2016年11月9日 中国新聞社

府中緑ケ丘中PTA会長

小浜樹子さん(53)

「地域も巻き込み、開かれた学校づくりを進めたい」と話す小浜さん
1963年、北海道恵庭市生まれ。90~96年に大阪地裁などで裁判官を務めて退官。97年、大学院教授の夫の仕事の都合で府中町に転居した。町教育委員。府中緑ケ丘
中に娘4人が通い、現在は四女が在学中。

教員と保護者緊張感を

-広島県府中町教委が設置した第三者委員会の報告書をどうみますか。
初めて知ることが多かった。(自殺が起きた)府中緑ケ丘中には長女が入学した約10年前から関わり、荒れていた時期もあった。校内の連携不足に違和感
を感じていたが、報告書でその正体を見た気がした。
-報告書で初めて知ったこととは。
私立高入試の専願・推薦基準の変更について、校内協議で教員同士の意見が割れ、もめたと書かれていた。生徒の将来を左石する重大事なのに、保護者の
目の届きづらい空間で議論されていたことに驚き、学校の閉鎖的な体質をあらためて感じた。協議の段階で知っていれば、保護者として意見を言えたのにと
思う。
-保護者からはどんな学校に見えていたのですか。
生徒や保護者から「先生によって当たり外れがある」「進路相談を聞いてくれない」という声は聞いていた。教員の指導方法も個人プレーで、学校が一丸
となって生徒を育てるという気概を感じられなかった。ただ、保護者も校長に伝えるなど踏み込んだ行動をしてこなかった。
-本年度からPTA会長を引き受けました。
前任者から頼まれたこともあるが、「中学校をよくしていかないと」という覚悟があった。
同時期に校長や教頭など学校の管理職も代わった。私はまず「学校の情報をきちんと公開してください」とお願いした。新しい校長は専願・推薦の基準につい
ての学校の考え方を保護者に説明した。
-PTAの取り組みは。
教員と一緒になって家庭、学校での困り事や子どもの異変を話し合う交流会を3回企画した。毎回、ほぼ全教員と保護者約70人が参加した。風通しはよ
くなっている。
報告書には再発防止のための提言も書かれていたが、学校がすぐに変わるとは思っていない。学校は生き物。ちょっと気を抜くと、やすきに流れる。男
子生徒の死は「何のために教師に、親になったのか」を考える者の関係も単に仲良くなるだけでなく、互いに監視すべき点は監視し合う。緊張の糸は切らさ
ない。今回の自殺がなぜ起きたのか、学校全体で考える機会をつくり、何をすべきかを考えたい。

(木原由維)

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2016年11月8日 中国新聞社

町教委が設けた第三者委員会メンバー

中田憲吾弁護士(56)

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「男子生徒と教員との間に十分な信頼関係ができていなかったのが悔やまれる」と強調する中田弁護士

1959年、広島市南区生まれ。 92年に弁護士登録し、広島弁護士会副会長などを歴任。数多くの少年事件の弁護人などを担当してきた。 NPO法人「子ども虐待ホットライン広島」の副理事長も務める。

生徒・教員 信頼関係欠く

誤った万引記録に基づく進路指導後に広島県府中町の府中緑ケ丘中3年の男子生徒(15)が昨年12月に自殺した問題で、町教委が設けた第三者委員会が、進路指導や学校運営に問題があったとする報告書をまとめた。どう総括し、再発防止に向けて何に取り組むべきなのか。委員会のメンバーや保護者、学識経験者たちに思いを聞いた。

-第三者委として原因究明は十分にできましたか。

男子生徒は周囲に悩みを打ち明けていなかった。原因の特定が困難な中、さまざまな立場の委員が関係者に当時の状況を聞き取り、分析した。もう少し関係者への聞き取りが必要との意見もあったが、スピード感も大事。役割は果たせた。

-最大の問題点とは。

いくつかの不運が重なった結果と言えるが、男子生徒と担任教員の間に信頼関係が不足していたことが大きい。担任は、優秀だと思っていた男子生徒が1年時に万引をしたと記載された資料を見て、驚いた。自然な会話ができ、事実をきちんと確認し合う関係であれば、誤った記載であることに気付けたのではないか。

-男子生徒が反論せず、誰にも相談したりしなかったのはなぜでしょうか。

あまり自分の意見は言わないなど、本人の性格もあるだろうが、「どうせ言っても、先生は聞いてくれない」と本人が家族に漏らしていたように、学校への不信感があったことも影響しているのかもしれない。

-報告書では、私立高入試での専願・推薦基準の変更が自殺のきっかけと指摘しています。

1年生の時に触法行為をした場合も推薦・専願が不可と決め」たことについては到底、理解できない。専願・推薦をちらつかせて生徒指導することに陥りがちで、とても生徒を見て指導しているとはいえない。こうした指導が、生徒との信頼関係を欠く背景にあったと言わざるを得ない。

-なぜ、こうした基準変更をしたのでしょうか。

基準の変更に関わった3年生担当の教員に聞き取りをした結果、経験のある特定の教員たちの意見が決定に影響していたことが分かった。突然の基準変更に疑問を感じ、悩んでいた教員はいたが、これらの意見は受け入れられなかった。聴取した当時の校長は「その判断を尊重した」と説明したが、もっと慎重に評価し、自分の意見を述べるべきではなかったか。組織の合意形成や校長のりリダーシップにも問題があった。

-再発防止として特に重要と思うことは何ですか。

学校は外部と閉ざされがちだ。学校生活に悩みを抱える生徒や、組織運営に不満のある教員たちが気軽に相談できる相談窓口を外部に設けるべきだろう。

(門戸隆彦)

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2016年11月8日 中国新聞社

府中町の府中緑ケ丘中3年男子生徒が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、町は7日、町総合教育会議を開いた。再発防止に向け、町教委に来年度 「(仮称)学校支援室」を新設するなど今後の取り組みの方針を決めた。

高杉良知教育長を含む5人の教育委員と佐藤信治町長が出席。第三者委員会が3日に出した報告書の提言に沿い、①教員が問題意識を共有するための研修充実②外部から学校をチェックする仕組みづくり③支援室新設など町教委の体制強化-の三つの柱を決めた。

支援室は来年度の新設を目指し、指導主事の増員などで学校への助言と連携強化を図る。本年度中に非常勤の専門家を招くことも検討する。いずれも、同会議に先立って開いた臨時の教育委員会議で原案をまとめた。

高杉教育長は「遺族や保護者の意見も聞いた上で具体的な改善策にしていく」とし、佐藤町長は「実行できるものは補正予算を12月にも組んで対応したい」と話した。

(田中伸武)

 

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平成28年11月5日 朝日新聞広島版

生徒と教師の信頼関係築けず 中3自殺で第三者委

写真・図版

最後の調査検討委員会を開いた後に会見する第三者委員会のメンバー=府中町本町1丁目

 

 府中町立府中緑ケ丘中学校3年の男子生徒(当時15)が誤った万引き記録を基にした進路指導を受けた後に自殺した問題で、町教委は4日、第三者委員会がまとめた報告書の全文を報道陣に公開した。

「生徒との信頼関係を丁寧に築いていく姿勢が不十分」とし、生徒指導への姿勢や推薦基準の機械的な運用など多くの課題を示した。

 個人情報を伏した報告書によると、第三者委は男子生徒と同学年の生徒・保護者にアンケートを実施。

生徒指導について「丁寧に細かく指導してくださった」と肯定的なものもあったが、「頭ごなしに物事を決めつけ生徒の話を聞こうともしない先生がいた」「先生方は『生徒はうそつきだから』と平気で言っていた」などの意見があった。

 第三者委員会は3日夜、25回目の調査検討委員会を開催。委員長の古賀一博・広島大大学院教授が町教委の高杉良知教育長に報告書を手渡した後に会見した。

 報告書は、志望する私立高への推薦が認められず、生徒と担任の間に適切なコミュニケーションがなかったことが男子生徒の自殺のきっかけと指摘した。副委員長の阿形恒秀・鳴門教育大大学院教授は「『どうせ言っても先生は聞いてくれない』という(亡くなった)生徒の言葉が象徴している」と説明した。

 また、入学後に触法行為があれば一律に認めないと昨年11月に推薦基準を変更したことについて、報告書は法律で14歳未満の行為は有責性がないとしていることを指摘。「少年法の理念の無理解」と断じた。

 最後に古賀委員長は「教員たちは今回の答申を共有して自分たちの問題ととらえてほしい」と意識改革を求めた。報告書を受け、県教育委員会の下崎邦明教育長は「このような悲しいことが二度と起こらないよう全力で取り組みを進める」とのコメントを出した。

     ◇

 府中緑ケ丘中は5月に推薦の方針を改めた。志望理由が明確か、学習や部活に意欲的かなどの観点から、生徒に努力や成長がみられるかを踏まえ、総合的に判断しているという。(泉田洋平、加治隼人、久保田侑暉)

 

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平成28年11月4日 朝日新聞

「万引き」誤記録で自殺、第三者委「強権的な指導」

 広島県府中町の町立府中緑ケ丘中学校3年の男子生徒(当時15)が昨年12月、誤った「万引き」の記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、原因や再発防止策を調査、検討する第三者委員会が3日、町教育委員会に報告書を提出した。強権的・抑圧的な指導に陥り、学校が共感的な支援をしなかったことなどを問題点に挙げ、生徒指導や情報管理の見直しを求めた。

 報告書は、やっていない「万引き」を理由に私立高への推薦はできないと告げられたことが、生徒の自殺要因の一つになったと指摘。教諭と生徒の信頼関係が不十分で、教員間の不適切な引き継ぎに基づく「万引き」との指摘に生徒が否定できなかった点など複数の要因が重なり、自殺に至ったとした。

 また合格を最優先にする「出口指導」の結果、生徒の意識や適性への配慮を欠いた「心の通わない進路指導に陥った」と指摘。町教委や県教委も的確な情報把握をせず、指導や助言が十分ではなかったとした。

 さらに学校側が、3年生の進路決定直前の昨年11月に推薦基準を変更し、入学後に万引きなどの触法行為があれば機械的に私学推薦を認めないことにした点について、他の中学では行われておらず、平等性を欠く「不利益処分」と批判。そのうえで再発防止策として、組織的な学校運営体制の確立や教員と生徒の信頼関係の確立、教育相談体制の充実などを提言した。

 第三者委は生徒の自殺を受けて町教委が今年3月、弁護士や教育の専門家ら5人で設置。生徒の遺族や他の生徒、教員らに聞き取りをし、生徒へのアンケートを分析するなどしてきた。

 委員長の古賀一博・広島大大学院教授は会見で「教員たちは今回の答申を共有して自分たちの問題ととらえてほしい」と話した。

 男子生徒の遺族は、代理人の弁護士を通じて「息子の気持ちを考えると、今でも胸が痛い。答申の内容を拝見する限り、我々の思いをくんでくれたと思います。これを受けて教育委員会や学校、個々の先生がどう受け止め、どう対処されるのか見守りたい」とのコメントを出した。

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2016年11月4日 中国新聞社

推薦基準変更きっかけ 第三者委が報告書提出 教育的視点欠く

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、町教委が設けた第三者委員会は3日、学校推薦の基準変更で男子生徒が志望校を受験できなくなったことが自殺のきっかけだったとする報告書をまとめ、町教委に提出した。推薦基準を機械的に運用し、教育的視点を欠いていたとし、学校運営に問題があったと結論付けた=23・25面に関連記事。(長久豪佑、山田太一)

担任教諭が誤った万引記録を基に推薦を出せないと伝えた点について報告書は「生徒は親にどう伝えればよいか苦悩したと思われる」と指摘。男子生徒が万引をしていないと言い出せなかった理由は「教員と信頼関係が築かれておらず、適切なコミュニケーションが成立しなかった」とした。その上で「複数の要因を背景として自死に至った」と判断した。

同中では、問題行動が多発した時期があり、入試を控えた昨年H月、推薦を出すかどうかの判断基準とする非行歴を例年の「3年時のみ」から「1~3年時」に広げた。担任は男子生徒の非行歴を調べ、校内のデー夕に残っていた誤記録を基に指導したとされる。

報告書はこの点に関し「進路指導を検証すると、推薦基準を機械的・形式的に運用した問題点が見いだせる。生徒一人一人の状況を踏まえ総合的に判断するという教育的視点を欠いている」と批判した。

この日は、委員長を務める古賀一博・広島大大学院教育学研究科教授が高杉良知教育長に報告書を提出。「各教員が自分の問題とし捉えてほしい」と求めた。高杉教育長は「真摯に受け止めたい。再発防止もしっかり実行する」と述べた。

生徒の両親は代理人を通じ「個々の先生がこの報告をどう受け止め、どう対処するか見守っていきたい」とのコメントを出した。

報告書骨子

〇自死のきっかけは、推薦・専願基準の運用変更で、生徒の志望校の専願受験が認められなかったことと考えられる。

〇推薦・専願基準を機械的・形式的に運用した。生徒ー人一人の状況を踏まえ総合的に判断するという教育的視点を欠いた。

〇生徒と教員の間に日常的な信頼関係が十分に構築されておらす、学校が 共感的なサポートをしなかったなど、複数の要因を背景に自死に至った。

〇学校運営に大きな課題かおる。生徒に寄り添った進路指導が十分でなく、強権的・抑圧的な指導に陥り、信頼関係を築く姿勢が不十分たった。

生徒自殺の原因究明には至らず
解説
第三者委員会の報告書は再発防止に力点を置き、進路指導の問題点に踏み込んだ一方で、生徒が自殺した原因を突き詰めるには至らず、限界も示した。
委員会は、2月に学校がまとめた調査報告には頼らない姿勢で、独自に生徒アンケートや聞き取りを重ねた。しかし新たな事実は出ず、この日の記者会見ではしばしば「学校の報告書の通り」と説明。生徒との面談の様子も「担任の報告に大きな食い違いはない」と学校報告を追認した形だ。 なぜ自殺に至ったかという最大の課題に対する説明も、「原因」という言葉は一切使わず、「複数の要因が背景」とした。具体的な責任の所在も不透明なままのもどかしさが残る。
一方で、学校推薦基準の運用は、学校報告にない法的視点なども加えて批判。
1年生時の非行を挙げるのは「14歳未満の責任を認めない刑法、少年法の無理解」「不利益処分の遡及」と指弾した。
町教委や県教委に「指導・助言が不十分」と苦言を呈しただけでなく、私立高の推薦制度にも踏み込んで課題があると警鐘を鳴らした。教育界全体に対する委員会のメッセージとなった。
(田中伸武)

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府中町の中3自殺 昨年12月8日、府中町立府中緑ヶ丘中3年の男子生徒=当時(15)=が自宅で自殺した。学校側が「1年時に万引をした」との誤った記録を基に、私立の志望校入試で推薦をしないと伝えた後だった。複数の教員の内規違反が重なって誤記録が引をした」との誤った記録を基に、私立の志望入試で推薦をしないと伝えた後だった。複数の教員の内規違反が重なって誤記録が引き継がれていたことなど不適切な対応が相次いで判明。町教委は第三者委員会を設け、自殺の背景と原因究明▽学校と町教委の対応検証▽再発防止策-などを諮問した。

(23面)

「誤り認められた」府中町中3自殺

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委員とともに記者会見に臨み、報告書について説明する古賀一博委員長(中)

<男子生徒の自殺問題の経緯>

2013年10月 別の生徒が万引。学校のデータに誤って当時1年生の男子生徒の名前が記録される

15年11月20日 高校入試の推薦・専願基準の運用変更を決定。 1年生時までさかのぼり、非行歴があった生徒の推薦・専願を認めないこととする

12月4日 担任教諭が1年生時の資料を調べ、志望校への推薦ができないと男子生徒に伝える

12月8日 三者懇談に男子生徒は出席せず、自宅で自殺

12月9日 全校集会で急性心不全と説明

12月10日 万引記録が別人だったと判明

16年3月8日 学校と町教委が保護者説明会を開き男子生徒が自殺だったと報告

3月9日 文部科学省副大臣が来町、調査

3月31日 町教委が委嘱した第三者委員会が初会合

11月3日 第三者委員会が報告書提出

遺族、報告書に心境

「生徒と教員の間に日常的な信頼関係が構築されていなかった≒生徒に寄り添った進路指導が十分でなかったす。広島県府中町立府中緑ヶ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で3日、町教委の第三者委員会の報告書は指摘した。遺族や保護者は一定の理解を示す一方、再発防止の提言に物足りなさを指摘する声も上がった=1面関連。      (有岡英俊、明知隼二、木原由維)

防止策望む保護者も

「息子の気持ちを考えると今でも胸が痛む。家族の思いをくんで、学校側の対応がおかしかったということを認めてもらえた」。生徒の両親はこの日、同委員会から報告書の説明を受け、代理人の武井直宏弁護士を通じて報道陣に心境を伝えた。

同委員会は、教員による内規違反が重なって生徒の1年生時の誤った万引記録が引き継がれ、事実と異なる記録を基に、担任が進路面談をしていたなどとする学校の調査報告を改めて認定した。両親は「教師の言葉は重みがある。教師の接し方次第でこのような悲しい結果になることを心にとどめてほしい」と願った。

東広島市でも2012年、教諭の指導後に中学2年男子生徒=当時(14)=が一自殺した。「遺族はどうして防げなかったのかという気持ちを持ち続ける」とその父親(47)は言う。府中町の同委員会の報告書について「教諭とのやりとりや学校での様子を含め、なぜ命を絶つことになったのか納得できる内容だったのだろうか」と両親を気遣った。。

報告書は、再発防止策として、教員と生徒の信頼関係に基づく生徒指導の確立などを求めた。府中緑ケ丘一中の自殺した男子生徒と子どもがクラスメートだった会社貝男性(45)は「全く物足りない。どこかで聞いたような理想像ではなく、具体策を聞きたかった」。同校に次男が通う女性(43)は「子どもを信頼するのは大前提。教員は、その子のためにという思いを持って子どもに向き合ってほしい」と求めた。

佐藤信治町長は4日、高杉良知教育長から報告書の説明を受ける予定。「自殺の背景やきっかけがあることを深刻に受け止める。町として中身の伴った対策に取り組んでいく」とする。

広島県教委の下崎邦明教育長は「内容を精査し、速やかに必要な対応を検討し、二度と起こらないよう全力で取り組みを進める」とのコメントを出した。

推薦基準見直す″中緑ヶ丘中

府中緑ヶ丘中は昨年12月の男子生徒の自殺を受け、本年度から私立校入試の校長推薦の基準を変更するなど進路指導の在り方を改善している。

推薦を出すかどうかの基 準は入試を控えた昨年11月、3年生時だけでなく、1年生時にまでさかのぼって非行歴がある場合には推薦を出さないと変更したが、現在は生徒の成長を踏まえて総合的に判断するように見直した。アンケートをして保護者の意見も採り入れ、本年度初めに生徒や保護者に考え方を示した。

受験先などを決める生徒、保護者、担任の三者懇談は例年12月上旬に開くが、本年度は11月初めにも開催。よりきめ細かい指導を目指す。

教職員は4月以降、男子生徒の月命日に黙とうして始業する。PTAは、本年度から有志がボランティア組織「緑の輪」をつくり、校内の清掃や草刈り活動をする。「地域で支える意識が強まった」と話す保護者もいる。  (田中伸武)

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検証十分といえず

「指導死」親の会の大貫隆志代表世話人の話

学校側の当時の対応を厳しく指摘している点は評価するが、自殺の背景を「複数の要因」としたのはあいまいで、一検証の役割を十分果たしたとはいえな い。だから、再発防止策も総花的になっているように思える。指導による生徒の自殺が全国で相次いでいることをもっと重く受け止めてほしい。また、自殺の背景で生徒「パーソナリティーの特性」を挙げたことはヽ同じく子を失った親としてたまらない。追い込まれ、正常な思考ができなくなるのが自殺だからだ。


問題点捉えた内容

東広島市の中学2年男子生徒の自殺問題で第三者委員会の委員長を務めた吉中信人広島大大学院教授(少年法)の話

任意の聞き取りで事実関係を浮かび上がらせる難しさがある中、抑圧的な生徒指導の問題をよく押さえた内容だ。ただ、再発防止策で強調している「信頼関係の構築」には注意が必要だ。多忙な教員をさらに追い詰めかねない。教員と生徒の信頼は大事だが、あくまで両者は指導する側と指導される側の関係にあり、相性が合わないこともある。教員の繁忙解消に加え、スクールカウンセラーのような第三者を有効活用できる体制整備が必要だ。


(25面)

府中町中3自殺報告書 要旨

自殺の背景・要因

自死の要因の一つで、きっかけとなったのは、推薦・専願丞準の運用変更で、男子生徒が志望する高校の専願受験が認められなかったことと考えられる。このことは、三つの点で男子生徒に動揺を与えた。第一に、唐突な進路指導の変更で驚き・戸惑いを感じ、第二に、自分なりのプランが崩れることに衝撃を受け不安を抱き、第三に、期待してくれている親に対し、どう伝えればよいか苦悩が生じたと思われる。

これに加え、男子生徒と教員の間に日常的な信頼関係が十分に構築されておらず、1年時の触法行為の確認の際に担任との間で適切なコミュニケーションが成立しなかったこと、学校が共感的・支援的なサポートを行わなかったことも自死要因の一つというのが委員会の見解である。

また、男子生徒のパーソナリティーの特性から、家族や親しい友人にも苦悩や自死を疑わせるような会話や発言は一切行っておらず、周囲は誰も気づくことなく、自死を阻止する対応ができなかった。以上のように、複数の要因を背景として、残念ながら自死に至ったと考えられる。

学校対応の問題

学校運営に大きな課題があり、万引の事実誤認につながった。生徒に寄り添った進路指導が十分ではなく、強権的・抑圧的な指導に陥り、生徒との信頼関係を丁寧に築いていく姿勢が不十分だった。

校長のリーダーシップが発揮されず、組織的対応が的確でなかった。万引の記録の際に名前が取り違えられ、ミスが発覚し、訂正の機会があったのに、必要な訂正が行われなかったなど進路指導の記録の作成、保存などが不適切だった。

推薦基準の運用

基準変更の問題もある。男子生徒たちが1年時は、推薦・専願の基準で「3年間触法行為がないこと」との要件はなかった。生徒・保護者、教員も1年時に触法行為を犯した場合は、受験の際に推薦・専願が不可となることは想定していなかった。(1~3年の全非行歴を判断材料に含めるとした)年度途中の基準変更は極めて遅すぎる不適切な対応である。

少年法の理念を踏まえると、社会で「有責性なし」とみなされたものは学校でも「有責性なし」とみなすべきだ。1、2年時の生徒の触法行為を理由に、機械的に推薦・専願を認めない不利益処分を課すのは同法の理念の無理解で問題だ。

1年時に触法行為を犯した場合に高校受験の推薦・専願が不可となるのは「不利益処分の遡及(そきゅう)適用」行為で問題だ。方針変更の説明か一切ない点や他校の進路指導との平等性・公平性を欠く点も問題だ。

進路指導を検証すると、推薦・専願基準を機械的・形式的に運用した問題点が見いだせる。問題行動かあった生徒は、自動的に推薦・専願不可となっている。生徒一人一人の状況を踏まえ総合的に判断するという教育的視点を欠いている。町教委は的確に情報把握しておらず、指導や助言が十分でなかった。県教委も町教委の指導状況の把握が十分でなく、的確な支援策が提供されなかった。

再発防止策 

校内の会議や指導上の重要な記録は、速やかに作成・保管し、管理職などの確認が徹底できる体制つくり▽全教員が共感的姿勢で生徒・保護者の声に耳を傾け信頼関係の構築▽町教委は各学校と情報共有し、速やかな指導・助言、援助ができる体制の整備-などに取り組むべきだ。

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平成28年6月2日 中国新聞社

業務致死容疑で中3の担任告発

府中町自殺で広島市議

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)が昨年12月、誤った万引き記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、広島市議が1日、当時担任の女性教諭を、業務上過失致死の疑いで刑事告発した。県警は同日、告発状を受理した。

告発したのは児玉光禎市議(74)=佐伯区。告発状などによると、女性教諭は非行事実を確認するとともに、適切な進路指導をする注意義務を怠ったまま、万引きをしたと決めつけ、私立校への推薦を受けれないとする誤った進路指導を実施。男子生徒に著しい精神的打撃を与えて絶望させ自死に至らせた、とする。

児玉市議は「担任教諭の過失について、けじめとして刑事責任を問うべきだ」と話した。同町教育委員会は「具体的な中身をまだ確認できておらず、コメントできる状況にない」とした。

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平成28年4月22日 中国新聞社

府中町中3自殺馳文科相に聞く
学校全体で情報共有を 省内で再発防止策検討へ

広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、馳浩文部科学相は21日、中国新聞のインタビューに応じた。学校側の情報共有の在り方などの課題を挙げ、大学教授や弁護士たちでつくる第三者委員会の議論を踏まえ、省内で再発防止策をまとめる考えを示した。       (山本和明)
-省内の特別チームが先月、中間報告をまとめました。課題は何でしょうか。

 教職員と生徒、保護者の十分な合意がない中で進路指導が進むと、最悪の事態が訪れてしまう。その象徴的な事案だ。進路指導は
学校全体で情報が共有されていなければいけない。指導にふさわしい環境をつくることも重要で、廊下で行われたのはショックだった。
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 「教育現場で起こった最悪の事案だ」と話す馳氏
-名前を取り違えられ、触法行為だけで推薦の可否が決められていました。
 あってはならない。触法事案そのものを推薦基準にすることに私導を通じて反省し、二度としないという決意を芽生えさせるのが教育の一番の役割だ。
また今回は急に、1年生時まで広げている。ルールを途中で変え、しかも全員に伝えていなかった。最もやってはいけない行為だ。
 -最終報告をどう取りまとめますか。
第三者委は夏までに調査を終え、取りまとめをしてほしい。その後に第三者委の結論を踏まえ、省としての見解を出したい。
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平成28年4月1日 中国新聞

「機械的な指導に疑義」
府中町中3自殺第三者委が初会合

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会合の冒頭、黙とうする
第三者委員会の委員ら
 広島県府中町立府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=昨年12月、誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、大学教授や弁護士ら5人でつくる第三者委員会が31日、同町で初会合を開いた。
冒頭、委員と事務局の町教委職員が黙とう。高杉良知教育長は「情報管理や進路指導など多くの課題を認識している。多角的な視点で調査し、提言を願う」とあいさつした。
非公開で約2時間あった会合では、委員長に広島大大学院の古賀一博教授(教育行政学)を互選。委員は、学校側がまとめた調査報告書や全校生徒のアンケート、亡くなった生徒の両親の聞き取り記録などをチェックし、疑問点をただした
り、追加資料を求めたりしたという。
第三者委は、進路指導の経緯や自殺に至った原因と学校の対応との関係などを検証し、再発防止策などもまとめる。今後、両親から直接聞き取りするなど月1回以上のベースで調査、審議する。次回は4月後半にも開く。
会合後、古賀委員長は「亡くなった生徒と両親に寄り添うスタンスで、スピード感を持って報告をまとめたい。委員からは早速、非行を理由とした機械的な進路指導や学校の組織態勢に対する疑義が出た」と話した。
両親は、代理人弁護士を通じ「なぜ未来ある受験間近の子が自ら死を選択せざるを得なかったのか、教育者として、大人としての見地からのみならず、15歳の目線からの検討を試みていただきたい」とのコメントを出した。
(田中伸武、浜村満大)
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平成28年3月27日中国新聞

文科副大臣が改善要請

府中町中3 自殺教育長と会談

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義家副大臣と会談する(左端)
高杉教育長(手前)

広島県府中町の府中緑ケ丘中3年男子生徒=当時(15)=が昨年12月、誤った一万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、文部科学省の義家弘介副大臣が26日、同町教委を訪れ、当面の改善策などを高杉良知教育長と話し合った。副大 臣の同町訪問は9日に続き2度目。
義家副大臣は25日に文科省の特別チームがまとめた中間報告書を高杉教育長に渡し、非公開で約40分間会談した。報告書は、学校側に校長のリーダーシップや情報管理の徹底を求め、町教委には学校との協力、指導体制の肇立と改善工程の 策定を要請している。
会談後の会見で、義家副大臣は「高校推薦で機械的な判断が行われたことが問題。生徒の成長を導く体制をつくってほしい。第三者委員会の検証にも期待する」、高杉教育長は「他県の例も含め助言いただき、今後の方針がより分かりやす く示された。スピード感を持って取り組む」と述べた。
義家副大臣は町教委を訪問後、同町内の男子生徒の遺族宅を弔問した。
(府中町進路指導問題取材班)

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