平成29年6月29日朝日新聞滋賀版

「いじめは幸福の権利を奪うもの」 大津で授業

大津石川弁護士

いじめ防止の授業をする石川弁護士=大津市仰木の里4丁目

小中学校に専門家らを招き、いじめの問題とその防止について考える授業が28日、大津市で始まった。
市などによると、2011年に市立中学2年の男子生徒がいじめを受けて自殺した事件をきっかけに、市はいじめ防止行動計画を策定。今年度から実施している2期目の取り組みの一環として、今後、弁護士や警察関係者らを講師に迎え進めるという。
この日、同市仰木の里4丁目の仰木の里小学校では県弁護士会の石川賢治弁護士が、5、6年生約60人を前に授業をした。1994年にいじめを受けて自殺した愛知県の中学2年の男子生徒の遺書を紹介。「中1になったら(いじめが)ハードになって、お金をとられるようになった」「スミマせん。もっと生きたかったけど」などと文面を読み上げて「憲法には誰もが幸福を追求できる権利とある。いじめはその権利を奪うもの」と訴えた。
6年の谷口泰地君(11)は「いじめは絶対にやってはいけないと思った。ちょっとしたちょっかいでもいじめにつながるかもしれない。人それぞれとらえ方が違う。気をつけたい」と話した。(石川友恵)

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平成29年6月27日朝日新聞
家族に「俺はいじめられている」中2男子が自殺 新潟

新潟県新発田市は26日、家族にいじめ被害を訴えていた市立中学2年の男子生徒(13)が自殺したと発表した。遺書はないが、家族に「クラス全員に仲間はずれにされている。俺はいじめられていると思う」などと話していたという。市教委は第三者委員会で原因を調べる。
市教委によると25日午前4時ごろ、男子生徒が自宅の作業小屋で首をつっているのを父親が発見し、その後死亡が確認された。4月に学校が全校生徒に実施した定例のアンケートでは、男子生徒へのいじめに関する記述はなく、担任も異変に気づかなかったという。家族から学校への相談はなかった。
家族は学校側に「原因を徹底的に究明してほしい」と求めているという。

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平成29年6月16日河北新報
<仙台中学生自殺>市長はリーダーシップを

仙台市議会6月定例会は15日、2日間の代表質疑を終えた。青葉区の折立中2年の男子生徒(13)が教諭らから体罰を受けた上、いじめを訴えて自殺した問題を全5氏が取り上げた。8月で引退する奥山恵美子市長に「任期中に責任を持って対応すべきだ」とリーダーシップ発揮を求める声が相次いだが、煮え切らない答弁に終始した。
奥山市長は5月、体罰の実態などを検証する第三者機関の設置を表明したが、具体化していない。既存の市教委第三者機関・いじめ問題専門委員会もメンバー3人が辞任の意向を示し、早期に会合を開ける状態にない。
14日の代表質疑では、菊地崇良氏(自民党)が「今後の予定もほとんど決まっていない。後任の市長に丸投げするのか」と批判。木村勝好氏(市民フォーラム仙台)も「在任中に各委員会(機関)を機能させるべきだ」と迫ったが、奥山市長は「できるだけ早く設置したい」と述べるにとどめた。
15日は鎌田城行氏(公明党市議団)が「市長部局にいじめ防止対策推進室を設置し、総力を挙げ対応を」と提案。
花木則彰氏(共産党市議団)は教諭の負担軽減のための少人数学級拡大を訴え、「次の市長が決まってからでは間に合わない」と強調した。
一方、樋口典子氏(社民党市議団)は「今必要なのは教育行政の自立と自主性。地域と連携し、実効性のある取り組みを進めるべきだ」と指摘した。

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平成29年6月14日朝日新聞宮城版
中2自殺で遺族が再度要望書「第三者委設置を」

4月末に自殺した仙台市立中学2年の男子生徒の遺族が、奥山恵美子市長や岡部恒司市議会議長らあてに2度目の要望書を出した。いじめを解明する第三者委員会を速やかに設置することなどを求めている。
13日の四十九日に合わせ、12日に郵送した。市教委の第三者委をめぐっては、現状の半数に上る委員3人が辞任の意向を示している。要望書では、「新たな委員の選任まで時間を要し、調査が始まるめどが立たないとの報道を見て憤りを感じる」とし、遺族が推薦した3団体を委員に加えて速やかに調査を始めるよう求めた。
また、第三者委が市教委の付属機関になっている現状では「公平性、中立性が確保されていない」として、設置の根拠になっている条例を見直すことも要望した。
市教委は13日、男子生徒が通っていた学校の全生徒と保護者あてに、体罰について尋ねるアンケートを配布した。
男子生徒への体罰を見たり、聞いたりしたことがあるかなどのほか、回答者自身も体罰を受けたことがあるかなども尋ねる。アンケートは奥山市長と大越裕光教育長の連名で、市教委に直接郵送してもらう。(中林加南子、藤崎麻里)

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平成29年6月9日河北新報
<仙台中学生自殺>生徒「死んでも誰も悲しまない」

いじめ被害を訴えていた仙台市青葉区の折立中2年の男子生徒(13)が4月に自殺した問題で、男子生徒が同級生に「僕が死んでも誰も悲しまない」などと打ち明けていたことが8日、市教委が公表した全校生徒アンケートで分かった。約2割が男子生徒へのいじめを「見聞きした」と答え、新たに8件のいじめが疑われる事案も明らかになった。
アンケートは5月2~19日に実施し、全校生徒258人中251人が回答した。回収率は97.3%。うち55人が男子生徒へのいじめとみられる出来事を具体的に書き込んだ。
新たにいじめが疑われる事案は(1)同級生から「死ね」と言われた(2)「別の中学校に行け」と言われた(3)集団で囲まれ、悪口を言われた(4)机に「臭い」と書かれた(5)菌扱いされていた(6)消しゴムのかすを頭に乗せられた(7)集団による仲間外れ(8)陰口-の8件。
男子生徒が帰宅途中、「死にたい。死んでも誰も悲しまない」と話したとする記載があった。今年2月に教室で転倒し、骨折した件は「自分で転んだ」「(同級生が)足を出して転ばせた」と相反する回答もあった。
遺族関係者によると、遺族は7日午前、校長から今回の公表内容を示された。遺族側は削除された回答があるとして、公表するよう求めたが、聞き入れられなかったという。
遺族側に事前に示されていたアンケートには骨折について「(同級生が)アキレス腱を伸ばすようにして足を掛けた」との記載や、男子生徒が保健室で「けんかの責任を押し付けられると養護教諭に相談していた」との回答もあったという。
回答の一部を非公表とした市教委の判断について、遺族関係者は取材に「都合の悪い情報を隠そうとしている」と批判した。

<仙台市教委>いじめ問題専門委の3人辞意

仙台市教委が設置する第三者委員会「いじめ問題専門委員会」の本図愛実委員長(宮城教育大教職大学院教授)ら3人が辞任の意向を示したことが8日、分かった。専門委は青葉区の折立中2年の男子生徒(13)が自殺した問題を調査するが、後任選びの影響で調査が遅れる可能性がある。
市教委によると、3人は3月末~4月上旬に辞任を申し出た。本図氏は取材に「泉区南中山中のいじめ自殺問題の答申を3月下旬に出し、区切りがついたため」と説明した。市教委は新委員が決定した段階で3人の辞任を認める方針。
男子生徒の遺族は、専門委メンバーを遺族が要望する団体などからも選定するよう求めている。

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平成29年6月8日河北新報

横浜・原発いじめ問題 生徒「放置せずサポートを」

原発いじめ

記者会見する母親=横浜市中区で

東京電力福島第一原発事故で福島県から横浜市に避難した男子生徒(13)のいじめ問題で、生徒の母親が七日、市内で記者会見するとともに、生徒のコメントを発表した。全国ではいじめの被害者側に寄り添っていないとされる教育委員会の対応が相次いでおり、生徒は「全国のどこでも、子どもを放置せず、精神的なサポートをして欲しい」と求めた。 (志村彰太)
会見とコメントの発表は「子どもも保護者も長くつらい日々を過ごしたが、やっと総括できるタイミングになった」(代理人弁護士)として行われた。
弁護士らによると、一連の問題で、生徒が小学校時代にいじめを訴えても学校側は聞き入れてくれなかったが、昨年十一月の問題発覚を受け、林文子市長と岡田優子教育長は五月末に、生徒と直接会って謝罪。市教育委員会は再発防止策を作り、いじめ防止基本方針も改定中だ。
会見で母親は「いろんな人たちが味方になり、励ましてくれた」と感謝し「市にはやってほしいことをやってもらった。
今後、全国の手本になる思いで取り組んでほしい」と述べた。
生徒もコメントで「教育長や市長が、言いたいことを聞く体制になってくれたこと、聞く耳を持ってくれたことが今、うれしい」
と対応の変化を評価した。
ただ全国では、茨城県取手市の市立中学三年の女子生徒が自殺した問題で、原因を調べていた第三者調査委員会の調査に偏りがあるとして、遺族の申し出で解散が決まるなど、教育委員会の対応の問題点を指摘するニュースが続く。
母親によると、生徒は全国各地のいじめ自殺のニュースが流れると「何でだよ。つらいなら学校行かなくていいんだよ」と、悔しさをにじませるような会話をするという。母親は「全国のいじめは学校や教委の理不尽な対応が多く、被害者が報われていない状況が続いている。被害者側に寄り添った対応をしてほしい」と求めた。
生徒は現在、前向きな気持ちでフリースクールに通っており、一カ月ほど前にようやく一人で出掛けられるようになったという。母親は「フリースクールも楽しいと言っている。息子が生きるという選択をしてくれてありがとうの思いしかない」と涙を見せた。
一方で「外に出る時、加害者に遭遇するのではという恐怖心やトラウマはまだある」とし、横浜市に精神面でのサポートを求めた。生徒の今後について「ゆっくり人生を歩んでほしい。無理せず、自分のペースでいろんなことを乗り越えてくれれば」と話した。

◆「いじめ防止基本方針」改定原案 12日から市民意見募集
横浜市教育委員会は、今回の男子生徒のいじめ問題を受けて見直し中の「いじめ防止基本方針」改定原案の市民意見募集(パブリックコメント)を、十二日~七月二十八日に行う。
改定原案の主な変更点は「いじめを広く捉える」と明記。教員や学校だけに任せず、警察や市長部局との連携などを具体的に記述した。また、いじめが解消したと判断する根拠に「いじめ行為が少なくとも三カ月以上やんでいる」「児童生徒が心身の苦痛を感じていない」の二点を挙げた。
特に配慮が必要な児童生徒として「障害がある」「海外からの帰国者、外国につながりがある」「性同一性障害」「東日本大震災、原発事故の避難者」などの例を記した。集まった意見と市教委の考え方は九月にHPに掲載し、九月末に確定させる。(志村彰太)

◇男子生徒のコメント全文
七日公表された男子生徒のコメントは次の通り。(表記は原文のまま)
教育長や市長が、言いたいことを聞く体制になってくれたこと、聞く耳をもってくれたことが今、うれしいです。
「ちょっと話しましょうか」ということが、これまではなかったので。
今後も、全国のどこでも、子どもを放置せず、精神的なサポートをして欲しいです。加害者も、被害者も、平等に、です。
今回、僕は加害者側がサポートされていて、被害者側がサポートされていないような気持ちになりました。
これまで、僕は、いじめで自殺することを止めるきっかけになればと思って、生きているうちに発信していけばいじめが減ることにもつながる、自分の行動でいじめが減る!と信じて、教育長や市長への手紙を書くなど、できるだけ自分の言葉を発信してきました。
手紙やメッセージをくれた方々、電話や署名活動をしてくれた方々、協力してくれた議員の先生方をはじめ、その他にも僕が把握できていなくてもいろいろなところで応援してくださった皆さん、行動して頂きありがとうございました。

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平成29年6月6日朝日新聞宮城版

いじめ問題、専門家3人に聞く

3年で3人の男子中学生が自殺した仙台市の教育界には、どんな問題があり、解決の糸口はどこにあるのか。
いじめ問題について、専門家3人に聞いた。

仙台本田
■被害者より加害者の病理、深刻 本田秀夫さん(53) 信州大医学部付属病院子どものこころ診療部長 いじめで心に傷を負った子供たちの診察をしていると、必ずしも全ての学年を通じていじめられていたわけではない、ということに気づきます。つまり、いじめが起きにくいクラスがあるということ。先生らによって一人ひとりの個性を引き出す教育環境ができていれば、子供は他人のあら探しをして攻撃する必要がなくなるからです。
それとは反対に自殺した男子生徒が口に粘着テープを貼られたり、頭をたたかれたりしたのは、クラスになじめない子はいじめてもいいという雰囲気を、先生が率先して醸し出した可能性があります。
公立学校は「みんな仲良く」「みんな一緒に頑張ろう」という文化が強く、それがいじめの温床になりやすい。「みんな」という文化に入ってこないと異質だとみなすわけですから。
いじめ問題というのは実は、被害者より加害者の病理の方がより深刻です。自分の傷を癒やすために他人をいじめている場合も多く、精神医学的な対応が必要ですが、いじめをする子供たちは診療を受けには来ない。
別の子供との関係で虐げられているかもしれないし、親子間の虐待が他の子への攻撃性として出ているかもしれない。
ですが、ほとんどの親は自分の子がいじめをしていると気づいていません。
だから、いじめが分かったら双方の家庭を巻き込み、当事者全員に面接をして話し合わなければならない。その意味で、今回のケースでいじめた側の親に報告すらしなかったことは、とてもまずかった。当事者が認識を共有して一発で解決に導き、二度といじめを許さない雰囲気をつくらないと、いじめは水面下で陰湿化してしまいます。
中学生の各教科の習熟度は勉強が得意な子だと高校生並み、苦手な子は小学生レベルというケースもあります。
運動能力や社交性、性格も実に多様。「みんな一緒に」の理念だけで教室を運営するのは無理があります。本気でいじめ対策に取り組むのなら、日本の教育体制を根本的に見直す必要があります。(聞き手・森治文)

精神科医。著書に『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』など。

仙台香山

■いじめの対象、誰でもなりうる 香山リカさん(56) 精神科医
大人たちは「いじめが起こるのは、被害者と加害者との関係に何か問題あるからではないか」と原因と結果を論理立てて解釈しようとしますが、それは大きな間違い。残念ながら今の学校では、いじめは突然、何の前触れもなく、そして誰にでも起こります。
子供たちの話を聞いていて感じることは、今の子供は対人関係に非常に敏感だということです。自分がいま、「相手からどう思われているか」「私の言葉を相手がどう受け止めているか」を常に考えて行動し、言葉を発している。また、相手や周りから「何を期待されているか」「何を要求されているか」に過剰に気を使う。
子供はいつ何時、自分がいじめの対象になるかわからないということを、実によく知っています。いま、いじめられている子の次は自分がターゲットになるかも知れない。だから周りの微妙な空気の変化を察知することに全精力を使う。
学校関係者や保護者は、子供たちのちょっとしたしぐさ、そぶり、会話に注意して下さい。「うちの子は大丈夫」「我が家のしつけはしっかりしているから」とは思ってはだめ。繰り返しになりますが、いつでも、誰もが、被害者になり得るのです。
いじめの渦中にある時、自分に何が起こっているのか正確に把握できる子供なんて、まずいません。いじめている側も、いじめているという意識はありません。被害者は「いじめられているなんて思いたくない」と考えるし、加害者は「自分のやっていることは、よく話題になっているいじめなんかじゃない」と思いがちです。
これは学校関係者も同じかもしれません。子供たちが言い争いをしていても、「ふざけているんだろう」。追いかけっこをしていても、「活発な子供のことだから」と考えて、なるべく過小評価してしまいます。「うちのクラスでいじめがあるわけがない」と思い込もうとする。
まず、「これは、いじめだ」と早期に判断して対処を始めるべきです。そこから、すべてが始まります。(聞き手・石川雅彦)

立教大学現代心理学部教授。著書に『いじめるな!』(共著)、『若者の法則』など。

尾木

■先生の子供観がゆがんでいる 尾木直樹さん(70) 教育評論家
今回、仙台市で体罰をした2人の先生は、ごく普通の先生だったのだと思いますよ。教育熱心な、生徒に慕われている先生かもしれない。ただ、そんな先生が何げなく拳でたたいたり、口に粘着テープを貼ったりするようなことをしてしまう点に、仙台の異常さがあると思います。
そもそも、先生の子供観にゆがみがあるのではないでしょうか。授業中に周囲の雰囲気にかかわらずしゃべり続けたり、立ち上がって歩き回ったりする子供は、現代の教室では珍しくはありません。いまの教育現場は、クラスにそんな子もいることを前提に、教育活動をしていくことが常識となっているんです。
その子を「変な子」と異端視せずに、まず同じ目線になって「私はあなたの仲間よ」と伝え、その子の気持ちを理解しようとする。そこから、すべての指導が始まるんです。
今回の体罰に使われた拳や粘着テープは、「よそ者扱い」の典型的な例です。教育の基本原理・原則である「個に寄り添う」という理念を行政や現場が理解・共有できていないと思います。仙台の遅れは、そこです。まずは教師の側が子供の人権やいじめに対する感性を高めなければ、子供を守ることはできません。いま、しっかり、そこにメスを入れるべきです。
私はいろいろな教育現場を回っていますが、現場には素晴らしい志や能力を持つ先生がたくさんいて、日々頑張っている。
ただ、その本心を声に出すことができない、あるいは、彼らの声がなかなか実践に反映されていないような雰囲気がある。
これは仙台市だけの問題ではありません。
その原因の一つとして、教職員の過重労働問題があります。疲れ切っている先生たちは、正常で健全な心を持ち続けることが難しくなっているのでしょう。命の大切さやいじめが重大な問題であることは頭では理解している。しかし、その健全な正義感や問題意識、感受性が発揮できないところまで追い込まれているのかもしれません。そのような状況で真っ当な教育ができるわけはありません。(聞き手・石川雅彦)

法政大特任教授。著書に『いじめ問題をどう克服するか』『取り残される日本の教育』など。

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平成29年6月6日NHK仙台放送局

全校調査 いじめは毎日のように

ことし4月、仙台市の中学2年の男子生徒が自殺し、いじめや体罰を受けていたことが明らかになった問題で、男子生徒へのいじめの実態を解明するため全校生徒に実施したアンケート調査の結果がわかりました。
この中では、具体的な複数の生徒の名前や部活動名を挙げながら、毎日のようにいじめが繰り返されていた実態が記入されていて、教育委員会は第三者の調査委員会を設置して事実関係の確認を進めることにしています。
ことし4月、仙台市の中学2年の男子生徒が休み時間に学校を出てマンションから飛び降りて自殺し、その後、机に『死ね』と書かれたり、ほおを叩かれたりするなどのいじめを受けていたほか、教諭から体罰を受けていたことが明らかになっています。
これを受けて、教育委員会はいじめの実態を解明するため、男子生徒が通っていた中学校の全校生徒を対象にアンケート調査を行い、その結果がわかりました。
この中では、「『臭い』『こっちに来るな』などと毎日のように悪口を言われ、言い返すこともなく、トイレの前で1人で座っていた」とか、具体的な複数の生徒の名前や部活動名を挙げながら、「5、6人からほぼ毎日、悪口を言われていた」などと、いじめの具体的な実態が記入されています。
また、「菌扱いされていた」とか、「消しゴムのかすを髪の毛に乗せられていた」などといういじめの内容や、自殺した当日の様子について、「朝は顔色が悪くてフラフラしていた」という記入がありました。
仙台市教育委員会は第三者の調査委員会を設置して事実関係の確認を進めることにしています。
http://www3.nhk.or.jp/tohoku-news/20170606/4027951.html

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平成29年6月6日東京新聞
取手中3自殺 中学は「重大事態」と報告 市教委「該当せず」と議決

二〇一五年十一月に「いじめられたくない」と日記に書き残して茨城県取手市立中学三年の中島菜保子さん=当時(15)=が自殺した問題で、学校がいじめ防止対策推進法が規定する「重大事態」として報告したにもかかわらず、市教委が重大事態に該当しないと議決していたことが五日、分かった。市教委が市議会議員全員協議会で明らかにした。
市教委によると、学校は一六年三月四日付で「重大事態発生報告書」を市教委に提出。いじめの有無や自殺との関連は判断できないとしたが、遺族から「いじめによって自殺した」と申し出があったことから、重大事態として報告した。
一方、市教委は同月十六日の臨時会で、生徒への聞き取りからいじめが確認できないとして、「重大事態」に該当しないと議決した。
同法の規定では、いじめの事実が確認できなくても、いじめにより心身に大きな被害が生じた可能性があれば重大事態と認定できる。矢作(やはぎ)進教育長は協議会で「自死につながるいじめかどうかで判断してしまった」と謝罪した。市教委は五月三十日、議決を撤回している。
菜保子さんの母淳子さん(47)は「このような学校の報告があるとは知らなかった。市教委は何の権限があって『該当しない』と判断できたのか」と憤った。

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平成29年6月6日朝日新聞社説
いじめ自殺 教委不信、深刻な危機

学校や教育行政への信頼が、深刻な危機に直面している。
いじめとの関連が疑われる生徒の自殺について、教育委員会や教委が設けた第三者機関の調査に遺族が
不信を抱き、再調査やメンバー交代などを求める。そんな例が仙台、青森、茨城・取手などで相次いでいる。
現にあるルールへの理解を欠き、事実に向きあおうとしない教委の態度が浮かびあがる。
大津市で起きたいじめ自殺の教訓から、4年前にいじめ防止対策推進法が生まれた。
法律は、いじめの「疑い」があれば「重大事態」ととらえ、特別な組織を設けて調査をし、被害者に情報提供するよう定めている。いじめの確証がなくても、可能性を前提にまず動くことを求めているのだ。
その認識はどこまで浸透しているか。取手市教委は第三者機関を設けるのと同時に、「重大事態ではない」という不可解な議決をしている。調査の起点で遺族の不信を招いた。
残された家族が何より望むのは「何があったのか」を知ることだ。事実の解明なしには、加害者の反省も、校内や地域の動揺の収拾も、再発防止もありえない。むろん被害者側が納得できるはずもない。
一連の問題事例では、事実の追究が甘かったことも、学校や教委に都合よく事を済ませようとしているとの疑いを招いた。教委の公正・中立が疑われることなく適切な調査が行われるよう、被害者側にその手順や
進み具合を説明し、理解を得ながら進めることが肝要だ。
スピードも求められる。解明が中途半端に終わる原因に、全校アンケートなどの時期が遅いことが指摘される。
いじめ防止に取り組むNPOは、うわさや報道に影響されて記憶が塗り替わらないよう、「発生・発覚から3日以内」を提唱する。
この時期は学校側も当面の対応で手いっぱいだろうが、文部科学省が3月に定めたガイドラインは、重大事態の報告があれば、市教委などから職員やスクールカウンセラーを派遣できると書いている。支援の用意はある。
校長ら管理職は初動対応の重要性を胸に刻んでほしい。
いじめ自殺の多くは、危険の兆候がありながら、共有されず見逃された結果起きている。
生徒や保護者が相談しやすい環境作りが必要だ。校外に相談窓口や子どもの居場所を設け、学校や教委と
連携していくような仕組みを考えられないか。
悲しい事件を繰り返さないよう、生徒会や保護者の会合でも話し合いを深めてもらいたい。

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