりました生徒さんのご冥福をお祈りいたします。(訴訟については)まだ訴状を見ていないので、コメントは差し控える」とのコメントを出した。

生徒は昨年2月6日午後11時35分ごろ、大阪市のJR大阪駅前にある商業施設7階から飛び降りた。生徒が友人へ託した携帯ゲーム機には「担任によって学力、存在価値、生きがい、性格、進路etc…私の人生全てを壊されたからですね」などと記されていた。当時の校長は一度、「担任によるいじめがあった」とPTA総会で認め、直後に撤回している。

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平成30年2月5日広島NHK放送局

“亡くなる直前までいじめ”

広島市の中学3年の女子生徒が去年7月、校舎から飛び降りて自殺したとみられる問題で、第三者による審議会は、女子生徒が亡くなる直前まで「死ね」「消えろ」などと言われるいじめを受けていたとする調査結果をまとめました。審議会は学校の対応に問題がなかったかなど引き続き調査することにしています。 去年7月、広島市の中学校に通っていた3年生の女子生徒が学校の敷地内で倒れているのが見つかり死亡しました。 市の教育委員会が設けた第三者による審議会は、いじめを理由に校舎から飛び降りて自殺した可能性があるとみて調査を進めています。 審議会ではこれまでに学校の生徒や教諭への聞き取りなどを行ってきましたが、女子生徒が小学校の頃から亡くなる直前まで継続的にいじめを受けていたとする調査結果をまとめ公表しました。 それによりますと女子生徒は小学校の低学年の頃からいじめを受け、数人の同級生から悪口を言われたり、たたかれたりすることがあったとしています。そして、中学校に入ったあと、この数人の同級生のほかにも複数の生徒が加わり、あわせて十数人からいじめを受けていたということです。 容姿をからかわれたり、消しゴムを投げられたりしたほか、掃除の際に女子生徒の机を触ろうとせず、仲間外れにされるいじめもあったとしています。 審議会によりますと、こうした行為は徐々にエスカレートして女子生徒が亡くなる直前まで続き、3年生の時には「死ね」「消えろ」などといった暴言をひんぱんに言われていたほか、傘で叩かれたり、石を投げられたりすることもあったということです。 審議会は、今回の調査結果をもとに学校の対応に問題がなかったかや女子生徒が亡くなったこととの因果関係などについて引き続き調査することにしています。 今回の調査結果について亡くなった女子生徒の遺族は弁護士を通じてコメントを出しました。 このなかで遺族は「娘が学校でいじめを受けていたことを思うと大変つらい気持ちになりますし、何度も学校に伝えていたのにどうして止められなかったのだろうかという思いもあります。学校に対しては、今回のいじめの事実を正面から受け止めていただきたいと願うばかりです」と心境をつづっています。 そのうえで「学校の問題点につきましては現在、審議会で調査中と伺っておりますので、その調査を待ちたいと思います。真実が明らかになり、二度とこのようなことの起きないことを願います」と真相解明に向けた調査の徹底を求めています。 一方、亡くなった女子生徒が通っていた中学校の校長は5日、会見し、このなかで「いじめを早期に把握し、適切に対応できなかったことに校長として強く責任を感じています。亡くなった生徒にとって学校が安心・安全な居場所となりえず、日々いじめに苦しみ、悲しみ、傷ついていたと思うと悔やんでも悔やみきれません。深くおわび申し上げます」と述べ、謝罪しました。 そのうえで、これまで学校に女子生徒本人や両親から相談があったものの、生徒への嫌がらせは継続的なものとは考えていなかったため、いじめにはあたらないと認識していたことを明らかにしました。 そして、校長は学校の対応に問題があったことを認め「その場その場でトラブルが解決することに重きを置いた表面的な対応に終始していました。

経過を観察するなど、丁寧な対応をしていなかったために、いじめと認めることができませんでした」と述べました。 第三者による審議会では、来月中にも学校の対応の具体的な問題点について報告をまとめることにしています。 また、広島市の糸山隆教育長は「このような事態が生じたことを重く受け止めるとともに、こうしたいじめを防ぐことができなかったことを申し訳なく思います」と謝罪したうえで「このたび公表された内容、今後出される調査結果や答申などを踏まえながら、二度とこのような悲しい出来事が起こらないよう対策を強化していきたいと考えています」というコメントを出しました。

https://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20180205/4712691.html

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平成30年2月5日朝日新聞大阪本社版夕刊

広島の中3女生徒死亡、「いじめあった」 第三者審議会

 広島佐伯区教育委員会謝罪

死亡した女子中学生と遺族に対し、頭を下げる広島市教育委員会の山崎哲男課長(手前)=5日午前10時5分、広島市役所、

上田幸一撮影

広島佐伯区調査委

死亡した女子中学生に対するいじめについて、記者の質問に答える広島市いじめ防止対策推進審議会の林孝会長(左)=

5日午前9時22分、広島市役所、上田幸一撮影

 

広島市佐伯区の市立中学校で昨年7月、3年生の女子生徒が校舎から転落死した問題で、市教育委員会が設置した第三者組織「市いじめ防止対策推進審議会」は5日、「入学当時から断続的にいじめがあった」などとする調査結果を公表した。今後、学校の対応

に問題がなかったかどうかや死亡との因果関係などを調べる。

市教委などによると、女子生徒は昨年7月24日、学校の敷地内で倒れているのが見つかった。自宅にはいじめを受けていたことをうかがわせる内容のメモが残っており、遺族が「いじめを苦に命を絶ったと考えている」と市教委に伝えていた。

審議会のこの日の会見によると、女子生徒は中学入学当初から数人の生徒に頻繁に容姿についてからかわれたり、悪口・暴言を

言われたりしていたという。2年になると、より多くの生徒がこれに加わり、消しゴム片を投げられるなどの嫌がらせもあったという。

3年生の時には「死ね」「消えろ」などの脅し文句を頻繁に言われていたほか、たたかれることもあったことが確認されたという。

女子生徒が通っていた中学校の校長は、いじめを早期に把握し、適切に対応できなかったとして、「強く責任を感じている。学校の対応に課題があったことは明らかだと考えている」との談話を出した。

一方、女子生徒の両親は代理人の弁護士を通じ、「娘がいじめを受けていたことを思うと、大変つらい気持ちになる。何度も学校に伝えていたのに、どうして止められなかったのだろうか、という思いがある」などとコメントした。

市教委は昨年9月、今回の事案について、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に該当すると判断し、①いじめの事実の全容

②学校などの対応③死亡にいたる過程や心理の検証④今後の対応と再発防止――の4点について審議会に諮問。審議会は、生徒と教職員にアンケートを実施し、女子生徒が1年生のころから悪口を言われたり、掃除を邪魔されたりしていたなどの記述を把握、個別の聞き取り調査を進めていた。

審議会の会長を務める林孝・広島大大学院教育学研究科教授は「いじめは人として許されない行為。今後、学校の対応がふさわし

かったかどうかを調べていく」と述べた。

「いじめを防ぐことができなかったことを申し訳なく思います」。審議会の発表後、続けて会見をした広島市教育委員会の山崎哲男生徒指導課長は深々と頭を下げ、糸山隆市教育長のコメントを代読した。

審議会はこの日、いじめに対する学校の対応についてはまだ「調査中」と発表したが、山崎課長は「生徒の声や保護者からの訴えに対して組織的に対応できていなかった」と説明。「審議会から情報を提供してもらいながら、いち早く改善したい」と述べた。

さらに山崎課長は「明るく生きたかったであろう機会を奪う形になったことに言葉はなく、申し訳なく思っている」と声を震わせた。その上で、「生徒の悩みや苦しみについての情報がどこかで止まっていたのだろう。そこに大きな課題があった」と話した。(松崎敏朗、久保田侑暉)

 

 

「いじめ、学校に伝えたのに止まらず」死亡の生徒の両親

 

広島市佐伯区の市立中学校で昨年7月に3年生の女子生徒が校舎から転落死した問題で、「いじめがあった」とする調査結果を

市教育委員会が設置した第三者組織が発表したことを受け、女子生徒の両親が弁護士を通じてコメントを出した。主な内容は以下の通り。

いじめの事実につきましては、あらかじめ審議会の方々からご説明を頂きました。そこでは、私たちが把握していなかったいじめの事実も多数報告されていました。

娘は、私たちにお菓子を作ってくれたり、マフラーを編んでくれたりする、家族思いの明るい子でした。また、いつも外に出て、近所の人にもよくあいさつし、周囲の人たちからも愛されるいい子でした。それだけに、娘が学校でいじめを受けていたことを思うと、大変つらい気持ちになりますし、娘がいじめを受けていることについては私たちから何度も学校に伝えていたのにどうして止められなかったのだろうか、という思いもあります。

学校に対しては、今回のいじめの事実を正面から受け止めていただきたいと願うばかりです。

学校の対応の問題点につきましては、現在審議会の方で調査中と伺っていますので、その調査を待ちたいと思います。真実が明らかになり、二度とこのようなことが起きないことを願います。

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平成30年2月3日朝日新聞

導死、かつての自分を重ね 「あの環境は異常だった」

 指導死_桜宮

大阪市立桜宮高バスケットボール部OBの谷豪紀さん。今でも「練習に行かなきゃ」と夢に見ることがあるという=1月20日、東京都品川区、池田良撮影

小さないのち 悲しみと歩む

「後輩が亡くなった。新聞を見て」。2013年1月、大阪市立桜宮高校の卒業生、谷豪紀さん(24)は、高校のバスケットボール部の同期生から連絡を受けた。2年下の後輩で、バスケ部の主将だった男子生徒(当時17)が前年末、顧問の男性教諭から体罰を受けた翌日に自ら命を絶ったと、記事は伝えていた。

中学時代から活躍し、入学前から話題になるほどの後輩だった。素直で明るい姿が記憶に残る。谷さんは信じられないと感じる半面で、「やっぱり、あそこの環境って異常だったんだな」と思った。

谷さんも高校時代、体罰を含め疑問を感じる指導を受けた。悪いことをしたから怒られるわけではなく、言われたプレーができないと、顧問の教諭に平手打ちされた。生徒には「暴力は厳禁」と言いながら、教師の暴力は許されることが理不尽だと思った。

あるとき、他部の体罰が発覚した。顧問は冗談めかして「教育委員会に言うなよ」と言い、部員たちも笑ってやり過ごしていた。

谷さんはそんな雰囲気に違和感を感じていた。指導が明らかに間違っていると感じ、顧問に疑問を呈したこともある。すると正座を数時間させられ、平手で何度もたたかれた。雰囲気に染まらない谷さんは、顧問から「お前は頭がおかしい」と言われ続けた。

授業の中に部活動に取り組む時間もあり、部活を辞めることは考えられなかった。他の部に入り直そうにも、顧問や部の仲間が許してくれるとは思えず、親にも心配をかけたくなかった。

顧問からの体罰に苦しみ、自ら命を絶った大阪市立桜宮高校のバスケットボール部員。その2年先輩にあたる男性が、ブログなどで当時の体験や思いを発信するようになった。教師の体罰や叱責が生徒を死に追い詰める「指導死」をなくすため、自分の役割を感じ始めている。

海の向こうの四国に逃げようと思った。1年ぐらい姿をくらませれば、自分のつらさが分かってもらえると思った。中途半端だと連れ戻されると考え、「完全に消息を絶つ」計画を立てた。高速バスを予約する直前、寮の先輩に「最近、元気ないね」と声をかけられ、思いとどまった。

後輩の死を知り、かつての自分を重ねた。「僕にとっての『四国に行く』は、彼にとっての『死ぬ』と同じだったのかもしれない」 大阪地裁は13年9月、傷害と暴行で元顧問=13年2月に懲戒免職処分=に猶予付きの有罪判決を出した。遺族が大阪市に損害賠償を求めた民事裁判の判決は、当時の顧問の暴行や暴言を「著しい精神的苦痛をもたらす虐待行為」とした。体罰を含む厳しい指導が生徒を死に追い込む「指導死」が注目されるきっかけにもなった。

桜宮高校ではいま、部活動を複数の顧問が見たり、練習時間や体罰の有無を生徒に尋ねるアンケートをとったりしているという。

大学生になった谷さんはブログを始めた。個人でも意見を発信できることに気付き、後輩について書こうと思った。2年前、桜宮高校のOBだと名乗り、当時の部活の様子や、優しかった後輩の人柄をつづった。

ブログを読んだ人たちから少しずつ声が届いた。体育教師を目指している人からは「体罰の残酷さを改めて認識できました」。同じく指導死の遺族からは「状況を知る方が内部のことを語ってくださるのは本当にありがたい」と寄せられた。

昨秋、その遺族に声をかけられ、指導死の遺族が集まる会で体験を語った。

「なんでみんな反抗しないんだろうと思っていたけど、(自分は)マイノリティー(少数者)だった。今も同級生に『あれ、おかしかったよね』と言うのって、相当勇気がいります」

たまたま桜宮高校にいただけの存在だと思っていたが、最近は当時の空気を知る立場から発信することの意味を感じている。「個々の力では何も

できない。いろんな人が集まって訴えないと解決しない」。いつか当時の部員とも、腹を割って話し合えたらと願っている。教職員組合などから講演の依頼も受けるようになった。

指導死をなくすには、学校が多様性を認める必要があると感じている。生徒にも教師にも一つの型を強制するからひずみが出る。嫌なものは「嫌だ」と言える学校の環境になってほしい、と。

体罰をある程度はやむを得ないと考えている人たちから「あの学校で強くなった」という声を聞くこともある。でも、こう考える。99%の人が成功したとしても、1%が命を落とすのは、教育とは言えない。

昨年12月23日、後輩が亡くなって5年の命日に遺族に初めて会った。谷さんは発信することで傷つけていないか不安だったが、「ありがとう」と言われ、ほっとした。部活で悩む息子と必死に向き合っていた両親の様子を聞き、また悔しさが募った。

父親(48)は取材に「本来なら遺族の私たちが活動したい気持ちはあるが、難しい。身近にいて、息子を見てくれていた先輩が語ってくれたのはすごくうれしい」と話した。(山本奈朱香)

 

追い詰めるのは暴力だけではない

教師の暴力や言葉の指導などで生徒が自殺に追い込まれる「指導死」。遺族らは再発防止を願って文部科学省への申し入れや啓発活動などを続けているが、指導死の正確な実態が分かる国の統計はなく、なくすための取り組みは十分とはいえない。

桜宮高校の事件を機に、「体罰」の名で行われる教師の暴力を容認しないという社会的な風潮は強まったようにみえる。だが、子どもの心を追い詰めるのは暴力だけではない。

教育評論家の武田さち子さんが新聞記事などで調べたところ、1989年以降、指導死とみられる自殺は64件あった。そのうち86%にあたる55件には暴力が絡んでいなかった。宿題提出や生徒会活動の準備の遅れを理由に厳しくしかられたり、誤った万引き記録に基づき「私立高に推薦できない」と告げられたり、ネットでの書き込みについて言い分に耳を傾けてもらえないまま削除させられたりと、さまざまな背景やきっかけがある。

どんな指導が子どもを死に追いやったのか、過去の事例を検証し、再発防止につなげる取り組みが必要だ。教育現場でも、教師の言動が子どもを死に追い詰めてしまうおそれがあることを直視すべきだ。子どもの言い分に耳を傾けているか、失敗を責めるような指導をしていないか、成長を考えた指導をしているか、教師一人ひとりが子どもと向き合う前に考えてほしい。=おわり(片山健志)

「悲しみと歩む」はこれで終わります。ご意見をasahi_forum@asahi.comか、03・5541・8259(ファクス)、または〒104・8011(所在地不要)

朝日新聞社オピニオン編集部「小さないのち」係にお寄せください。

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平成30年1月31日NHK長崎放送局

いじめ 第三者委の報告書再公開

4年前新上五島町で中学3年生の生徒が自殺したことをめぐり、原因をいじめと判断し再発防止策などをまとめた、第三者委員会の報告書について、町は、取りやめていたホームページでの公開を生徒の両親の求めに応じて再開しました。 4年前に新上五島町で男子生徒が自殺した原因を、弁護士などが調べたの第三者委員会は町と自殺した生徒の両親が協議して設置され、報告書はいじめが自殺の原因だと結論づけたうえで、学校や教育委員会の対応を厳しく批判するものでした。 町は、2年前の3月からいったんは公開しましたが「事実の確認ができないか所が含まれている」として、およそ3か月で削除していました。 両親が町などに損害賠償を求めた裁判が去年9月に和解したあとも、両親が報告書の全文を公開するよう町に求めていましたが、町のホームページに全文を再び掲載することで両者が合意し、31日から公開されました。 これを受けて生徒の両親は31日会見を開き、父親の松竹裕之さんは「同級生にも読んでもらい、どういったことがあったか直接聞きたい」と話しました。報告書は100ページあり、生徒と同級生とのSNSのラインでのやりとりも掲載されています。 新上五島町は「生徒の自殺の原因として悪口や無視など暴力以外のいじめが含まれており、再発防止のために公開することを決めました」としています。

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