平成29年11月29日東京新聞埼玉版

いじめ問題で調査審議会 小6自殺 鶴ケ島市教委設置へ

外部の専門家を招き、いじめの有無を調査する方針を発表する鶴ケ島市の浅子藤郎教育長=鶴ケ島市で

埼玉小6女子

鶴ケ島市立小学校六年の女児(11)が今月十七日、自宅敷地内で死亡しているのがみつかった問題で、市教育委員会は二十八日、女児が自殺したとみられることを重視して、外部の専門家を招いた「市いじめ問題調査審議会」を近く設置すると発表した。

自殺の原因などは明らかになっていないが、浅子藤郎教育長は「六年生の卒業の時期も踏まえ、できるだけ早く審議をお願いしたい」と述べた。

学校や市教委によると、女児は五年生のときに「(同級生から)嫌なことを言われた」と三日続けて欠席。学校はいじめとして対応した。

今年六月に行ったアンケートでは、女児や他の児童から、いじめの記述はなかった。

浅子教育長によると、事件を受けて学校は二十日、四~六年生を対象にアンケートを実施。回答の中に「女児が悪口を言われているところを見た」との記述があったという。

浅子教育長は「いじめに当たるのか、いつごろの話なのか、ていねいに確認する必要がある」とした上で、「学校には、いじめがあるだろうという姿勢で事実確認させ、調査結果を専門家に判定してもらう」と語った。

県警によると、女児の携帯電話から自殺をほのめかすような文章が見つかっており、自宅二階から飛び降りたとみられる。

(中里宏)

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平成29年11月29日朝日新聞滋賀版

元同級生ら「いじめなかった」大津・中2自殺訴訟

 

いじめを受けて2011年10月に自殺した大津市立中学2年の男子生徒(当時13)の両親が、当時の同級生3人らに損害賠償を求めた訴訟の弁論が28日、大津地裁(西岡繁靖裁判長)であった。当時の担任教諭のほかに、2人目の元同級生とその母が法廷に立った。元同級生は「(男子生徒に言いたいことは)ない」と述べ、3人とも「いじめはなかった」と証言した。

元同級生は原告側の弁護士から「教科書を破ったのか」「金を要求したか」などと男子生徒に対する行為を問われたが、「覚えていない」「ないです」などと繰り返した。「なにをすればいじめか」との問いに、元同級生は答えなかった。

一方、被告側弁護士は、元同級生が男子生徒の自殺する3日前に家を訪れ部屋を荒らしたとされる行為を質問した。

元同級生は「部屋で(男子生徒と)一緒に、学校と同じようにプロレスごっこや『こかしあい』をして遊んでいた」と述べ、男子生徒の姉らが9月の弁論で証言した内容を否定した。

「(男子生徒に)言いたいことはありますか」。男子生徒の父親にこう聞かれると、元同級生は「ないです」と即答した。

元同級生の母親も証言した。男子生徒が自殺した日のことを聞かれると、声を詰まらせた。母親は「息子の友達が命を絶った驚きとショック、息子の気持ちを考えると悲しかった」と述べた。

男子生徒の父親から「謝罪の気持ちを抱いたことはあるか」と問われると、「いじめがあったかどうかが、この法廷で明らかになってほしい」と述べた。

 

当時の担任も証言

男子生徒と元同級生の当時の担任教諭も証言した。

担任教諭は中2の時に男子生徒の担任になった。引き継ぎの際、父親から叩かれるなどの暴力を受けていたと聞かされていたという。担任となり、男子生徒が「家に帰りたくないので野宿をしている」との話も当時、聞いていたという。

被告側の弁護士には、男子生徒が自殺した理由を問われた。担任教諭は「家で何かあったんだろうかと思った」「いじめが原因とは全く思っていなかった」と話した。

原告側の弁護士からは、男子生徒が元同級生から顔に落書きをされ周囲から笑われているのを見た時の心境を問われ、担任教諭は「気の毒だと思った」「そういうことはするなよと言ったと思う」と述べた。

最後に、「こうできていたらなと思うことは」と尋ねられ、「父親が嫌だとか家に戻りたくないとか聞いたときに、何か手助けできなかったかなと思う」と結んだ。

次回は12月14日。別の元同級生とその保護者3人が出廷する予定。(藤牧幸一、石川友恵)

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平成29年11月28日朝日新聞大阪本社版
机に大量の紙切れ「じゃれあいと判断、不適切」 学校側

神戸市内の私立高校に通う女子生徒(18)が今年2月、同級生からいじめを受けて自殺未遂をした問題で、高校の教頭が27日、朝日新聞の取材に応じ、「(いじめへの)初期対応に問題があった」と語った。
この問題では、学校側が第三者委員会を設置。調査の結果、同級生グループが昨年9月、女子生徒の机や椅子に大量の
紙切れを貼りつけた行為をいじめと認定した。また、担任教諭が「(仲間同士の)じゃれあい」と判断し、校内で情報共有しなかった問題点などがあったと指摘した。
第三者委はこうした実態を踏まえ、いじめと自殺未遂の因果関係を認めた。教頭は調査結果を受け入れるとしたうえで、
「『じゃれあい』という判断は不適切だった。調査結果を真摯に受け止めている」と話した。さらに「教諭が一人で抱え込まず、情報共有を徹底したい。再発防止に向け、組織的に取り組んでいく」と語った。
女子生徒は自殺未遂後に意識障害に陥り、3カ月以上にわたって入院。現在も通院治療を続け、学校に通えていない。
教頭は「(SOSを見抜けずに)女子生徒には申し訳なかった」と述べ、近く学校として女子生徒と保護者に謝罪に出向く予定としている。(高松浩志)

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平成29年11月28日付朝日新聞東京本社版夕刊
いじめ受け自殺未遂「怖くて学校休んだ」 女子生徒の声
いじめ自殺未遂
公園で母親(右)の腕に手を回す女子生徒=11月、兵庫県内

 神戸市内の私立高校に通う女子生徒(18)が今年2月、いじめを受けて自殺未遂をした問題で、女子生徒と母親37)が朝日新聞の取材に応じた。女子生徒は「(私をいじめた相手が)今も怖い」とする一方、同じような悩みを抱える人たちに「苦しさを抱え込まないでほしい」と語った。
 学校が設けた第三者委員会の調査報告書によると、女子生徒は昨年9月、同級生グループから、教室の自分の机や椅子に
大量の紙切れを貼りつけられるいじめを受けた。女子生徒は衝撃を受けたが、「どのように反応すればいいのかわからなかった。笑いたくもないのに笑った」と振り返った。
 この状況を見た担任教諭は「(仲間同士の)じゃれあい」と判断し、校内で情報共有するなどの対策は取らなかったという。その後もいじめは続いたといい、女子生徒は「聞こえるように悪口を言われ、気に障ることがあると私のせいにされた。学校が怖くて休むことが増えました」。
 思い悩んだ女子生徒は2月24日、兵庫県南部の公園で自殺を図った。その直前、母親と姉に無料通信アプリ「LINE」で「もう、いっぱい我慢したかなって思う」などと自殺を示唆するメッセージを送っていた。母親はすぐ警察に連絡し、女子生徒の携帯電話を鳴らし続けた。「生きていてほしいと必死でした。警察に『とにかく捜してほしい』と訴えました」と話す。
 女子生徒は卒業後に専門学校に進学する予定だ。母親は「専門学校でもまたいじめられるのではと時々不安になるみたい」といい、「大丈夫。大丈夫やで」と声をかけているという。
 女子生徒は「今もいじめられた相手が後ろにいたり、声が聞こえたりするように感じる時がある」と話す。それでも、こう思うようになったという。「私は死のうとした。でも、いじめを受けている人は、大切な人に、少しでも早く打ち明けてほしいと思う」(高松浩志)
 《いじめによる自殺で一人娘を亡くし、いじめ問題に取り組む川崎市のNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」理事の小森美登里さんの話》 2013年9月にいじめ防止対策推進法が施行され、対策組織の常設が各校に義務づけられたが、形式的なものにとどまり、問題が起きても情報共有すらなされないことも多い。深刻ないじめを「じゃれあい」と受け止めた今回のケースは典型的だ。自殺未遂にまで追い込まれた女子生徒の苦しみを癒やすのは容易ではないが、周囲の大人たちが「あなたが死んだら悲しい」と繰り返し伝え、SOSに気づかなかったことに心からの謝罪をするしかない。

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平成29年11月27日朝日新聞
机に大量紙切れ、高2自殺未遂 第三者委「いじめ」認定
机に大量紙切れ
大量の紙切れが貼りつけられた女子生徒の机と椅子。写真を撮った後、そのまま午後の授業を受けたという
(2016年9月30日、家族提供)

 神戸市内の私立高校に通う女子生徒(18)が今年2月に自殺未遂をし、学校が設けた第三者委員会が「いじめが日常的にあった」とする調査報告書をまとめたことがわかった。いじめと自殺未遂との因果関係も認定し、学校側の対応について問題があったと指摘した。学校側は報告書の内容を精査したうえで、兵庫県に提出するとしている。
 女子生徒は2月24日、兵庫県南部の公園にある石垣(高さ約13メートル)から飛び降りて頭などを打ち、3カ月以上にわたって入院した。学校は重大事態と判断し、いじめ防止対策推進法に基づいて第三者委員会を設置した。
 報告書によると、女子生徒は2年生だった昨年秋以降、同級生のグループから、机や椅子に大量の紙切れを貼りつけられたり、聞こえるように「(高校を)さっさとやめろや、ブス」などと悪口を言われたりするいじめを受けた。
 こうした実態を踏まえ、報告書は「いじめがなければ、自死(自殺)行為に至らなかったことは明らかだ」と指摘。さらに担任教諭が紙を貼りつける行為を「(仲間同士の)じゃれ合い」と判断し、学校内で速やかな情報共有がなかった点などを問題点として挙げ、
学校側が組織・継続的に対応していれば、自殺未遂を相当程度の確率で防げたと結論づけた。
 女子生徒は自殺未遂直後に意識障害に陥ったといい、現在も「死んでしまえ」という幻聴やいじめた同級生の幻覚に悩まされ、通院治療を続けている。朝日新聞の取材に対し、「いじめが認められたことはうれしかったけど、まだ『生きていてよかった』とは思えない」と話している。(高松浩志)

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平成26年11月26日朝日新聞
息子の死から4年半…アンケートに「部活で孤立」の様子
北海道指導死
自宅のリビングに飾られた悠太さんの遺影。好きだったイチゴのお菓子が供えられている=札幌市

 北海道立高校の男子生徒が4年前に自殺したことをめぐる訴訟で、札幌地裁が道側に、学校が生徒に実施したアンケート結果を証拠として提出するよう命じていたことがわかった。
 亡くなった高校1年、悠太さん(当時16)の母親(50)は息子の死から4年半を経て、A4判27枚のアンケート結果を手にした。
ずっと学校や北海道に求めながらも、拒まれてきた内容。「やっとスタートラインに立った気持ち。記載されている内容の一つひとつを、遺族や学校が共有することが大切だ」と話した。
 悠太さんは中学からトランペットを始め、高校でも吹奏楽部に入った。「お世話になった人に成長を見せたい」と、全国規模の大会への出場を目指し練習していた。ところが、部員とのトラブルをきっかけに、顧問から厳しい叱責を受け、「『もう誰とも連絡をとるな、行事にも参加しなくてもいい』と言われた」と母親に話した翌日、自ら命を絶った。
 学校側は「適切な指導」と説明したが、自殺直後に実施した、25人の部員を対象としたアンケートは結果の概要を伝えるだけで、詳細の公表を拒んできた。母親は個人情報保護条例に基づいて開示を求めたものの、拒否されたため、裁判を通じて提出を求めた。
 開示されたアンケートには、悠太さんが顧問の叱責によって、部内で孤立した様子を伝える記述もあったという。この間、学校が
全校生徒を対象にアンケートを実施しながら、結果を破棄したことも分かった。「せめて、子どもに何があったのかを知りたいと願う親の気持ちを、なぜそこまで踏みにじるのか。今回は裁判所が遺族の気持ちをくんでくれた」と話す。
 福井県池田町では3月に中学2年生の男子生徒が自殺し、町教委の調査委員会が10月、「教師による厳しい叱責」が原因と指摘した。母親は悠太さんの死も同じような「指導死」だと訴える。少しでも真実が明らかになればとの思いで始めた訴訟は30日、8回目の弁論を迎える。(峯俊一平、布田一樹、芳垣文子)

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平成29年11月26日朝日新聞
生徒アンケートの提出命じる 高校生自殺めぐり札幌地裁

 北海道立高校の男子生徒が4年前に自殺したことをめぐり、母親が北海道を訴えている訴訟で、札幌地裁が道側に「学校が自殺後、生徒に実施したアンケート結果を証拠として提出せよ」と命じる決定をしていたことが分かった。道側は「提出すれば生徒の信頼を裏切り、同様の調査が困難になる」などと反対したが、湯川浩昭裁判長は「個人情報を隠すなどすれば、教育行政上の支障があるとは言えない」と判断した。決定がきっかけとなり、道側は遺族にアンケートを開示した。
 子どもが自殺をした場合、同級生へのアンケートや学校側による調査の結果開示について遺族と行政が対立するケースは多い。原告側の秀嶋ゆかり弁護士は「全国的に見てもあまり例がない決定。同様の訴えを起こす人の励みになる」と話す。亡くなった生徒は吹奏楽部に所属し、母親は「顧問の激しい叱責が原因で自殺した」として、北海道に約8千万円の損害賠償を求めている。
 提出を命じられたのは、学校が生徒の自殺翌日、吹奏楽部員25人に行ったアンケートの結果。札幌地裁は「秘密として
保護に値する」としたうえで、遺族へ説明しなければならない学校が、事実関係を調べるためにアンケートを行った側面も
あると指摘。「訴訟の審理に必要な範囲で、遺族に開示されることを望まない趣旨で生徒たちが回答したとは認められない」と判断した。
 一方、自殺した生徒と他の部員の間でやりとりされ、教員が自殺前に受け取っていたメールは「提供者が特定されるおそれが大きい」などと、提出を命じなかった。
 決定は7月に出された。道側は不服として抗告したが、秀嶋弁護士によると札幌高裁が地裁の判断を支持する見通しとなったため、今月20日になって、母親に開示した。名前など個人の特定につながる記述は黒塗りで、筆跡の特定を避ける
ため、原本がパソコンで打ち直されていた。
 訴状によると、生徒は2013年1月、他の部員とのメールがきっかけでトラブルになった。顧問の男性教諭は生徒のみを指導し、生徒は部員全員の前で謝罪。同年3月にも叱責を受け、翌日に自殺をした。(峯俊一平)

高校生の自殺と、アンケートをめぐる流れ
2013年3月 高校1年の男子生徒(当時16)が自殺。翌日、高校が生徒の所属する吹奏楽部員にアンケート
2014年5月 生徒の母親が北海道にアンケートの開示を求めるも、非開示
2015年11月 母親が北海道の情報公開・個人情報保護審査会に異議を申し立て
2016年3月 母親が北海道に損害賠償を求めて札幌地裁に提訴
   9月 審査会が「非開示は妥当」と答申
2017年2月 母親側が、訴訟でアンケートを証拠として提出するよう求める
   7月 札幌地裁が提出を命じる決定。北海道は札幌高裁に抗告
   11月 高裁が地裁の決定を支持する見通しとなり、北海道がアンケートを母親に開示

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平成29年11月25日朝日新聞熊本版
高1自殺、第三者委答申

宮尾千加子教育長(左)に報告書を答申する岩永靖会長=24日、熊本県庁

 県のいじめ防止対策審議会(会長=岩永靖・九州ルーテル学院大准教授)は24日、県立学校で自殺や自殺未遂などの重大事案が発生した場合に、学校だけでなく、県教育委員会が設置する第三者委員会が調査を行うべきだとする意見をまとめ、県教委に答申した。
 県教委付属の審議会は、熊本市内で寮生活をしていた県立高校1年の女子生徒(当時15)が2013年、夏休み中の8月17日に上天草市内の自宅で首をつって自殺した事件を受け、重大事案発生時の調査主体や寮の管理のあり方を審議していた。
 この自殺を巡っては、学校の調査委員会が16年2月に調査結果を報告したが、遺族が不服とし県のいじめ調査委員会が再調査して今年7月に報告書をまとめた。女子生徒が自殺に至った直接原因を「特定できなかった」とした一方、いじめや、不平等な役割分担を強いる事実上の寮則などが原因で寮生活を続けられないと思い至ったと指摘。夏休み明けに寮に
戻らなければいけないと感じ「うつ状態」となったことが自殺につながったとした。
 答申では、公平・中立な調査をするために、第三者委員会などが調査を行うべきだとし、自殺には至らない重大事案についても、必要と判断すれば調査をするとした。寮の適正管理については、慣例化した寮規則を明文化して入学前の生徒や保護者に情報共有することなどを提言。授業や部活を受け持つ教諭が寮まで管理するのは難しいとして、新たに寄宿管理業務職員を配置することも提案した。県教委は、寮を設置している県内13校の校長会議を9月に開き寮規則について調査を始めるなど、一部で対応を進めている。
 答申を受け、県教委の宮尾千加子教育長は「学校が全ての子供たちにとって安全安心な居場所となるように、成長が達成
できる場所になるように、関係機関と協力して今後さらに全力を挙げていく」と話した。(杉山歩)

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平成29年11月23日朝日新聞新潟版
いじめ第三者委、人選難航 候補未定や教員委員も
新潟いじめ1
いじめ事案について話し合う県教委の第三者委員会=8月29日、県庁
新潟いじめ2
 第三者委員会の設置や委員の人選は、各教育委員会や学校に任されている。

 いじめ問題が起きたとき、第三者委が調査に乗り出すのか、メンバーはどうなるのか――。県と県内30市町村の各教育委員会の担当者に聞いてみた。
 第三者委を常設している自治体は県と9市町、常設していないのは21市町村だった。13市町村は委員候補者に打診していなかった。加茂市の担当者は「問題を起こさないことが最優先と考えている。候補者の検討はしていない」と述べた。
 「検討しなければいけないと思っている」。多くの自治体の担当者は口をそろえる。だが、「前例がないので見通しが
立たない」(魚沼市)、「人件費に充てる予算を確保しないといけない」(阿賀野市)。準備が必要だと感じつつも、手が
回っていない自治体があるのが現状だ。
     ◇
 国のガイドラインでは、委員には弁護士や精神科医など外部有識者を選ぶとされているが、地方には難題だ。
胎内市の担当者は「他の自治体とかぶらないように選びたいが、県内に専門家は限られている」と話す。湯沢町は、町議やPTA会長を委員候補に想定している。
 国が推奨する教育分野の専門家の確保はさらに難しい。県内で第三者委を設けている10自治体のうち、少なくとも4市が地元の元教員や現役教員を委員としている。
 被害者側からみれば、教員が問題に関係するケースもあり、同じ教壇に立つ側の教員が委員に入ることに抵抗を感じるという意見もある。元市立中学校長が第三者委の委員長を務める新発田市の担当者は「生徒指導の実績を見て選んだ。委員長になったのは第三者委の互選で、市教委は関わっていない」と話す。
 地元に大学のない自治体からは「遠方の教授には頼みづらく、コストもかかる」という声が上がる。
     ◇
 県や新潟市と異なり、常設の第三者委を持たない自治体は、いじめ重大事態が起きてから初めて設置の検討に入る。
ただし、調査対象となる子どもたちの環境は短期間で変わるため、迅速な態勢づくりが重要だ。
 昨年12月、東日本大震災後に福島県から避難している下越地方の中学校の女子生徒が、同級生から「菌」と呼ばれるいじめを受け、不登校になった。委員の人選に時間がかかり、第三者委の初会合が開かれたのは今年4月。
女子生徒たちがすでに進級した後だった。
 この問題の第三者委に名を連ねている委員は「子どもの記憶は大人に比べて薄れやすい。調査の質も学校ごとにバラバラ。学校の初期調査がしっかりしていないと、事実が明らかにできないこともありうる」。
 いじめ問題に詳しいNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)の小森美登里理事も、「問題が起きた直後であれば子どもは正直だが、時間がたつほど関わりたくなくなる」と、初動の重要性を強調する。

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平成29年11月22日毎日新聞
周南いじめ自殺 部活指導の適否、第三者委が判断放棄

周南いじめ
高校2年生の自殺事案を検証した最終報告書について記者会見する第三者委の委員長、田辺山口大教授(左から2人目)ら
=山口市の県庁で2017年11月21日午後1時2分、土田暁彦撮影

 山口県周南市で昨年7月、県立高校2年の男子生徒(当時17歳)が自殺した問題で、県教委設置の第三者委員会(委員長、田辺敏明山口大教育学部教授)は21日、記者会見し、生徒が自殺の8日前から参加していた野球部の練習で、顧問の指導が適切だったかについて、県教委に判断を委ねる方針を示した。遺族らは「第三者委の責務を放棄している」などと反発している。
 第三者委は記者会見で最終報告書の概要版(21ページ)のみを公表。本体の報告書(183ページ)は「生徒への聞き取りが、公表を前提にしたものでなかった」として非公表とした。
 毎日新聞が独自に入手した最終報告書は、学校生活で一部にいじめがあったと認定し、野球部での練習もストレス要因に
なったとした。一方、野球部の詳しい練習内容には踏み込まないまま「練習メニューに加減がなされていた」などの顧問の
主張を載せ、顧問の指導について「練習における配慮が十分だったか検討の余地がある」と記載するにとどめている。
 会見で、顧問の指導の適切さを判断しなかったことについて田辺委員長は「運動部の練習が適切なのか客観的な基準が分からない」と述べ、県教委に判断を任せる意向を示した。
 遺族は「顧問の指導を含む教員の対応について第三者委の調査が不十分」として、村岡嗣政知事に第三者委の構成員を代えるなどして再調査するよう要望する意向だ。
 いじめ調査に詳しい野口善國弁護士(兵庫県弁護士会)は「第三者委は顧問の言い分をうのみにせず、別の教員や生徒の
証言に照らして事実認定すべきだ」と指摘。また、「学校事故事件遺族連絡会」世話人の山田優美子さん(48)は「そもそも身内の県教委では信頼できないから第三者委を設置したはずだ。あくまで県教委は調査される側であり、県教委に判断を
委ねるのは見当違いで、第三者委の責務を放棄している」と話している。【土田暁彦、祝部幹雄】
 ◆最終報告書の骨子
・男子生徒は学校生活で日常的にからかわれるなど“いじり”を受け、一部はいじめに該当する。
・生徒は野球部の顧問に頼まれ、練習に参加。元々所属していたテニス部員から無料通信アプリ「LINE(ライン)」に
「部室の荷物を捨てる」などと書き込まれたのは、いじめに該当し、両部の顧問らは連携不足があった。
・個々のいじめや“いじり”は、多数あるストレス要因の一つで、一つ一つの影響は少ない。いじめのみを自殺の原因と
考えることはできない。

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